鳳凰位決定戦最終日、新橋駅を降りた私の目の前には、東京マラソンを走る市民ランナーと声援を送る人々の熱気が溢れかえっていた。
「さて、迂回するか。」
私はポツリと呟き、普段とは違うルートで会場へ向かう。
重くなった体に、正直迂回ルートは厳しいものであった。内幸町駅の階段を上がり切るころには、私の手は自然と膝を押さえる。
ようやく声援が聞こえて来るようになった時、はるか上空を目にしながら、私はふとあることを思い出した。
「5年前も東京マラソンだったな。」
5年前の鳳凰位決定戦。私は銀座に宿を構えることに決めた。
少し背伸びして取った宿は、銀座と言っても銀座ウインズの目の前、新橋とは逆方向の銀座1丁目。
今と比べても全く土地勘がなかった私は、地図を見比べながらも、「これくらいは大丈夫だよな」と、全く意に介さなかった。
とは言え、時間にして新橋の会場まで徒歩40分。
最終日はその東京マラソンのおかげで大迂回。1時間近く雨の中を歩いた。
それでも私は、その時間が楽しくて仕方なかった。
自分自身のメンタルコントロールに始まり、ゲームプランの作成、対戦者に対する考察、時間はいくらあっても足りない。
あっという間に会場に着いてしまう。
そんな記憶も今は昔。階段の上り下りくらいで息を切らしている自分が情けない。
何故これだけの違いがあるのか?思い返してみると、あの時は自分に厳しいトレーニングを課していたのだった。
鳳凰位決定戦の為の体作り。心作り。体重もかなり絞って対局に臨んだのだ。
麻雀プロが麻雀を打つために体を作ることはそれほど珍しいことではない。
一流と呼ばれる打ち手は、何かしらその術を持っている。瀬戸熊もその1人だ。
鳳凰位決定戦前、瀬戸熊と前原の何気ない会話を私は耳にした。
「瀬戸クン、まだ走ってるの?」
「いやぁ、走ると言っても健康維持の為ですよ。」
笑顔で返す瀬戸熊の言葉を、私は真に受けなかった。瀬戸熊は必ず心も体も万全にして対局に挑むはずだ。そう信じていた。
鳳凰位決定戦直前のインタビューを対戦者にお願いしている時、瀬戸熊だけはその時間を指定してきた。
「0時から0時半の間でいいですか?」
いろいろな話を伺う中、私は瀬戸熊の背後から聞こえて来る物音が気になって仕方なかった。
わずかに聞こえるその物音に紛れ聞こえて来る音の中には、擦れるウインドブレーカーの音であったり、瀬戸熊の弾む息遣いであったり、
明らかに、瀬戸熊が調整の為の体作りをしている最中に、時間指定をしてきたことを思わせるものであったのだ。
私は、その事実を確認しなかった。瀬戸熊の想いが、痛いほど伝わるからであったからだ。
麻雀プロは孤独である。戦っている最中、誰も何も助けてはくれない。体作りをしている時も同じ。全ては自分との戦いである。
どこまで自分の心と体を作り上げることができるか。そこには終わりも限界もないのだ。
それを身を持って体感してきているからこそ、瀬戸熊の時間を壊したくはなかった。
私と話をしているその時間も、鳳凰位決定戦の来たるべき瞬間に備えて、自分自身の精神を高めている大切な時間であるからなのだ。
その時間瀬戸熊は、対戦者のこと、自身への決め事、ゲームプラン、全てを幾度となく反芻してきたはずだ。
だからどのような事態が訪れても、心だけは崩れない。そういった自負があったはず。
ここまでの瀬戸熊は、それを感じる戦い方であったし、そんな想いがこちらにも伝わってくるような、そんな大きな背中に見えたのだ。
12回戦終了時
瀬戸熊+121.1P 前原+49.4P 板川▲1.6P 沢崎▲168.9P
13回戦(起家から、沢崎・前原・板川・瀬戸熊)
【躍動】
最終日を迎え、前原と瀬戸熊の差は約70P。板川と瀬戸熊の差は約120P。
現実的な話になるが、ポイント的にも追手は1人。2人共に瀬戸熊に追いすがる形は到底想像がつかない。
前原と板川が競り合う展開は、瀬戸熊が最も望むところだろう。
そうなってしまっては瀬戸熊のポイントに追いつかないことを、2人は痛いほど理解している。
