第35期鳳凰位決定戦 三日目観戦記 荒 正義
2019年02月14日
この日も晴れた。吉田にとっては、いいことだ。雨なら、足元に危険が及ぶ。転んで傷を負ってはたまらない。ここまでの成績がこれだ。
吉田+74.9P
前原+13.8P
勝又▲31.5P
柴田▲57.2P
例年の優勝ボーダーは、+70Pである。吉田はそのラインを超えた。しかし、安心はできない。今日沈めば、すぐに射程距離に入る。残り8回戦なら、最下位の柴田まで逆転のチャンスがあるのだ。
今日から追う側、3人の打ち方も変わる。吉田の高い山を、削りに来るのだ。前原は、吉田がラスなら、加点するより終戦策を取るだろう。勝又と柴田は、トップでも加点に来るはず。そこも、考えておく必要がある。

9回戦。
出親は吉田で順に勝又、柴田、前原の並び。
東1局は、勝又の早い仕掛け。親落としだ。マチは
。
しかし吉田から、9巡目にリーチが飛んでくる。





















ドラ
入り目が、絶好の
である。高めツモなら6,000点オールだ。
勝又が、すぐに
を掴んで放銃。3,900点。このとき勝又は、吉田の手を見てホッとしたに違いない。
を引かれるより、
を打った方がいいからだ。
1本場は、4巡目に勝又の早いリーチ。












ドラ
6巡目、前原から追いかけリーチが入った。その手がなんとこうだ。













入り目が、ドラの重なりである。出て跳満。これがゴジラの生命力だ。
しかし、結果は
を掴んで前原の放銃。さっきと今度、そう簡単には決まらない。後は小場で回って4者接戦。
東3局1本場。
吉田に好いアガリが出た。6巡目にテンパイ、即ツモである。












ツモ
ドラ
6,400と300点。これで、吉田の1人浮き。
東4局。
すると今度は、親の前原が怒った。7巡目のリーチだ。
ドラ







そして、手の内はこうだ。













ドラの
が出れば18,000点だが、誰も打ちはしない。このあと
が枯れ、
が通る。これが、ゴジラの生命力だ。安全牌に窮した勝又から
が出て、7,700点のアガリ。
1本場は、勝又が前原から2,600点を召し取る。
南1局。
5巡目、柴田が動く。













ドラ
上家の
をチー。









チー


次に上家から
が出てこれをポンだ。普通ならチーである。
チーなら、残る牌姿はこうだ。






チー

チー


ポンならこう。






ポン

チー


どちらがいいか、一目瞭然。たぶん、柴田の勘違い。だが、このあとのツモが
だったのである。
なので、テンパイはこうだ。






ポン

チー


間違いも、してみるもンだ!
これに
で、飛び込んだのが吉田だった。













前原は、ソーズの染め手。













勝又は、ソーズのチンイチ。













安全牌は
だけ。切る牌がないから、自分のアガリに向かって打ち抜いたのだ。
結果は満貫の打ち込み。吉田らしい放銃だ。逃げずに戦うのだ。でなければ、鳳凰の冠はつかめない。吉田の背中を追う3人は、しめしめと思ったに違いない。
この後は、小場で回る。
しかし、オーラスで吉田は前原から3,900点をアガって、浮きに回る。3人はがっかり。
トップは柴田。2位が吉田。3着が前原。ラスが勝又。
そして、総合得点はこれだ。
吉田+82,1P
前原+7.4P
柴田▲40.6P
勝又▲48.9P
勝又と柴田が不調だが、このままでは終わるまい。
10回戦。
出親は勝又で、順に吉田、前原、柴田の並び。
東1局。
9巡目、柴田のリーチだ。












ツモ
ドラ









前巡、テンパイが入ったがピンフのみなのでヤミテン。タンヤオになったらリーチで、打点を狙う。これが公式戦の定石だ。2巡後、前原が追いついた。













ツモ
ここは、リーチの現物でヤミテン。
は2枚山。それを、吉田がすぐにつかんで放銃。前原は、リーチ棒込みで9,000点の収入。この直撃は大きい。
東2局。
ここは、勝又が仕掛ける。
を鳴いてピンズの染め手。しかし、10巡目に親の吉田からリーチがかかった。












ドラ
同巡、
が柴田から出る。
はリーチの現物。
これをチーして、勝又がテンパイ。






チー

ポン


を引いて、2,000・4,000点。親の吉田のリーチを交わし、大きなツモだ。
東3局は、前原が柴田に5,200点の放銃。
後は小場で回る。
南3局。
柴田がタンヤオで逃げに入る。ところが、13巡目に絞っていたドラが重なりテンパイ。









ポン

ツモ
ドラ
打
。するとこの後、ラス牌の
を引いて2,000・4,000点。ラッキーなアガリだった。
南4局。ドラ
4人の持ち点は、こうだ。
勝又42,000
吉田12,600
前原28,600
柴田36,800
この持ち点なら、うまく終了すれば吉田との点差は詰まるからOKだ。
前原は、2,000点で浮く計算。ところが、ここから波乱が起きた。
まず、前原が
を鳴いてマンズの染め手。この鳴きで絶好の
を引き入れ、柴田のリーチだ。



















