プロ雀士インタビュー/第93回:前原 雄大

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第3期グランプリMAXを優勝した前原雄大

前原雄大。
前年度に勝った公式対局は、
第8回モンド王座・2012最強戦鉄人プロ予選・第1回インターネット麻雀日本選手権・第3回グランプリMAXと、この1年だけでもこれだけの勝ちを重ねている。
過去には、鳳凰位獲得・十段位を3連覇するなどの偉業を成し遂げている。
底知れない前原の強さはどこにあるのだろうか?
魚谷「前原さんグランプリ優勝おめでとうございますー!」
前原「ありがとう。今日は宜しくお願いします。」
魚谷「はい、こちらこそ宜しくお願いします!」
この日、前原プロのインタビューの場所として連れて行って頂いたのは、豆腐のコース料理が食べられるお店だった。

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前原「魚谷さんはダイエット中と聞いたので、あなたの好きそうな店を探してみたのだけどお気に召さなかったらごめんなさい。」
と、後輩である私にも細やかな気遣いを忘れない前原プロ。
前原プロの麻雀は、大胆で強引であると感じる人が多いかもしれないが、大胆かつ繊細であると私は思う。
それは、前原プロの人柄が麻雀に現れているのかもしれない。
 
【グランプリMAXについて】
前原「グランプリMAXはご覧になりました?率直な感想としてはどうでしたか?」
魚谷「はい、そうですね。タイトル戦の中でも早い展開や仕掛けが多かった印象ですね。ちょっと珍しい感じの決勝戦ですよね。」
前原「そうですね。決勝戦の前には、いつも展開のシミュレーションをするんだけど、今回の展開を考えると灘さんと古川さんは仕掛けが多く、勝又君は面前で大きく構えて来るよね。それを考えて自分の優勝出来る展開を考えた時に、灘さんと古川さんのペースに合わせた方が良いと思ったんだよ。だから、僕も2人のペースに合わせて役牌は全部一鳴きだったでしょ?鳳凰位戦には鳳凰位戦の作戦。グランプリMAXも決勝面子がきまった時に、たくさん頭でシミュレーションをしてた。僕はまず我在りきなんだけどね、今回はこの形で戦おうと思っていたんだ。優勝という結果はたまたまだけれどね。」
魚谷「凄いですね。私は面子に合わせての細かいスタイルチェンジは出来ないので…。
でも、今回の決勝戦は4着から始まり、2回戦もジリ貧の展開でしたが焦りはありませんでした?」
前原「焦りは全くなかったね。当然だけど自分がラスから始まる展開もシミュレーションしていたからね。もちろん1回戦にトップをとれたら2回戦以降の戦い方は決めていたよ。でも今回はラスを引いた事で、全体を冷静に見る事が出来たよ。今日は力技に頼っちゃ駄目な日なんだなって。」
魚谷「そうなんですね。その後も前原さんらしい、繊細な打ち回しをされているように見えました。」
 
【後輩達へ】
魚谷「前原さんは、これまで麻雀プロとして結果を残し続けて来ていますが、自分の強さはどこにあると思いますか?」
前原「まず第一に、僕は自分が強いと思った事はないし、過去の実績にも興味はないんだ。過去には意味はないし、人は皆過去に向かって生きているわけではないでしょ。僕らは今を生きているわけだし、明日に向かって生きているって事に近いかな。麻雀というゲームそのものに対する考え方が、自分の弱さと向き合うものだと思っている。僕はね、見ている人に”個性”を伝えていきたいんですよ。プロ連盟っていうのは、みんなそれぞれ個性を持っているでしょ?小島先生の麻雀、森山さんの麻雀、荒さんの麻雀。それぞれ素晴らしい個性があるでしょ?僕の麻雀はもしかしたら一般ファンの方に「あれで麻雀?」って言われてしまうかもしれない。それでも、自分の麻雀がガラクタである事にある種の快感と誇りは持っているよ。これが僕の麻雀だっていうのが1人でも多くの人に伝えられたらいいなぁって思ってるよ。」
前原「魚谷さんは、AKB48は詳しい?」
魚谷「詳しいってほどではないですが、人並みには知っていると思います。」
前原「去年の総選挙で篠田麻里子が言った言葉がね、凄く印象に残ってるんだよ。」
~「後輩に席を譲れ」と言う方もいるかもしれません。
でも、私は席を譲らないと上に上がれないメンバーは、AKBでは勝てないと思います。
私はこうやってみなさんと一緒に作りあげるAKB48というグループが大好きです。
だからこそ、後輩には育って欲しいと思ってます。 ~

前原「僕もこれと同じ気持ちで、勝ちを譲るつもりはない。でも、素質のある後輩に這い上がって来て欲しいと思ってるんだよ。麻雀プロのレベルを上げていく事が、プロ連盟のためにも、麻雀業界が発展していく事にも繋がっていくと思うからね。だから、今の僕の立ち位置を誰かに譲るつもりは毛頭ない。でも、それを揺るがしてくれる後輩の存在には期待をしているし、僕が教えられる事を教えていって強くなって欲しいとも心から思ってるよ。」
 
【白い妖精】
魚谷「前原さんは【地獄の門番】や【歌舞伎町のモンスター】など、いかにも強そうなキャッチフレーズがたくさんありますが何故【白い妖精】というキャッチフレーズが出来たのですか?」
前原「その話が来ましたか。あのね、正直恥ずかしい気持ちもあるのよ。白い妖精って僕のイメージと全く合わないでしょ?」
魚谷「そ、そうですね・・・なので、逆に前原さんのファンの方は由来を知りたいと思います。」
前原「1976年、モントリオールオリンピックで、金メダルを獲ったナディア・コマネチという選手が白い妖精っていうキャッチフレーズだったんだ。僕は当時19歳でね。感動したよ。その当時は10点満点が出るという事は想定されていなくて、9.99までしか表示出来なかったんだよ。だから掲示板に表示された点数は1.00だったんだ。10.0っていう数字が用意されていなかったからね。ナディア・コマネチは誰もが想像しなかった最高のパフォーマンスを魅せて10点満点を獲ったんだ。」
白い妖精・ナディア・コマネチ。
1976年、モントリオールオリンピックにて、段違い平行棒と平均台の演技で、近代オリンピック史上初めての10点満点を出し、個人総合と併せて金メダル3個、団体で銀メダル、ゆかで銅メダルを獲得した。
この時、実際に満点が出ることを想定していなかったため(当時は9.99までしか採点掲示板に表示できなかった)、掲示板には1.00点と表示された。
彼女は、限界想定の上を行くパフォーマンスを披露し、観客全てを魅了したのだ。
前原「僕もね、そうなりたいんだ。麻雀プロっていうのはパフォーマーであり、言葉を変えるならば表現者だと思う。舞台でパフォーマンスをするために、稽古を積むことは当たり前のことでしょ。見て貰う事で輝く、生きる。見てくれる方の想定の上を行くパフォーマンスを魅せられるような、そんな麻雀プロで在りたいという願いを込めて、このキャッチフレーズをつけたんだよ。でも、見た目に全く合わないから笑いが取れれば良いかなっていう意味も込めて・・・さ。」
魚谷「素敵ですね。私もそこを目指したいなと思っています。」
前原「『白い妖精』っていうキャッチフレーズは、むしろ僕より魚谷さんの方が近いんじゃないかなぁ。でもさ、これだけのパフォーマンスの裏側には、どれだけの日々の積み重ねがあるんだろうね。10.0と表記される頂点を僕たちは目指さなきゃいけない。そこに辿り着くのは果てしない事かもしれないけど、勝ち続けたら凄いと思ってくれる人も居るかもしれないでしょ。」
 
【麻雀プロの世界】
魚谷「私はまだ、麻雀を初めてからそんなに長くない年月ではありますが、その間は麻雀以外の事はやらないで生きて来ました。それは、私がまだ麻雀の基礎を学んでいるような段階なので当然の事かもしれませんが、前原さんは「麻雀だけをやっていても麻雀は強くならない」という考え方をお持ちですよね?私も今後、麻雀が強くなる為には、他の分野に目を向ける事も必要なのでしょうか?」
前原「・・・もしかして、何か前情報を仕入れて来てる?」
魚谷「???」
前原「あのね、最近みんなを叱った事があるんだよ。その情報があったからこういう質問なのかなぁと思ったんだけど、違うみたいだね。みんな勉強会や対局帰りに飲む事が多いんだけど、瀬戸くん(瀬戸熊)はみんなが飲みに行くのを横目に、すぐに帰ってロン2を打ってるんだよ。今、プロ連盟で最強の瀬戸くんが、対局が終わって飲みにも行かず麻雀を打っている。それだけの事をやっているのに、あなた達は何をやってるんだ。って。みんな、瀬戸くんを追いかける立場なわけでしょ?これじゃいつまで経っても瀬戸くんには追いつけない。」
魚谷「そうですね、本当にそう思います。」
前原「麻雀プロは孤独でなくてはならない。群れちゃ駄目なんだよ。お互いに高め合う関係を作っていく事は大切だけど、つるんで群れているだけじゃ何も成長しないよ。もちろん後輩達が群れているとは思ってないけどね。魚谷さんと女流モンドの決勝戦の解説に行くのに駅でバッタリ会った事があったでしょ?その時に、あなたがキャリーバックを引いていたからその理由を聞いたら、『今日のために最寄りの駅のホテルに泊まりました。』って言ったよね。それだけの舞台に上がる準備をしていると魚谷さんには感じた。それがプロとしての姿勢である、と。そういう意味で僕らと同じ土俵に立っていると思ってるんだ。魚谷さんは本当に一生懸命で全力で麻雀に取り組んでいるでしょ?それが本来在るべき麻雀プロの姿勢であり姿だと思ってるんだよね。」
魚谷「ありがとうございます、恐れ多くはありますが光栄です。」
前原「それでね、何が言いたいかって言うと、麻雀プロは麻雀を打たなきゃ駄目。それが大前提。でも、麻雀業界っていうのはまだまだ未成熟な業界だよ。麻雀業界だけを見てその中で頂点を目指すだけじゃ駄目なんだよ。成熟している世界から学んで来ることが大切。それはスポーツの世界だったり、美術の世界だったり、囲碁将棋の世界だったり。もちろん専門的知識は僕も門外漢なんだけど、その世界の人たちの背景を、在り方を知る事は必要な事なんじゃないかな。他の分野の良いものを取り入れるために、僕は色んな物を見ているんだ。」
魚谷「なるほど!確かにその通りですね。」
 
【麻雀プロとしての在り方】
前原「麻雀を打つっていう事は、その対局の日に備えて仕込み稽古をしなきゃいけないでしょ?これは昔、あるインタビューで言った事なんだけど・・・
『嫌いな事は?』『麻雀を打つ事です』
『一番好きな事は?』『麻雀です』と、答えた事があるんだ。」

魚谷「えっ、そうなんですか?でも、対局の前に、前原さんほど仕込み稽古を出来るプロってそう多くないと思います。嫌いな事として麻雀を挙げるというのは、その時間はきっと苦しく辛い時間なんでしょうね。」
前原「ありがとう。それに対局が続くと、寝むれなくなっちゃうんだよね。何でだろうね、考え過ぎちゃうのかな。勝っても反省して、その対局の事をずっと考えちゃうんだよ。だからグランプリMAXのあった3月は、1ヶ月のうちの半分以上が対局で、寝むれない日々が続いたんだよ。本当に辛かったね。対局で勝っても、打ち上げの席で対局の反省をしちゃうんだよね。小島先生や森山さんに『お前のための席なんだから、祝う側の気持ちを考えなさい』と叱られたりする。そうしなくてはいけない事は分かっているんだけど、なかなか気持ちの整理が出来ないんだ。不器用なんだよね。それでも長い戦いを終えて、2012年度最後のタイトル戦を勝ちで締めくくれた事は、素直に喜んではいるんだけどね。ただ、結果よりも内容だったり、プロセスの方が大切だと考えてもいるんだよね。そういう点では、今回の内容もいかがなものかと思う部分は多々ある。」
魚谷「前原さんは麻雀に対して、本当に真摯ですよね。そうやって麻雀と向き合い、努力し続ける前原さんは、麻雀プロの鏡であるように思います。」
前原「僕は努力という言葉自体好きじゃないし、言うべきものでも誇示するものでもないと思っている。麻雀プロとしてやるべき事をやるかやらないかだけだと思うし、実際は辛かったりきつかったりするのかもしれないけど、プロとして大切な事はいかに大らかに見せるかということだと思っている。苦しいとか口に出してしまうのはちょっと違うかな、と。」
 
前原は、タイトル戦の前には誰よりも多くの時間を稽古に費やし、対戦相手の研究を重ねて対局に挑む。
その準備の時間や決勝戦での戦いは辛く苦しいように私には映る。
しかし、稽古という辛く苦しい時間に対しても、麻雀プロとして誇りを持って真摯に取り組み続ける。
苦しみながらの稽古に、最大の時間を割ける麻雀プロがどれだけ居るだろうか。
一切の努力を惜しまず、麻雀に精魂を注ぎ続けられる麻雀プロがどれだけ居るだろうか。
連盟のトップを走り続ける前原は強く、気高い。
私が歩みを止めないでいられるのは、前原を始めとする素晴らしい先輩方が手本となり、背中を見せ続けてくれるからだ。
前原の背中は凄く大きく、誇らしい。そして、いつでも私たちに道を見せてくれている。
私もいつか、後輩に背中を見せられるような素晴らしい麻雀プロになれるように。
今はまだ凄く大きく見える前原の背中を追いかけて、走り続けよう。
並んで歩ける日が来るかどうかは分からない。
それでも、その日をいつか迎えられるように一歩一歩進み続け、更なる精進を重ねたいと強く思った。
そして、1視聴者としてこれからも前原の力強い麻雀を見続けたいと強く願っている。
改めまして前原プロ、グランプリMAX優勝おめでとうございます。
これからの一層のご活躍をお祈り申し上げます。

第93回:前原 雄大

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第3期グランプリMAXを優勝した前原雄大

前原雄大。
前年度に勝った公式対局は、
第8回モンド王座・2012最強戦鉄人プロ予選・第1回インターネット麻雀日本選手権・第3回グランプリMAXと、この1年だけでもこれだけの勝ちを重ねている。
過去には、鳳凰位獲得・十段位を3連覇するなどの偉業を成し遂げている。
底知れない前原の強さはどこにあるのだろうか?

魚谷「前原さんグランプリ優勝おめでとうございますー!」
前原「ありがとう。今日は宜しくお願いします。」
魚谷「はい、こちらこそ宜しくお願いします!」

この日、前原プロのインタビューの場所として連れて行って頂いたのは、豆腐のコース料理が食べられるお店だった。

0931

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前原「魚谷さんはダイエット中と聞いたので、あなたの好きそうな店を探してみたのだけどお気に召さなかったらごめんなさい。」

と、後輩である私にも細やかな気遣いを忘れない前原プロ。
前原プロの麻雀は、大胆で強引であると感じる人が多いかもしれないが、大胆かつ繊細であると私は思う。
それは、前原プロの人柄が麻雀に現れているのかもしれない。

 

【グランプリMAXについて】

前原「グランプリMAXはご覧になりました?率直な感想としてはどうでしたか?」
魚谷「はい、そうですね。タイトル戦の中でも早い展開や仕掛けが多かった印象ですね。ちょっと珍しい感じの決勝戦ですよね。」
前原「そうですね。決勝戦の前には、いつも展開のシミュレーションをするんだけど、今回の展開を考えると灘さんと古川さんは仕掛けが多く、勝又君は面前で大きく構えて来るよね。それを考えて自分の優勝出来る展開を考えた時に、灘さんと古川さんのペースに合わせた方が良いと思ったんだよ。だから、僕も2人のペースに合わせて役牌は全部一鳴きだったでしょ?鳳凰位戦には鳳凰位戦の作戦。グランプリMAXも決勝面子がきまった時に、たくさん頭でシミュレーションをしてた。僕はまず我在りきなんだけどね、今回はこの形で戦おうと思っていたんだ。優勝という結果はたまたまだけれどね。」
魚谷「凄いですね。私は面子に合わせての細かいスタイルチェンジは出来ないので…。
でも、今回の決勝戦は4着から始まり、2回戦もジリ貧の展開でしたが焦りはありませんでした?」
前原「焦りは全くなかったね。当然だけど自分がラスから始まる展開もシミュレーションしていたからね。もちろん1回戦にトップをとれたら2回戦以降の戦い方は決めていたよ。でも今回はラスを引いた事で、全体を冷静に見る事が出来たよ。今日は力技に頼っちゃ駄目な日なんだなって。」
魚谷「そうなんですね。その後も前原さんらしい、繊細な打ち回しをされているように見えました。」

 

【後輩達へ】

魚谷「前原さんは、これまで麻雀プロとして結果を残し続けて来ていますが、自分の強さはどこにあると思いますか?」
前原「まず第一に、僕は自分が強いと思った事はないし、過去の実績にも興味はないんだ。過去には意味はないし、人は皆過去に向かって生きているわけではないでしょ。僕らは今を生きているわけだし、明日に向かって生きているって事に近いかな。麻雀というゲームそのものに対する考え方が、自分の弱さと向き合うものだと思っている。僕はね、見ている人に”個性”を伝えていきたいんですよ。プロ連盟っていうのは、みんなそれぞれ個性を持っているでしょ?小島先生の麻雀、森山さんの麻雀、荒さんの麻雀。それぞれ素晴らしい個性があるでしょ?僕の麻雀はもしかしたら一般ファンの方に「あれで麻雀?」って言われてしまうかもしれない。それでも、自分の麻雀がガラクタである事にある種の快感と誇りは持っているよ。これが僕の麻雀だっていうのが1人でも多くの人に伝えられたらいいなぁって思ってるよ。」
前原「魚谷さんは、AKB48は詳しい?」
魚谷「詳しいってほどではないですが、人並みには知っていると思います。」
前原「去年の総選挙で篠田麻里子が言った言葉がね、凄く印象に残ってるんだよ。」

