第14期女流桜花決定戦 二日目観戦記 柴田 吉和
2020年01月21日
5回戦(起家から、仲田・魚谷・武石・古谷)
4回戦終了時
仲田+21.6P 古谷+ 0.6P 魚谷▲ 4.0P 武石▲18.2P
東4局

ここまでトータルトップを走る仲田。
今局好配牌に恵まれ早くも決断を迫られるが、リーチ宣言はせず
を縦に置いた。
ダブリー宣言の時点で、待ちは悪くとも出アガリ8,000の打点がある事が決め手で私はリーチ宣言してしまいそうだが、ダブリーしなくても、
ポンからドラ
単騎仮テンからのホンイツ移行で、容易に満貫は確保できそうな手牌でダブリーするしないの意見が分かれそうだ。

配牌からのイメージ通りに、4巡目に魚谷の
にポンを入れドラ
単騎テンパイ。更に2巡後ツモ
で小三元に待ち変え後、更に2巡後絶好のツモ
。待ってましたとばかりにノータイムで5メンチャンに待ち変えをすると思いきや、仲田はノータイムで
をツモ切り
単騎を続行した。これには驚いた。
が3巡前に武石から切られているとはいえ、その後
とドラのターツ外しが強烈に見えており、他家からははっきりと高打点、最高大三元がある事が見えているだけに、そうそう切っては貰えない三元牌待ちでの12,000。何よりも5メンチャン待ちでツモアガリできそうな8,000が魅力的すぎるからだ。

しかし結果は仲田にとって最高のものとなった。
らしくないのは放銃の魚谷だ。自身役ありテンパイ・武石のリーチに対して現物とはいえ、ノータイムで
を切り出している。武石がリーチ宣言するという事は、
を持っているはずと信頼の読みが入ったか?仲田の手出し牌が少なすぎて、打点が安いテンパイもあると読んだか?決定戦仕様で、ただ単にトータルトップを走る仲田のアガリを阻止したかっただけか?いずれにせよメンタル強者の魚谷にとっても、ぐっとくる放銃になったのは間違いない。
この放銃を機に、魚谷は苦しい1日を送る事となる。

南2局1本場

親魚谷が6巡目に打ドラ
後、14巡目
にチーを入れテンパイ濃厚だ。
一方古谷は6巡目に
の片アガリヤミテンを入れており(
は空切り)13巡目、仲田が
チーを入れた事を機に次巡ツモ切りリーチへ踏み切った。
仲田視点で見ると、親の魚谷は高くても2,900程の打点で連荘狙いか。古谷は切り出しが変則で、ドラ絡みか手役で打点がありそうな捨て牌。そこに仲田がツモってきたのが
。
放銃になるとしたら古谷、そして間違いなく打点もつきそうだが、仲田は
を勝負した。
2日目終了後のインタビューで、古谷に放銃になれば打点があると分かっていたが、魚谷の親落としを優先したと仲田は話した。また、魚谷をマークしていたともありのまま話した。
4期連続での対決となる仲田魚谷。今決定戦に限らず、お互いに彼女には負けられないとうプライドも少なからずあるはずだ。
3連覇中の仲田とて、やはり魚谷の存在は宿敵であり脅威なのだろうと伝わってくる場面であった。

5回戦成績
仲田+20.2P 古谷+14.2P 武石▲12.7P 魚谷▲21.7P
5回戦終了時
仲田+41.8P 古谷+14.8P 魚谷▲25.7P 武石▲30.9P
6回戦(起家から、古谷・仲田・魚谷・武石)
東1局

起家古谷、隠れドラ3で待ち選びも成功し、武石から11,600の先制。
東1局1本場

親古谷、ツモ

であれば迷わずリーチになりそうで、ツモ
だけ判断が難しく意見が分かれそうだなと見ていた所にツモ
。安めドラ・高めチャンタのリーチ選択。古谷はノータイムでリーチ発声をした。
初日の古谷は、こういった難しい判断に迫られた時、手迷いが多くまだ決定戦の闘い方が固まっていない様に私には映ったが、今局ノータイムでのリーチ宣言は「今日は逃げず立ち向かって強く闘う」という意思が見て取れ、古谷の中で決定戦の闘い方が決まったんだなと強く感じ取る事ができた。今2日目の古谷は、このノータイムリーチ選択の様に、初日とは別人と見違えるほどに闘う姿勢を貫き通す1日となる。

だが相手も強い。親リーチの現物待ち・タンヤオやドラ振り替えを考えヤミテンにしてしまいそうな所だが、アガリを逃さない絶妙な追いかけリーチで追加点を許してもらえない。
南2局2本場

11巡目に親仲田からのリーチを受けた魚谷の手牌。完全安全牌も無い事からこの形で

と押してアガリを目指したが、16巡目ツモ
で残り巡目との兼ね合いもあり打
で降りを選択した。

がしかし、これぞ不調者と言わんばかりの局面になって全員へ通りそうな
でヤミテンへ高打点放銃。仲田への現物は
での選択だが、武石は12巡目の初牌の
は強いものの、その後は共通安牌を切っており、そこまで目立ってはいない。一方古谷の打ち出した

はいずれもスジとはいえ危険牌を3枚押している事からテンパイ濃厚で、さらに最終手出し
、魚谷としては
を選択する事は必然であり、この防ぎ様のない放銃は観ている側も泣けてきてしまう。
私の主観かもしれないが、点数申告の際、珍しく魚谷の顔が歪んだのが印象的だった。
南4局

