第4期若獅子戦決勝レポート
2022年12月22日
【第4期若獅子戦決勝、笠原拓樹が優勝】
「こいつら、あと5年以上も若獅子戦に出てくるのかよ・・・」
正直、こう思った若獅子諸君(20代の選手)も多かったのではないだろうか。
11/24に行われた第4期若獅子戦の決勝、ベスト8のレポートでも触れたが、実績も実力もある4選手が残った。

笠原拓樹、前期(第11期)JPMLWRC決勝
岡崎涼太、最強戦2022FINAL(ベスト16)、第1期若獅子戦2位
渡辺史哉、現王位(第46期、決勝当日時点)
梅本翔、第3期と第4期の北陸プロリーグ決勝
彼らの正確な年齢はわからないが、インタビューによると24、5歳らしい。
それにも関わらず、実況・解説からこんなコメントも出るほどの内容だった。
早川林香(実況)「決勝戦なのに、みんなスピーディですね。場慣れしていますね。」
藤崎智(解説)「場慣れしちゃって可愛くない。」
阿久津翔太(解説)「若獅子っぽくない。」

前置きのついでに、彼らの非凡な1局から取り上げる。

1回戦南4局、親の笠原がチーしてテンパイを取る。
ドラもないし、三色同順への手替わりもし辛い形。
それであればスピードを重視するという当然の一手。
普段なら、あっさり1,500のアガリになっているだろう。
打点が安いとはいえ、簡単に親の連荘にさせない3者の対応力が光った。
渡辺は、笠原の待ちの
を使い切り、アガって浮きをキープする。
ドラもないから安いし…と安易に放銃する人は見習ってほしい1局である。

さて前置きは長くなったが、決勝戦(全4回戦)を振り返っていきたい。
1回戦、好スタートを切ったのは梅本…とおもいきや岡崎だった。


梅本にとっては、絶好の
ソー待ちのリーチが打てたと思ったところ、岡崎にチャンタ、ドラ1の6,400の放銃。
麻雀の神様よ、北陸から毎回上京しているのに、こんな放銃は厳しすぎないかい?とは僕の感想。
この日1日、梅本はお手本のような高打点の手組みを見せるが、ほとんどが空振りで終わるという不遇な日だった。
解説の藤崎も、「今日はノーチャンスだった」と言い切ってしまうほど。
この1番の大勝負でノーチャンスは本当に辛いのだが、次こそ、いや、何度でも掴みに来てほしい。
ここに梅本の手牌を供養しておく。
2回戦東2局
安目7,700、高目12,000で追いかけリーチも、親の岡崎が2,600オールのツモアガリ。
梅本












リーチ ドラ
岡崎(親)












リーチ ツモ
ドラ
2回戦東2局1本場
三色同順の先制リーチも、岡崎がヤミテンで追いつき2,000点の放銃
梅本












リーチ ドラ
岡崎(親)












ロン
ドラ
2回戦東4局
親番で高目18,000、安目11,600。
道中、
と
のシャンポンのテンパイを外して、このリーチにしたのは、藤崎からも「お見事」の一言。
これはアガリにさせてあげたかった。



しかし、結果は無情だった。
仕掛けていた笠原が、
、ドラ2のツモアガリ。
笠原はドラ2ということもあり、最終盤以外は、掴んだらそのまま切っていただろう。
さすがにこの引き負けはグッとくるものがあったはずだ。
この2回戦、ポイントになった局があるので、こちらにも触れたい。
親の渡辺に、ダブ
、ドラ1、7,700のテンパイが入る。
渡辺はセオリー通りヤミテンに構えた。
阿久津「これはテンパイ連荘では満足できず、アガリたい手。」と解説。

しかし、ヤミテンにしたことで、岡崎からリーチ。
渡辺はヤミテンのまま押すも、岡崎のツモアガリとなった。

渡辺がリーチをしていれば、岡崎のリーチはなく、このアガリもなかったはずだ。
『リーチをしていたらどうだったか…』
こうコメントをする人が多いのだが、渡辺は戦後のインタビューで次のように語った。
渡辺「いわゆる普通の選択をしてしまったというか…
(待ち)にするのが悪いってことはないと思うんですけど、場況を見て、
とか、アガれる道はいっぱいあったと思うんですよね。あれはアガらなきゃダメですね。」
非凡だ…目指しているレベルの高さを感じてやまない。
2回戦終了時
笠原+35.5P、岡崎+12.4P、渡辺▲16.6P、梅本▲31.3P
全4回戦の3回戦目、ここで笠原に浮きを取られると、追う3者はかなり厳しくなる。
そんな折り、梅本の刀がとうとう笠原を捕らえた。

地獄待ちの
単騎、リーチ、七対子、ドラ2の8,000。
これは直撃を狙ってリーチに踏み切った梅本が見事だった。
岡崎、渡辺も放銃は脱落だっただけに、肝を冷やしたし、「梅本ナイス!」と思ったことだろう。
続く東4局、渡辺の親番、絶好の
を引き入れて、ピンフ、ドラ2の先制リーチだ。
河からは待ちの
はあまり他家に使われていないように見える。
おそらく渡辺もかなり感触がよかったリーチだっただろう。

しかし、ここで勝因の1局となったアガリが飛び出す。
このリーチに対して、振りかぶっての追いかけリーチは笠原。
叩き切ったのはドラの
!(倒れている牌は
)

まだリードしている立場にもかかわらず、親のリーチに対し、ドラを切ったのも、リーチに踏み切ったのも素晴らしかった。
その勇気に牌も応える。

先程の失点を取り返す、2,000・3,900。
優勝にグッと近づいたアガリだった。
それでも、このあとの南場で笠原にラスを押し付けるのだから、本当に全員のレベルが高い。
一例をあげると、南1局の渡辺、梅本の親番を安い手で消化するのは笠原が喜ぶだけになると、ヤミテンからのホンイツ移行。
見れば理由はわかるものだが、この一打は簡単にできるものではない。
『決勝戦を面白くするのは、敗者の麻雀』
4者で作り上げた、素晴らしい決勝戦だったと思う。

3回戦
笠原▲11.2P、岡崎▲1.5P、渡辺+18.5P、梅本▲5.8P
3回戦終了時
笠原+24.3P、岡崎+10.9P、渡辺+1.9P、梅本▲37.1P
梅本はやや厳しくなってしまったが、笠原、岡崎、渡辺は僅差で迎えた最終戦、
東1局にいきなりクライマックスが訪れた。

を暗カンしている、ツモり四暗刻のリーチ。

笠原、
、三暗刻の
待ち

親の岡崎もペン
待ちリーチ。ツモは2,600オールだ。
は山になく、
は山に1枚。
奇しくも
の引き合いになった。
アガった人が優勝に近づく中、制したのは…

命運を分ける
は笠原の手元に舞い降りた。
優勝:笠原拓樹
「西川淳さんや千葉の皆様が、何回も言う事になっちゃうんですけど、ホントにホントに応援してくれて、応援のおかげで今日がありまして、それで勝てたと思うので、本当にありがとうございました。これからもたくさん活躍できるように頑張りたいと思いますので、応援よろしくお願いします。」
闘う姿勢を全面に出したカッコいい麻雀でした。
優勝おめでとうございます。


(文:福光聖雄)
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