~「後輩に席を譲れ」と言う方もいるかもしれません。
でも、私は席を譲らないと上に上がれないメンバーは、AKBでは勝てないと思います。
私はこうやってみなさんと一緒に作りあげるAKB48というグループが大好きです。
だからこそ、後輩には育って欲しいと思ってます。 ~

前原「僕もこれと同じ気持ちで、勝ちを譲るつもりはない。でも、素質のある後輩に這い上がって来て欲しいと思ってるんだよ。麻雀プロのレベルを上げていく事が、プロ連盟のためにも、麻雀業界が発展していく事にも繋がっていくと思うからね。だから、今の僕の立ち位置を誰かに譲るつもりは毛頭ない。でも、それを揺るがしてくれる後輩の存在には期待をしているし、僕が教えられる事を教えていって強くなって欲しいとも心から思ってるよ。」

 

【白い妖精】

魚谷「前原さんは【地獄の門番】や【歌舞伎町のモンスター】など、いかにも強そうなキャッチフレーズがたくさんありますが何故【白い妖精】というキャッチフレーズが出来たのですか?」
前原「その話が来ましたか。あのね、正直恥ずかしい気持ちもあるのよ。白い妖精って僕のイメージと全く合わないでしょ?」
魚谷「そ、そうですね・・・なので、逆に前原さんのファンの方は由来を知りたいと思います。」
前原「1976年、モントリオールオリンピックで、金メダルを獲ったナディア・コマネチという選手が白い妖精っていうキャッチフレーズだったんだ。僕は当時19歳でね。感動したよ。その当時は10点満点が出るという事は想定されていなくて、9.99までしか表示出来なかったんだよ。だから掲示板に表示された点数は1.00だったんだ。10.0っていう数字が用意されていなかったからね。ナディア・コマネチは誰もが想像しなかった最高のパフォーマンスを魅せて10点満点を獲ったんだ。」

白い妖精・ナディア・コマネチ。
1976年、モントリオールオリンピックにて、段違い平行棒と平均台の演技で、近代オリンピック史上初めての10点満点を出し、個人総合と併せて金メダル3個、団体で銀メダル、ゆかで銅メダルを獲得した。
この時、実際に満点が出ることを想定していなかったため(当時は9.99までしか採点掲示板に表示できなかった)、掲示板には1.00点と表示された。
彼女は、限界想定の上を行くパフォーマンスを披露し、観客全てを魅了したのだ。

前原「僕もね、そうなりたいんだ。麻雀プロっていうのはパフォーマーであり、言葉を変えるならば表現者だと思う。舞台でパフォーマンスをするために、稽古を積むことは当たり前のことでしょ。見て貰う事で輝く、生きる。見てくれる方の想定の上を行くパフォーマンスを魅せられるような、そんな麻雀プロで在りたいという願いを込めて、このキャッチフレーズをつけたんだよ。でも、見た目に全く合わないから笑いが取れれば良いかなっていう意味も込めて・・・さ。」
魚谷「素敵ですね。私もそこを目指したいなと思っています。」
前原「『白い妖精』っていうキャッチフレーズは、むしろ僕より魚谷さんの方が近いんじゃないかなぁ。でもさ、これだけのパフォーマンスの裏側には、どれだけの日々の積み重ねがあるんだろうね。10.0と表記される頂点を僕たちは目指さなきゃいけない。そこに辿り着くのは果てしない事かもしれないけど、勝ち続けたら凄いと思ってくれる人も居るかもしれないでしょ。」

 

【麻雀プロの世界】

魚谷「私はまだ、麻雀を初めてからそんなに長くない年月ではありますが、その間は麻雀以外の事はやらないで生きて来ました。それは、私がまだ麻雀の基礎を学んでいるような段階なので当然の事かもしれませんが、前原さんは「麻雀だけをやっていても麻雀は強くならない」という考え方をお持ちですよね?私も今後、麻雀が強くなる為には、他の分野に目を向ける事も必要なのでしょうか?」
前原「・・・もしかして、何か前情報を仕入れて来てる?」
魚谷「???」
前原「あのね、最近みんなを叱った事があるんだよ。その情報があったからこういう質問なのかなぁと思ったんだけど、違うみたいだね。みんな勉強会や対局帰りに飲む事が多いんだけど、瀬戸くん(瀬戸熊)はみんなが飲みに行くのを横目に、すぐに帰ってロン2を打ってるんだよ。今、プロ連盟で最強の瀬戸くんが、対局が終わって飲みにも行かず麻雀を打っている。それだけの事をやっているのに、あなた達は何をやってるんだ。って。みんな、瀬戸くんを追いかける立場なわけでしょ?これじゃいつまで経っても瀬戸くんには追いつけない。」
魚谷「そうですね、本当にそう思います。」
前原「麻雀プロは孤独でなくてはならない。群れちゃ駄目なんだよ。お互いに高め合う関係を作っていく事は大切だけど、つるんで群れているだけじゃ何も成長しないよ。もちろん後輩達が群れているとは思ってないけどね。魚谷さんと女流モンドの決勝戦の解説に行くのに駅でバッタリ会った事があったでしょ?その時に、あなたがキャリーバックを引いていたからその理由を聞いたら、『今日のために最寄りの駅のホテルに泊まりました。』って言ったよね。それだけの舞台に上がる準備をしていると魚谷さんには感じた。それがプロとしての姿勢である、と。そういう意味で僕らと同じ土俵に立っていると思ってるんだ。魚谷さんは本当に一生懸命で全力で麻雀に取り組んでいるでしょ?それが本来在るべき麻雀プロの姿勢であり姿だと思ってるんだよね。」
魚谷「ありがとうございます、恐れ多くはありますが光栄です。」
前原「それでね、何が言いたいかって言うと、麻雀プロは麻雀を打たなきゃ駄目。それが大前提。でも、麻雀業界っていうのはまだまだ未成熟な業界だよ。麻雀業界だけを見てその中で頂点を目指すだけじゃ駄目なんだよ。成熟している世界から学んで来ることが大切。それはスポーツの世界だったり、美術の世界だったり、囲碁将棋の世界だったり。もちろん専門的知識は僕も門外漢なんだけど、その世界の人たちの背景を、在り方を知る事は必要な事なんじゃないかな。他の分野の良いものを取り入れるために、僕は色んな物を見ているんだ。」
魚谷「なるほど!確かにその通りですね。」

 

【麻雀プロとしての在り方】

前原「麻雀を打つっていう事は、その対局の日に備えて仕込み稽古をしなきゃいけないでしょ?これは昔、あるインタビューで言った事なんだけど・・・
『嫌いな事は?』『麻雀を打つ事です』
『一番好きな事は?』『麻雀です』と、答えた事があるんだ。」

魚谷「えっ、そうなんですか?でも、対局の前に、前原さんほど仕込み稽古を出来るプロってそう多くないと思います。嫌いな事として麻雀を挙げるというのは、その時間はきっと苦しく辛い時間なんでしょうね。」
前原「ありがとう。それに対局が続くと、寝むれなくなっちゃうんだよね。何でだろうね、考え過ぎちゃうのかな。勝っても反省して、その対局の事をずっと考えちゃうんだよ。だからグランプリMAXのあった3月は、1ヶ月のうちの半分以上が対局で、寝むれない日々が続いたんだよ。本当に辛かったね。対局で勝っても、打ち上げの席で対局の反省をしちゃうんだよね。小島先生や森山さんに『お前のための席なんだから、祝う側の気持ちを考えなさい』と叱られたりする。そうしなくてはいけない事は分かっているんだけど、なかなか気持ちの整理が出来ないんだ。不器用なんだよね。それでも長い戦いを終えて、2012年度最後のタイトル戦を勝ちで締めくくれた事は、素直に喜んではいるんだけどね。ただ、結果よりも内容だったり、プロセスの方が大切だと考えてもいるんだよね。そういう点では、今回の内容もいかがなものかと思う部分は多々ある。」
魚谷「前原さんは麻雀に対して、本当に真摯ですよね。そうやって麻雀と向き合い、努力し続ける前原さんは、麻雀プロの鏡であるように思います。」
前原「僕は努力という言葉自体好きじゃないし、言うべきものでも誇示するものでもないと思っている。麻雀プロとしてやるべき事をやるかやらないかだけだと思うし、実際は辛かったりきつかったりするのかもしれないけど、プロとして大切な事はいかに大らかに見せるかということだと思っている。苦しいとか口に出してしまうのはちょっと違うかな、と。」

 

前原は、タイトル戦の前には誰よりも多くの時間を稽古に費やし、対戦相手の研究を重ねて対局に挑む。
その準備の時間や決勝戦での戦いは辛く苦しいように私には映る。
しかし、稽古という辛く苦しい時間に対しても、麻雀プロとして誇りを持って真摯に取り組み続ける。
苦しみながらの稽古に、最大の時間を割ける麻雀プロがどれだけ居るだろうか。
一切の努力を惜しまず、麻雀に精魂を注ぎ続けられる麻雀プロがどれだけ居るだろうか。

連盟のトップを走り続ける前原は強く、気高い。
私が歩みを止めないでいられるのは、前原を始めとする素晴らしい先輩方が手本となり、背中を見せ続けてくれるからだ。

前原の背中は凄く大きく、誇らしい。そして、いつでも私たちに道を見せてくれている。
私もいつか、後輩に背中を見せられるような素晴らしい麻雀プロになれるように。
今はまだ凄く大きく見える前原の背中を追いかけて、走り続けよう。
並んで歩ける日が来るかどうかは分からない。
それでも、その日をいつか迎えられるように一歩一歩進み続け、更なる精進を重ねたいと強く思った。
そして、1視聴者としてこれからも前原の力強い麻雀を見続けたいと強く願っている。

改めまして前原プロ、グランプリMAX優勝おめでとうございます。
これからの一層のご活躍をお祈り申し上げます。

鳳凰の部屋/第29期鳳凰戦の軌跡~決意~

久々に机に向かってこの原稿を書いている。
懐かしい気分になる。2年間書いた過去の文章を読みかえす。
素直に真剣に書いた文章だなぁと思う反面、麻雀に対するアプローチには、ちょっとだけ若さを感じる。
負けてからの1年、少しだけ成長した自分を感じる。書きたい事がたくさんある。
ファンの皆様や、後輩たちに伝えたい気持ちや言葉が山ほどある。
前回と同じように、嘘、偽りのない自分の想いを伝えていきたいと思います。
皆さま、1年間お付き合いくださいませ。
第28期鳳凰位決定戦12回戦
東2局2本場
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望月プロの6,000オールが出た次局のリーチを受け、僕は勝手に態勢の悪さを感じ、
ヤミテンで押し、五筒を勝負した次のツモ九筒で廻ってしまう。
今年の決定戦をみた人からすれば、とても瀬戸熊直樹の麻雀には見えないであろう。
今の僕なら、いや、この時でも普通の僕なら、8巡目のテンパイ。
八万八万三索五索八索八索九索一筒二筒三筒発発発  ツモ八万 
これで打九索のヤミテン。
望月プロのリーチを受けて11巡目のツモ六索で、リーチをして当然の1局である。
そうすれば、15巡目にツモ七索で、2,000・4,000の引きアガリである。
何度、この牌譜を見返しただろう。
「鳳凰位としてこの2年、いったい何をして来たのだろう」
「憧れの荒さんとの真剣勝負で、僕はいったい何て不様な麻雀を打っているのだろう」
1年間、この気持ちが消える事はなかった。
第28期鳳凰位決定戦が終わって、また次のシーズンが始まろうとしていた。
もう一度あの舞台に立つために、自分がすべき事は明確に解っていた。
「行き腰のある麻雀を打つ」
これを第29期AⅠリーグ戦のテーマとした。
今からそんなに古くない、ある日の情景がいつも目に浮かぶ。
麻雀プロ1本でやって行こうと決めた僕は、サラリーマンをやめた。
当然、プロとしての収入源などはなく、雀荘で働く事となった。
その後、身体をこわし、雀荘での仕事もやめた。
もちろん無名の僕にゲストの仕事などのオファーがくるはずもなく、すぐに生活するのにも困る事となる。
普通の人ならアルバイトでも何でもして、何とかするのだろうが、
「麻雀プロとして生きて行こう」と、くだらないプライドを捨て切れない僕は、麻雀と関連する数少ない仕事しかしなくなる。
月末に家賃が払えなくなったりした。その日の飯代にも困ったりした。
本当にどうにもならなくなった。仕方なく、年老いた年金暮らしの両親に借金しに行くことにした。
もちろん電話なんかできない。
電車にゆられて2時間をかけ、実家のある駅に降り立つ。駅から10分のところにある実家。
門の前まで行くが、インターフォンを鳴らす事が出来ない。近くの公園で日が暮れるまで座っていた。
もうすぐ終電がなくなろうという時、本当に悔しさと申し訳なさに打ちひしがれながら、インターフォンを鳴らす。親父もおふくろも、三十を超えた息子のそんな様子に全てを悟ったようだ。
おふくろは泣きながら「どうして何でもいいから普通の生活をしないの?」と言い、
親父は「お前は何がしたいんだ」と冷静に語りかけた。
「プロ雀士として日本一になって、きっと食えるようになりますから、どうかお金を貸して下さい」
土下座して両親に詫びた。
普通の人なら「明日からアルバイトでも何でも始めますから、今回だけは助けて下さい」と言うのだろう。
今でこそ、麻雀界に携わる方々の努力のおかげで、一流プレイヤーになれば普通の生活ぐらいはできる世界となったが、当時は日本一の打ち手になったとしても何の保証もない頃である。
「鳳凰位になりたい」この想いだけで生きてきた。
両親から生活費を借り、人ひとりいないホームで電車を待つ間むせび泣いた。
そして誓った。
必ず次に実家に帰って来る時は、「お父さん、お母さんあの時はごめんね」と、笑い話にできるようになると。
そんな気持ちで日々を生き抜き、勝ち獲った鳳凰位だったにもかかわらず、2年間の鳳凰位の間に、僕はすっかり戦う気持ちを失ってしまっていたのだ。
荒さんに負けて気付いた。
「僕はまだまだ一流プレイヤーじゃない。そんな僕がこれぐらいで満足してしまったら、またあの日に戻ってしまう。全てを失う前にもう一度自分を鍛えなくてはダメだ」
第29期プロリーグ第1節前夜。
AⅠリーグ12名で全10節を戦い、上位3名にだけ与えられる挑戦者の権利。
ここに入らなければ、再び鳳凰位になる事は絶対に出来ない。
『1年間、いかに戦うか?』長年のAリーグ対局で、ひとつの事は明確に解っていた。
『リーグ戦は一節一節積み重ねが大事』だと。
とにかく、各節の4半荘、集中してしっかり前に出て戦い、瀬戸熊直樹らしく打ち抜く事。
そして、全ての節をプラスでまとめる事。これらの事を言い聞かせていた。
ここを決めてしまえば、後はやる事は1つ。
僕が僕の麻雀を打つ為の配牌をもらってから、1局を終え、それらを線でつないでいく作業をしっかりやるだけである。その為の、体力と精神を日々の生活でつちかう。
そうするとなると、日々の生活のリズムも決まってくる。
対局からの逆算、試合からの逆算。これらはどのプロでも同じである。
数年前までは、こんな簡単な事にも気付いてなかった。荒さんに挑戦する日から逆算した調整。
リーグ戦をきっちり戦い抜き、そこを糧として今度こそ恥ずかしくない麻雀を打つ事を決意したのである。
プロリーグ最終節を終えて、僕は2位で再び最高峰のステージに立つ権利を獲得した。
これほど1年頑張った年はないと思えるほど調整と実戦をやり通した。
もっと早く日々の生活が大切だと気付けば良かったなとつくづく思った。
決定戦出場が決まった日、自分に問いかける。
「お前は、そんなにまたあの景色がみたかったのか?」
僕の答えは、
「再び鳳凰位になりたいのは隠しようのない事実だけど、それよりももっと大切な事があります。僕は前回、本当に情けない麻雀を打って負けました。僕の事を本当に応援してくれた人達に、『瀬戸熊らしい』麻雀を見せられず失望させました。だから、勝ち負けよりも僕の麻雀をしっかり打って、応援してくれる人に胸をはって『精一杯やりました』と言いたいが為に、ここを目指したのです。」
第28期鳳凰位決定戦19回戦東2局
 
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望月プロに切れなかった九筒と、最終日についに先頭の荒プロに肉迫したにも関わらず、ホンイツに向かえなかった上図のシーン。1年戦いを終えて、僕は今、何万回このシーンを迎えても、ひよらない麻雀を打てる訓練を終えた。
あとは、3人の先輩方にしっかりこの麻雀をぶつけるだけだ。
第29期鳳凰戦の軌跡 ~克己~ へ続く。

第29期鳳凰戦の軌跡~決意~

久々に机に向かってこの原稿を書いている。
懐かしい気分になる。2年間書いた過去の文章を読みかえす。
素直に真剣に書いた文章だなぁと思う反面、麻雀に対するアプローチには、ちょっとだけ若さを感じる。

