プロクイーン決定戦 レポート/第14期プロクイーンベスト16B卓 滝沢 和典
2016年09月01日

日向藍子(最高位戦日本プロ麻雀協会)
福島清子(日本プロ麻雀連盟)
山脇千文美(日本プロ麻雀連盟)
和久津晶(日本プロ麻雀連盟)前年度決勝
現在の女流プロで誰が強い?と質問されれば多くの人が和久津の名前をあげる。
これまでの実績はもちろん、昇級したばかりのA2リーグでも堂々たる戦いぶりを見せる和久津は、ここでも圧倒的な力の差を見せつけるのか。
1回戦、起家から山脇、福島、和久津、日向
東1局、13巡目に、日向がツモり四暗刻の手牌でリーチをかける。












リーチ ドラ
残りツモ1回の和久津が追いかけるも…













開局早々、北家、日向の四暗刻が決まる。












ツモ
3者に4万点以上の差をつけてトップ目に立つと、さらに南家・日向が、東3局7巡目にドラ暗刻のテンパイ。












ドラ
同巡、西家の山脇が












ロン
福島から32,000の出アガリ。
なんと東場で2度目の役満が炸裂した。
このとき山脇の捨て牌はこう。







配牌で8種9牌の山脇は、5巡目までの捨て牌がすべて手出し。
特に変わった手順を踏んだわけではなく、1枚も字牌を余らせることなく、あっと言う間に国士無双のテンパイとなった。
この局に関して、放銃した福島が山脇のテンパイに気づくか気づかないという話しにはまったく意味がなく、反省点を探す必要もないと思う。
地元の高知県から対局の度に上京し、やっと掴みかけた決勝の大舞台は目前。勝ちたい気持ちが先走ってしまうのが普通だと思うが、ここで必要以上に勝負を急いだり、強引な手を打ち始めては、対局が壊れてしまう。
後は逆転に向けて、いかに基本に忠実に打てるか、というのが麻雀プロとしての義務であり、誇りなのである。
この後、福島に大した見せ場が訪れることはなかったが、しっかりと打ち続けることで、この日の対局を作り上げた。
勝ち負けは最も大事なことではあるが、いい意味での試合作りができるのもまた雀力ではないだろうか。
4回戦
起家から日向(+24.7)、和久津(+17.5)、福島(▲96.3)、山脇(+54.1)
東1局、5巡目、南家 和久津の手牌













ドラ
和久津はここから打
とした。
以外が中張牌で、連続形が2つ。なんとも悩ましい手格好である。
《5巡目までの捨て牌》
東家 日向





南家 和久津





西家 福島





北家 山脇





6巡目に
を重ね、ドラの
を打って即リーチ。11巡目に
をツモって1,000・2,000のツモアガリとなった。
ウンウン唸ってアガリに到達したのではなく、動作がスムーズで打牌に淀みがない、ようやくエンジンがかかったかのような和久津のアガリであった。
そして和久津のアガリは続く。
東4局には、












リーチ ツモ
ドラ
裏
1,300・2,600のツモアガリ。
南1局






ポン

加カン


ツモ
ドラ
カンドラ
1シャンテンで
を加カンすると、
が新ドラとなって2,000・4,000のアガリ。
南2局の親番では、日向の第一打
をチーして1シャンテン。2巡目に
をチーしてテンパイを入れる。






チー

チー


これに対して、西家の山脇がドラの
をぶつけて応戦。
山脇手牌













一瞬のけぞるような素振りを見せた和久津であったが、
ツモってノータイムでカンすると、新ドラが
となり、またしても打点がアップする。
10巡目に日向が和久津と同じ待ち、新ドラの
タンキでリーチをかける。












リーチ
リーチを受けた和久津は
を引いて小考の後、打
。どちらもリーチには通っていない牌だ。
次巡にも無筋の
を打った和久津は、完全に臨戦態勢。それらを受けた山脇は、両者に危険に見える
を引いて
抜き打ちでオリを選択。
ポイントに差はあるものの、ここまで本当にミスが少ない、言ってしまえば誰が勝ってもおかしくない、誰が勝っても観戦者が納得できるような内容で、対局が進んできた。
野球で例えるなら、投手戦でエラーもないような対局で、プロの対局とはこうあるべき、といったような内容であった。
この次巡の捨て牌がこう
東家 和久津捨牌













南家 福島捨牌












西家 山脇捨牌












北家 日向捨牌










和久津の
は2枚とも手出しだ。
間に挟んだ
が、日向のリーチを受けての危険牌である以上、前に出ているのは明らか。
2枚目の打
は
に
を引いた
であると考えるのが妥当だ。
山脇自身も、この和久津の手牌変化は想定していたとは思うが、結局打
を選択して和久津に放銃となってしまう。














この手牌、リーチをかけた日向に通る牌もなく、かなり選択は難しい。
ただ、リーチをかけた日向に関しては、どこまで読めてもXであるが、和久津の打
は
に
を引いたリャンメン変化の可能性が非常に高い。
例えばカンをしてでも、とにかく
以外で選択してほしかったというのが、プロとしての要求でもある。
ただひとつ言えるのは、通して一番大きなミスがこの局で、それが敗因となるくらいシビアな対局を、山脇を含め対局者全員が作り上げたということだ。
プロクイーンという冠にふさわしい、素晴らしい対局だった。
勝ち上がりは、日向藍子、和久津晶の2名。
最高位戦のリーグ戦でB1リーグに在籍する日向、そしてベスト16 A卓ではシード選手茅森が危なげなく勝ち上がりを決めたように、こちらの卓では「やはり」というか、万人の予想通り和久津が大きな壁となって立ちはだかった。
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