だからこそ早い段階で、前原は板川を振り落としたいし、板川は前原を捕らえておきたい。
2人はきっと、そう考えるはずだ。
鳳凰位を奪う前に、鳳凰位に対する挑戦権を奪いあう戦いが、ここにスタートする。
東1局1本場、場が動く。
最初に動いたのは前原。4巡目 をポンして牽制も、
         ポン  ドラ
本物は板川。2巡目にドラの を重ね、前原の仕掛けに合わせるかのように1枚目の から積極的にポン。そして を引きアガる。
         ポン  ツモ
このアガリによって主導権は板川へ。続く東2局も5巡目、
            ドラ
この高めツモ跳満のリーチ。一気に攻め上がる。
ここは、結果残念ながらも安目 ツモ。しかし板川の勢いは止まらない。
東3局1本場、自身の親番で、
         暗カン   リーチ ロン ドラ
この5,800は6,100を前原から直撃。これで板川にとって、絶好の並びが出来上がる。
前原をラスに押しつけ、板川自身が1人浮きのトップ。
瀬戸熊を押さえることが重要だが、とりあえずは思い通りの展開に。
しかし、そんな板川の思惑を知ってか、立ち向かうのは瀬戸熊。
東3局2本場、まずは両者の配牌から。親・板川。
             ドラ
ダブ東が暗刻の好配牌。なんとしても加点したいところだ。
それに対する瀬戸熊の配牌はこう。
            ツモ
こちらもドラが2枚の好配牌。一歩も引けを取らない。
そして、ここからの瀬戸熊のアクションに注目してほしい。第一打に を選ぶのだ。
これは明らかに板川に対する宣戦布告。ここは自分が勝負するんだという意思表示。
小さなことなのかも知れないが、こういった部分の駆け引きが体勢を左右することも多い。
もう1つ注目してほしいのは、対する板川の手中に が暗刻であるというところである。
こちら板川も、もちろん戦う気は満々。一歩も引く気はない。
これが が2枚なら、間違いなく仕掛けていくところであろう。
しかし、 が暗刻であるだけに、瀬戸熊の意思表示だけが場に伝わって、板川の意思はそこまで場に反映されないことが気にかかるのだ。
瀬戸熊が切った に対し、この半荘をリードする親である板川がポンと仕掛ければ、瀬戸熊の対応もまた違ったものになるだろう。
もちろん門前と仕掛けでは、門前で攻められる方が強烈なのは当然なのだが、時として仕掛けた方が相手に対し圧がかかるケースもある。
後ろで観戦していて、このケースは正にそれが該当する瞬間だと感じ、結果もそのように推移していったことから2人の第一打に注目してみたのだ。
手は進み3巡目、板川ツモ の場面。
            ツモ ドラ
何回打っても打 。他に打牌候補はないだろう。
しかし、ドラが でなかったらと考えるのは考えすぎだろうか?
それならば打 もある。それが皮肉なところ。次巡ツモ 。結果テンパイを逃すことになる。
さらにツモ 、ここで打 と打つのだが、結果だけを追うとこの が板川にとっても致命傷になっているのだ。
ほんの小さなことの積み重ね。それが大きな結果を生み出す要因にもなる。
この局の結果は小さなことなのかもしれない。しかし、その一瞬の出来事の誤差が、瀬戸熊との大きな差になっているとは考えすぎだろうか?
場は進んで9巡目、板川待望のテンパイを果たすも、それは一番嬉しくないツモ 。
            ツモ
とはいえ、ここでテンパイを取らない策はない。そして打 。
次巡、瀬戸熊がテンパイ。しかしこちらもツモ 。
            ツモ
こちらも嬉しくないツモ だが、ここは瀬戸熊勝負をかけるか?しかも板川の手には が浮いている。
しかしその現実を知っているのは私とギャラリーだけ。さぁ瀬戸熊の判断は?
当然のダマ。ここは瀬戸熊の一貫性の問題。役有りテンパイへの移行が4種類もある中、アガリは1種類。
まだここは勝負をかけるタイミングでもない。
瀬戸熊の手変わりが先か、板川の手変わりが先か?