リーチ
ツモなら親の倍満。
ツモなら6,000点オールだ。このとき柴田は、発声も高かったし打牌も強かったから、警戒警報発令!
勝又が、懸命にタンヤオでサバキに掛けるが、
を食い下げてもテンパイ止まり。
(勝又)









チー


11巡目、前原の手がこうだ。









チー

ツモ
そして考える。行くかオリルかだ。オリなら、暗カンはしない。前原も、柴田の発声と打牌の音色から異常を感じていたのだ。
迷った挙句、GOを決断。
を暗槓したら、来たのが
。






暗カン


チー

ツモ
で12,000点の放銃。前原、無念。
南4局1本場。ドラ
好調柴田が、続けて決める。






ポン

暗カン



これで6,000点オールだ。吉田のドラの
切りは、少し甘かった。
南4局2本場は、前原が勝又に満貫の放銃で幕。
止められるロン牌だった。前原の体調が悪そうだ。集中力が切れたのか…。
これで、断トツが柴田。2着が勝又。3着が吉田で、ラスが前原となる。
総合得点はこれだ。
吉田+54.6P 柴田+4.5P 前原▲28.7P 勝又▲30.4P
11回戦。
出親は勝又で順に吉田、柴田、前原の並び。
東1局は、勝又が吉田から2,000点をアガリ連荘。
1本場。
11巡目に柴田のリーチ。























ドラ
は、いいマチに見える。しかし、次巡に勝又の追いかけリーチだ。












リーチ
勝又の入り目が
で、これは柴田には100パーセント負けない手。
15巡目、
を引いて4,000点オールだ。出たら2,400点止まりだが、ツモなら親満。濡れ手に粟、のようなアガリだ。
2本場は、柴田の5,200点のアガリ。打ったのは不調の前原だ。
東2局。
2巡目に、親の吉田の先制リーチがかかる。


これでは、わからない。その手の内はこうだ。












リーチ ドラ
このとき柴田の手が、こうだ。













は自風のドラ。もう行くしかない。
勝又から、2丁切りのオタ風の
が出る。柴田がポンだ。すると、勝又がすぐに残った
を切らずにドラの
を切る。これも柴田がポンだ。これが阿吽の呼吸で、生きた麻雀である。

吉田『なにするンだ、勝又!』
と思っても、もう遅い。高い山は、削られる宿命にあるのだ。
2人を戦わせ、経過を見る。柴田が満貫、跳満ツモでもいい。親の吉田は、大きく持ち点を削られる。打ってくれるなら、なお良しだ。吉田は、この包囲網を自力で突破しなければならないのだ。このとき柴田の手はこうだ。






ポン

ポン


勝又にとっても、
は勝負牌。親に当たる可能性もあるのだ。しかし、結果は吉田の
ツモで1,300オールだった。
1本場も吉田のアガリ。2,000と300点だが、これで吉田が100点浮きになる。
2本場。最終形がこれ。









ポン

ドラ
ドラのポンで、アガリできれば大きいが勝又とタッチ。しかし、ハイテイが吉田に回ってのツモで4,200点オールだ。これには3人、ガックンとなるのは当然だ。
この後は小場で進んだ。前原が親で2本積むが、そこでも吉田の登場。













この手を勝又から仕留めて、持ち点が50,500点の1人浮きとなる。
南1局。
今度は、親の勝又が踏ん張った。












リーチ ツモ
ドラ
この手をリーチで引いて、2,600オールだ。これで浮きに回る。
後は無難に流れて、トップが吉田。浮きの2着が勝又、3着が前原でラスが柴田だった。総合得点は次の通りだ。
吉田+79.5P 勝又▲12.7P 柴田▲19.9P 前原▲46.9P
3人沈みで、吉田が好調である。

12回戦

出親は前原で、順に勝又、吉田、柴田の並び。
東場は前原が好調。小さく3回アガって、持ち点が40,500点。
東4局。ここは、好調吉田のアガリが決まる。












ツモ
ドラ
ヤミテンで満貫である。
南2局。
このままでは、吉田の流れだ。この回だけでも、沈める必要がある。
でなければ、優勝の道はどんどん遠くなる。
今度は、親の勝又が頑張った。7巡目のリーチだ。
ドラ







一見普通の河に見えるが、手の内はなんとこうだ。













9巡目に柴田のリーチが入ったが、同巡高めの
を引き寄せた。
これで勝又は吉田を沈め、トップに立った。
1本場は柴田がかわした。
そして南3局で、吉田の親番。
柴田が9巡目にテンパイを果たす。同巡、勝又もピンフのヤミテン。しかし、アガったのは11巡目にテンパイした吉田だった。












ツモ
ドラ
は、2枚出ていたからラス牌である。4,000オールのこのアガリは大きい。
後は無難に流れて、ゲームセットだ。トップは勝又、浮きの2着が吉田。前原が3着で、柴田がラスだ。そして、総合得点はこうだ。
吉田+87.3P
勝又 +8.7P
柴田▲44.7P
前原▲53.3P
(供託2.0P)
吉田が断然有利。最終日は、勝又との一騎打ちが見ものだ。
カテゴリ:プロリーグ(鳳凰戦)決勝観戦記