負けてからの1年、少しだけ成長した自分を感じる。書きたい事がたくさんある。
ファンの皆様や、後輩たちに伝えたい気持ちや言葉が山ほどある。
前回と同じように、嘘、偽りのない自分の想いを伝えていきたいと思います。
皆さま、1年間お付き合いくださいませ。

第28期鳳凰位決定戦12回戦
東2局2本場

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望月プロの6,000オールが出た次局のリーチを受け、僕は勝手に態勢の悪さを感じ、
ヤミテンで押し、五筒を勝負した次のツモ九筒で廻ってしまう。
今年の決定戦をみた人からすれば、とても瀬戸熊直樹の麻雀には見えないであろう。

今の僕なら、いや、この時でも普通の僕なら、8巡目のテンパイ。

八万八万三索五索八索八索九索一筒二筒三筒発発発  ツモ八万 

これで打九索のヤミテン。
望月プロのリーチを受けて11巡目のツモ六索で、リーチをして当然の1局である。
そうすれば、15巡目にツモ七索で、2,000・4,000の引きアガリである。

何度、この牌譜を見返しただろう。
「鳳凰位としてこの2年、いったい何をして来たのだろう」
「憧れの荒さんとの真剣勝負で、僕はいったい何て不様な麻雀を打っているのだろう」
1年間、この気持ちが消える事はなかった。

第28期鳳凰位決定戦が終わって、また次のシーズンが始まろうとしていた。
もう一度あの舞台に立つために、自分がすべき事は明確に解っていた。

「行き腰のある麻雀を打つ」

これを第29期AⅠリーグ戦のテーマとした。

今からそんなに古くない、ある日の情景がいつも目に浮かぶ。
麻雀プロ1本でやって行こうと決めた僕は、サラリーマンをやめた。
当然、プロとしての収入源などはなく、雀荘で働く事となった。
その後、身体をこわし、雀荘での仕事もやめた。
もちろん無名の僕にゲストの仕事などのオファーがくるはずもなく、すぐに生活するのにも困る事となる。

普通の人ならアルバイトでも何でもして、何とかするのだろうが、
「麻雀プロとして生きて行こう」と、くだらないプライドを捨て切れない僕は、麻雀と関連する数少ない仕事しかしなくなる。

月末に家賃が払えなくなったりした。その日の飯代にも困ったりした。
本当にどうにもならなくなった。仕方なく、年老いた年金暮らしの両親に借金しに行くことにした。
もちろん電話なんかできない。

電車にゆられて2時間をかけ、実家のある駅に降り立つ。駅から10分のところにある実家。
門の前まで行くが、インターフォンを鳴らす事が出来ない。近くの公園で日が暮れるまで座っていた。
もうすぐ終電がなくなろうという時、本当に悔しさと申し訳なさに打ちひしがれながら、インターフォンを鳴らす。親父もおふくろも、三十を超えた息子のそんな様子に全てを悟ったようだ。
おふくろは泣きながら「どうして何でもいいから普通の生活をしないの?」と言い、
親父は「お前は何がしたいんだ」と冷静に語りかけた。

「プロ雀士として日本一になって、きっと食えるようになりますから、どうかお金を貸して下さい」
土下座して両親に詫びた。

普通の人なら「明日からアルバイトでも何でも始めますから、今回だけは助けて下さい」と言うのだろう。
今でこそ、麻雀界に携わる方々の努力のおかげで、一流プレイヤーになれば普通の生活ぐらいはできる世界となったが、当時は日本一の打ち手になったとしても何の保証もない頃である。

「鳳凰位になりたい」この想いだけで生きてきた。

両親から生活費を借り、人ひとりいないホームで電車を待つ間むせび泣いた。
そして誓った。
必ず次に実家に帰って来る時は、「お父さん、お母さんあの時はごめんね」と、笑い話にできるようになると。

そんな気持ちで日々を生き抜き、勝ち獲った鳳凰位だったにもかかわらず、2年間の鳳凰位の間に、僕はすっかり戦う気持ちを失ってしまっていたのだ。

荒さんに負けて気付いた。
「僕はまだまだ一流プレイヤーじゃない。そんな僕がこれぐらいで満足してしまったら、またあの日に戻ってしまう。全てを失う前にもう一度自分を鍛えなくてはダメだ」

第29期プロリーグ第1節前夜。
AⅠリーグ12名で全10節を戦い、上位3名にだけ与えられる挑戦者の権利。
ここに入らなければ、再び鳳凰位になる事は絶対に出来ない。

『1年間、いかに戦うか?』長年のAリーグ対局で、ひとつの事は明確に解っていた。
『リーグ戦は一節一節積み重ねが大事』だと。

とにかく、各節の4半荘、集中してしっかり前に出て戦い、瀬戸熊直樹らしく打ち抜く事。
そして、全ての節をプラスでまとめる事。これらの事を言い聞かせていた。

ここを決めてしまえば、後はやる事は1つ。
僕が僕の麻雀を打つ為の配牌をもらってから、1局を終え、それらを線でつないでいく作業をしっかりやるだけである。その為の、体力と精神を日々の生活でつちかう。
そうするとなると、日々の生活のリズムも決まってくる。
対局からの逆算、試合からの逆算。これらはどのプロでも同じである。

数年前までは、こんな簡単な事にも気付いてなかった。荒さんに挑戦する日から逆算した調整。
リーグ戦をきっちり戦い抜き、そこを糧として今度こそ恥ずかしくない麻雀を打つ事を決意したのである。

プロリーグ最終節を終えて、僕は2位で再び最高峰のステージに立つ権利を獲得した。
これほど1年頑張った年はないと思えるほど調整と実戦をやり通した。
もっと早く日々の生活が大切だと気付けば良かったなとつくづく思った。

決定戦出場が決まった日、自分に問いかける。
「お前は、そんなにまたあの景色がみたかったのか?」

僕の答えは、
「再び鳳凰位になりたいのは隠しようのない事実だけど、それよりももっと大切な事があります。僕は前回、本当に情けない麻雀を打って負けました。僕の事を本当に応援してくれた人達に、『瀬戸熊らしい』麻雀を見せられず失望させました。だから、勝ち負けよりも僕の麻雀をしっかり打って、応援してくれる人に胸をはって『精一杯やりました』と言いたいが為に、ここを目指したのです。」

第28期鳳凰位決定戦19回戦東2局
 
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望月プロに切れなかった九筒と、最終日についに先頭の荒プロに肉迫したにも関わらず、ホンイツに向かえなかった上図のシーン。1年戦いを終えて、僕は今、何万回このシーンを迎えても、ひよらない麻雀を打てる訓練を終えた。

あとは、3人の先輩方にしっかりこの麻雀をぶつけるだけだ。

第29期鳳凰戦の軌跡 ~克己~ へ続く。

北関東プロリーグ レポート/第8期北関東リーグ 準決勝&決勝レポート

 
準決勝 半荘3回戦(各卓上位2名勝ち上がり)
1卓(沢崎・小川・福田・渡部)
1回戦、東場から小刻みにアガリを重ねる沢崎に福田、渡部がなんとか食らいつき、小川の1人沈みに。
1回戦成績
沢崎+18.0P 小川▲29.9P 福田+4.6P 渡部+7.3P
2回戦、積極的に仕掛ける福田に対応して上手く打ち回していた小川、渡部だったが、アガリが遠い苦しい展開になる。
2回戦成績
福田+19.4P 沢崎+8.2P 渡部▲9.5P 小川▲18.1P
2回戦終了時
沢崎+26.2P 福田+24.0P 渡部▲2.2P 小川▲48.0P
3回戦、東2局に渡部とのリーチ合戦を制し、福田が3,900は4,000オールをアガる。
これで福田はほぼ決勝当確となる。
2回戦まで苦しい状況が続いていた小川だったが、最後に意地を見せる。
2,000・4,000は2,200・4,200から始まり、渡部から8,000、そしてヤミテンで16,000と大物手を連発させる。
オーラスの親番では、かわしに掛かる沢崎に、
一索二索五索五索五索五索六索七索八索八索中中中  ドラ発
これをリーチでカブせるが流局。
次局1本場では苦しそうな配牌からメンホンチートイの1シャンテンまでこぎつけたが、テンパイできずに終局となった。
3回戦成績
沢崎▲11.3P 福田+11.8P 渡部▲34.8P 小川+35.1P
トータル
福田+35.8P 沢崎+14.9P 小川▲12.9P 渡部▲37.0P
決勝進出者:福田・沢崎
2卓(吉田・元木・小林・内野)
1回戦、吉田は開局に1,000オールをアガリ、重要な局面でのリーチ合戦を制するなど上々のスタートをきった。
1回戦成績
吉田+29.7P 元木+7.6P 小林▲13.6P 内野▲23.7P
2回戦、終始子場の展開を元木が1人浮きでまとめる。
2回戦成績
内野▲1.9P 吉田▲10.1P 元木+16.3P 小林▲4.3P
2回戦終了時
元木+23.9P 吉田+19.6P 小林▲17.9P 内野▲25.6P
プロ2人が優位な立場で始まった3回戦、東1局に吉田が6,000オールをツモアガリほぼ決勝当確となる。
ここから残り1つの椅子を争う戦いになるのだが、内野が親番で2,000オール、2,100オールとアガリを重ね次局にはドラポンから2,000・3,900を引き元木に迫る。
小林もラス前に8,000をアガリオーラスの親番を持ってくるが、最後は吉田がアガリきった。
元木はまさかのハコラスで敗退となってしまった。
3回戦成績
吉田+12.4P 内野+22.3P 元木▲39.8P 小林+5.1P
トータル
吉田+32.0P 内野▲3.3P 小林▲12.8P 元木▲23.5P
決勝進出者:吉田・内野
 
 
 
決勝戦 半荘4回戦
1回戦(起家から 吉田・沢崎・福田・内野)
東1局、誰もが先取点を取りたいところに7巡目、沢崎から先制リーチが入る。
吉田も仕掛けて追いつくがここは沢崎に軍配があがる。内野から3,200。
東2局、吉田の牌姿は、
九万九万四筒五筒六筒六筒八筒三索三索四索西北北  ドラ西
ここから自風の北を2枚ともふかすと次巡、西を重ね七対子に向かう。
その後も上手く牌を重ね、リーチまでこぎつけるが流局となる。
東3局、12巡目に内野は、
一万二万二万三万四万五万六万一筒一筒五筒六筒四索六索 ツモ七筒 ドラ二万
ここから打六索とする。
次巡、ツモ八万四索
次巡、ツモ七万ときて二万切りリーチとするが、沢崎にヤミテンでの2,000に捕まってしまう。
東4局、序盤から場が一気に動き出す。
3巡目に福田がオタ風の西から仕掛けると5巡目には沢崎が六筒をポン。
この時私は沢崎の手に力が入っているように感じた。
そして15巡目沢崎の手が開かれる。
五万五万五万二索二索三索五索  チー六索七索八索  ポン六筒六筒六筒  ツモ四索  ドラ五万
この2,000・3,900を力強く引きアガる。
次局は福田が、得意の仕掛けから8,000をアガリ、南3局には内野が13巡目に、
一万二万三万三万四万五万六万七万発発中中中  ツモ八万  ドラ東
この2,000・4,000をアガリ、吉田の1人沈みでオーラスを迎える。
しかし吉田もここで意地を見せる。
内野の仕掛けに負けじと仕掛け返し、福田から7,700を討ち取り1人沈みを免れる。
1回戦成績
吉田▲18.4P 沢崎+21.9P 福田▲8.2P 内野+4.7P
2回戦(起家から 吉田・内野・沢崎・福田)
東1局、福田が5巡目に先制リーチを打つ。内野も1シャンテンから押すが福田の1人テンパイで流局。
次局は福田が積極的に仕掛けを入れ内野から1,000は1,300。
東3局、8巡目に沢崎は、
四万六万四筒四筒六筒六筒八筒一索二索三索三索五索五索  ツモ五索  ドラ八索
ここから打一索とする。
この後も吉田の仕掛けに対応しながら、13巡目に、
四万五万六万三筒四筒六筒六筒二索三索四索五索五索五索
これをしっかりとヤミテンに受けて内野から2,000をアガリ、続く1本場、2本場と流局。
3本場は内野がなんとかアガリ沢崎の親を落とす事に成功する。
次局は教科書通りの手順で沢崎が1,300・2,600。
やはり沢崎に付け入る隙はないのかと思われたが南2局、吉田にチャンス手が入る。
その吉田の配牌は、
六万七万二筒二筒二筒三筒四筒五筒六筒六筒九筒九筒三索  ドラ九筒
5巡目に二筒をポンすると、次巡に四筒をチーして、
二筒三筒四筒五筒六筒九筒九筒  チー四筒五筒六筒  ポン二筒二筒二筒
これを沢崎から四筒で討ち取り12,000。
しかしこの後も沢崎は冷静に打ち回し浮きをキープした。
内野はオーラスの7巡目に、
四万五万五筒六筒七筒二索三索四索四索五索六索八索八索  ドラ四万
このリーチを打ち、アガれば浮きに回れたのだが、流局してしまった。
2回戦成績
吉田+13.4P 内野▲14.3P 沢崎+5.2P 福田▲5.3P 供託1.0P
2回戦終了時
沢崎+27.1P 吉田▲5.0P 内野▲9.6P 福田▲13.5  供託1.0P
3回戦 (起家から 吉田・福田・沢崎・内野)
東1局、沢崎にチャンス手が入る。
4巡目に自風の西を仕掛けて、
一筒二筒二筒五筒七筒八筒八筒東東東 ポン西西西
この形。次巡に八筒をポンして満貫テンパイを入れる。8巡目には二筒を引き込み打五筒とし跳満のテンパイにとるが、ここで福田からリーチが入る。そして13巡目、沢崎のツモは三筒。だが一筒がフリテンになってしまうためツモ切りとする。が、次巡のツモは無情にも三筒。そしてこの局は福田がアガリきった。
このアガリで気分良く親番を迎えた福田は、1,500、2,900は3,200、5,800は6,400とアガリを重ねる。
東3局4本場はここまでずっと我慢していた内野が14巡目に、
三万四万五万五万六万七万五筒七筒五索六索七索東東
これをリーチして、ポンテンをとっていた吉田からアガリ、供託付きで7,400点の加点をした。
そして、福田の1人浮きで迎えた南3局1本場。親番の沢崎が早々に仕掛け2,000は2,100オール。
これで沢崎も浮きに回る。2本場ではトップ目の福田から2,900は3,500をアガリ、たった2局で沢崎がトップ目に立つ。
南4局4本場、この親でなんとか浮きに回りたい内野は14巡目、
二万二万二筒三筒四筒五筒六筒七筒一索三索五索六索七索  ドラ中
これをリーチ。ピンフのテンパイをしていた吉田から討ち取り連荘に成功する。
続く5本場は福田が、
三万三万二筒三筒四筒五筒五筒七筒七索八索八索八索九索  ドラ八筒
この牌姿から6巡目の六索をチーしてタンヤオに向かい、内野からアガリ、浮きをキープして最終戦に望みを繋いだ。
3回戦成績
吉田▲16.8P 福田+7.7P 沢崎+16.2P 内野▲7.1P
3回戦終了時
沢崎+43.3P 福田▲5.8P 内野▲16.7P 吉田▲21.8P 供託1.0P
最終戦は沢崎がこのまま逃げ切るのか、、、それとも他3人が意地を見せるのか、、、
小休憩の後、最終戦が開始される賽が振られた。
最終戦(起家から 福田・内野・吉田・沢崎)
東1局は内野が吉田から2,600をアガる。
次局は先程の放銃をものともしない冷静な打ち回しで、吉田が白単騎の七対子をリーチしてツモアガる。
東4局は福田が、
三万四万五万一筒一筒一筒八筒八筒二索三索五索六索七索  ドラ一筒
これをリーチして引きアガリ2,000・4,000。
このアガリで親番を持ってきた福田だったが、吉田に大物手が入る。
三索三索東北北白中  ポン四索四索四索  ポン南南南  ドラ三索
7巡目に白を重ね、9巡目に北をポンして、
三索三索白白  ポン北北北  ポン四索四索四索  ポン南南南
この倍満テンパイを入れる。
これに真っ向から勝負を挑む福田は、
三万四万五万三筒四筒五筒五筒六筒七筒一索二索中中
これをリーチとしたが、数巡後、福田の持ってきた牌は白、、、
吉田に16,000の放銃となってしまった。
次局、吉田は1シャンテンでターツ選択を迫られるが、これを間違えずに
二万三万六万七万八万五筒五筒五筒二索三索四索七索七索  ドラ二万
このリーチを9巡目に打つ。
だが中々ツモれない。流局か、と思われたがハイテイにいたのは四万
この2,000・4,000で吉田は5万点台の1人浮きトップ目に立つ。
親番を迎えた吉田は、もうひとアガリで沢崎を捲りトータルトップ目になるというところまできた。
しかし、沢崎はこの状況でも冷静に打ち回し、自力で吉田の親落としに成功する。
オーラスの点棒状況は、
福田16,100点 内野23,100点 吉田56,300点 沢崎24,500点
吉田の条件は沢崎から満貫を直撃するか、跳満ツモ。
だが最後は吉田も力尽きたかテンパイできずに流局となり、沢崎の優勝となった。
最終戦成績
福田▲18.9P 内野▲10.9P 吉田+37.3P 沢崎▲7.5P
トータル
沢崎+35.8P 吉田+15.5P 福田▲24.7P 内野▲27.6P 供託1.0P
4位:内野宏太(アマ)
「悔しいです。」と語ってくれた内野は終始丁寧な麻雀を見せてくれた。
3位:福田栄司(アマ)
話を聞くと2ヶ月前に入院をし、退院をしたばかりで久々の麻雀だったという。
しばらく麻雀を打っていなかったとは思えない積極的な攻撃を見せてくれた。
準優勝:吉田幸雄
「最後まで面白い麻雀だった。」とコメントしてくれた吉田は最後まで諦めない、粘り強い素晴らしい麻雀だった。
優勝:沢崎誠
「今日はとにかくツイていた。」とのこと。
だが沢崎は終始安定していてベテランらしい、優勝者らしい麻雀だったように思う。
 
