第22期中部プロリーグ 決勝レポート
2014年02月24日
1/19(日)第22期中部プロリーグの決勝戦が行われた。
・決勝戦進出者の紹介
1位通過 森下剛任 (22期生/三段)
決勝進出:初
みなさんの記憶にも新しい第39期 王位
私のイメージでは、ギリギリまでアガリ手順を求めて小さな小さな穴をこじ開け突進してくるようなタイプ。
その糸口を見つけられたら手がつけられなくなる。
2位通過 伊藤鉄也 (22期生/三段)
決勝進出:3回目 最高順位:3位
局面を支配することに重点を置いている伊藤。
自分の有利な状況に持ち込められれば勝機あり。
3位通過 三戸亮祐 (11期生/五段)
決勝進出:13回目 最高順位:優勝(4回)
ここ最近、落ちていた調子も上向きになってきている最中。
今回のメンバーで唯一の優勝経験者なので、ここは負けられないだろう。
4位通過 山田優駿 (24期生/三段)
決勝進出:2回目 最高順位:4位
前回の決勝に続いて2期連続の決勝進出。
前期の葛山の観戦記にもあった通り山田は前回の(優勝という)忘れ物を取りに帰ってきた。
私の山田に対する印象は、相手の間合いに溶け込むのではなく、相手の押し引きバランスを少しずつ揺さぶりながら自分の得意とする土俵に誘い込むタイプ。
1回戦(起家から、森下・山田・三戸・伊藤)
東1局 、開局そうそうに山田、三戸、伊藤の3名の手がぶつかる。
山田が5巡目に、以下の形でテンパイを取る。












ツモ
ドラ
ここで打ち手の好みがでそうな形になる。
私であれば、テンパイ取らずの打
として、一度、1シャンテンに戻し、ピンズの



のツモを期待し一通やドラの雀頭、リャンメン変化をさせてから勝負に出ようと考える。
さらには、まだ開局したばかりなので、ホンイツに行く打ち手もいることだろう。
しかし山田は、打
として表示牌の
待ちのヤミテンに構え、9巡目に
をツモり
を切りリーチと出た。












リーチ
このリーチに三戸、伊藤が1歩も引く気配がない。
というより今回の対局者4名は簡単には誰も引かない。
三戸






ポン

ポン


伊藤













森下













結果、伊藤が
を掴んでしまい5,200点の放銃。
東3局1本場、 親番の三戸の配牌が良く4・5巡目に
のトイツ落とし、牌姿が好形の十分形だと予測される。親番だけに対局者に与えるプレッシャーは抜群。
三戸












ドラ
しかし12巡目に伊藤がリーチ。
伊藤












リーチ
一発で
をツモ 1,300・2,600は1,400・2,700。
南1局1本場、3者がリーチでぶつかる。
伊藤9巡目、












ドラ
山田12巡目、













森下15巡目、













東場では攻め所を探していたが、思うように手が進まず苦しんでいた森下がアガリをこじ開ける。
南3局、ここで伊藤の基本に忠実な素晴らしい手順に注目してもらいたい。
配牌は以下の通り。












ドラ
ここからよくホンイツ一直線に向う為に、マンズやソーズから払ってしまい字牌を残しがちになる打ち手が多く見受けられるが、伊藤は前半ではなく終盤の事を考えて手を進めて行く。
狙う手役は純全帯or三色orチンイツの選択。
6巡目までの捨て牌の河は、



















牌姿はこうなっている。
7巡目に、手牌構成とオーラスの親を迎えるにあたっての、自身の点棒状況をどうするかの分岐点となる。
伊藤は現在、持ち点23,200点。
上記の牌姿に
をツモ。ここで8,000点をアガれたとしても、次の局で仮に2人テンパイ以上や満貫をツモられてしまうと原点を下回ってしまうので、アガるのであれば12,000点で、次局を良い形で迎えたいという意識があったのであろう。
選択したのは、ドラ引きに対応できる打
、(
は2枚切られていますので九連宝燈はできない。)
すると12巡目にこの形から、












ツモ
迷いが全くなく打
。何と次巡ツモ
で12,000点のテンパイ。













残念ながら
は全て他家に使われており、アガりまでとはいかなかったが、次局に繋がる素晴らしい手順だった。この局は16巡目に森下が、













この片アガリテンパイ。
山田も以下の形でテンパイをしており、






チー

チー


ここにツモ
となり、流局間際なのでハイテイ
でもアガりができるように、打
とするかと思われたが、選択したのは打
で8,000点の放銃となった。
1回戦成績
森下+11.5P 山田▲19.9P 三戸+19.2P 伊藤▲10.8P
2回戦(起家から森下・山田・伊藤・三戸)
東1局、森下が爆発を予感させる幸先良いスタートを切った。









ポン

ドラ
これを三戸からアガリ12,000点。
東1局2本場、場を自分のものにしたいと思っていたとはおもうが、珍しく森下がオタ風の
から仕掛けマンズに染めて行く。2回戦の自身に対するテーマが決まっていた伊藤から12巡目にリーチ。