板川、次巡ツモ 、打 で瞬間の放銃回避。そしてツモ 。ここでリーチと勝負に出る。
これで辛いのは瀬戸熊。このままの牌姿で勝負は出来ぬ。この後のアクションに注目しようと目を凝らすと、なんと瀬戸熊の手には が。
            ツモ
こういったことは、麻雀を打っていれば多々あること。
しかし、一番大事な瞬間にこの結果を齎すことができるのも、やはり本人の力なのであろう。
この結果を踏まえて、次局の板川のスタンスに注目すると面白い。
東4局、2巡目に板川早々のポン。
         ポン  ドラ
ドラの重なりとホンイツを見据えた仕掛け。これも板川らしい仕掛けである。
ここに追いつくのは沢崎。7巡目カン のテンパイもここはダマ。
           
ここに13巡目ツモ 。自身の捨て牌には があるフリテンも、ここはリーチを敢行。
            リーチ
同巡、板川もテンパイ。
         ポン 
しかし次巡、ここにツモ 。これが切れない。板川が戦うべき相手は瀬戸熊、そして前原。
大きくポイントが離れた沢崎がリーチを宣言する理由を考えても、勝負すべきタイミングでも相手でもない。と考えるのが普通であろう。
しかも前局、勝負手を瀬戸熊に阻止された直後であることも要因かもしれない。
とにかく、板川はこの手を諦め、 を抜いたのだ。
前述したように、沢崎のリーチはフリテンリーチ。まさか板川もフリテンであるとは思うまい。
そして沢崎から 、 とツモ切られ、そしてラス牌の を沢崎が引きアガるのであった。
            リーチ ツモ
ここまでの一連の板川のアクションを責めるつもりは全くない。
恐らく、自分が板川の立場で座していたら、同じ結果が生まれるのだろうと推測する。
しかし、このような小さなことの積み重ねが板川を苦しめ、瀬戸熊に利が働く要因になっているとしか考えられないのだ。
加点の大チャンスを逃した板川に対し、ここで攻め込みたいのは前原。
しかしそんな思いとは裏腹に、前原を悪夢が襲う。
まずは南2局、瀬戸熊に、
         チー  ロン ドラ
この7,700を献上すると、続く南3局、親・板川に、
            リーチ ロン ドラ
これに一発で飛び込む。
板川が首位を走る今半荘、何とかしたい気持ちが裏目に出たか、結果は最悪で大きくポイントを減らすことに。
これで板川が前原を交わし番手に浮上も、瀬戸熊の安定感は変わらずポイントを積み重ねる。
板川とのポイント差は詰まったものの、まだまだポイント差は95P。
瀬戸熊の独走に待ったをかけるのは、板川か、それとも前原なのか。
13回戦成績
板川+39.4P 瀬戸熊+11.2P 沢崎▲4.5P 前原▲47.1P 供託+1.0P
13回戦終了時
瀬戸熊+132.3P 板川+37.8P 前原+2.3P 沢崎▲173.4P 供託+1.0P
14回戦(起家から、沢崎・前原・板川・瀬戸熊)
【燦然】
ここまで1人大きく離されてしまった沢崎。リーグ戦の安定感を考えると、ここまでの苦戦を想像した者は少なかったはず。
しかし現実的には逆転が不可能なポイント差まで離されてしまった。
それは何故かと私なりに分析してみると、それは沢崎の多様なスタイルが災いしたのではないかと考える。
戦前私に、「初日勝負!」を公言したように、スタートダッシュを目論んでいた沢崎。
大きくリードした立場で多彩な技を繰り出されると、受け手としては対応に苦しまされることになる。
しかし、リードされた形でアクションを起こすことには、周りの対応も少し異なるように感じた。
局面先手を常に繰り出していた前半戦とは異なり、後半戦の沢崎にはある種の安定感を感じるようになっていたのだ。
それがこの局にも表れる。東1局、親番・沢崎。
            リーチ ツモ ドラ
この6,000オールでのスタート。もちろん沢崎のリーチに向かうものはいない。
沢崎の雀風や性格を加味し、沢崎にぶつけることはリスキーだと、3者共に理解しているからだ。
だが、もう少し早くこういったゲーム展開を選択して欲しかったことは否めない。
後半戦の内容の良さを考えると、スタイルチェンジを遅くとも9回戦以前に行なっていれば、結果は大きく異なっていたように感じるからだ。
沢崎がリードすることは、3者にとって悪いことではない。それは、ターゲットがマイナスすることに繋がるからだ。
特に今回のようにツモアガリでのスタートでは、ターゲットにマイナスを押し付けたまま、まず自身が原点復帰を目指せばいいからだ。
ここで目を覚ましたのはここまで絶不調の前原。
東2局、自然な手順でメンホン七対子をテンパイすると、8巡目にリーチを宣言。
絶妙のタイミングでのリーチに、撤退を余儀なくされる板川。