まだプロになったばかりの私が今回、レポートを担当させて頂きました。
全てを伝えきれたかわかりませんが、最後まで読んで下さった方、ありがとうございます。

第8期北関東リーグ 準決勝&決勝レポート

 

準決勝 半荘3回戦(各卓上位2名勝ち上がり)

1卓(沢崎・小川・福田・渡部)
1回戦、東場から小刻みにアガリを重ねる沢崎に福田、渡部がなんとか食らいつき、小川の1人沈みに。

1回戦成績
沢崎+18.0P 小川▲29.9P 福田+4.6P 渡部+7.3P

2回戦、積極的に仕掛ける福田に対応して上手く打ち回していた小川、渡部だったが、アガリが遠い苦しい展開になる。

2回戦成績
福田+19.4P 沢崎+8.2P 渡部▲9.5P 小川▲18.1P

2回戦終了時
沢崎+26.2P 福田+24.0P 渡部▲2.2P 小川▲48.0P

3回戦、東2局に渡部とのリーチ合戦を制し、福田が3,900は4,000オールをアガる。
これで福田はほぼ決勝当確となる。

2回戦まで苦しい状況が続いていた小川だったが、最後に意地を見せる。
2,000・4,000は2,200・4,200から始まり、渡部から8,000、そしてヤミテンで16,000と大物手を連発させる。
オーラスの親番では、かわしに掛かる沢崎に、

一索二索五索五索五索五索六索七索八索八索中中中  ドラ発

これをリーチでカブせるが流局。
次局1本場では苦しそうな配牌からメンホンチートイの1シャンテンまでこぎつけたが、テンパイできずに終局となった。

3回戦成績
沢崎▲11.3P 福田+11.8P 渡部▲34.8P 小川+35.1P

トータル
福田+35.8P 沢崎+14.9P 小川▲12.9P 渡部▲37.0P

決勝進出者:福田・沢崎

2卓(吉田・元木・小林・内野)
1回戦、吉田は開局に1,000オールをアガリ、重要な局面でのリーチ合戦を制するなど上々のスタートをきった。

1回戦成績
吉田+29.7P 元木+7.6P 小林▲13.6P 内野▲23.7P

2回戦、終始子場の展開を元木が1人浮きでまとめる。

2回戦成績
内野▲1.9P 吉田▲10.1P 元木+16.3P 小林▲4.3P

2回戦終了時
元木+23.9P 吉田+19.6P 小林▲17.9P 内野▲25.6P

プロ2人が優位な立場で始まった3回戦、東1局に吉田が6,000オールをツモアガリほぼ決勝当確となる。
ここから残り1つの椅子を争う戦いになるのだが、内野が親番で2,000オール、2,100オールとアガリを重ね次局にはドラポンから2,000・3,900を引き元木に迫る。
小林もラス前に8,000をアガリオーラスの親番を持ってくるが、最後は吉田がアガリきった。
元木はまさかのハコラスで敗退となってしまった。

3回戦成績
吉田+12.4P 内野+22.3P 元木▲39.8P 小林+5.1P

トータル
吉田+32.0P 内野▲3.3P 小林▲12.8P 元木▲23.5P

決勝進出者:吉田・内野

 

 

 

決勝戦 半荘4回戦

1回戦(起家から 吉田・沢崎・福田・内野)

東1局、誰もが先取点を取りたいところに7巡目、沢崎から先制リーチが入る。
吉田も仕掛けて追いつくがここは沢崎に軍配があがる。内野から3,200。

東2局、吉田の牌姿は、

九万九万四筒五筒六筒六筒八筒三索三索四索西北北  ドラ西

ここから自風の北を2枚ともふかすと次巡、西を重ね七対子に向かう。
その後も上手く牌を重ね、リーチまでこぎつけるが流局となる。
東3局、12巡目に内野は、

一万二万二万三万四万五万六万一筒一筒五筒六筒四索六索 ツモ七筒 ドラ二万

ここから打六索とする。
次巡、ツモ八万四索
次巡、ツモ七万ときて二万切りリーチとするが、沢崎にヤミテンでの2,000に捕まってしまう。
東4局、序盤から場が一気に動き出す。
3巡目に福田がオタ風の西から仕掛けると5巡目には沢崎が六筒をポン。
この時私は沢崎の手に力が入っているように感じた。
そして15巡目沢崎の手が開かれる。

五万五万五万二索二索三索五索  チー六索七索八索  ポン六筒六筒六筒  ツモ四索  ドラ五万

この2,000・3,900を力強く引きアガる。
次局は福田が、得意の仕掛けから8,000をアガリ、南3局には内野が13巡目に、

一万二万三万三万四万五万六万七万発発中中中  ツモ八万  ドラ東

この2,000・4,000をアガリ、吉田の1人沈みでオーラスを迎える。
しかし吉田もここで意地を見せる。
内野の仕掛けに負けじと仕掛け返し、福田から7,700を討ち取り1人沈みを免れる。

1回戦成績
吉田▲18.4P 沢崎+21.9P 福田▲8.2P 内野+4.7P

2回戦(起家から 吉田・内野・沢崎・福田)
東1局、福田が5巡目に先制リーチを打つ。内野も1シャンテンから押すが福田の1人テンパイで流局。
次局は福田が積極的に仕掛けを入れ内野から1,000は1,300。
東3局、8巡目に沢崎は、

四万六万四筒四筒六筒六筒八筒一索二索三索三索五索五索  ツモ五索  ドラ八索

ここから打一索とする。
この後も吉田の仕掛けに対応しながら、13巡目に、

四万五万六万三筒四筒六筒六筒二索三索四索五索五索五索

これをしっかりとヤミテンに受けて内野から2,000をアガリ、続く1本場、2本場と流局。
3本場は内野がなんとかアガリ沢崎の親を落とす事に成功する。
次局は教科書通りの手順で沢崎が1,300・2,600。
やはり沢崎に付け入る隙はないのかと思われたが南2局、吉田にチャンス手が入る。
その吉田の配牌は、

六万七万二筒二筒二筒三筒四筒五筒六筒六筒九筒九筒三索  ドラ九筒

5巡目に二筒をポンすると、次巡に四筒をチーして、

二筒三筒四筒五筒六筒九筒九筒  チー四筒五筒六筒  ポン二筒二筒二筒

これを沢崎から四筒で討ち取り12,000。
しかしこの後も沢崎は冷静に打ち回し浮きをキープした。
内野はオーラスの7巡目に、

四万五万五筒六筒七筒二索三索四索四索五索六索八索八索  ドラ四万

このリーチを打ち、アガれば浮きに回れたのだが、流局してしまった。

2回戦成績
吉田+13.4P 内野▲14.3P 沢崎+5.2P 福田▲5.3P 供託1.0P

2回戦終了時
沢崎+27.1P 吉田▲5.0P 内野▲9.6P 福田▲13.5  供託1.0P

3回戦 (起家から 吉田・福田・沢崎・内野)
東1局、沢崎にチャンス手が入る。
4巡目に自風の西を仕掛けて、

一筒二筒二筒五筒七筒八筒八筒東東東 ポン西西西

この形。次巡に八筒をポンして満貫テンパイを入れる。8巡目には二筒を引き込み打五筒とし跳満のテンパイにとるが、ここで福田からリーチが入る。そして13巡目、沢崎のツモは三筒。だが一筒がフリテンになってしまうためツモ切りとする。が、次巡のツモは無情にも三筒。そしてこの局は福田がアガリきった。

このアガリで気分良く親番を迎えた福田は、1,500、2,900は3,200、5,800は6,400とアガリを重ねる。
東3局4本場はここまでずっと我慢していた内野が14巡目に、

三万四万五万五万六万七万五筒七筒五索六索七索東東

これをリーチして、ポンテンをとっていた吉田からアガリ、供託付きで7,400点の加点をした。
そして、福田の1人浮きで迎えた南3局1本場。親番の沢崎が早々に仕掛け2,000は2,100オール。
これで沢崎も浮きに回る。2本場ではトップ目の福田から2,900は3,500をアガリ、たった2局で沢崎がトップ目に立つ。
南4局4本場、この親でなんとか浮きに回りたい内野は14巡目、

二万二万二筒三筒四筒五筒六筒七筒一索三索五索六索七索  ドラ中

これをリーチ。ピンフのテンパイをしていた吉田から討ち取り連荘に成功する。
続く5本場は福田が、

三万三万二筒三筒四筒五筒五筒七筒七索八索八索八索九索  ドラ八筒

この牌姿から6巡目の六索をチーしてタンヤオに向かい、内野からアガリ、浮きをキープして最終戦に望みを繋いだ。

3回戦成績
吉田▲16.8P 福田+7.7P 沢崎+16.2P 内野▲7.1P

3回戦終了時
沢崎+43.3P 福田▲5.8P 内野▲16.7P 吉田▲21.8P 供託1.0P

最終戦は沢崎がこのまま逃げ切るのか、、、それとも他3人が意地を見せるのか、、、
小休憩の後、最終戦が開始される賽が振られた。

最終戦(起家から 福田・内野・吉田・沢崎)
東1局は内野が吉田から2,600をアガる。
次局は先程の放銃をものともしない冷静な打ち回しで、吉田が白単騎の七対子をリーチしてツモアガる。
東4局は福田が、

三万四万五万一筒一筒一筒八筒八筒二索三索五索六索七索  ドラ一筒

これをリーチして引きアガリ2,000・4,000。
このアガリで親番を持ってきた福田だったが、吉田に大物手が入る。

三索三索東北北白中  ポン四索四索四索  ポン南南南  ドラ三索

7巡目に白を重ね、9巡目に北をポンして、

三索三索白白  ポン北北北  ポン四索四索四索  ポン南南南

この倍満テンパイを入れる。
これに真っ向から勝負を挑む福田は、

三万四万五万三筒四筒五筒五筒六筒七筒一索二索中中

これをリーチとしたが、数巡後、福田の持ってきた牌は白、、、
吉田に16,000の放銃となってしまった。
次局、吉田は1シャンテンでターツ選択を迫られるが、これを間違えずに

二万三万六万七万八万五筒五筒五筒二索三索四索七索七索  ドラ二万

このリーチを9巡目に打つ。
だが中々ツモれない。流局か、と思われたがハイテイにいたのは四万
この2,000・4,000で吉田は5万点台の1人浮きトップ目に立つ。
親番を迎えた吉田は、もうひとアガリで沢崎を捲りトータルトップ目になるというところまできた。
しかし、沢崎はこの状況でも冷静に打ち回し、自力で吉田の親落としに成功する。

オーラスの点棒状況は、
福田16,100点 内野23,100点 吉田56,300点 沢崎24,500点

吉田の条件は沢崎から満貫を直撃するか、跳満ツモ。
だが最後は吉田も力尽きたかテンパイできずに流局となり、沢崎の優勝となった。

最終戦成績
福田▲18.9P 内野▲10.9P 吉田+37.3P 沢崎▲7.5P

トータル
沢崎+35.8P 吉田+15.5P 福田▲24.7P 内野▲27.6P 供託1.0P

4位:内野宏太(アマ)
「悔しいです。」と語ってくれた内野は終始丁寧な麻雀を見せてくれた。

3位:福田栄司(アマ)
話を聞くと2ヶ月前に入院をし、退院をしたばかりで久々の麻雀だったという。
しばらく麻雀を打っていなかったとは思えない積極的な攻撃を見せてくれた。

準優勝:吉田幸雄
「最後まで面白い麻雀だった。」とコメントしてくれた吉田は最後まで諦めない、粘り強い素晴らしい麻雀だった。

優勝:沢崎誠
「今日はとにかくツイていた。」とのこと。
だが沢崎は終始安定していてベテランらしい、優勝者らしい麻雀だったように思う。

 

まだプロになったばかりの私が今回、レポートを担当させて頂きました。
全てを伝えきれたかわかりませんが、最後まで読んで下さった方、ありがとうございます。

北関東プロリーグ レポート/第2期 宇都宮リーグ 準決勝&決勝レポート

第2期北関東宇都宮リーグ準決勝・決勝レポート:鈴木翔梧
2013年3月。第2期宇都宮リーグの決勝・準決勝が行われた。
参加者は見事予選を勝ち抜いた以下の8人。
予選1位通過アマチュア 庄子峻太さん
「よそ行きの麻雀を打たないように心掛けます。」
予選2位通過 清水香織プロ
「ブレずに全力で最後まで行ききります。」(カッコいい)
予選3位通過 弓削雅人プロ
「頑張ります。」
予選4位通過アマチュア 西尾猛さん
「楽しみながら調整セットに付き合っていただいた方のためにも頑張ります。」
予選5位通過アマチュア 桧山拓さん
「結果は気にせず楽しく打ちます。」
予選6位通過 吉田幸男プロ
「プロとしての意地を見せたい。」
予選7位通過 須長正和プロ
「今日のためにがんばってきたので、2半荘では帰れないです。」
予選8位通過アマチュア 桝井 律男さん
「いま一度の強運を願うのは罪でしょうか!」
以上の8名で準決勝2半荘が行われた各卓上位2名が決勝に進みます。
準決勝1回戦目
A卓
吉田 幸男プロ
庄子 峻太さん
弓削 雅人さん
桝井 律男さん
この4名で行われた1半荘目は、吉田幸男プロが早くも大爆発1人浮きできっちり終了。
A卓成績
吉田プロ +35.3
庄子さん ▲18.3
弓削プロ ▲10.7
桝井さん ▲6.3
B卓
清水香織プロ
西尾猛さん
須長正和プロ
桧山拓さん
以上の4名で行われ、なんとプロ2人が共にマイナスと言う予想外の展開に。
B卓成績
清水プロ ▲29.8P
西尾さん +25.6P
須長プロ ▲18.1P
桧山さん +21.3P
供託 +1.0P
準決勝2回戦目
A卓
ほぼ当確の吉田プロをのぞき2位~4位までの3人の熾烈な2位争いのA卓
現状4位の庄子さんも2位の桝井さんとは1万2千点差という接戦でしたが、見事吉田プロと桝井さんが逃げ切りA卓の準決勝は終了しました。
A卓トータル成績
1位吉田プロ +42.6P
2位桝井さん +16.7P
3位庄子さん ▲27.4P
4位弓削プロ ▲31.9P
準決勝後のコメント
決勝進出の桝井さん
「雀歴40年の強運をお願いします。」
3位 庄子さん
「七対子がアガれなかったのが残念でしたが、悔いなく打てました。来期は決勝に!」
4位 弓削プロ
「ノー和了でした。」
B卓
プロ2人が巻き返せるか注目のB卓。
プロの意地を見せつけ1半荘目プラスだった桧山さん西尾さんを沈めるもあと1歩届かずアマチュア2名が決勝進出となりました。
B卓トータル成績
1位西尾さん +20.5P
2位桧山さん +4.4P
3位須長プロ ▲2.9P
4位清水プロ ▲23.0P
供託 +1.0P
準決勝後のコメント
決勝進出西尾さん
「楽しんでいつもの自分の麻雀を打ちたいです。」
決勝進出桧山さん
「調子が最悪なので邪魔しないように頑張ります。」
決勝戦進出者
吉田幸男プロ
桝井律男さん
西尾猛さん
桧山拓さん
この4名で決勝戦は行われます。
決勝戦は4半荘のトータルポイントのトップが優勝です。
 
