鳳凰の部屋

鳳凰の部屋/「そびえ立つものに向かって」 前原 雄大

強い打ち手と戦いたい__。
これは麻雀プロの性であると思う。もしくは若い頃よりの私の気質なのかも知れない。
遠い昔、連盟がまだ出来る前の頃、名古屋には強い打ち手が多い。そんな噂を聞き翌日名古屋へ旅立った。
そこで巡り合ったのが古川孝次さんである。
仕掛けは決して多くはなく、メンゼンを中心に麻雀を組み立てていた。当時の専門誌でも古川孝次さんの四暗刻を取り扱っており、今でも鮮明に覚えている。
何故、今の古川さんの麻雀スタイルに変貌したか。察するに古川さんは更なる麻雀の高みを目指したのではないだろうか。
いずれにしても、40年の膨大な時間はそのひとの麻雀を変える。
時間がそのひとの麻雀を変えるのか、その人の意志なり、麻雀に対する思いが麻雀を変えて行くのかは判然としない処だが、自分の麻雀が正しいと思った瞬間、その人の麻雀の成長は止まる。
私はそう考えている。
最終日を迎え、東1局
一筒一筒二筒四筒七筒七筒八筒八筒九筒九筒  ポン発発発
この手牌が勝又健志さんよりリーチを受けてすぐ三筒を引きアガった。今日は悪くは無い日だな__。
この三筒の指に残った感触は今でも覚えている。
15回戦開始時点の得点である。
 
100
 
近藤久春さんとは64P差
勝又健志さんとは79.6P差
古川孝次さんとは、129.0Pポイント差で迎えている。
ここまでに至る過程は攻めにかなりの比重を置いたことは勿論であるが、展開に救われたことも少なからずあったことは間違いない。
 
 
~風の変わり目~
 
100
 
私のこのテンパイにすぐ勝又健志さんもリーチが入る。
 
100
 
結果は勝又健志さんのツモアガリで収束をみた。
風の変わり目である。
これからが堪え時であり、本当の闘いが始まることを予感させた。
私の麻雀観では、点棒を幾ら持って行かれても構わないが、勢いだけは持って行かれたくない。どれだけアドバンテージがあろうとも、勢いを持って行かれたら瞬間に追い抜かれてしまう。追い抜かれてしまってからではどう抗うことも叶わないことは経験で身体にしみこんでいる。
初日が始まる前にある後輩に尋ねた。
「今回は誰が勝つと思いますか?」
「わかりません、、、ただ、前原さんには勝って欲しいとは思っています。」
嘘のない男の言葉に私は頷いた。
稽古はかなりやり込んだ。負けても自分自身に納得できないような準備だけはしたつもりである。
この半荘は素点を出来るだけ抑えて、ラスは引き受けるつもりだった。
ところがオーラスに来て我儘が出てしまった。
言葉を変えるならばツマラナイ損得からリーチを打ってしまった。
 
100
 
このリーチは全く意味のないもので、仮にツモアガったとしても、勝又健志さんの1人浮きで終わる。
本手で打つならばヤミテンである。
ヤミテンを続けながら危なげな牌を持ってきたならば素直にオリを選択すべき局面なのである。
 
100
 
結果は正直に出た。私から勝又さんへの満貫放銃である。
麻雀は本当に正直なゲームだナ___。
そんな事を考えながら、休憩中に水道から流れ落ちる水の中に頭ごと突っ込みしばらくの間そうしていた。
 
 
~勝負処とは~
 
最終戦も様々なミスを私は犯している。
1日4戦の闘いであれば、およそ200ほどのミスを帰宅してから見つける。
殊に序盤、3巡目辺りまでのミスは基本的な事だけに自分自身を許せない気持ちにもなる。
ペンチャンターツを払う時、8、9の順で払うべき時を9、8の順で払ったり、細かい事かも知れないが、大切な部分を疎かにしている。
これだけ稽古を積んでいるのにこの程度しか麻雀が打てないのか!!そう考えることも少なからずある。
 
100
 
いよいよ大詰めの段階で、親番である近藤久春さんからリーチが入った。
その時の私の手牌が以下である。
 
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まるで戦える手牌にはなっていない。
ただ、それほど好調ではなかった近藤久春さんのリーチであるから、受けゴマは増えて行くように予感していた。
それでも手が詰まった。
 
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1シャンテンになったもののここは現物の打七万と構える。
 
100
 
そして、結果として近藤さんのロン牌である、二万を重ね打五万のリーチに踏み切った。
少し間を獲ったのは、この五万が放銃になった時、最後の私の親番で手が入るのか、手を入れられるのかを考えた間である。
私はアガリ牌である九筒を手繰り寄せた。
結果としてこのアガリが私を鳳凰位として導いてくれた。
打ち上げもそこそこに帰宅して、寝酒を呑みながら二度ほど昼過ぎまで最終日を観戦していたらしい。
らしい、と言うのは佐々木寿人さんに寝ている最中だったか、電話が入り、そう言ったらしい。
20時間ほど寝て起きてから、14回戦までは観るのだがその先に進まない。
それでも繰り返し、繰り返し観戦を続けダメな所はノートに書き写した。
これだけイケナイ所があるということは、まだまだ進歩できるのだろうと前向きに捉えた。
そのおかげと言うわけではないが、天鳳位VS連盟プロとの2ndシーズン、3rdシーズンと1等賞を獲得できたように思う。
打ち手として私に残された時間はあまりにも少ない様に感じる。
ただ、そんな中で麻雀という大樹にも似たそびえ立つものに臆することなく、少しでも高みを目指して行くつもりではある。