ダマテンを続行していると、板川のツモアガリが濃厚だっただけに大きなリーチ宣言。
そして前原、自身の最終ツモでラス牌の を引き当てる。
            リーチ ツモ ドラ
「さすがにこのアガリはクラっときたよ。」とは瀬戸熊。
このアガリで、瀬戸熊と板川に大きなマイナスを押し付けたまま首位浮上。そしてさらに東3局、
            リーチ ツモ ドラ
この1,300・2,600で突き放しにかかる。
このままの展開では、瀬戸熊も板川も苦しいところ。特に板川は、ここからの大きなマイナスは即失権へと繋がってしまう。
瀬戸熊への挑戦権を懸け、ここで板川が腹を括る。
南1局1本場、好配牌を手にした板川、僅か2巡でテンパイを果たす。
しかし、それはまたしても望むべき牌ではなかった。
            ツモ ドラ
もし仮に、ツモ 、もしくはツモ なら、板川はリーチを宣言していたに違いない。
また、ツモ 、ツモ であるなら、素直にメンツ構成を変えることができる局面。
そんな思いとは裏腹なツモ に、板川は打 を選ぶ。
すると4巡目、ツモ 。今度はドラとのシャンポンテンパイ。
ここはリーチかと思いきや、このテンパイも板川は拒否。
これが板川のスタイルであり一貫性なのだが、5巡目ツモ で今度は思い切りよくリーチを宣言する。
            リーチ
2度のテンパイ取らずも、3度目はリーチ。望む形とは大きく異なるが、これ以上の猶予はない。
そう板川の声が聞こえる様な力強いリーチアクションだった。
板川の覚悟が牌にも通じたか、どの形よりも最速でラス牌のカン を引きアガる板川。
鳳凰位への執念が周りへも伝わったか、ギャラリーにも驚きの表情が浮かぶ。
このアガリで瀬戸熊を置き去りに。
このまま瀬戸熊を沈ませたまま板川が浮きに回り、瀬戸熊の1人沈みの展開を作ると、前原、板川両者共に大逆転へのシナリオが描かれることになるのだ。
1人大きく離されている瀬戸熊。もちろんこのまま終わるつもりはないだろう。そんな瀬戸熊にも実は好材料が1つ。
ここまでの失点は全て相手のツモアガリ。それは相手の力が生み出した得点であり、自身のミスによるものではないということ。
事実、ここまでの瀬戸熊の受けはほぼパーフェクトであり、攻撃するチャンスも皆無だったからだ。
ここまでの我慢がチャンス手を呼んだか、南2局1本場6巡目、瀬戸熊が今半荘初めての攻勢に出る。

            リーチ ドラ
ここで覚悟のリーチ。
もしこのリーチが不発に終わる、または逆襲に遭い放銃するようなことがあると、瀬戸熊にも不安要素が生まれることとなる。
逆に、ここでこのアガリをモノにすると、今後の戦いをさらに優位に進めることができる。そんなリーチなのだ。
このリーチを逆転するチャンスと捉えるのが強者の証。もちろんそれは瀬戸熊も十分承知の上だ。
ここは板川も前原も無筋を切り飛ばして勝負を挑む。そして追いついたのは親・前原。9巡目、
           
ここでの2,600は2,700オール、または瀬戸熊からの5,800は6,100は瀬戸熊追撃の大きな第一歩となるであろう。
この結果が勝負の分かれ目になると言っても過言ではない。
この勝負は…瀬戸熊のツモアガリで決着する。
前原の - が、山3枚に対し、瀬戸熊の - はなんと山6枚。さすがに順当な結果とはいえ、瀬戸熊の勝負強さには脱帽する。
このアガリで板川を交わし3着浮上。ポイントのマイナスも最小限に食い止め、追手の追撃を許さない。
残り半荘4回でその差100P。瀬戸熊が優勝への足掛かりとなる大きな一歩を踏み出したのだった。
14回戦成績
前原+19.1P 沢崎+5.2P 瀬戸熊▲5.9P 板川▲18.4P
14回戦終了時
瀬戸熊+126.4P 前原+21.4P 板川+19.4P 沢崎▲168.2P 供託+1.0P
15回戦(起家から、沢崎・瀬戸熊・板川・前原)
【競闘】
残すはあと半荘4回。瀬戸熊と前原、板川との差は約100P。
現実的に、これ以上離されてしまっては逆転が不可能な数字になってくるだろう。
瀬戸熊を沈ませた上で自身が加点すること。シンプルではあるがこれが最低目標となる。連対を守ることは絶対条件。
ただ、前原も板川も爆発力を持ち合わせているため、焦って前に出ることは避けなければいけないのだが…。
この半荘も沢崎が飛び出す。
親番で細かい連荘を重ね一歩リードするも、前原と板川が大事なのはここから。
東2局、板川にスピードと打点を兼ね備えた手が舞い込む。板川2巡目、
            ドラ
ドラ と のシャンポンテンパイ。ここはダマに構えるも、次巡ツモ 、ここはピンフに受け変えドラ切りリーチ。