 
決勝戦1回戦目。
東1局、親・桧山さん。
三万三万四万六索六索一筒一筒三筒三筒三筒五筒六筒七筒  ツモ一筒  ドラ北
三万切りリーチ。
親の桧山さんはツモり三暗刻に取らずの先制リーチ。
このリーチを西家の吉田プロがきっちり捌いた400・700で決勝戦は幕を開けました。
西家・吉田プロ。
六万六万七索八索九索九筒九筒九筒白白  ポン東東東  ツモ六万
しかしこれ以降、吉田プロ全く手が入らず。
東3局、西家・桧山さん。
六万七万八万九万九万三索四索四索五索五索六索発発  リーチ  ドラ九万
親番・吉田プロ。
一万一万一万三万三万七万七万一索二索三索三筒三筒三筒
親番でリーチを受け、なんとかテンパイ連荘するも、次局、桧山さんのヤミテンに放銃し5,200は5,500。
東3局1本場、親・吉田プロ、西家・桧山さん。
七万七万三索四索五索六索八索六筒六筒七筒七筒八筒八筒  ドラ八索
南場の親番でもすぐ2軒リーチを受けることになり、北家の桝井さんに1,300・2,600をツモられまさかの1人沈みで1戦目は終了しました。
成績
吉田プロ ▲22.1P
桧山さん +13.0P
桝井さん +3.1P
西尾さん +6.0P
2回戦目
東1局、親・桧山さん。
2回戦目も調子が悪い吉田プロ。
四万五万六万四筒五筒六筒二索三索四索八索八索白白  ドラ六索
この手で先制リーチを打つも、親の桧山さんにあっさり追い付かれ5,800放銃でスタート。
東2局でも、
五万六万三索三索三索四索四索六索七索八索発発発  ドラ四万
この形でリーチを打つも流局。
南場は軽い手での流し合いになりオーラス、親・西尾さん。
桝井さんからリーチの声が掛かり、親の西尾さん宣言牌のドラをポン攻めるしかない西尾さんの攻撃を掻い潜り、見事桝井さんがツモアガリ。
六万六万六索七索八索二筒三筒四筒五筒六筒六筒七筒七筒  八筒ツモ  ドラ八万
1,300・2,600できっちりトップを捲り終了。
2回戦目結果
桧山さん +14.0P
桝井さん +18.1P
吉田プロ ▲21.9P
西尾さん ▲10.2P
成績トータル
桧山さん +27.0P
桝井さん +21.2P
吉田プロ ▲44.0P
西尾さん ▲4.2P
3回戦目。
東1局は、親の桧山さんが2,000オールをツモアガリ。
五万五万七万九万四索五索六索二筒二筒三筒三筒四筒四筒  ドラ九万
ヤミテンでツモ八万
続く東1局1本場で事件が起きました、北家の吉田プロはこの形式テンパイ。
八万八万一筒一筒一筒三筒四筒四筒五筒六筒  ポン南南南  ドラ八万
そして、ハイテイで親の桧山さん二筒で放銃!!というのも、桧山さん前巡二筒を切り、その巡は全員ツモ切り。
普通だったら通る二筒も吉田プロは通さない。ハイテイドラ2の5,200は5,500のアガリ。
ここから吉田プロの大爆発が始まる。
東2局、親・桝井さん。
一万二万三万五万六万七万九索九索九索七筒八筒八筒中中  ドラ五万
西家の吉田プロリーチ。これに西尾さんが飛び込み吉田プロ2,600アガリ。
さらに東3局、親・西尾さん。親の西尾さんが先制リーチ。
その時、南家の吉田プロの手牌。
一万一万一万四万五万六万一索一索一索一筒二筒北北  ドラ二筒
ドラの二筒と心中だったこの手をツモ切り追っかけリーチ。
普通の人だとこの手で親のリーチに勝負は怖くて出来ない。
しかしそこは吉田プロ、私クラスとはくぐり抜けてきた修羅場の数が違う。
そして一発で三筒ツモ。さすがと言わざるを得ない。吉田プロ1,300・2,600アガリ。
続く東4局は、親の吉田プロ桝井さんから1,500アガリ。まだ終わらない。
東4局1本場、親・吉田プロ。
三万四万五万六万七万八万一筒二筒三筒五筒六筒北北  ドラ白
吉田プロは、白切りリーチで七筒をツモ1,300は1,400オールのアガリ。
東4局2本場で、やっと吉田プロ以外からの発声、桧山さんの先制リーチが入る、しかし吉田プロそのリーチに対して押しまくる。
東4局2本場、
四万五万五万六万七万五索六索四筒四筒六筒七筒八筒九筒  ツモ九万  ドラ九索
そして吉田プロは、上記の手で少し間をおくも九万ツモ切り、だがこの九万が桧山さんのアガリ牌。
七万八万三索三索七索八索九索一筒一筒一筒七筒八筒九筒
桧山さんが吉田プロから8,000は8,600アガリとなった。
この桧山さんのアガリが出るまで、6局連続吉田プロのアガリという大爆発、しかしまだ終わらない
続く南1局、親・桧山さん。北家の吉田プロ。
六万六万七万八万九万二索三索四索五索五索五索六筒七筒  リーチ  ドラ六万
南家の桝井さんから追っかけリーチが入るも、吉田プロ八筒をツモり2000・3900アガリ。
南2局も吉田プロが1,000で流し、南3局は桝井さんが1,000・2,000をツモアガリ。
オーラスを迎えた。
点棒状況
吉田プロ  48,300
桧山さん  31,500
桝井さん  25,300
西尾さん  14,900
開局早々桝井さん五万六万七万をチー。
それから数巡後、北家の西尾さんにテンパイが入る。
オーラス親・吉田プロ。
一万二万三万一索二索三索四索五索六索三筒三筒四筒六筒  ドラ二筒
しかし、西尾さん上記の手にツモ八索で打六筒のテンパイ外し、三色か一気通貫のどちらかを見据えた打牌を打つ。その時親の吉田プロ、
四万四万六万六万二索三索二筒五筒六筒八筒中中中
四万をポンし打八筒、そして北家の西尾さん見事七索を引き入れ四筒切りリーチ。
一万二万三万一索二索三索四索五索六索七索八索三筒三筒  リーチ
吉田プロ、宣言牌の四筒をチーするも安牌の六万トイツ落としでテンパイ取らず
六万六万二索三索二筒中中中  チー四筒五筒六筒  ポン四万四万四万  打六万
さらに一筒ツモで打六万
二索三索一筒二筒中中中 チー四筒五筒六筒  ポン四万四万四万
桝井さん白をポンし2フーロ目。
そして、吉田プロは西尾さんが切った三筒をチー。
二索三索中中中  チー一筒二筒三筒  チー四筒五筒六筒  ポン四万四万四万
西尾さんのアガリ牌三索単騎の2,900テンパイ
数巡後、西尾さんが見事九索をツモり2,000・4,000アガリ。
一万二万三万一索二索三索四索五索六索七索八索三筒三筒 ツモ九索
対局終了後全員にこの時の手牌を聞くと
西尾さん
一万二万三万一索二索三索四索五索六索七索八索三筒三筒
吉田プロ
三索中中中  チー一筒二筒三筒  チー四筒五筒六筒  ポン四万四万四万
桝井さん
一万一万七万八万九万西西  チー五万六万七万  ポン白白白
桧山さん
八万八万三索七索七索八索八索二筒二筒南南西西
なんと3人が三索待ちのテンパイだった。誰かが三索を切ったらどうなっていただろうか。
3回戦目結果
桧山さん ▲1.5P
桝井さん ▲9.7P
吉田プロ +26.3P
西尾さん ▲15.1P
トータル成績
桧山さん +25.5P
桝井さん +11.5P
吉田プロ ▲17.7P
西尾さん ▲19.3P
4回戦最終戦
4回戦目は、東1局からトータルトップの桧山さんに手が入りました。
二索三索四索六索六索二筒三筒四筒東東  チー二万三万四万  ドラ東
安目3,900高目8,000のテンパイ
そして親の桝井さんにもテンパイが入る。
五万五万六万六万七万八万九万五索五索六索七索八索東
ツモ七万
桝井さんテンパイを取り、打東で桧山さんに8,000放銃。
東2局、吉田プロの親番は桧山さんと西尾さんの2人テンパイで流局。
東3局1本場、親西尾さん
親の西尾さん先制リーチ。
三万三万五万六万七万七索七索七索一筒二筒三筒五筒七筒  ドラ六筒
そこに桝井さんの追っかけリーチ
三万四万五万六万七万八万二索三索三索四索五索六筒六筒
数巡後、桝井さんが六筒をつかみ西尾さん3,900は4,200アガリ。
続く東3局2本場は桝井さんの1人テンパイで流局。
二万三万四万四万五万六万八万八万二索四索二筒三筒四筒  リーチ ドラ南
南1局で桧山さん3,000・6,000をツモアガリ優勝は目前に。
南1局親桝井さん。
五万六万六万七万七万八万五索六索三筒三筒五筒六筒七筒  ツモ七索  ドラ六筒
しかし吉田プロが食らい付く南2局で4,000オールをアガリ続く南2局1本場、
四万五万六万七索八索九索七筒八筒九筒九筒白白白  リーチ  ツモ六筒  ドラ六筒
この3,900は4,000オール。
しかし南2局2本場は、西尾さんが300・500は500・700アガリ。
続く南3局、親の西尾さん押さえつけリーチを打つも、吉田プロに追い付かれリーチを打たれる。
南3局、親・西尾さん。
西尾さんの手牌。
四万五万六万二筒三筒四筒七筒八筒九筒二索四索六索六索  ドラ一万
吉田プロの手牌。
一万二万三万六万七万八万五索五索三筒四筒五筒六筒七筒
数巡後、吉田プロが二筒をツモり1,300・2,600アガリ。
そしてオーラス
点棒状況
親 桧山さん   40,700
南家 桝井さん  5,600
西家 吉田プロ  50,900
北家 西尾さん  22,800
2着目の吉田プロが優勝するには、倍満直撃、3倍満ツモ条件というほぼ優勝は決まった状態になり、南家の桝井さんが桧山さんより2,000点をアガリ第2期宇都宮リーグ決勝戦は幕を降ろしました。
4回戦目成績
桧山さん +12.7P
桝井さん ▲30.4P
吉田プロ +28.9P
西尾さん ▲11.2P
トータル成績
優勝 桧山さん +38.2P
準優勝 吉田プロ +11.2P
3位 桝井さん ▲18.9P
4位 西尾さん ▲30.5P
優勝された桧山さんのコメント
「皆様にご迷惑をおかけしながらの優勝でした。第3回は、この経験を活かし、より良い麻雀を打てるようガンバります。」
終始冷静に場況を判断し押し引きされた桧山さんの優勝で第2期宇都宮リーグは終了しました。

第2期 宇都宮リーグ 準決勝&決勝レポート

第2期北関東宇都宮リーグ準決勝・決勝レポート:鈴木翔梧

2013年3月。第2期宇都宮リーグの決勝・準決勝が行われた。
参加者は見事予選を勝ち抜いた以下の8人。

予選1位通過アマチュア 庄子峻太さん
「よそ行きの麻雀を打たないように心掛けます。」

予選2位通過 清水香織プロ
「ブレずに全力で最後まで行ききります。」(カッコいい)

予選3位通過 弓削雅人プロ
「頑張ります。」

予選4位通過アマチュア 西尾猛さん
「楽しみながら調整セットに付き合っていただいた方のためにも頑張ります。」

予選5位通過アマチュア 桧山拓さん
「結果は気にせず楽しく打ちます。」

予選6位通過 吉田幸男プロ
「プロとしての意地を見せたい。」

予選7位通過 須長正和プロ
「今日のためにがんばってきたので、2半荘では帰れないです。」

予選8位通過アマチュア 桝井 律男さん
「いま一度の強運を願うのは罪でしょうか!」

以上の8名で準決勝2半荘が行われた各卓上位2名が決勝に進みます。

準決勝1回戦目

A卓
吉田 幸男プロ
庄子 峻太さん
弓削 雅人さん
桝井 律男さん

この4名で行われた1半荘目は、吉田幸男プロが早くも大爆発1人浮きできっちり終了。

A卓成績
吉田プロ +35.3
庄子さん ▲18.3
弓削プロ ▲10.7
桝井さん ▲6.3

B卓
清水香織プロ
西尾猛さん
須長正和プロ
桧山拓さん

以上の4名で行われ、なんとプロ2人が共にマイナスと言う予想外の展開に。

B卓成績
清水プロ ▲29.8P
西尾さん +25.6P
須長プロ ▲18.1P
桧山さん +21.3P
供託 +1.0P

準決勝2回戦目

A卓
ほぼ当確の吉田プロをのぞき2位~4位までの3人の熾烈な2位争いのA卓
現状4位の庄子さんも2位の桝井さんとは1万2千点差という接戦でしたが、見事吉田プロと桝井さんが逃げ切りA卓の準決勝は終了しました。

A卓トータル成績

1位吉田プロ +42.6P
2位桝井さん +16.7P
3位庄子さん ▲27.4P
4位弓削プロ ▲31.9P

準決勝後のコメント

決勝進出の桝井さん
「雀歴40年の強運をお願いします。」

3位 庄子さん
「七対子がアガれなかったのが残念でしたが、悔いなく打てました。来期は決勝に!」

4位 弓削プロ
「ノー和了でした。」

B卓
プロ2人が巻き返せるか注目のB卓。
プロの意地を見せつけ1半荘目プラスだった桧山さん西尾さんを沈めるもあと1歩届かずアマチュア2名が決勝進出となりました。

B卓トータル成績

1位西尾さん +20.5P
2位桧山さん +4.4P
3位須長プロ ▲2.9P
4位清水プロ ▲23.0P
供託 +1.0P

準決勝後のコメント

決勝進出西尾さん
「楽しんでいつもの自分の麻雀を打ちたいです。」

決勝進出桧山さん
「調子が最悪なので邪魔しないように頑張ります。」

決勝戦進出者

吉田幸男プロ
桝井律男さん
西尾猛さん
桧山拓さん

この4名で決勝戦は行われます。
決勝戦は4半荘のトータルポイントのトップが優勝です。

 

 

決勝戦1回戦目。

東1局、親・桧山さん。

三万三万四万六索六索一筒一筒三筒三筒三筒五筒六筒七筒  ツモ一筒  ドラ北

三万切りリーチ。
親の桧山さんはツモり三暗刻に取らずの先制リーチ。
このリーチを西家の吉田プロがきっちり捌いた400・700で決勝戦は幕を開けました。

西家・吉田プロ。

六万六万七索八索九索九筒九筒九筒白白  ポン東東東  ツモ六万

しかしこれ以降、吉田プロ全く手が入らず。
東3局、西家・桧山さん。

六万七万八万九万九万三索四索四索五索五索六索発発  リーチ  ドラ九万

親番・吉田プロ。

一万一万一万三万三万七万七万一索二索三索三筒三筒三筒

親番でリーチを受け、なんとかテンパイ連荘するも、次局、桧山さんのヤミテンに放銃し5,200は5,500。
東3局1本場、親・吉田プロ、西家・桧山さん。

七万七万三索四索五索六索八索六筒六筒七筒七筒八筒八筒  ドラ八索

南場の親番でもすぐ2軒リーチを受けることになり、北家の桝井さんに1,300・2,600をツモられまさかの1人沈みで1戦目は終了しました。

成績
吉田プロ ▲22.1P
桧山さん +13.0P
桝井さん +3.1P
西尾さん +6.0P

2回戦目
東1局、親・桧山さん。
2回戦目も調子が悪い吉田プロ。

四万五万六万四筒五筒六筒二索三索四索八索八索白白  ドラ六索

この手で先制リーチを打つも、親の桧山さんにあっさり追い付かれ5,800放銃でスタート。
東2局でも、

五万六万三索三索三索四索四索六索七索八索発発発  ドラ四万

この形でリーチを打つも流局。

南場は軽い手での流し合いになりオーラス、親・西尾さん。
桝井さんからリーチの声が掛かり、親の西尾さん宣言牌のドラをポン攻めるしかない西尾さんの攻撃を掻い潜り、見事桝井さんがツモアガリ。

六万六万六索七索八索二筒三筒四筒五筒六筒六筒七筒七筒  八筒ツモ  ドラ八万

1,300・2,600できっちりトップを捲り終了。

2回戦目結果

桧山さん +14.0P
桝井さん +18.1P
吉田プロ ▲21.9P
西尾さん ▲10.2P

成績トータル

桧山さん +27.0P
桝井さん +21.2P
吉田プロ ▲44.0P
西尾さん ▲4.2P

3回戦目。
東1局は、親の桧山さんが2,000オールをツモアガリ。

五万五万七万九万四索五索六索二筒二筒三筒三筒四筒四筒  ドラ九万

ヤミテンでツモ八万
続く東1局1本場で事件が起きました、北家の吉田プロはこの形式テンパイ。

八万八万一筒一筒一筒三筒四筒四筒五筒六筒  ポン南南南  ドラ八万

そして、ハイテイで親の桧山さん二筒で放銃!!というのも、桧山さん前巡二筒を切り、その巡は全員ツモ切り。
普通だったら通る二筒も吉田プロは通さない。ハイテイドラ2の5,200は5,500のアガリ。

ここから吉田プロの大爆発が始まる。
東2局、親・桝井さん。

一万二万三万五万六万七万九索九索九索七筒八筒八筒中中  ドラ五万

西家の吉田プロリーチ。これに西尾さんが飛び込み吉田プロ2,600アガリ。
さらに東3局、親・西尾さん。親の西尾さんが先制リーチ。
その時、南家の吉田プロの手牌。

一万一万一万四万五万六万一索一索一索一筒二筒北北  ドラ二筒

ドラの二筒と心中だったこの手をツモ切り追っかけリーチ。
普通の人だとこの手で親のリーチに勝負は怖くて出来ない。
しかしそこは吉田プロ、私クラスとはくぐり抜けてきた修羅場の数が違う。
そして一発で三筒ツモ。さすがと言わざるを得ない。吉田プロ1,300・2,600アガリ。

続く東4局は、親の吉田プロ桝井さんから1,500アガリ。まだ終わらない。
東4局1本場、親・吉田プロ。

三万四万五万六万七万八万一筒二筒三筒五筒六筒北北  ドラ白

吉田プロは、白切りリーチで七筒をツモ1,300は1,400オールのアガリ。
東4局2本場で、やっと吉田プロ以外からの発声、桧山さんの先制リーチが入る、しかし吉田プロそのリーチに対して押しまくる。

東4局2本場、

四万五万五万六万七万五索六索四筒四筒六筒七筒八筒九筒  ツモ九万  ドラ九索

そして吉田プロは、上記の手で少し間をおくも九万ツモ切り、だがこの九万が桧山さんのアガリ牌。

七万八万三索三索七索八索九索一筒一筒一筒七筒八筒九筒

桧山さんが吉田プロから8,000は8,600アガリとなった。
この桧山さんのアガリが出るまで、6局連続吉田プロのアガリという大爆発、しかしまだ終わらない

続く南1局、親・桧山さん。北家の吉田プロ。

六万六万七万八万九万二索三索四索五索五索五索六筒七筒  リーチ  ドラ六万

南家の桝井さんから追っかけリーチが入るも、吉田プロ八筒をツモり2000・3900アガリ。
南2局も吉田プロが1,000で流し、南3局は桝井さんが1,000・2,000をツモアガリ。

