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第109回『確率の向こう側へ⑤』 瀬戸熊 直樹

2016/05/18
執筆:瀬戸熊 直樹


皆さんこんにちは。
毎回思うのですが、思考を文章にするのって本当に難しいですね。
「鳴きと面前のバランスの考察」
原稿の例題となる牌譜を探して、試行錯誤しながら完成間近で迎えたA1リーグ第2節。
マイナス8.5ポイントと不完全燃焼で終え、帰宅してタイムシフトを観て反省していたら見つけました!
「お宝牌譜」
久しぶりに原稿のイメージがすっと浮かびました。
九割書き終えていた原稿をあっさり捨てて、「伝えたい」と強い思いで書き直しております。
今回がラストになる講座につき、皆さんも優しい気持ちでお付き合いください。

A1リーグ第2節 1回戦 東3局 1本場

開局からリーチ合戦を制し、8,000点をアガると、最初の親番でも3,900オールをツモり、いよいよこれからと言う親番1本場の場面。

7巡目、KKTの入り口付近と意識した僕の手牌。

四万七万八万一索三索三索四索五索五索六索八索六筒七筒

役牌の発を2枚ともスルーして、トイツ落としで高目の678三色を追求していきます。
忍者こと藤崎さんも僕の2枚並んだ発は当然了解済み。

藤崎さんの手牌は、

一万一万三万三万五万五万七万九万九万東北白中  ツモ南  ドラ五万

ドラドラですが、速度で僕に間に合わないと感じたのか、

自身の捨て牌 
一索 上向き四筒 上向き四索 上向き六索 上向き七筒 上向き

ここから、1つでも鳴けば当然2つ目は鳴けないと感じたのか、守備も兼ねた打七万とします。

「鳴き」を捨て、ツモが伸びたら勝負の意思のある決断をします。

そこから、ツモ一万東、ツモ六万六万とし、 

一万一万一万三万三万五万五万九万九万南北白中 

この2シャンテン。

ここで、北家の柴田さんからのリーチが入ります。

二万二万四万五万六万二索三索四索四筒五筒六筒六筒七筒  リーチ

僕の手牌も勝負形となっています。

六万七万八万三索三索四索五索五索六索八索六筒七筒八筒

石渡さんも同巡にテンパイ。

七万八万九万二索二索九索九索一筒一筒二筒二筒三筒三筒

ここで藤崎さんはツモ白、打一万でようやく1シャンテン。

一万一万三万三万五万五万九万九万南北白白中

柴田さん七索ツモ切り、僕は動かず。この辺りが麻雀の難しいところです。
すると藤崎さんツモ中、打北南単騎テンパイ。

一万一万三万三万五万五万九万九万南白白中中

次巡、柴田さんの南放銃で決着となりました。
藤崎さんの神手順が光る1局となりました。

仮に僕が藤崎さんの立場なら7巡目

一万一万三万三万五万五万七万九万九万東北白中 

ツモ南 打東
ツモ一万 打南
ツモ六万 打中
ツモ白 打北となり(場況より推測)

一万一万一万三万三万五万五万六万七万九万九万白白

こうなって1シャンテン。自身のアガリだけはない局面となっていそうです。
同卓していた僕としては、南場の親でもう一度チャンスを作る為に、この流れを自分に引き付けられるようしっかり戦わなければと思っていました。

そして迎えた 南3局、1本場、親瀬戸熊の場面で、またしても藤崎さんにやられます。
53,700点持ちで迎えた場面、配牌から順調に手が伸び、10巡目で以下の形になります。

三万四万六万六万二索二索三索四索六索六索七索七索八索  ドラ六索

決定的時間に入れるチャンス到来。
西家・藤崎さん(持ち点34,300)も手牌が伸び、同巡以下の形。

二筒三筒四筒五筒七筒七筒七筒八筒南白発発発  ツモ九筒

場に白は1枚。南は生牌。藤崎さんの選択は南
12巡目、僕にテンパイが入りリーチ。本当の勝負局とします。

三万四万六万六万二索三索四索六索六索六索七索八索九索  ドラ六索

石渡さんが僕の現物の打六筒。その六筒を藤崎さんがチーしてテンパイを入れます。

二筒三筒七筒七筒七筒八筒九筒発発発  チー六筒 左向き四筒 上向き五筒 上向き

六筒は3枚目でしたが、一筒から七筒まで何を引いてもテンパイ。藤崎さんの雀風なら「鳴かず」も充分にある場面です。
実際鳴かなければ、同巡ツモ六筒で、一筒四筒七筒マチとなっておりました。
結果は、鳴いた藤崎さんの四筒ツモアガリ。(最速)

