鳳凰の部屋

「~開幕~」 藤崎 智

第36期鳳凰位決定戦初日。29期30期31期に続いて5年ぶり4回目の決定戦。
29期は初日▲50Pオーバーで1人大きく出遅れて結果3位。30期は初日からロケットスタートでそのまま大差での優勝。31期は初日▲50Pオーバーながら3日目に一旦トータルトップまでいき最終的には2位。というわけで過去3回は初日上か下かに振り切れていた。さて今回はいかに。

今決定戦の作戦はズバリ「出たとこ勝負」。個性的なメンバーとなった36期の決定戦なのだが、古川プロの仕掛けにどう対応しようか?打点力のある吉田プロと西川プロ相手にどこまで捌きを使おうか?等少し作戦を考えたが、自分が勝つ確率を少しでも上げるためには正攻法が一番良いのでは?という結論に達した。
自分の麻雀が正攻法という意味ではない。あくまで自分の中での正攻法、つまりはいつも通りの自分のスタイルでという事である。というわけで「出たとこ勝負」といってもけして何も考えていないわけではない・・・つもりである。しいていえば初日大きく出遅れるのは嫌ってくらい。

1回戦ノー和了のラス。▲29.3P。
2回戦。南4局の親番を迎えた時点で10,500点持ちのラス目。このまま終われば▲57P弱。さらにトップの古川プロとの差は早くも100ポイント以上ついている。とにかく全くアガれないし、とにかく何も出来ない感じである。

 

 

配牌には恵まれなかったもののツモがきいてくれて10巡目1シャンテン。これがなかなかテンパイ出来ない。15巡目にこの半荘を終わらせたい古川プロの仕掛けが入って16巡目テンパイ。これほど悪い状態でなければ少しでもアガリの確率を上げたい手なのでヤミテンに構えるのだが、このときはどうやってもアガリに結びつくイメージがわかなかった。なのでおそらくテンパイであろう古川プロにオリて欲しくてリーチといった。

 

 

自分なりの正攻法で?自分のスタイルで?
全16回戦の2回戦目にして早くも自分のスタイルを曲げた。早々に自分の中では「非常事態」となっていたのである。
思えば今決定戦で自分のスタイルを曲げたのはこの局だけだったように思う。4日間を通しても一番印象に残っている局である。

 

 

結果は自分でも驚きの6,000オール。まだ麻雀の神様には見放されてはいなかったようである。

1本場ではアガれず浮きまでとはいかなかったが、このアガりのあと3回戦以降雰囲気が一変した。

2回戦終了時 
古川+50.6P 吉田+17.4P 西川▲30.3P 藤崎▲37.7P

3回戦。東4局。ここまでアガリはないもののツモの伸びや展開で先程までとは明らかに雰囲気が違う。

 

 

場にすでに4枚見えの二万五万待ち。ヤミテンでも簡単に拾えそうでもないし打点的な兼ね合いでもリーチを選択。

 

 

この半荘トップ目の親番の西川プロの押し返し(実際メンホン一通のテンパイが入っていた)に内心ドキドキしていたが意外とあっさり2,000・4000のツモアガリ。
ここからは簡単ではなかったものの、展開が自分のスタイルに見事なまでにマッチして3回戦4回戦と2連勝で初日を締めくくった。

初日4回戦まで 
古川+53.2P 藤崎+6.4P 吉田▲25.7P 西川▲33.9P

どうなることやらと思っていた前半戦も終わってみればプラスで終えることが出来た。
1日で50ポイント近い差は決して小さくはないが前半の感じからすれば満点以上の結果だったと思う。

1日目を終えてのインタビューで、吉田プロが「藤崎さんばかり見ていた。2日目以降も藤崎さんマークで」と答えていた。

初日、局面を常にリードしていたのは明らか古川プロである。「サーフィン打法恐るべし」をまざまざと見せつけていた。「直それはないだろう!」と思って聞いていたのだが、考えてみればたいへん名誉なことである。鳳凰位を獲得するくらいの後輩に意識してもらえるのだから。

2日目以降も自分の出来る全てのものを出し惜しみせず出して、全力で勝ちにいこうと改めて思った瞬間だった。