この選択が成功。見事にツモ 。自らの加点とともに瀬戸熊に親カブリさせることに成功。ここで一歩抜け出る。
            リーチ ツモ
こうなると、何とかしたいのは前原。
東3局、わずか2巡でテンパイを果たし、即リーチを放つ。しかし、この選択は微妙。
通常時の前原が即リーチを放つのは全く違和感がなく、むしろ前原という打ち手はそう在るべきだと考える。
だが、今は瀬戸熊を追う立場。もう残された時間は少ないのだから、この手は前原のアガリ番だけに大事に打つ姿も見たかった。
事実、次巡ツモ 、5巡目ツモ 。ここまで我慢が効けば、この手は前原の2,000・4,000。
しかし結果は700・1,300。形だけ見れば前原らしい譜であるが、追い上げる1つのきっかけになりそうな手だっただけに残念な結果となった。
板川の親を落とすことももちろん大事だが、私自身も瀬戸熊の足元にまで一気に駆け上がるシーンを見たかったというファン心理が働いてしまったのだ。
            リーチ ツモ ドラ
板川と前原の競り合いはまだ続く。
東4局、今度はリーチ合戦。板川が7巡目先制リーチを打てば、
            リーチ ドラ
親・前原は9巡目、七対子をドラタンキでリーチ。
            リーチ
この勝負は板川のツモアガリで決着。さらに板川は南1局、
            リーチ ツモ ドラ
これを一発ツモで首位浮上。そして南3局3本場2巡目、親番の板川はこの難しい牌姿から、
            ツモ ドラ
打 を選択。すると、ツモ 打 、ツモ 打 、ツモ 打 でリーチ。これに捕まったのは前原。
完全な手詰まりからの放銃。点数以上に大きなダメージを受ける。
この結果で、前原の逆転優勝へのプランに大きな乱れが起こってしまう。
前原自身が大きく加点をし、板川を抑え込み、そして瀬戸熊を追い上げる目算は大きく崩れ去ってしまった。
それどころか、2位・板川とのポイント差は約50Pまで広がってしまう。
鳳凰位奪還まで残された道は奇跡の3連勝条件。しかも瀬戸熊を大きく沈ませることが絶対条件となってしまった。
対する板川は、瀬戸熊との差を30P強詰めて、瀬戸熊との差は約75P。こちらは逆転までの布石は整った。
瀬戸熊をマイナスに抑え込む条件はつくものの、予定通りの後半勝負に持ち込めそうだ。
とはいえ、瀬戸熊の安定感は抜群だ。今半荘もうまく立ち回り失点を最小限に抑えることに成功。
そしてここまで、最終日は1度の放銃もしていない。
そんな瀬戸熊にマイナスを押し付けるのは至難の業であるが…2人には何か秘策を持ち合わせているのだろうか。
15回戦成績
板川+27.8P 沢崎+6.0P 瀬戸熊▲5.4P 前原▲28.4P
15回戦終了時
瀬戸熊+121.0P 板川+47.2P 前原▲7.0P 沢崎▲162.2P 供託+1.0P
16回戦(起家から、前原・瀬戸熊・沢崎・板川)
【深淵】
タイトル戦の決勝戦での戦い方が問われることの多い昨今、こと鳳凰位決定戦に関してはやはり優勝以外には意味がないのだと改めて感じる。
それは、この舞台に立って戦ってみないことには実感することはできないのだろうが、決定戦進出者にはその想いが痛いほどよくわかるのだろうと思う。
プロ連盟に所属するものにとって、どんなタイトル戦よりも重みがあるのが、この鳳凰位決定戦。
泣いても笑っても、残りあと3半荘で勝者が決まる。最後の瞬間、頂点に立つために各人が覚悟を決め戦いに臨む。
そして、ここから腹を括った乱打戦がスタートする。
この半荘から、明らかに板川の踏み込みが深くなる。思えば緒戦から、念には念を入れての受け手順のオンパレード。
昔から板川を知る私にとっては、攻撃的な板川に何度も痛い目に遭っているだけに意外な立ち上がりに感じたのだが、やはり時折見せる爆発力は健在。
そして我慢に我慢を重ね、自身のゲームプランを忠実に守りながら、ようやく瀬戸熊を追いつめる位置まで詰め寄ってきた。
そして、その縛りを解き放つ瞬間がやってくる。
それは、鳳凰位を獲る為に考えに考え抜いて練った策。板川の強烈な末脚が届くのか。
東1局、板川2巡目、 ポン。
         ポン  ドラ
初日の板川なら間違いなくスルーの局面。それだけ熱が入っている証拠だ。
そして、その仕掛けに触発されたか瀬戸熊、らしくないチー。
         チー 
ここに、親・前原も参戦する。4巡目 ポン。
         ポン  
最初にテンパイは板川。思い通りの形とはいかなかったが、9巡目に以下の形。
      ポン  ポン  
しかし、この勝負は前原に軍配。仕掛けた後ツモも効き、理想通りのホンイツ移行へ。そして価値ある4,000オール。
