第14期プロクイーンベスト16D卓 吉田 直
2016年09月28日
ベスト16最後の卓となったD卓。その顔ぶれ、まずは現女流桜花の宮内こずえ。
昨年プロクイーン決勝進出、第11期プロクイーン、第17期プロ最強位の二階堂瑠美。
天空への道で優勝し、天空麻雀やレディース麻雀グランプリなどメディアでも活躍中の井上絵美子。
昨年もプロクイーンベスト16に進出したがそこで涙をのんだ高田麻衣子の4名。
瑠美、宮内の先輩実力者に井上、高田の新勢力がどう反撃していくか。
この2人も相当の力を秘めていると思われるので、非常に面白い展開が予想される。

1回戦
起家から宮内、瑠美、高田、井上
東3局1本場 親高田
まださほど点差が動いていない東3局、井上にドラ暗刻の勝負手が入りノータイムでリーチを放つ。
井上












リーチ ドラ
しかしその前から既にヤミテンが入っていた瑠美に悩ましいツモが。
瑠美












ツモ
各選手の河は
親高田










井上









宮内










瑠美









場況的には瑠美にとってファーストテンパイの
は待ちごろだが、
を勝負すれば現物の
で12,000の大物手。
ただ瑠美が井上に無筋の
を切れば、脇の2人がリーチの現物を打つ保証は薄くなる。
この時瑠美は筋の
切りで
待ちを選択。瑠美も井上もお互い初めての大物手であり、試合を自分のペースに持ってゆく上で是が非でも成就させたいところだろう。
果たしてどちらがアガるのか、瑠美の選択は正しかったのか?!…
と考えさせられる間もなく、親の高田が
をサクッと河に捨て、瑠美が8,000を直撃。
親高田の手は、












ツモ
この2シャンテン。
確かにこの半荘のトップを決めるほどの大物手になる可能性を秘めてはいる。
だが、
は2人に通っておらず、さらに瑠美の捨て牌が明らかなピンズの染め手。
その瑠美が筋とはいえ
を切り出しているので、ここはぐっと堪えて欲しかった。
一方、ドラ暗刻の勝負手をアガリ切れなかった井上の心境はいかに?
東4局親井上
13巡目に以下の牌姿












ツモ
ドラ
シャンテンになりここでドラの
をリリース。すると西家の瑠美が迷わずポンをする。
井上が次巡
を引きリーチ。そして瑠美もその巡目にチーテンが入りまたもや2人の闘いになる。
井上












リーチ
瑠美






チー

ポン


今度は井上に軍配があがりハイテイで
をツモって4,000オール。
このアガリを見て、今日の彼女にはツキも味方しているし、普段以上に強気な攻めが出来ているので、勝ち上がりの一人になるのではないかと予想した。
しかし高田も黙ってはいない。
南3局 親高田












リーチ
高めの
、
と引き入れ絶好の感触でリーチを打った高田は一発で高めの
を引き込み6,000オールで一人抜け出す。
南4局2本場
10巡目
瑠美












ツモ
ドラ
ここで彼女は
を切ってツモり三暗刻のリーチを打つ。
だが、アガれば2着の宮内がしっかりと瑠美のリーチに押し切り、1,000点をアガって2着を死守。
1回戦から非常に見応えのある闘いであった。
ドラ暗刻で跳満ツモ2着の状況で
待ちが悪いわけでもないのに、何故瑠美がわざわざツモり三暗刻にしたのか違和感があったのだが、 即座に納得がいった。
下家の高田が役牌を1つ仕掛けており、恐らく高田に
は当たり、もしくはテンパイを入れさせてしまうとふんだのであろう。
その読みは流石というべきで、実際高田は以下の牌姿。
高田









ポン


瑠美が
を切ってリーチしたならば、一発も消え安牌を切ってテンパイ出来るのだから鳴いたであろう。
しかし、この瑠美の見事な考察とは裏腹に、もし彼女が
切りを選択し高田がチーしていたのなら、即
をツモアガって3,000・6,000。
ラス目から僥倖の逆転2着となっていた。
このように麻雀とは、一打一打の取捨選択の重要性もさることながら、必ずしもその判断が結果に反映するとは限らないものなのだと改めて痛感させられた。
1回戦終了 時
高田+28.4P
宮内+7.6P
井上▲4.3P
瑠美▲31.7P
2回戦は、初戦ラスを引かされた瑠美が手役派のお手本ともいうべき素晴らしい手順で終始魅了し、トップを奪い4者混戦。
2回戦終了時
井上+6.4P
宮内+6.1P
瑠美▲4.9P
高田▲7.6P
3回戦起家から井上 宮内 瑠美 高田
僅差のトータルトップ目で、この半荘も45,800点持ちでトップを維持し続ける井上。
東3局4本場 親瑠美
井上が残り1巡で以下の牌姿












