北陸プロリーグ レポート

第5期北陸プロリーグ 第3節レポート

記録的な猛暑となりつつある今夏ではあるが、このような時に度々使われる言葉が、「暑さに負けぬ熱戦が繰り広げられた」である。
これはけだし名言であり、我々競技麻雀打ちは各々がその熱量を観てくれる方々に伝える責務がある、と私は考える。

物書きならばその筆で。
歌うたいならばその声で。
麻雀打ちはその打牌をもって、観てくれる方の心を動かすような姿勢を示さねばならない。

競技プロを名乗って十余年。未だ浅学の身ではあるが、気概だけは失わず背中を押してくれる方々の為に日々腕を振りたいと思う。

令和4年7月24日。北陸プロリーグ第3節。
前半にして早くも明暗の分かれる様相を呈してきた感のある節となった。

着実にプラスを重ね首位を堅持する志多木。今期の彼からは決勝へ懸ける強い意志が窺える。豪放な風貌に似合わぬ繊細さも好結果を導く一因だろう。
数字的に結論付けるには尚早だが、決勝の椅子を1つ固めたのでは、と感じてしまう程に強く、上手い麻雀を見せてくれている。

2位につけたのが女流の安城。
「思う通りの手組が出来て、攻守のバランスの取れた節でした。」
まだまだ若手と言っても良い可愛らしい安城だが、二度の北陸プロリーグ決勝や、女流桜花参戦、夕刊フジ出場、金沢麻雀王決定戦連覇など、そのキャリアの幅は北陸の地において出色である。

「国士無双テンパイや4巡目のメンホンリーチも梅本君に上手に捌かれました。強かったです。」
心に残った1局を彼女に尋ねた返答がこちらである。
自身の成就した手よりも、他者の好手を即答してくる安城の謙虚さと向上心が垣間見える。
オーラスに原点復帰のアガリを重ねたことも好結果の一因と振り返る。

「今期こそ絶対決勝戦に勝ち進んで優勝して、応援してくれる方たちに恩返しがしたいです。」

常に上を目指す貪欲さと、応援してくれる方のことを思って牌を握る安城。
北陸最強プリンセスが大きな舞台で大輪の花を咲かせられるのか。要注目である。

トータル4位には、ポイントを大きく伸ばしてきた北陸支部長の浦田。
今節(5人打ち)は同卓者に新人研修リーグ参加者が3名おり、しかも2人は今期デビューの新人である。開催者として講師でもある自身にとって大きなプレッシャーにもなったと言う。

「負けたら洒落にならない。下手をすると新人研修リーグ存亡の危機だ。」

支部長ゆえの教える側としての重圧。だが浦田はそれを跳ね除けて1121と3トップにて+73.9Pという大きなプラスをものにする。

そんな浦田も、前述の安城に続き、振りかえって心に残る1局は華麗なアガリの局ではなく、己を戒める失着のものだった。

1回戦オーラス 北家 42,000点持ち2着 6巡目 ドラ四索

一万一万三万四万五万六万七万六筒二索二索二索三索六索 ツモ五筒

トップ目である文月とは6,000点差
一万は親である宮成の現物。ここで選択したのは打六索。ドラ跨ぎを処理してシャンテン数を上げる。
だがこれが失着だったと浦田は振り返る。

「どちらかのリャンメンが入ってリーチを打つか?いやしない。ヤミテンで進めて親リーチが来たら現物一万を落としてタンヤオでかわしに行くだろう。ならば最初から一万を1枚外して手を広げて、大きくタンピン三色を狙う局面ではないのか?まだ逆転を諦めるには早いのではないか。」

結果として流局となったが、浦田の手は
三万三万五万六万七万五筒六筒七筒二索二索二索五索六索 ツモ七索

という逆転トップの目もあった。

「この半荘はたまたまの展開でトップが取れたが、いつも新人に教えている『オーラスに入る前にテーマを決める』という事が自分で実践できていなかった。この後得点を重ねる事が出来たが、もし負けていたら間違いなく敗因の1局だった。」