リーチ ドラ
すると三戸も、13巡目に今日1番の気合の入ったリーチが入るが流局。












リーチ
ここは伊藤・三戸の2人テンパイ。
局は進んで行き、南3局から伊藤のビックゲームの時間になる。
南3局、持ち点28,1007巡目リーチ。












リーチ ドラ
一発で
をツモり2,000オール。
南3局1本場14巡目リーチ。












リーチ ドラ
ここは1人テンパイ。
南3局2本場、12巡目に伊藤が
をポンしテンパイ。









ポン

ドラ
三戸は、前局の伊藤のリーチを見せられていたのと、普段の麻雀をよく知っている事が布石となり、伊藤は後付けをしないと思っていたのか、三戸が
で5,800は6,400の放銃。
南3局3本場。
7巡目に森下からリーチが入るが、伊藤は丁寧に打ち回しテンパイを入れ2人テンパイ。
南3局4本場、ここは三戸、森下が伊藤の親番を落とそうと役牌を仕掛ける。
伊藤6巡目、












ドラ
しかし伊藤もテンパイを入れており、三戸から
が切られ3,900は5,100。
南3局5本場、5巡目に三戸がダブ
をポンし伊藤の親落としにかかるが、14巡目に伊藤からリーチ。
伊藤












リーチ ドラ
三戸






ポン

ポン


森下








チー


結果は、伊藤が
をツモ。2,600オールは3,100オール。
南3局6本場、またしても伊藤の手が早い。3巡目で以下の形の1シャンテン。












ドラ
ここに
を引き入れ、打
でリーチかと思われたが、冷静に打
のヤミテンとした。
すると、手が進んだ森下から
が切られ、2,000は3,800。
南3局7本場、この局は山田が伊藤の親番を落とそうと積極的に役牌の
をポン。









ポン

ドラ
まもなくして三戸のリーチが入る。












リーチ
このフリテンで山に6枚残り。
すると、山田からテンパイチャンスが広がるとはいえ、少々強引とも思える
をポンの声。
この仕掛けで、伊藤にもテンパイを入れさせてしまい伊藤もリーチ。












リーチ
伊藤のアガリは山に2枚。さすがにここはフリテンとはいえ、三戸に分があるだろうと思っていたが、伊藤が
をツモリ、2,000オールは2,700オール。
親落ちしそうでしない伊藤の粘り。この親番はいつまで続くのだろうか?
南3局8本場、5巡目に三戸がダブNをポンでテンパイ。









ポン

ドラ
9巡目に山田からもリーチ。












リーチ
決着は16巡目に三戸が
をツモの1,000・2,000は1,800・2,800。
伊藤の長い親がようやく終わった。
南4局、本日何度目だろうか、6巡目にドラの
を引き三戸の先制リーチ。












リーチ ドラ
10巡目、森下にようやく勝負の七対子ドラドラのテンパイが入る。












ツモ
伊藤が、前巡の牌が手出し
だったことから、トイツ落としだと読み
を勝負。
しかし読みがハズレ、トイツ落としではなかった。しかも、森下の次巡のツモが
ときた。これは悔しい。
ソーズ、ピンズ、字牌で変化が見込められるだけに普段は打
としていたはずだ。
こういったミスがあれば誰かに風は吹く。その恩恵を受けたのが三戸。
14巡目に
をツモ3,900オールで挽回してきた。
2回戦成績
伊藤+54.8P 森下▲15.8P 三戸▲25.9P 山田▲13.1P
2回戦終了時
伊藤+44.0P 森下▲4.3P 三戸▲6.7P 山田▲33.0P
3回戦目(起家から、山田、伊藤、森下、三戸)
この3回戦目は、少しでも伊藤の点数を原点より下回った状態で終わらせることができるのかが、各人のテーマになってくる。
東2局、三戸がメンホン七対子テンパイ。












ドラ
三戸が伊藤から値千金の8,000点。このまま思い通りの展開に持ち込めるのか?
東3局、すると伊藤がお返しとばかりに七対子ドラドラをテンパイ。












ドラ
数巡後、伊藤が
をツモ2,000・4,000。
放銃をしてもすぐに取り返すことのできる伊藤の好調さを見ると、今日の伊藤を崩すことは容易ではない。
3回戦目は、何とか伊藤をマイナスにしたまま終える事がベストだったが、それができず森下、山田にとっては厳しい状況に。4回戦目は、森下、山田が前に出てくる事が予想されるので、三戸はそこを捕え5回戦に繋げたい所。
3回戦成績
三戸+17.4P 伊藤+9.3P 森下▲16.5P 山田▲10.2P
3回戦終了時
三戸+10.7P 伊藤+53.3P 森下▲20.8P 山田▲43.2P
4回戦目(起家から、三戸、山田、伊藤、森下)
東1局、親番の三戸が5巡目に強烈なリーチ。これをツモることができれば、トータルポイントを伊藤と約10P差まで縮めることができる。何としてもアガリたいリーチ。