ツモ
ドラ
この
をツモ切り、宮内に12,000の放銃。
宮内












ロン
状況は、親の瑠美がドラの
を3巡前に切っており、その後北家の宮内の
をチーしてテンパイ模様。
高田は受けに回っているよう。
北家の宮内の捨て牌は一見国士に見えなくもないのだが、
が場に4枚見えていたためそれは否定出来る。
そんな中親の瑠美に危険そうな
を切っているため恐らく宮内にもテンパイが入っている。
国士を匂わす捨て牌から想像出来る手役といえば、真っ先に七対子が思い浮かぶ。
次にチャンタ。
レアケースで四暗刻といった所だろう。
井上には将来性もあり、今よりもっ と強くなってもらいたいと願っているのであえて辛口で記すが、もしあの時宮内のテンパイ気配に気付いていなかったのであれば少し私が買いかぶり過ぎていただけだし、分かっていて切ったのだとしても、自分はシャンテンで残り1巡。切るに見合う牌とは思えない。
平常時彼女がどれだけ慎重で丁寧に麻雀を打ち、このような暴牌を切らないのか知っている。
前述した通り、今日は前に出よう、攻めようと強い気持ちで打っていることも凄くわかる。
普段守備を重視している人間が強気の麻雀を打つ事はどれだけ勇気がいることか。
ただ、この一打だけは前傾姿勢に見えてしまい、とてももったいなかったなと感じた。
今後この局のことをしっかり思い起こし、井上の麻雀の抽斗を更に増やして くれればと切に願う。
3回戦も瑠美がトップを捉え、勝ち上がりに王手をかける。
3回戦終了時
ルミ+31.3P
井上+11.8P
宮内▲9.5P
高田▲33.6P
4回戦 起家から 井上 瑠美 宮内 高田
ここまでずっと我慢の麻雀を続けしていた宮内が、遂に現女流桜花の実力を発揮!
東1局に2,600、東2局に2,000・4,000をアガリトップ目で迎えた南2局の親番、まずは2,000オールをツモアガる。
南3局1本場
宮内46,800
瑠美30,900
井上23,500
高田18,800
瑠美より着順を上げたい井上が、ドラ2枚のリーチを放つ。












ドラ
親で仕掛けていた宮内もこのリーチにすぐに追いつき真っ向勝負。
宮内









ポン


終盤にドラの
を持って来るもノータイムでこれをツモ切り。
結果、流局となるが現在46,800持っており、リーチをしてきたのは当面のライバル。
トーナメントの戦い方としてこれはどうなのかと問われれば、確かに頷けないかもしれない。
同じような局面で振り込みマシーンかとなじられた事もなきにしもあらずであろう。
しかし、正にこれこそが宮内の強さの秘訣なのだと思う。
ここが勝負所と捉えたら、最後まできっちり攻め続け、他者の追従を許さない。
(意外と手役派なことも知っているつもりなのだが 笑)
この
を通し得たことにより、この後長い長~いこずえタイムが始まるのだ。
南3局2本場
この手をしっかりアガリラス親を持ってきてこの半荘は是が非でもトップを取りたい高田が先制リーチ。
高田












リーチ ドラ
そこへまだまだ足りないと言わんばかりの宮内が追いかけリーチを打つ。
宮内












リーチ
この勝敗は、高田が
を掴み宮内が12,600を加点。
その後も4,300オール、1人テンパイ、2人テンパイと連荘し、この半荘80,000点近い点棒を掻き集め、断トツでほぼ決勝への通過を手中に収めた。
4回戦終了時
宮内+53.2P
瑠美+29.8P
井上▲8.1P
高田▲74.9P
5回戦 起家 から高田 宮内 瑠美 井上
宮内はほぼ通過確定、高田はかなり厳しい状況、焦点は瑠美と井上の次点争いに。
東3局 親瑠美
10巡目まずは親で瑠美がピンフの先制リーチ。
瑠美












ドラ
13巡目
井上












ツモ
腹をくくって1枚切れの
で追っかけリーチを放つ。
この時点で瑠美の待ちは0枚、井上の待ちは残り2枚。
観戦している側としても手に汗を握る直接対決最後の勝負所は、高田に
が1枚流れ、もう1枚は王牌に眠っていた。
南2局 親宮内
宮内43,600
高田33,000
瑠美22,000
井上21,400
最終戦開始時の瑠美と井上の差は37.9P、なのでトップラスなら8,000点、2着ラスなら18,000点の差をつければ井上は勝ち上がることが出来る。
捲る立場として現在の並びは絶好の位置。
7巡目井上












ツモ
ドラ
このテンパイを
切りのヤミに構える。
リーチしてツモれば満貫なので、ここでリーチを選択する人も少なくはないのではないか。
しかしこの時井上は、きっとこんな手が後何回入るかわからない、もしツモってしまったらフリテンリーチをかけようと考えていたのだと思う。
12巡目、ついに
を引き入れタンヤオ三色としリーチに打って出る。
この瞬間、最終戦のこのような展開が後押ししてなのか、彼女の麻雀に心を打たれたのか、手に汗握っている自分がいた。
だが、井上の手元に
が来る事はなく敢えなく流局。
最終局は宮内がアガリ、プロクイーンD卓の白熱した闘いは幕を閉じた。
終わって見れば実力、経験共に豊富な瑠美、宮内の勝ち上がりとなったわけだが、井上、高田も要所要所で彼女達なりの精一杯の麻雀を魅せた。
だからこの対局が素晴らしいものになったのだと思う。
瑠美、宮内にはこの後の戦いでも今日の様な重く力強い麻雀を打ち、プロクイーンのティアラを目指してもらいたい。
そして今回健闘及ばす敗退した井上、高田には、今日の日の悔しさを生かし、来年こそは決勝の舞台に立てるよう更なる精進を積んで欲しい。
カテゴリ:プロクイーン決定戦 レポート