己のミスを即座に気づき、戒めて対応する浦田の強者たる所以の垣間見えた瞬間である。

「前期は最終節までずっと決勝圏内にいたのに、最後の最後で脱落してしまった。今期は先ずしっかりと決勝進出を果たし、夏目坂で優勝を勝ち取りたい。」

支部長という重責を担いながらも、誰よりも勝ちに貪欲な浦田の戦いぶりは、観る者の心を動かすに十分値する。

苦戦の多い新人・若手の中で、今節漸く反撃の狼煙を上げたのがルーキーの女流、宮成。
若者らしく、最速の手組を重視する現代麻雀を得意とする、まだあどけなさの残る女性である。

「初めてのプロリーグなので緊張します。」

そんな彼女が今節大きくスコアを伸ばす事となった切っ掛けとなる1局。

1回戦オーラス 親番 20,000点持ち 6巡目 ドラ六筒

六万八万三筒四筒五筒六筒六筒八筒九筒九筒三索四索五索 ツモ七万

オーラス親番でアガリの欲しい局面。
宮成の選択は九筒切りのヤミテンであった。
ドラドラの手牌。八筒九筒で横に曲げる打ち手も多いだろう。しかし彼女の選択は後のタンヤオ変化を見てのヤミテン。
プロになる以前から私は宮成の麻雀を見ているが、この「一歩構えなおす」打ち方は彼女の引き出しの広がりを感じる一打である。

程なく打ち出されたドラをポンして手牌を変化させて11,600のアガリをものにする。

六万七万八万二筒三筒四筒五筒三索四索五索 ポン六筒六筒六筒 ロン二筒

「結果的にアガれましたが、正解だったかはわかりません。ですがこれでプラスの流れに乗れました。何事も初めての経験なので楽しみながら上位目指して頑張りたいです。」

安城、文月に続き北陸にも先が楽しみな才媛が現れたのかもしれない。
彼女の素直で伸びやかな手組に、競技麻雀の奥深さをミックスさせて生まれる化学反応が楽しみでならない。

上位者がスコアを伸ばす反面、下位者は負債を膨らませている。
個々人の名前は言わないが、実力上位と目されるプロが何人も苦杯をなめている。
勿論競技プロとして、勝つことがその存在証明足りうる。
だが冒頭で述べたように、「観る者の心を動かす麻雀」はできているのか。
プロとして常に対局を観てくれている誰かを意識して、十全に悔いの無い麻雀を打てているのか。
これは不甲斐ない成績に甘んじている私自身への内なる問いかけでもある。

良い時も悪い時もあるのが麻雀である。
その上で何を残し、何を観せて、何を次に繋げるのか。
北陸のプロが皆、今一度思いを馳せて、次なる戦いに臨んでいただきたいと願う。

次節第4節は8/28。
金沢にての開催となります。
応援の程、宜しくお願い致します。

(文:荒谷誠)

順位 名前 合計 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節
1 志多木 健 137.8 35.0 81.0 21.8
2 安城 るい 115.0 37.4 13.1 64.5
3 里木 祐介 92.0 70.5 27.3 ▲ 5.8
4 浦田 豊人 75.2 ▲ 10.8 12.1 73.9
5 南 和之 63.3 54.5 ▲ 43.7 52.5
6 文月 愛美 34.5 ▲ 40.6 67.5 7.6
7 岡田 拓也 27.9 ▲ 25.6 42.5 11.0
8 獅坂 祐一 24.1 58.8 ▲ 6.8 ▲ 27.9
9 成田 理良 7.1 22.7 1.7 ▲ 17.3
10 堂垂 正裕 5.7 43.8 20.1 ▲ 58.2
11 小林 和樹 ▲ 1.2 4.4 14.1 ▲ 19.7
12 梅本 翔 ▲ 5.2 ▲ 0.6 ▲ 11.8 7.2
13 如月 靖之 ▲ 32.5 ▲ 38.2 0.2 5.5
14 宮成 さく ▲ 41.3 ▲ 55.0 ▲ 28.2 41.9
15 木戸 僚之 ▲ 79.2 ▲ 38.0 ▲ 29.6 ▲ 11.6
16 荒谷 誠 ▲ 87.4 ▲ 18.3 ▲ 56.0 ▲ 13.1
17 藤本 鉄也 ▲ 99.9 ▲ 30.6 ▲ 51.5 ▲ 17.8
18 後藤 正博 ▲ 109.4 ▲ 36.0 ▲ 7.2 ▲ 66.2
19 松井 直大 ▲ 133.5 ▲ 34.4 ▲ 49.8 ▲ 49.3