オーラスを迎えた。

点棒状況
吉田プロ  48,300
桧山さん  31,500
桝井さん  25,300
西尾さん  14,900

開局早々桝井さん五万六万七万をチー。
それから数巡後、北家の西尾さんにテンパイが入る。

オーラス親・吉田プロ。

一万二万三万一索二索三索四索五索六索三筒三筒四筒六筒  ドラ二筒

しかし、西尾さん上記の手にツモ八索で打六筒のテンパイ外し、三色か一気通貫のどちらかを見据えた打牌を打つ。その時親の吉田プロ、

四万四万六万六万二索三索二筒五筒六筒八筒中中中

四万をポンし打八筒、そして北家の西尾さん見事七索を引き入れ四筒切りリーチ。

一万二万三万一索二索三索四索五索六索七索八索三筒三筒  リーチ

吉田プロ、宣言牌の四筒をチーするも安牌の六万トイツ落としでテンパイ取らず

六万六万二索三索二筒中中中  チー四筒五筒六筒  ポン四万四万四万  打六万

さらに一筒ツモで打六万

二索三索一筒二筒中中中 チー四筒五筒六筒  ポン四万四万四万

桝井さん白をポンし2フーロ目。
そして、吉田プロは西尾さんが切った三筒をチー。

二索三索中中中  チー一筒二筒三筒  チー四筒五筒六筒  ポン四万四万四万

西尾さんのアガリ牌三索単騎の2,900テンパイ
数巡後、西尾さんが見事九索をツモり2,000・4,000アガリ。

一万二万三万一索二索三索四索五索六索七索八索三筒三筒 ツモ九索

対局終了後全員にこの時の手牌を聞くと

西尾さん
一万二万三万一索二索三索四索五索六索七索八索三筒三筒

吉田プロ
三索中中中  チー一筒二筒三筒  チー四筒五筒六筒  ポン四万四万四万

桝井さん
一万一万七万八万九万西西  チー五万六万七万  ポン白白白

桧山さん
八万八万三索七索七索八索八索二筒二筒南南西西

なんと3人が三索待ちのテンパイだった。誰かが三索を切ったらどうなっていただろうか。

3回戦目結果
桧山さん ▲1.5P
桝井さん ▲9.7P
吉田プロ +26.3P
西尾さん ▲15.1P

トータル成績
桧山さん +25.5P
桝井さん +11.5P
吉田プロ ▲17.7P
西尾さん ▲19.3P

4回戦最終戦

4回戦目は、東1局からトータルトップの桧山さんに手が入りました。

二索三索四索六索六索二筒三筒四筒東東  チー二万三万四万  ドラ東

安目3,900高目8,000のテンパイ
そして親の桝井さんにもテンパイが入る。

五万五万六万六万七万八万九万五索五索六索七索八索東
ツモ七万

桝井さんテンパイを取り、打東で桧山さんに8,000放銃。
東2局、吉田プロの親番は桧山さんと西尾さんの2人テンパイで流局。
東3局1本場、親西尾さん

親の西尾さん先制リーチ。

三万三万五万六万七万七索七索七索一筒二筒三筒五筒七筒  ドラ六筒

そこに桝井さんの追っかけリーチ

三万四万五万六万七万八万二索三索三索四索五索六筒六筒

数巡後、桝井さんが六筒をつかみ西尾さん3,900は4,200アガリ。
続く東3局2本場は桝井さんの1人テンパイで流局。

二万三万四万四万五万六万八万八万二索四索二筒三筒四筒  リーチ ドラ南

南1局で桧山さん3,000・6,000をツモアガリ優勝は目前に。
南1局親桝井さん。

五万六万六万七万七万八万五索六索三筒三筒五筒六筒七筒  ツモ七索  ドラ六筒

しかし吉田プロが食らい付く南2局で4,000オールをアガリ続く南2局1本場、

四万五万六万七索八索九索七筒八筒九筒九筒白白白  リーチ  ツモ六筒  ドラ六筒

この3,900は4,000オール。
しかし南2局2本場は、西尾さんが300・500は500・700アガリ。
続く南3局、親の西尾さん押さえつけリーチを打つも、吉田プロに追い付かれリーチを打たれる。

南3局、親・西尾さん。
西尾さんの手牌。

四万五万六万二筒三筒四筒七筒八筒九筒二索四索六索六索  ドラ一万

吉田プロの手牌。

一万二万三万六万七万八万五索五索三筒四筒五筒六筒七筒

数巡後、吉田プロが二筒をツモり1,300・2,600アガリ。

そしてオーラス

点棒状況
親 桧山さん   40,700
南家 桝井さん  5,600
西家 吉田プロ  50,900
北家 西尾さん  22,800

2着目の吉田プロが優勝するには、倍満直撃、3倍満ツモ条件というほぼ優勝は決まった状態になり、南家の桝井さんが桧山さんより2,000点をアガリ第2期宇都宮リーグ決勝戦は幕を降ろしました。

4回戦目成績

桧山さん +12.7P
桝井さん ▲30.4P
吉田プロ +28.9P
西尾さん ▲11.2P

トータル成績
優勝 桧山さん +38.2P
準優勝 吉田プロ +11.2P
3位 桝井さん ▲18.9P
4位 西尾さん ▲30.5P
優勝された桧山さんのコメント
「皆様にご迷惑をおかけしながらの優勝でした。第3回は、この経験を活かし、より良い麻雀を打てるようガンバります。」

終始冷静に場況を判断し押し引きされた桧山さんの優勝で第2期宇都宮リーグは終了しました。

プロ雀士インタビュー/第11回天空麻雀男性大会 優勝特別インタビュー:荒正義

spe26

 
荒(正義)さんは最近「魅せる麻雀」を意識しているという。
最初は冗談かと思った。
なぜなら、私の中での荒さんのイメージは「魅せる麻雀」の真逆で「全然魅せないけど実利的で辛い麻雀」だったから。
以前、ビートたけしさんがCSの番組の収録中、荒さんのことを「薄情な麻雀打ちやがんだよなぁこの人は」と評された。コレ、本当にピッタリな言葉。さすが天才たけしさんだと思った。この人、卓上では本当に冷徹なマシーンのようにコワイのである。
荒さんはもし、自分を慕ってくれている中堅どころ。たとえば黒木真生プロが「ここでアガれないとプロ引退」という場面でも、急所はちゃんと鳴いて、シレっと千点をアガるだろう。それが勝負の世界のオキテだからである。
でも、勝負が終わったら「あン時はゴメンね。でも、キミは麻雀プロやめたって別の方法で生活できるよきっと」と、私を送り出す会を開き、声をかけてくれるだろう。卓から離れたらそういう優しさを持った人である。
そんな勝負の鬼のような人が、いったいどうして魅せる麻雀などやるというのか。
私はこの件について「近代麻雀リアル麻雀プロ4大タイトル戦DVD BOOK」(確かこれだったと思うが)でも書いたのだが、その時はあえて本人に直接取材しなかったので、まだモヤモヤ感が残っていた。
今回「天空麻雀11」で優勝したインタビューをやれといわれたついでに、その真意を確かめるため、荒さんのご自宅にお邪魔した。
黒木「やっと優勝ですね」
荒 「10回連続で出してもらってるのに初めて優勝。でも、10回連続で出て、1回もラスを引いてないからそこは評価してもらわなきゃ」
黒木「天空麻雀は予選でトップをとればいきなり決勝。ラスなら敗退でその他は準決勝ですが、確かに荒さんは必ず準決勝か決勝にいってます」
荒 「ただ、実際は、プロ雀士はそういうの評価されない。優勝以外は意味がないから」
黒木「もちろん、内容で見せることに意味があるとは思いますが、結果としては優勝かその他か、ですよね」
荒 「プロだから内容が良いのは当たり前で、その上で勝たなければいけない。ベストなのは、キチンとした内容で勝負して勝つ。しかも、そこにファンが驚くような大技とか、感動するような戦いぶりとか、プロにしかできないプラスアルファがあるということ。これがプロ雀士としての理想だね」
黒木「最近そういう考えになったんですか?」
荒 「前から思ってたけど、表現する場がなかったじゃない。でも今は映像媒体で打つことが多いでしょ?」
黒木「確かに。今、一番多く見られているのはMONDOTVの麻雀番組。毎日4~5時間麻雀番組をやってて、それをずーっと10万人近い人が視聴しているっていうんですからね。のべの視聴者数ではなく、同時に見ている人の数ですよ」
荒 「そんなに見てるの!?」
黒木「視聴率から単純計算するとそうなるんです。今はだいたい、東京ローカルの高視聴率番組ぐらい見られている計算になります」
荒 「特に有料で見てくれるファンの方に対局を見せるわけだから、クオリティの高いものじゃないとね。それに、地味で単調なのはすぐ飽きられるし」
黒木「だからといって魅せる麻雀というのは荒さんのキャラじゃないのでは?」
荒 「魅せる麻雀といったって、小島武夫さんのように華麗な手作りを見せるだけじゃない。ボクにはボクなりの魅せ方があるかなって思ってたんだよね前から。映像なら何とかなるかもって」
黒木「なるほど。雑誌の牌譜は、途中の細かい芸は見つけてもらえませんからね。小島先生のように華麗なアガリ形を披露すれば、それがアイキャッチになって牌譜も見てくれるけど…そう考えるとやっぱり小島先生って凄いすね。ただのプロ雀士じゃなく編集長のような発想を持っていたということですよ」
荒 「あの人は天才よ。ただ、皆が小島さんのようにやったってマネっこの二番煎じじゃ認められない。ボクはボクなりに自分の麻雀を追及するしかなかった。でも映像の麻雀は途中経過をすべて映し出してくれるから、ボクの緻密な芸も披露できる」
黒木「でも、それじゃ今までの麻雀をただ見せているだけじゃないですか?」
荒 「いや、やっぱりちょっと変わったね。読みを体現するというのかな? たとえば今までは読みを入れてある程度確信を持っていても、状況的にやっぱり踏み込まずガードを固めようとか、そういう判断をしていた。けど、読みと心中するという選択だってあるわけ」
黒木「この牌を切ればテンパイで、ほぼアガれそう。でもこの牌はかなり危険に見えるとか?」
荒 「でも、その牌は実はこういう理由で通るのではないかと、読みを入れていた。そのまま大人しくオリちゃったら、ただ危険牌をやめただけで、行動としては中級クラスの打ち手と変わらないよね。でも読みを信じて勝負すれば、視聴者はなぜ? と食いついてくれる」
黒木「ちょうどそれにふさわしい例があったので、ちょっと見てみましょうか。ここまでずーっと麻雀牌が出てこなかったので」

spe26

黒木「決勝1回戦の南2局。親の勝又健志プロからリーチが入っていますが、荒さんはこの手からなぜか四索切り」
荒 「二索四索を切ってアガリにいこうと思ったんだけど、四索の方が安全だからね」
黒木「これ実は、近代麻雀オリジナルで私が連載している企画・強者の選択ですでに取材したので驚くのは白々しいのですが、最初に聞いた時はナルホド! と思いました」
荒 「勝又君だから、なんだけどね。4万点以上持っているトップ目で一索が4枚切られている一索四索でリーチはしないだろうと読んだわけです。七索が切られているから四索七索もないし。だから二索より四索の方が安全度が高い」
黒木「そういう風に人の心も読まないと、深く踏み込むことはできないんですね」
荒 「麻雀は総合力だから、卓上にある情報を総動員しないとダメだから」
黒木「私も若い頃、そういう風に考えて努力したつもりでしたが、全然できませんでした。たとえば相手の目線を追っていても、そればかり意識してしまって手元がおろそかになったり。かなり難しいですよね」
荒 「それは本当の意味で努力してないからよ。必死さが足りない。そうしなければ、この世界で生きていけないと、そういう風に追い込まれればできるようになるとボクは思う。プロって本来そういうもんじゃないかなぁ」
黒木「…おっしゃる通りです」
 
運の芸
黒木「少しだけ時間を戻して、決勝1回戦の東1局について教えてください」

spe26

 
黒木「荒さんなら九索を切るかなと思ったのですが、実際は二万切り。一万が3枚出ていたからですか?」
荒 「それもあるけど、それよりもトイツ場の気配があったからトイツは崩したくなかったんだよね」
黒木「相手の捨て牌から分かるんですか?」
荒 「対面は普通だけど、上家の捨て牌が変則じゃない?あぶらっこいところがズタズタ切られているけど、ピンズのホンイチともちょっと違うような」
黒木「まぁそうですけど」
荒 「分からないけど、トイツの多い手格好じゃないかなと思ったんだよね。で、下家はトイツとは限らないけど、早そうな捨て牌はしている。まだ早い巡目なのに一万二万四万とカンチャンを外しているからね」
黒木「なるほど」
荒 「で、自分の手に4トイツだから、トイツ手の方が早いかなと。というより普通に打っても間に合わないだろうと思った。七対子なら、まともにぶつけずにかわせるかもしれないから。それと、場の捨て牌相がトイツ場を表していると思う。序盤にカブリの牌が多く、自分の手にもトイツが多い時は、その後のツモもカブる傾向にある」
黒木「そういう、トイツ場という特殊な場は、本当に存在するのでしょうか?」
荒 「してるじゃない。現に」
黒木「いや、荒さんてあまりオカルト的な発想されないと、前は思っていたので」
荒 「オカルトというのは論外。デジタルもちょっと…。ボクはアナログが麻雀の王道だと思う。目の前で起こっている現象を素直に受け入れ、対処する方が強くなるとボクは思うんだよね。科学的に検証するのが難しい現象があったとしても、実際に勝負の最中に起こることだから。それを解明し追求するのがボクらの仕事です」
黒木「運の芸の追求はオカルトではないと?」
荒 「運と麻雀は、切っても切り離せない関係。相手と自分の運の把握が大事で、正しい応手とはそこから選ばれるべきものとボクは信じる」
黒木「その運は人間がコントロールできないし予想できないから、とにかく普通に構えようというのがデジタル的発想です」
荒 「でも、それは楽な道の選び方で上達はありえない。思考放棄でしょう」
黒木「そこまで言いますか」
荒 「考えてもムダと思っているんだから放棄じゃない。麻雀の基本的な技を磨くのは当然の修行。プロを名乗るのであれば、その上に運の芸も磨かなければならない。そう考えて色紙に書いたりしてたんだよね。運をコントロールできないまでも、潮目を読んで対処できなければ一流の麻雀打ちとは言えない思う」
黒木「運の潮目を読む…船乗りみたいですね」
荒 「ツキの流れは目に見えないから、暗闇で舟をこぐイメージかな?真っ暗闇でわずかしか見えないけど、ボクは死にたくないから情報を総動員する。風の向きを気にしてみたり、潮の香りを嗅いでみたり。それがムダな努力と笑うなら笑え、と言うカンジだね」
黒木「デジタル麻雀はダメですか?」
荒 「まぁ、麻雀の基本ではあるからダメというつもりはないよ。それに、考えが違う人を攻撃するのは無意味。ファンや若手に求められればアドバイスはするけど、それをどう受け止めるかは個人の自由だからね」
黒木「荒さんらしい、優しい突き放し方ですね」
荒 「馬を水飲み場に連れては行けても、水を飲ませることはできないから」
黒木「ちなみに、先ほどの局面、答え合わせをしてみるとこうです」

spe26

 
荒 「ああ、上家はトイツが多くはあるけどメンツ手でもだったんだね」
黒木「下家も読み通りで1シャンテンです。やっぱり、読みの精度は高いですね」
荒 「プロなら当然とボクは思うけどね」
黒木「この次の局面。決勝2回戦の東1局1本場も、やはり読みが入っていたと思うのですが」

spe26

 
荒 「ああ、ここから七索を打ったんだね確か」
黒木「これ、普段なら切らないんじゃないですか? どういう読みがあったのでしょう」
荒 「切っちゃダメだよこんなの」
黒木「じゃあなぜ切ったんですか?」
荒 「この戦いがアタマ取りだったというのがひとつ。優勝以外は同じというシステムだった。それと、前局に勝又君がボクにカン二筒を放銃してくれたんだよね。しかもオリ打ちだというのが明白だった」
黒木「つまり、前局に失敗した者とその恩恵を受けた者との勢いの差があると?」
荒 「そういうこと。普通なら、こういう四索七索のつかみ方した時はオリなんだよ。でも、ここは勢いを信じて真っ直ぐ攻めるべきだと読んだ」
黒木「実は決勝1回戦で前原雄大プロに四暗刻をツモられてしまい、勝負あった的なムードだったのですが、2回戦でよく盛り返しましたね!」
荒 「まぁ途中で前ちゃん(=前原プロのこと)がハイテイで放銃したりとか、色々ラッキーがあったからね」
黒木「内容については、テレビの再放送牌譜データサービスでご覧いただくことにしましょう」
荒 「うまいこと宣伝するね。でも、この対局は全体を通じて色々と魅せられたと思うよ」
黒木「いつもは、荒さんはアタリ牌だけをピタっと止めて魅せてくれますが、今回は攻める方で魅せてくれましたね」
荒 「テンパイしているのにアタリと読んで止めるのも勇気がいるのよ。アタってなかったら、コイツ何してんの? ってバカにされちゃうじゃない。でもファンの皆さんにプロの芸を見てもらいたいから、読みと心中してるんです」
黒木「確かにそうですよね。ファインプレーは一歩間違えたらサムい打牌にもつながる。だからテレビ対局では特に無難な打牌や選択をしがちですが、そこを突き破ってこそのプロであり、魅せる麻雀だということですね」
荒 「これからの麻雀プロは、目の前の敵と、ツキという魔物と、そしてファンの厳しい目と戦っていかなきゃならない。因果な商売だけど、その分やりがいもあるって考えなきゃね。これからの若いプロは、そういうステージがあるだけ幸せだと思うよ」
黒木「確かにそうですね。荒さんが若い頃は、あまり華やかな舞台がありませんでした」
荒 「不毛の土地を必死に開墾してきたから。耕して種まいて水かけて。実ってきたなぁと思ったら還暦だから。実ったもの食べるのは黒木君たち、若い世代だから」
黒木「最後に出ましたね荒節が!」
 