オーラス(古谷34,000・仲田31,600・魚谷27,400・武石27,000)
全員原点付近で浮き確保を目指す場面、古谷が手牌にも恵まれ、あっさりと2,000・4,000。
3巡目仲田の
チーで打
だったが、













この形でも1枚目の
には見向きもせず、落ち着きを見せる。
何よりこの満貫のツモアガリで、トータルトップを走る仲田の原点を割った上に、1人浮きトップに成功する。
6回戦成績
古谷+24.0P 仲田▲ 1.4P 魚谷▲ 7.6P 武石▲15.0P
6回戦終了時
仲田+40.4P 古谷+38.8P 魚谷▲33.3P 武石▲45.9P
7回戦(起家から、古谷・仲田・武石・魚谷)
全12回戦の折り返し6回戦を終え、ハッキリと上下2名ずつに分かれる展開となった。
武石は首位仲田まであと6半荘で85Pと言うとそれ程遠くは感じないが、間にいる同ポイントを持っている古谷も交わさなければいけない。頭取りにしか意味のない決定戦の難しい所だ。
そんな下位2名が差を詰めたい状況だが、それをあざ笑うかの様に上位2人のアガリ合戦が始まる。
東1局 親:古谷












リーチ ツモ
ドラ
古谷6巡目リーチで、10巡目に2,600オール
東2局2本場R1






チー

ポン

ロン
ドラ
魚谷から古谷3,900は4,500(+1,000)
東3局1本場R1









ポン

ロン
ドラ
魚谷から仲田7,700は8,000(+1,000)
東4局1本場R1






加カン


ポン

ツモ
ドラ
仲田2,000・4,000は2,100・4,100(+1,000)
南1局

先制テンパイは親古谷。絶好のドラ
を引き入れ選択。
安目
での3,900出アガリが不満という理由でリーチを選択しそうだが、古谷は手堅くヤミテンを選択した。

しかしこの古谷のヤミテン選択は、仲田への放銃という最悪の結果となってしまう。
古谷が11巡目即リーチをしていたら、仲田が
を切れるのかいう論点になるが、トイツ
が現物になっている為、真っすぐにはソーズは打てずトイツ落としになりそうなので、役ありテンパイはストレートには組めそうになかった。また魚谷の追いかけリーチのペン
待ちはリーチ時点ですでに純カラで、山に残り2枚の6,000オールをツモれるかの勝負に持ち込めていた。
もちろんアガリ牌は紙一重・1牌の後先、ヤミテンにして
が山に浅くすぐに12,000を出アガリできる事もあるので、結果論だけたどっても意味のない事なのだが、今まで見てきた古谷は、好形の勝負手はリーチでツモリに行く事が多かった様に思うので、この高めをヤミテンで拾いに行く判断は古谷のスタイルではない様に私には映った。
南3局









ポン

ロン
ドラ
古谷から仲田3,900
南4局

2人のアガリ合戦の終演は古谷。武石・魚谷と大物手でぶつかったが、見事に押し切り、またもや逆転トップを鮮やかに決め2連勝を飾ったと同時に、トータルポイントでも首位に躍り出た。

7回戦成績
古谷+21.7P 仲田+14.0P 武石+ 3.7P 魚谷▲39.4P
7回戦終了時
古谷+60.5P 仲田+54.4P 武石▲42.2P 魚谷▲72.7
8回戦(起家から、武石・古谷・仲田・魚谷)
東1局

上下が約100P差がついてしまい、残りこれを入れて5半荘。もう後がない下位2名は、多少のリスクを伴ってでも打点をつけながら、前のめりに踏み込まなければならない状況になっている。
それを象徴しているかの様な今局魚谷の選択打
だ。ツモ
でリーチを打てば3,900の中級打点テンパイだが、満貫級のアガリが見込めそうな手牌はテンパイ取らずの高打点狙い。しかも親がダブ
をポンしている状況での大リスクを背負っての選択だ。
この選択は、百戦錬磨の魚谷といえど、これ以上の点差は自身優勝不可能をはっきり意識している証明でもある。


一方で点数を持っている仲田は、跳満1シャンテンの手牌でもダブ
が鳴かれている状況ならば、
チーテンの3,900で万々歳だ。画像でも分かるように、
チーシフトになっていた。この手牌を魚谷にそっくり渡したならば、終盤までチーの選択など1ミリも考えない事だろう。
南3局1本場R1

古谷うまく七対子に決め打ちし7巡目ドラ
単騎リーチ。
驚いたのは、仲田がこのリーチ宣言牌
をこの形から食い延ばしのチーだ。自身手牌がチーして現物
だけ・手牌パンパン・メンツなし!しかも真っ直ぐ手を進めない打
!正直観ている側は、なんじゃそりゃと声が出かかった、本能で鳴いたとしか思えないもの凄い勝負感。

2巡後、古谷の3,000・6,000ツモ喰い取り!

次巡
チーを入れると、挙げ句の果てにはアガリまで成就した。
麻雀って怖い…。心底そう感じた。
南3局2本場

今日1日通して苦しかった武石だったが、久々に高打点を決めトップ終了となる。
これで武石は、トータルトップ仲田まで残り4半荘で約80P差、僅かな希望の光が見えてきた。

8回戦成績
武石+20.6P 仲田+ 5.2P 魚谷▲ 7.4P 古谷▲18.4P
8回戦終了時
仲田+59.6P 古谷+42.1P 武石▲21.6P 魚谷▲80.1P
カテゴリ:女流プロリーグ(女流桜花) 決勝観戦記