         ポン  ツモ
続く東1局1本場、更なる加点を目指す前原が積極策に出る。3巡目、 ポン。
         ポン  ドラ
それに呼応するのはなんとドラが槓子の瀬戸熊。合わせるように4巡目 チー。
         チー 
さらにここに板川が被せる。こちらは門前で6巡目リーチ。
            リーチ
板川のリーチ宣言牌 を前原はチー。そしてホンイツへ移行。
      チー  ポン  
瀬戸熊も負けてはいない。前原のターツ外しの をこちらもチー。
      チー  チー 
ここで痛恨のミスが発生は前原。板川の切った をポン。
   ポン  チー  ポン  
シャンテン数が変わらない仕掛け。この仕掛けで瀬戸熊に が流れ、まずはテンパイ。
そして、瀬戸熊に流れるはずだった板川の当たり牌 は沢崎が吸収。さらに、瀬戸熊の当たり牌 を前原が掴んで決着。
      チー  チー  ロン
攻めた結果の放銃は責められない。が、放銃した相手が拙かった。
板川に放銃する分には対処できるが、瀬戸熊への放銃は鳳凰位の道が遠のくことを意味する。
逆に、瀬戸熊にとっては大きなアガリ。多少の失点はOK。この後、子方の時には局回しに徹することができるからだ。
とはいえ、前原も攻め手を緩めるわけにはいかない。
東4局、沢崎の先制リーチを受けながらも、追いつきそして、
            リーチ ツモ ドラ
この1,300・2,600で再度瀬戸熊を逆転。すると対する瀬戸熊は、南1局、
            リーチ ロン ドラ
踏み込みが深くなった板川から2,600を召し取る。
板川だって負けてはいない。南2局1本場、
            リーチ ツモ ドラ
これをアガり、オーラスでの連荘に懸ける。
迎えたオーラス、得点状況は、前原36,900、瀬戸熊33,900、沢崎25,400、板川22,800。
流局により、供託が1,000点と、積棒が1本場。
状況を整理すると、まず親の板川はとにかく連荘。瀬戸熊を原点割れに持ち込むことが最優先事項だ。
前原はトップ死守が絶対条件。その上で3,900以上を瀬戸熊から直撃するか、大きく加点して瀬戸熊とのトータルポイントを詰めること。
そして瀬戸熊は…絶対有利な立場である。2人が上記の条件を満たすことが出来たとしても、まだポイントには十分な差がついている。
このオーラスは2人の一縷の望みを懸けての戦いということになる。
何とか連荘したい板川は、5巡目 ポン、6巡目 チーで、
      チー  ポン  ドラ
この1シャンテンに。しかし、この仕掛けで前原に希望が広がる。
7巡目、絶好のドラ を引き入れ今日一番の気合のリーチ。
            リーチ
状況をおさらいしておくと、一番良い結果は、瀬戸熊からの での出アガリ。
しかし、現実的には瀬戸熊の立場からしたらありえないだろう。
そうなると ツモの3,000・6,000が優勝への微かな望み。
をツモると、順位点込みで板川に並び、さらに瀬戸熊とは100P差まで迫る。それでも状況的に崖っぷちなのは違いない。
しかし、ここまで来ると1つ1つの条件をクリアしていくことが必須条件になるのだから仕方がない。
前原の望む牌は僅か1枚。しかし、それをクリアしないことには瀬戸熊の背中は見えてこないのだ。
息を呑むギャラリー。瀬戸熊は撤退を始め、板川にはオリる気配すらない。
そんな中、力を込めて握り潰した牌と共に、前原の手牌が静かに開かれる。
            リーチ ツモ

トップは死守した。しかし、見えたのは板川の背中だけ。板川の背中にもまだ届かない。
前原が奇跡を起こすには、さらに条件が厳しくなってしまった。
とは言え、前原には一瞬の切れ味と爆発力があることを対戦者もギャラリーも知っている。
そんな期待に前原は応えることが出来るのであろうか。
板川は勝負に出た。しかし結果はついてこなかった。それでも、半荘2回を残して瀬戸熊に一番近い男は板川なのだ。
大物手を入れる力は今決定戦でも証明済み。大一番での大逆転を狙うために、もう1度板川は勝負を懸ける。
そして瀬戸熊。平静を保っていたように見えていたものの、徐々に息遣いも荒くなってきた。
体全体で戦う瀬戸熊の背中からは、鳳凰位を死守する覚悟が伝わってくる。
クレバーで且つ大胆な打ち筋と、冷静な心を持ち合わせた瀬戸熊に死角は見当たらない。
残りあと2回、その瞬間はすぐそこまで来ている。
16回戦成績
前原+21.4P 瀬戸熊+6.5P 沢崎▲10.5P 板川▲17.9P
16回戦終了時
瀬戸熊+127.5P 板川+29.3P 前原+14.4P 沢崎▲172.2P 供託+1.0P