リーチ ドラ
結果1人テンパイ。
東1局1本場、そろそろエンジンがかからないといけない森下が、ドラを重ねてのツモり三暗刻の形でリーチ。









暗カン


リーチ ドラ
山田が、森下に
で8,000は8,300の放銃。
東2局、森下が調子を上げてくる。









ポン

ツモ
ドラ
これで2,000・4,000。
南4局、森下が以下のテンパイ。






チー

ポン

ドラ
続くように三戸もテンパイ。













三戸がリーチをしなかったのは、森下にドラ雀頭、2枚以上あると思った事と、リーチ棒を出してしまうと、伊藤の原点復帰の条件が3,900から2,600に変わり簡単になってしまうからだ。
結果は、森下が三戸に
で2,000の放銃となった。
4回戦成績
三戸+25.2P 森下+8.7P 伊藤▲7.4P 山田▲26.5P
4回戦終了時
三戸+35.9P 森下▲12.1P 伊藤+45.9P 山田▲69.7P
4回戦が終了し、伊藤と三戸が接戦、森下は持ち前の破壊力が発揮できるタイミングさえこれば、まだまだ勝機はある。
5回戦目(起家から山田、森下、三戸、伊藤)
最終戦を迎え、伊藤と三戸が10P差 伊藤と森下が58P差となっている。
東1局1本場、森下から三戸3,900は4,200。
東2局、森下9巡目リーチ。












リーチ ドラ
残り山2枚を引き当て4,000オールで一気捲りが見えてきた。
東3局、伊藤の7巡目。












ドラ
ツモ
で役なしドラ3のテンパイ。
もしアガることができれば優勝が目前となるだけに、リーチとする人も多いだろうが、伊藤はグッと我慢し出アガリができないヤミテンに構える。伊藤は楽をする事をやめたのだ。すると次巡、
を引き役ありに変化。
だが、森下が役牌を仕掛け、三戸から2,000点。
東4局、森下が15巡目に以下の形でリーチ。












リーチ ドラ
このフリテンリーチ。
山田が17巡目にツモり四暗刻をテンパイ













だが、無情にも最後のツモ牌は
で、残念ながら役満ならず。
南1局、今回の決勝戦では、愚形の先制リーチを打ってこなかった伊藤が、8巡目にリーチと出た。
ここを勝負所と踏んだのだ。「ここで決めてやる。」が伝わってくるリーチだった。












リーチ ドラ
すると本日の集大成なのか、残り山1枚の
が伊藤の手元に。2,000・3,900。
南4局、ここで点棒状況のチェック。
伊藤32,800 山田31,800 森下28,700 三戸26,700
三戸の条件は、伊藤からの5,200点直撃か、1,600・3,200以上のツモアガリ。
森下は、三倍満か役満のどちらかのツモ条件。
親番の伊藤も、三戸との条件が近い為、最後まで気を抜かずテンパイを果たす。
三戸も条件をクリアしている1シャンテンではあるが、そこからのテンパイまでが遠く終局してしまった。
5回戦成績
山田+12.9P 森下▲5.6P 三戸▲13.6P 伊藤+6.3P
5回戦終了時
山田▲57.0P 森下▲17.7P 三戸+22.3P 伊藤+52.2P
第22期中部プロリーグの優勝者は伊藤鉄也で幕を閉じた。
●決勝メンバーのコメント
第4位 山田優駿
「今回の決勝戦は面前主体で挑もうと思っていたのですが、1回戦目途中で違和感があり、普段のスタイルに戻していったが、他3名との空気が既に違い馴染めず、自分の麻雀が打ててなかった。」
第3位 森下剛任
「テーマは「勝負する」と決めていたのに、勝負所が勝負できていませんでした。だからアガリ回数がすごく少なかったと思います。あと、親番を大事にしたかったのにできませんでした。」
準優勝 三戸亮祐
「普段スロースターターなので後半勝負になることはわかっていて、そんな中、初戦でトップを取り2回戦目で攻めすぎてしまったと思います。ですが、当初の予想通り最終戦の着順勝負にまで持ち込むことができたことは良かったので、トータル的に考えると良かったと思います。」
優勝 伊藤鉄也
「1回戦目を終えて、2回戦は三戸、森下のどちらかをマイナスにさせ、自分がプラスになろうと思っていたところの連チャンで、2人ともマイナスにできたことは非常に大きかった。3、4回戦も同様に、三戸、森下とのスコアの距離感を常に考えて打ちました。最終5回戦目は、三戸と10P差。素点6,000点以内をキープすることを気にして対局しました。8年目にしてようやく優勝することが出来て嬉しいです。
今後も中部プロリーグはもちろんのこと、プロリーグやタイトル戦でも結果を残せるように精進したいと思います。」

前列左より:伊藤鉄也、木村本部長
後列左より:森下剛任、三戸亮祐、山田優駿
カテゴリ:中部プロリーグ レポート