最後は冗談で締めてくれた荒正義プロだったが、今回、インタビューしてみて色々と勉強になった。
普段は私が質問しても、冗談ばかり言うしケムにまくし、あまり本音を言われないことが多いのだが、今回ばかりは仕事なので私も結構食い下がった。
すると、荒さんもマトモに答えてくださって、今まで聞けなかった話が聞けたのである。
冗談ばかり言って飄々と生きている荒さんも、色々と考えながら、プロの麻雀を追及されているのだなぁと。考えてみればそんなこと当たり前だし、荒さんほどの人に対して私がつべこべ言うのは失礼なのだが、日常があまりにも冗談だらけの人なので、ついつい忘れてしまいがちなのである。
結局この人はシャイなのだ。「マジメか!?」と言われるのが恥ずかしいのだと思う。
だから若い頃、うまくいかなくてヘコんだ話や、悩んだそぶりはあまり見せない。荒さんみたいな天才雀士が難しい一手を打っても、それが理解されないこともあったはずだ。ヘタをすれば、取材もされぬまま「ただの悪手」として処理されてしまうことだってあっただろう。
それに比べれば、現在は恵まれている。
荒さんが言うように、映像の世界になり、一打一打を見てもらえるから、技術さえあればプロとして魅せることができる。もし打牌だけで表現できなくても、荒さんがそうやったようにブログなどを通じて発信することだってできる。目立たない一手も、ファンにアピールすることができるようになったのだ。
活字時代のように書き手の筆力に頼むことはない。
TVカメラの前でパフォーマンスできれば、それがそのままファンの目に届く。
荒さんの「魅せる麻雀」宣言は、同業者やファンへの呼びかけなのかもしれない。
麻雀プロとして表現の舞台は大きく広がった。才能のある者が努力さえすれば、華やかな舞台で戦い、ファンに認めてもらうことができる。
しかし逆に言えば、力のない者は廃業を余儀なくされるということだ。そんな時代になったということを、シャイな荒さんは遠まわしに、丸ノ内線で後楽園から四ツ谷に行くぐらい遠まわしにおっしゃっているのだと、私は勝手に解釈している。

第11回天空麻雀男性大会 優勝特別インタビュー:荒正義

spe26

 

荒(正義)さんは最近「魅せる麻雀」を意識しているという。
最初は冗談かと思った。

なぜなら、私の中での荒さんのイメージは「魅せる麻雀」の真逆で「全然魅せないけど実利的で辛い麻雀」だったから。

以前、ビートたけしさんがCSの番組の収録中、荒さんのことを「薄情な麻雀打ちやがんだよなぁこの人は」と評された。コレ、本当にピッタリな言葉。さすが天才たけしさんだと思った。この人、卓上では本当に冷徹なマシーンのようにコワイのである。

荒さんはもし、自分を慕ってくれている中堅どころ。たとえば黒木真生プロが「ここでアガれないとプロ引退」という場面でも、急所はちゃんと鳴いて、シレっと千点をアガるだろう。それが勝負の世界のオキテだからである。

でも、勝負が終わったら「あン時はゴメンね。でも、キミは麻雀プロやめたって別の方法で生活できるよきっと」と、私を送り出す会を開き、声をかけてくれるだろう。卓から離れたらそういう優しさを持った人である。

そんな勝負の鬼のような人が、いったいどうして魅せる麻雀などやるというのか。
私はこの件について「近代麻雀リアル麻雀プロ4大タイトル戦DVD BOOK」(確かこれだったと思うが)でも書いたのだが、その時はあえて本人に直接取材しなかったので、まだモヤモヤ感が残っていた。

今回「天空麻雀11」で優勝したインタビューをやれといわれたついでに、その真意を確かめるため、荒さんのご自宅にお邪魔した。

黒木「やっと優勝ですね」
荒 「10回連続で出してもらってるのに初めて優勝。でも、10回連続で出て、1回もラスを引いてないからそこは評価してもらわなきゃ」
黒木「天空麻雀は予選でトップをとればいきなり決勝。ラスなら敗退でその他は準決勝ですが、確かに荒さんは必ず準決勝か決勝にいってます」
荒 「ただ、実際は、プロ雀士はそういうの評価されない。優勝以外は意味がないから」
黒木「もちろん、内容で見せることに意味があるとは思いますが、結果としては優勝かその他か、ですよね」
荒 「プロだから内容が良いのは当たり前で、その上で勝たなければいけない。ベストなのは、キチンとした内容で勝負して勝つ。しかも、そこにファンが驚くような大技とか、感動するような戦いぶりとか、プロにしかできないプラスアルファがあるということ。これがプロ雀士としての理想だね」
黒木「最近そういう考えになったんですか?」
荒 「前から思ってたけど、表現する場がなかったじゃない。でも今は映像媒体で打つことが多いでしょ?」
黒木「確かに。今、一番多く見られているのはMONDOTVの麻雀番組。毎日4~5時間麻雀番組をやってて、それをずーっと10万人近い人が視聴しているっていうんですからね。のべの視聴者数ではなく、同時に見ている人の数ですよ」
荒 「そんなに見てるの!?」
黒木「視聴率から単純計算するとそうなるんです。今はだいたい、東京ローカルの高視聴率番組ぐらい見られている計算になります」
荒 「特に有料で見てくれるファンの方に対局を見せるわけだから、クオリティの高いものじゃないとね。それに、地味で単調なのはすぐ飽きられるし」
黒木「だからといって魅せる麻雀というのは荒さんのキャラじゃないのでは?」
荒 「魅せる麻雀といったって、小島武夫さんのように華麗な手作りを見せるだけじゃない。ボクにはボクなりの魅せ方があるかなって思ってたんだよね前から。映像なら何とかなるかもって」
黒木「なるほど。雑誌の牌譜は、途中の細かい芸は見つけてもらえませんからね。小島先生のように華麗なアガリ形を披露すれば、それがアイキャッチになって牌譜も見てくれるけど…そう考えるとやっぱり小島先生って凄いすね。ただのプロ雀士じゃなく編集長のような発想を持っていたということですよ」
荒 「あの人は天才よ。ただ、皆が小島さんのようにやったってマネっこの二番煎じじゃ認められない。ボクはボクなりに自分の麻雀を追及するしかなかった。でも映像の麻雀は途中経過をすべて映し出してくれるから、ボクの緻密な芸も披露できる」
黒木「でも、それじゃ今までの麻雀をただ見せているだけじゃないですか?」
荒 「いや、やっぱりちょっと変わったね。読みを体現するというのかな? たとえば今までは読みを入れてある程度確信を持っていても、状況的にやっぱり踏み込まずガードを固めようとか、そういう判断をしていた。けど、読みと心中するという選択だってあるわけ」
黒木「この牌を切ればテンパイで、ほぼアガれそう。でもこの牌はかなり危険に見えるとか?」
荒 「でも、その牌は実はこういう理由で通るのではないかと、読みを入れていた。そのまま大人しくオリちゃったら、ただ危険牌をやめただけで、行動としては中級クラスの打ち手と変わらないよね。でも読みを信じて勝負すれば、視聴者はなぜ? と食いついてくれる」
黒木「ちょうどそれにふさわしい例があったので、ちょっと見てみましょうか。ここまでずーっと麻雀牌が出てこなかったので」

spe26

黒木「決勝1回戦の南2局。親の勝又健志プロからリーチが入っていますが、荒さんはこの手からなぜか四索切り」
荒 「二索四索を切ってアガリにいこうと思ったんだけど、四索の方が安全だからね」
黒木「これ実は、近代麻雀オリジナルで私が連載している企画・強者の選択ですでに取材したので驚くのは白々しいのですが、最初に聞いた時はナルホド! と思いました」
荒 「勝又君だから、なんだけどね。4万点以上持っているトップ目で一索が4枚切られている一索四索でリーチはしないだろうと読んだわけです。七索が切られているから四索七索もないし。だから二索より四索の方が安全度が高い」
黒木「そういう風に人の心も読まないと、深く踏み込むことはできないんですね」
荒 「麻雀は総合力だから、卓上にある情報を総動員しないとダメだから」
黒木「私も若い頃、そういう風に考えて努力したつもりでしたが、全然できませんでした。たとえば相手の目線を追っていても、そればかり意識してしまって手元がおろそかになったり。かなり難しいですよね」
荒 「それは本当の意味で努力してないからよ。必死さが足りない。そうしなければ、この世界で生きていけないと、そういう風に追い込まれればできるようになるとボクは思う。プロって本来そういうもんじゃないかなぁ」
黒木「…おっしゃる通りです」

 

運の芸

黒木「少しだけ時間を戻して、決勝1回戦の東1局について教えてください」

spe26

 

黒木「荒さんなら九索を切るかなと思ったのですが、実際は二万切り。一万が3枚出ていたからですか?」
荒 「それもあるけど、それよりもトイツ場の気配があったからトイツは崩したくなかったんだよね」
黒木「相手の捨て牌から分かるんですか?」
荒 「対面は普通だけど、上家の捨て牌が変則じゃない?あぶらっこいところがズタズタ切られているけど、ピンズのホンイチともちょっと違うような」
黒木「まぁそうですけど」
荒 「分からないけど、トイツの多い手格好じゃないかなと思ったんだよね。で、下家はトイツとは限らないけど、早そうな捨て牌はしている。まだ早い巡目なのに一万二万四万とカンチャンを外しているからね」
黒木「なるほど」
荒 「で、自分の手に4トイツだから、トイツ手の方が早いかなと。というより普通に打っても間に合わないだろうと思った。七対子なら、まともにぶつけずにかわせるかもしれないから。それと、場の捨て牌相がトイツ場を表していると思う。序盤にカブリの牌が多く、自分の手にもトイツが多い時は、その後のツモもカブる傾向にある」
黒木「そういう、トイツ場という特殊な場は、本当に存在するのでしょうか?」
荒 「してるじゃない。現に」
黒木「いや、荒さんてあまりオカルト的な発想されないと、前は思っていたので」
荒 「オカルトというのは論外。デジタルもちょっと…。ボクはアナログが麻雀の王道だと思う。目の前で起こっている現象を素直に受け入れ、対処する方が強くなるとボクは思うんだよね。科学的に検証するのが難しい現象があったとしても、実際に勝負の最中に起こることだから。それを解明し追求するのがボクらの仕事です」
黒木「運の芸の追求はオカルトではないと?」
荒 「運と麻雀は、切っても切り離せない関係。相手と自分の運の把握が大事で、正しい応手とはそこから選ばれるべきものとボクは信じる」
黒木「その運は人間がコントロールできないし予想できないから、とにかく普通に構えようというのがデジタル的発想です」
荒 「でも、それは楽な道の選び方で上達はありえない。思考放棄でしょう」
黒木「そこまで言いますか」
荒 「考えてもムダと思っているんだから放棄じゃない。麻雀の基本的な技を磨くのは当然の修行。プロを名乗るのであれば、その上に運の芸も磨かなければならない。そう考えて色紙に書いたりしてたんだよね。運をコントロールできないまでも、潮目を読んで対処できなければ一流の麻雀打ちとは言えない思う」
黒木「運の潮目を読む…船乗りみたいですね」
荒 「ツキの流れは目に見えないから、暗闇で舟をこぐイメージかな?真っ暗闇でわずかしか見えないけど、ボクは死にたくないから情報を総動員する。風の向きを気にしてみたり、潮の香りを嗅いでみたり。それがムダな努力と笑うなら笑え、と言うカンジだね」
黒木「デジタル麻雀はダメですか?」
荒 「まぁ、麻雀の基本ではあるからダメというつもりはないよ。それに、考えが違う人を攻撃するのは無意味。ファンや若手に求められればアドバイスはするけど、それをどう受け止めるかは個人の自由だからね」
黒木「荒さんらしい、優しい突き放し方ですね」
荒 「馬を水飲み場に連れては行けても、水を飲ませることはできないから」
黒木「ちなみに、先ほどの局面、答え合わせをしてみるとこうです」

spe26

 

荒 「ああ、上家はトイツが多くはあるけどメンツ手でもだったんだね」
黒木「下家も読み通りで1シャンテンです。やっぱり、読みの精度は高いですね」
荒 「プロなら当然とボクは思うけどね」
黒木「この次の局面。決勝2回戦の東1局1本場も、やはり読みが入っていたと思うのですが」

spe26

 

荒 「ああ、ここから七索を打ったんだね確か」
黒木「これ、普段なら切らないんじゃないですか? どういう読みがあったのでしょう」
荒 「切っちゃダメだよこんなの」
黒木「じゃあなぜ切ったんですか?」
荒 「この戦いがアタマ取りだったというのがひとつ。優勝以外は同じというシステムだった。それと、前局に勝又君がボクにカン二筒を放銃してくれたんだよね。しかもオリ打ちだというのが明白だった」
黒木「つまり、前局に失敗した者とその恩恵を受けた者との勢いの差があると?」
荒 「そういうこと。普通なら、こういう四索七索のつかみ方した時はオリなんだよ。でも、ここは勢いを信じて真っ直ぐ攻めるべきだと読んだ」
黒木「実は決勝1回戦で前原雄大プロに四暗刻をツモられてしまい、勝負あった的なムードだったのですが、2回戦でよく盛り返しましたね!」
荒 「まぁ途中で前ちゃん(=前原プロのこと)がハイテイで放銃したりとか、色々ラッキーがあったからね」
黒木「内容については、テレビの再放送牌譜データサービスでご覧いただくことにしましょう」
荒 「うまいこと宣伝するね。でも、この対局は全体を通じて色々と魅せられたと思うよ」
黒木「いつもは、荒さんはアタリ牌だけをピタっと止めて魅せてくれますが、今回は攻める方で魅せてくれましたね」
荒 「テンパイしているのにアタリと読んで止めるのも勇気がいるのよ。アタってなかったら、コイツ何してんの? ってバカにされちゃうじゃない。でもファンの皆さんにプロの芸を見てもらいたいから、読みと心中してるんです」
黒木「確かにそうですよね。ファインプレーは一歩間違えたらサムい打牌にもつながる。だからテレビ対局では特に無難な打牌や選択をしがちですが、そこを突き破ってこそのプロであり、魅せる麻雀だということですね」
荒 「これからの麻雀プロは、目の前の敵と、ツキという魔物と、そしてファンの厳しい目と戦っていかなきゃならない。因果な商売だけど、その分やりがいもあるって考えなきゃね。これからの若いプロは、そういうステージがあるだけ幸せだと思うよ」
黒木「確かにそうですね。荒さんが若い頃は、あまり華やかな舞台がありませんでした」
荒 「不毛の土地を必死に開墾してきたから。耕して種まいて水かけて。実ってきたなぁと思ったら還暦だから。実ったもの食べるのは黒木君たち、若い世代だから」
黒木「最後に出ましたね荒節が!」

 

最後は冗談で締めてくれた荒正義プロだったが、今回、インタビューしてみて色々と勉強になった。
普段は私が質問しても、冗談ばかり言うしケムにまくし、あまり本音を言われないことが多いのだが、今回ばかりは仕事なので私も結構食い下がった。
すると、荒さんもマトモに答えてくださって、今まで聞けなかった話が聞けたのである。

冗談ばかり言って飄々と生きている荒さんも、色々と考えながら、プロの麻雀を追及されているのだなぁと。考えてみればそんなこと当たり前だし、荒さんほどの人に対して私がつべこべ言うのは失礼なのだが、日常があまりにも冗談だらけの人なので、ついつい忘れてしまいがちなのである。

結局この人はシャイなのだ。「マジメか!?」と言われるのが恥ずかしいのだと思う。
だから若い頃、うまくいかなくてヘコんだ話や、悩んだそぶりはあまり見せない。荒さんみたいな天才雀士が難しい一手を打っても、それが理解されないこともあったはずだ。ヘタをすれば、取材もされぬまま「ただの悪手」として処理されてしまうことだってあっただろう。

それに比べれば、現在は恵まれている。
荒さんが言うように、映像の世界になり、一打一打を見てもらえるから、技術さえあればプロとして魅せることができる。もし打牌だけで表現できなくても、荒さんがそうやったようにブログなどを通じて発信することだってできる。目立たない一手も、ファンにアピールすることができるようになったのだ。

活字時代のように書き手の筆力に頼むことはない。
TVカメラの前でパフォーマンスできれば、それがそのままファンの目に届く。

荒さんの「魅せる麻雀」宣言は、同業者やファンへの呼びかけなのかもしれない。
麻雀プロとして表現の舞台は大きく広がった。才能のある者が努力さえすれば、華やかな舞台で戦い、ファンに認めてもらうことができる。