17回戦(起家から、板川・前原・瀬戸熊・沢崎)
【昇華】
僅かながらに優勝の可能性の残る板川と前原。しかし条件はかなり厳しいものになっている。
連勝条件の上、しかも連勝の内容は大トップという縛りつき。その上で瀬戸熊には2回ラスを押し付けなければならない。
この細い蜘蛛の糸を手繰り寄せる様な作業を成就させるために必要不可欠になってくるのは、各自の親番での爆発。
沢崎と瀬戸熊の親番では局回しに徹する可能性があるため、後4回しか回ってこない親番での加点が必須条件となる。
逆に言えば、板川と前原は互いの親番をどのように抑えるかが大きなカギとなってくるのだ。
瀬戸熊は至ってシンプルに。無駄な放銃をせず、焦ることなく、1局ずつ大事に戦っていくこと。
加点のチャンスがあるようなら、その瞬間にアクセルを踏むこと。
ここまでの瀬戸熊の戦い方を見る限り、全く危なげないようにも思えるのだが、瀬戸熊の心中は如何に。
東1局、開局から大きな動きが起こる。

まずは3者の配牌を。首位を走る瀬戸熊の配牌。なんと驚愕のドラ 暗刻。
            ドラ
続く前原の手もまとまっているが、不安はドラの を抱えていることだろう。
           
そして板川もそこまで悪くはないのだが、瀬戸熊と比べると幾分見劣りするか。
ここで簡単に板川の親が落ちることになると、それは板川の失権を意味する。
瀬戸熊と前原の手が順調に進む中、 を重ねた板川、6巡目にその をポン。
         ポン  
この仕掛けで、前原に好牌が流れる。 、 と流れ、7巡目に高め三色のリーチ。
            リーチ
板川の長所は、手牌の可能性を極限まで高められること。そして、今決定戦においては、過剰とも思えるほどの徹底的な受け。
その2つのバランスで、ここまでの好勝負を演出してきた。
そんな板川だからこそ、4巡目は打 とし、チャンタの可能性をギリギリまで残してあるのだ。
もし仮に、連荘やテンパイを目指しての打ち筋ならば、4巡目には打 となっていたはず。
板川が、板川らしく最後まで戦った結果がこの 残しであり、「後半勝負!」と言い放った言葉の裏返しが、打 なのだ。
            リーチ ロン
今年度の板川は、プロ生活において一番充実した時間だったに違いない。
最強位獲得や太閤位連覇、そしてその集大成としての戦いが、この鳳凰位決定戦だったのだ。
板川の鳳凰位への想い、また「魅せる麻雀」の徹底、どちらもギャラリーの心深くに刻み込まれたことだろう。
このアガリで、瀬戸熊への挑戦権は板川から前原へ託された。その想いに応えるかのように、前原が東2局、連荘を続ける。
1人テンパイ、1,500は1,800と刻んだ後、東2局2本場、5巡目 ポン、6巡目 ポン。
      ポン  ポン  ドラ
この仕掛けを受けた瀬戸熊、前原よりも早くテンパイを果たす。
            ツモ
ここはドラを場に放たず。一滴の水も漏らさぬような徹底的な瀬戸熊の意思。
そして前原11巡目、ツモ でテンパイを果たすと、
      ポン  ポン  ツモ
すると瀬戸熊、ツモ でピンフへの手変わり。一貫性を持ってドラを打たずとすると打 。
待ちと役への兼ね合いを重視すると打ドラ なのだが…
            ツモ
前原の手出し を確認すると、計ったように打 と牌を抜く。
瀬戸熊にしてみれば至って当然の一打。ここは手牌を重視する局面ではないのだ。
瀬戸熊が受けるのならば、前原はこの手をツモる。前原なりのエールの交換を瀬戸熊と交わす。
まだ、最後までは諦めないぞ。と。
瀬戸熊と前原の戦いに幕を下ろすのは、やはり瀬戸熊自身でなくてはならないはず。
続く東2局3本場、前原が必死の連荘を試みる。前原9巡目、 のポンテンをかけると、
         ポン  ドラ
この仕掛けで瀬戸熊にテンパイが。
           
「もし、今回獲れないとしたら、リーグ戦の8節、9節に麻雀に対して誠実ではなかったのだろう。」
それは、戦前、前原が語った言葉である。そして、
「決勝に残るコツは知っているが、鳳凰位を2回しか獲っていないことが現実なんだ。それが鳳凰位決定戦のステージの高さなのかもしれない。」
(※編集部注:前原雄大プロは過去、鳳凰位決定戦に11回進出し優勝2回)
前原が後輩たちに伝えたいこと。そこにはそれぞれいろいろな想いがあるのだろうが、瀬戸熊は前原に真正面からぶつかり、そしてその多くを学んできた。
前原もまた、そんな瀬戸熊に対し、一片の曇りもなく素直な想いを伝えてきたに違いない。
前原への感謝の想いは、麻雀で返すのだ。と言わんばかりの瀬戸熊の返答は、ここから始まった。
            ツモ ドラ