「鳴き」の判断は難しく、その決断がゲームの展開を大きく左右します。
藤崎さんは2つのターニングポイントを見事正解させたのです。

自分の体勢と相手の体勢を比較して導き出した正解の数々。
お互い流れを最重視する打ち手ですが、道中の判断と、時間帯の入れ方は違います。
違いはあれど、藤崎さんと麻雀の話をするのは、本当に楽しくて参考になります。
それは、麻雀に対しての根底にある考え方が似ているからだと思います。

余談ですが、今回藤崎さんの牌譜を検証しながら、ふと昨日見たTV番組を思い出しました。
脳科学博士の辻本悟志さんが、将棋の一流棋士は、脳を人と違う部位を使って、第六感または直感を働かせて正しい解を導く。
一流棋士は論理的に考えて最適な一手を指しているわけではないらしい。で、どうなっているかと言うと、彼らは「浮かんでくる」と表現をされる。

MRIで一流棋士の脳活動を調査(MRIに入ってすぐにこの場面では今どんな手がいいか推測させる)すると、脳の中の一生懸命考える所じゃなくて「大脳基底核」中でも「尾状核」と呼ばれている脳部位が活性化する。
この場所は人がとくに発達しているというよりは、もっと昔のトカゲ(爬虫類)とか鳥類とかそういったものでも共有した脳部位で、そういう意味でおそらく意識にのぼると言うよりは、直感的に感じるとか浮かんでくるとかと言うニュアンスになってくるんじゃないか。と話されていました。

その時、だから藤崎さんの麻雀を見ていると、三手先を見浮かべているような打牌があるのかもと感じましたが、多分、彼しか持たない「忍者脳」があるかもしれませんね。

Chapter5:藤原隆弘プロの場面

先日のA2リーグ第2節、4回戦のオーラスを迎えた場面。
持ち点は親の藤原18.0P ともたけ50.1P 荒32.3P 西川19.6P

3回戦まで、四暗刻も引きアガった藤原さんが、70ポイントを浮いて迎えた1日。
最終戦も親番で何とか3着、もしくは浮きとしてポイントをまとめたい所の6巡目。

藤原手牌 
二万三万六万七万二索三索三筒四筒七筒八筒九筒西西発  ドラ発

ドラ発を切ってもいい場面だが、藤原さんの選択は六万
次にツモ四索で打七万。テンパイすればドラが今にも出そうな牌姿。

二万三万二索三索四索二筒三筒七筒八筒九筒西西発

この時点でドラの発はともたけさんの七対子ドラドラに放銃となる牌。
数巡後、生牌の南を持ってきて、藤原さん少考して打西のオリ。
南としていると、西家の荒さんがポンしてアガリの場面を凌ぎます。
残る危険はドラの発を、ともたけさんがツモる可能性。山に1枚残っています。

藤原さんは、この半荘は「体勢的に無理」と考えての撤退。
多分、欲にのまれて打南とする人が9割、こんな日はどうしても最後もプラスして浮きを伸ばしたくなるものです。

南を止めた所で、藤原さんの考え方は、僕も何度も教わってきました。次の思考もすぐ読めるくらいに。
この半荘の好調者南家ともたけさんのハイテイもイヤと感じているはずです。

案の定、終局間際、出来メンツの四索をチーしてハイテイをズラします。

ともたけさんがツモるはずの牌は西家の荒さんへ
その牌は当然のようにドラ発でした。

終わっての感想戦で藤原さんが、「ともたけさんに東場の6,000オールを自分がかわせたのに、出来なかったから、あそこはラスを受け入れて万全を期する為に好調者のハイテイをズラした」
この藤原さんの何気なく凄い大局観「流れ読み」を僕らの世代は、何百回と聞いて教わってきた。まさにプロの技でした。

長文ご愛読ありがとうございました。