このアガリで前原の親を落とすと、瀬戸熊自身が、「これで優勝を確信した。」
という東3局の3,900オール。

            リーチ ツモ ドラ
ここから、鳳凰位への瀬戸熊の想いが昇華する。
東3局1本場、
            ツモ ドラ
東3局2本場、
            リーチ ツモ ドラ
東3局3本場、
            ロン ドラ
ここまで安定した戦いを続けてきた瀬戸熊だが、私の見解では初日70%、2日目80%の出来と見ていた。
そして、この一番大事な最終日17回戦に、100%の瀬戸熊を多くのギャラリーと共に見届けることができたのだ。
「絶対王者」
これだけの好勝負を圧倒的な力でねじ伏せた瀬戸熊を評するには、この言葉が一番相応しい。
これからのプロ連盟を牽引する旗頭は、やはり瀬戸熊直樹なのだ。
17回戦成績
瀬戸熊+58.7P 前原+18.7P 沢崎▲23.5P 板川▲53.9P
17回戦終了時
瀬戸熊+186.6P 前原+33.1P 板川▲24.6P 沢崎▲195.7P 供託+1.0P
18回戦(起家から、前原・沢崎・板川・瀬戸熊)
【歓喜】
先程までの張りつめた空気とは一変、会場内は温かく和やかな雰囲気に変わりつつある。
それは、ギャラリーたちが瀬戸熊連覇の瞬間を今か今かと待ちわびているような、そんな空気に変わったのだ。
それこそが、瀬戸熊直樹の持つ麻雀力と人間性なのだろう。
最終戦独特の儀式を終え、そして時が来た。
最終18回戦成績
瀬戸熊+19.5P 沢崎▲1.5P 前原▲5.1P 板川▲12.9P
最終成績
瀬戸熊+205.7P 前原+28.0P 板川▲37.5P 沢崎▲197.2P 供託+1.0P

―エピローグ―
私が瀬戸熊と初めて出会ったのは、プロ連盟に入会した年に行なわれたプロ麻雀主催の新人王戦だった。
私の下家に座した瀬戸熊はその端正なマスクとしなやかな摸打から、鮮やかなアガリを繰り返していたのだ。
私とは、技術も内容も雲泥の差。あまりの美しさに、私の心はすぐに瀬戸熊に奪われた。
それからというもの、瀬戸熊の背中を追いかける私のプロ生活が始まった。
タイトル戦などで何度対戦しても、瀬戸熊を着順で上回ることが出来なかった。
10数回目の対戦で初めて着が上回ったとき、本当に心の底から喜んだことを昨日のように覚えている。
それほど瀬戸熊の存在は強烈なものであったのだ。
静岡支部を立ち上げてリーグ戦を運営した時、初めてのゲストに招いたのも瀬戸熊だった。
それは、心の底から瀬戸熊の存在に心酔していたからなのだろうと、今になって思う。
瀬戸熊の麻雀を、静岡の仲間たちにも伝えたい。そう考えたからに他ならない。
瀬戸熊から、嬉しい知らせをもらったことも忘れられない。
プロテストでの講師として、瀬戸熊のアシスタントに指名されたのだ。
もちろん一番大切なことは受験生への指導であるのだが、私は瀬戸熊の一言一句に耳を傾け、1つでも多くの知識や経験を聞き出そうと実は必死になっていた。
そんな憧れの存在だった瀬戸熊と、今こうやってプロ連盟の為に力を合わせて進んでいくことが出来ること。
それは私にとってかけがえのない喜びなのだ。
瀬戸熊が伝えたいこと。
それは、麻雀に生きる私たちの熱意や情熱を、少しでも多くの人々に伝えることによって、
麻雀界を、プロ連盟を、より良い世界にしていくためにみんなで力を合わせていかなければならないこと。
麻雀を通じて、自分の想いや心情を伝えることが出来るということ。
そして麻雀の対局で、人々に熱い感動を届けることが出来るんだということ。
戦いを終え、瀬戸熊は語る。
「やっぱりホッとしたのが一番かな。連覇出来て良かったなって。」
冒頭に記したトレーニングの話を聞いてみると、
「体力勝負だと思っていたから。モチベーションの高さと体力だけは誰にも負けないって。それだけは信じて戦っていましたよ。」
「あの場所に行くと自然とそうなってしまうよね。やはり他のタイトル戦とは比べることができないから。」
瀬戸熊の話を聞いていると、早くあの舞台に戻りたくなる。
観戦記を書かせて頂くと、今度は筆ではなく自分の麻雀でメッセージを伝えたくなる。
そう思わせるのも、全ては鳳凰位・瀬戸熊直樹の存在が大きいからなのだろう。
またいつかあの舞台で、「絶対王者」を相手に自分の想いをぶつけてみたい。
鳳凰位を夢見る全ての人達に伝えたい。
「夢は願うものではなく、叶えるものなのだと。」
この観戦記を通じてそんな瀬戸熊の想いが、少しでも多くの麻雀を愛する方に伝えることが出来たのなら幸いである。

(執筆:望月 雅継 文中敬称略)
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