しかし逆に言えば、力のない者は廃業を余儀なくされるということだ。そんな時代になったということを、シャイな荒さんは遠まわしに、丸ノ内線で後楽園から四ツ谷に行くぐらい遠まわしにおっしゃっているのだと、私は勝手に解釈している。

リレーエッセィ/第75回:小笠原奈央

初めまして。こんばんは。
中村慎吾プロからバトンを受け取りました・・・
日本プロ麻雀連盟28期生の小笠原奈央です。あぁ、大変恐縮です。
中村慎吾プロとの繋がりは・・・タイトル戦でボールペンを貸した事かな。
多分、あれは中村慎吾プロでした(笑)
ボールペンは必ず3本程常備しているので、いつでも言って下さい(笑)
では・・・軽く自己紹介たるものをさせていただきます。
名前は・・・おがさはら!!!おがさはらなおです。
千葉県の夢の国の近くで生まれ、4人兄弟の次女として、すくすくと育ちました。
身長153cm!!!!千葉県をこよなく愛し、B型であることを誇りに思う26歳です。
よく周りの人には、意外に歳いってるんだね。って言われます。ははは
麻雀に出会ったのは遅かったのですが、友達がやっているのを見て、仲間に入りたくて携帯で麻雀のルールを見ながら覚えたのがきっかけでした。
手積みをしながら卓を囲んでワイワイしたり、皆の意外な性格が垣間見れたり、ロン!ツモ!って言って手を皆に見せて、それで褒められる事が、すっごく嬉しくて・・・
それからというもの、毎日麻雀のことばかり考えていて、日々「麻雀したい!!」が口癖でした。
そののち和泉プロに出会い、憧れを抱き、プロというものを目指すようになりました。
まずは雀荘で働く事を両親に許してもらう為、日々目が合えば「雀荘で働いてプロになりたい!!いい?」「ねぇ、いい?」が口癖でした。
あまりにもしつこいので両親が根負けをし、呆れながらも許してくれました(笑)
ちなみに和泉プロとは、フジTVの恋愛番組「あいのり」繋がりです。
旅は被っていませんが、番組終了後の今もメンバー皆仲が良くて、よく飲み会が開催されるんです。
そこで私は和泉プロに初めて会い、色々話を聞いて・・・
あの日が私のターニングポイントだったなと思います。
ちなみに番組における私の旅はというと・・・
21歳の頃、大学在学中にガーリックというニックネームで旅に出て、(鼻がにんにくに似ていることから)デンマークで42.195kmを走ったり、パン1つを皆で分け合ってテントで凍えながら寝たり、ホームシックになって泣いちゃったり、そんなこんなで好きな人ができ告白。
防波堤で好きーー!!!って叫びましたよ。
日本に帰るチケットを渡して、そして・・・
がっつりフラれて帰ってきました!!!!
どうだ!!!男らしいだろ!!!ハハハ
振り返れば色々と貴重な体験が出来ている人生だと思います。
また、多くの方に支えられていると、つくづく感じます。
点数計算も間々ならない私に、連盟のプロでもあるお店のスタッフの人達が、忙しい中時間を割いて問題集を作ってくれたり、Aルールセットを沢山してくれたり、お客さんも一緒になって教えてくれて・・・
その甲斐あって、念願のプロテストに合格し、今年4月でプロとして1年を迎えました。
和泉プロを始め、この1年で出会った連盟の先輩方も本当に良い方ばかりで、麻雀はもちろん、多くの事を教えてもらっています。また、大変嬉しい事に、麻雀格闘倶楽部やロン2、2013連盟カレンダーにも出させていただき、今度はロン2カップのMCにチャレンジさせていただく事になりました。

ron22013spring ロン2カップ2013Spring 視聴URLはこちら

ちなみに、自身のブログなどでは沢山話したりして自分ワールド全開ですけど、基本、人見知りなので、喋るのも、人前に出るのも、あがちゃって大の苦手。
TVに出ていたから、そういうの慣れてるんでしょ??って毎回言われるんですが、むしろ苦手です。(笑)
いつも緊張でアワワのドキドキです。
それでも、まだまだ青二才の私に、こうやって機会を頂ける事がまず嬉しくて、感謝すると共に、日々色んな事を吸収していけたらと思います。
たまに麻雀の奥深さに挫折しちゃいそうになったりもするけど・・・(笑)
自分の覚えの悪さに嫌気がさしそうになるけど・・・(笑)
ちょっと見られただけで手の震えが止まらなくなるけど・・・(笑)
やっぱり好きで楽しくて・・・
連盟のプロとしても恥じないように、今後、急急急成長を遂げるつもりですので、皆様今後とも、今後から??どうぞ宜しくお願いします。
どうか見捨てないでね?(笑)
では、そろそろお別れの時間がやってまいりましたね。
あ!ここだけの話でも1つしてお別れとしましょうか。
私、生まれも育ちも左利きです。何があっても左利き一筋を貫いてきました。
昔、習っていた習字も右手に直しなさいと言われ、習字をやめることを選んだ頑固者です。
お陰さまで、字がとてつもなく汚いです。
そんな私が、麻雀に出会いプロになって、右手と言うものに初挑戦しました。
今では右手で麻雀を打っています。まだ変だってよく突っ込まれるけど(笑)、右手で打つ麻雀は私の愛の証しってことです。
何が言いたいかって??
やっぱりさ・・・
麻雀最高!!!!
ゴホン。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
ではまたいつか。
お次は・・・
麻雀格闘倶楽部にも出演をし、ライターの顔も持つ多才な方。
私も大変お世話になっている・・・
黒木真生プロです。
是非お楽しみに!!!!
小笠原奈央でした。

第75回:小笠原奈央

初めまして。こんばんは。
中村慎吾プロからバトンを受け取りました・・・
日本プロ麻雀連盟28期生の小笠原奈央です。あぁ、大変恐縮です。

中村慎吾プロとの繋がりは・・・タイトル戦でボールペンを貸した事かな。
多分、あれは中村慎吾プロでした(笑)
ボールペンは必ず3本程常備しているので、いつでも言って下さい(笑)

では・・・軽く自己紹介たるものをさせていただきます。

名前は・・・おがさはら!!!おがさはらなおです。

千葉県の夢の国の近くで生まれ、4人兄弟の次女として、すくすくと育ちました。
身長153cm!!!!千葉県をこよなく愛し、B型であることを誇りに思う26歳です。
よく周りの人には、意外に歳いってるんだね。って言われます。ははは

麻雀に出会ったのは遅かったのですが、友達がやっているのを見て、仲間に入りたくて携帯で麻雀のルールを見ながら覚えたのがきっかけでした。

手積みをしながら卓を囲んでワイワイしたり、皆の意外な性格が垣間見れたり、ロン!ツモ!って言って手を皆に見せて、それで褒められる事が、すっごく嬉しくて・・・
それからというもの、毎日麻雀のことばかり考えていて、日々「麻雀したい!!」が口癖でした。

そののち和泉プロに出会い、憧れを抱き、プロというものを目指すようになりました。
まずは雀荘で働く事を両親に許してもらう為、日々目が合えば「雀荘で働いてプロになりたい!!いい?」「ねぇ、いい?」が口癖でした。
あまりにもしつこいので両親が根負けをし、呆れながらも許してくれました(笑)

ちなみに和泉プロとは、フジTVの恋愛番組「あいのり」繋がりです。
旅は被っていませんが、番組終了後の今もメンバー皆仲が良くて、よく飲み会が開催されるんです。
そこで私は和泉プロに初めて会い、色々話を聞いて・・・
あの日が私のターニングポイントだったなと思います。

ちなみに番組における私の旅はというと・・・

21歳の頃、大学在学中にガーリックというニックネームで旅に出て、(鼻がにんにくに似ていることから)デンマークで42.195kmを走ったり、パン1つを皆で分け合ってテントで凍えながら寝たり、ホームシックになって泣いちゃったり、そんなこんなで好きな人ができ告白。

防波堤で好きーー!!!って叫びましたよ。

日本に帰るチケットを渡して、そして・・・

がっつりフラれて帰ってきました!!!!

どうだ!!!男らしいだろ!!!ハハハ

振り返れば色々と貴重な体験が出来ている人生だと思います。
また、多くの方に支えられていると、つくづく感じます。
点数計算も間々ならない私に、連盟のプロでもあるお店のスタッフの人達が、忙しい中時間を割いて問題集を作ってくれたり、Aルールセットを沢山してくれたり、お客さんも一緒になって教えてくれて・・・

その甲斐あって、念願のプロテストに合格し、今年4月でプロとして1年を迎えました。
和泉プロを始め、この1年で出会った連盟の先輩方も本当に良い方ばかりで、麻雀はもちろん、多くの事を教えてもらっています。また、大変嬉しい事に、麻雀格闘倶楽部やロン2、2013連盟カレンダーにも出させていただき、今度はロン2カップのMCにチャレンジさせていただく事になりました。

ron22013spring ロン2カップ2013Spring 視聴URLはこちら

ちなみに、自身のブログなどでは沢山話したりして自分ワールド全開ですけど、基本、人見知りなので、喋るのも、人前に出るのも、あがちゃって大の苦手。
TVに出ていたから、そういうの慣れてるんでしょ??って毎回言われるんですが、むしろ苦手です。(笑)
いつも緊張でアワワのドキドキです。

それでも、まだまだ青二才の私に、こうやって機会を頂ける事がまず嬉しくて、感謝すると共に、日々色んな事を吸収していけたらと思います。

たまに麻雀の奥深さに挫折しちゃいそうになったりもするけど・・・(笑)
自分の覚えの悪さに嫌気がさしそうになるけど・・・(笑)
ちょっと見られただけで手の震えが止まらなくなるけど・・・(笑)
やっぱり好きで楽しくて・・・
連盟のプロとしても恥じないように、今後、急急急成長を遂げるつもりですので、皆様今後とも、今後から??どうぞ宜しくお願いします。

どうか見捨てないでね?(笑)

では、そろそろお別れの時間がやってまいりましたね。
あ!ここだけの話でも1つしてお別れとしましょうか。

私、生まれも育ちも左利きです。何があっても左利き一筋を貫いてきました。
昔、習っていた習字も右手に直しなさいと言われ、習字をやめることを選んだ頑固者です。
お陰さまで、字がとてつもなく汚いです。

そんな私が、麻雀に出会いプロになって、右手と言うものに初挑戦しました。
今では右手で麻雀を打っています。まだ変だってよく突っ込まれるけど(笑)、右手で打つ麻雀は私の愛の証しってことです。

何が言いたいかって??

やっぱりさ・・・

麻雀最高!!!!

ゴホン。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
ではまたいつか。

お次は・・・

麻雀格闘倶楽部にも出演をし、ライターの顔も持つ多才な方。
私も大変お世話になっている・・・

黒木真生プロです。

是非お楽しみに!!!!
小笠原奈央でした。

上級/第76回『その先に在るもの』

私達は、毎週木曜日に麻雀の勉強会をしている。
もう、かれこれ5年くらいにはなっただろうか。
当初は、あらゆる意味で厳しい会だったように思う。
教える側も本気だった分、言葉の行き違いがあったようにも思われる。
あの温厚な山田浩之でさえ、登校拒否になったくらいだ。
ひとつに、若手はその局面の最善手を求めすぎるあまり、全体、もしくはその半荘からの最善手を求められない傾向にあったため、いつの間にか語気が荒くなったせいもあると思われる。
ただ、私はそれでも良いと考えていた。
なぜならば、その語気の裏側に後輩を思う気持ち、良くなってほしいという祈りにも近い愛情がそこには間違いなく存在していたからである。
若いうちは手順、局面の読みに頼りがちになることは致し方ないことのように思う。
なぜならば、私自身が若い頃そうだったからである。
私に運があったのは、プロになって優れた先輩達に恵まれたことである。
麻雀というゲームは包容力があり、手順だけでも相手が弱ければ勝てるものである。
言葉を変えるならば、手順は基本であり、ここだけはきちんと掌握しておかねばならない部分である。
以前にも記したが、手順を疎かにして思い込みだけで麻雀を打つことのほうが、その打ち手を遥かに危うく脆いものにしてしまう。
例えば、箸の持ち方、扱い方に似ている。
幼い頃、箸の扱い方をきちんと躾けてもらえないまま大人になった人は、なかなか矯正できないように、何事においてもまずは基本を学ぶことが大切なことなのである。
条件計算も基本の1つである。
私達の世代は、テンリーダーなど存在しておらず、相手の持ち点を記憶していた。
記憶、計算しておかないと、ラスのラスアガリなどということにもなりかねない、もしくは1,300点差の2着目が、1,000点アガって2着のままなどということになりかねないから、100点単位の計算もキチンとしていた。これも基本の1つではある。
先日の勉強会のひとコマから。
親番・内川幸太郎23,700
南家・杉浦勘助23,200点
西家・佐々木寿人34,800点
北家・ガース38,300点
6巡目、杉浦の手牌。
二万二万三万四万四万五万五万六万四索六索四筒五筒六筒  ドラ八万
杉浦は静かに潜航策のヤミテンを選択した。
杉浦という男は風貌通り物静かで、麻雀に牌理というものが存在するならば、勝又健志か杉浦勘介かといわれるほどの打ち手であり、遠く中京から、月に何度か勉強会に参加するためだけに上京してくる。
それは、彼自身は語らないが、強くなりたい、強くありたいという衝動にも似た志が、かれを上京の道へと突き動かしているのだろうと私は思っている。
そんな杉浦の選択である以上、これは1つのセオリーと言っても良いだろう。
ただ、少し状況を付け加える。
捨牌
内川  四索四索五筒五万白二筒
杉浦  一索二索九万西白
ヒサト 一万四万五索五索四筒
ガース 四万四筒六筒八筒二筒
ガースは、ヒサトの2枚目の五索を逡巡したのち仕掛けている。
チー五索六索七索
「そうかな・・先行きに不安が残るように思えるけど・・・」
杉浦にだけ聞こえるように私は呟いた。
以前は、局を途中で止めて、その打ち手の打牌について意味を問いただすこともあったが、今はそういう形をなるべくとらないようにしている。
セオリー、もしくは本手、最善手ということであれば、杉浦の方法論はそこに乗っ取っていることは確かな部分である。良い、悪いは別として、リーチを打つのも悪くない局面に思えたからである。
ガースの仕掛けは明らかな一色模様である。
ただ、五索を仕掛ける時に逡巡があったように、そこまで、信用に値する仕掛けではないように映ったこと。
ヒサト、内川の手牌進行の速度が遅いことは捨牌だけでなく、場面の雰囲気からも読み取れた。
ここまでは、杉浦も私と同様の読みを入れていたように思う。だからこその選択なのだろう。
五索は見えているだけで2枚・・ガースの一色を考えれば、残りはおそらくあって1枚。
ただ、その1枚は確実に山に眠っていることは私もそうだが、杉浦も確信していた。
持ち点は1つの形勢判断のバロメーターである。
ヒサト、ガースが良くて、内川、杉浦が悪い、というのが私の見立てである。
杉浦と内川ならば、同じような点数でありながらも、途中の経過から推し量れば、わずかながら内川の方に分があるように私は考えていた。
ちなみに、私の目に見える手牌は、前述の杉浦の手牌とヒサトの手牌のみである。
この時点でヒサトの手牌は、
一万二万三万八万九万二索三索九筒九筒南北北中
杉浦の良い部分、いわゆる長所は、気配を全く出さないところである。
この時点ならば、ヒサト、内川が五索を掴めば、間違いなく放銃で終わるだろう。
ただ、果たして今のヒサトが五索を掴むかと問われれば、掴まないと私は考える。
ガースからは、ソーズは欲しいところではあっても、まず、こぼれるほどの姿形にはなっていないだろう。
内川はチャンタ、もしくは上目の三色の手牌構成に映ったが、1シャンテンから2シャンテンの間だろう。
状態から考えれば、内川からの出アガリはあるかもしれないという場面である。
ここまでは、ほぼ杉浦と私の認識は同じだろう。
そして、次巡の杉浦のツモが六万で打三万
二万二万四万四万五万五万六万六万四索六索四筒五筒六筒
この牌姿になってしまえば、さらに杉浦はリーチを打つ理由、根拠がなくなる。
そしてツモ二万。ここが1つのターニングポイントである。
二万二万二万四万四万五万五万六万六万四索六索四筒五筒六筒
ほんの僅かな少考後、杉浦の選択は手出し打二万
「手出しとツモ切りと、どちらが効果的か考えていました…少し柔軟性に欠けていたかもしれませんね」
私はいわゆる流れ論者と捉えられているようだが、麻雀を、偏りを捕まえるゲーム、もしくはその偏りを捕まえた時に、いかに維持させ続けるかのゲームと捉えている。
今局のツモ二万の意味するところは、私が杉浦の立場であったなら、とにかく、アガリ切り親番につなげることをテーマに持ってくる。ならば、打つべき打牌候補は四索六索となる。
マンズのフリテン形も、相手の速度を加味すればそれほど悪くはない。何しろ五索待ちよりはマシだろう。
これは私が正しいと言っているわけではなく、私ならばそうすると言うだけのことであるから、誤解なさらぬよう。
いずれにしても、テーマの在り方は人それぞれだが、杉浦と私のテーマがここで別れた。
杉浦の連綿としたツモ切りが続く中で、まず、好調者のヒサトに牌が雪崩れ込んでくる。
ツモ北北と続き、まずは1シャンテンから暗槓。
ガースがドラである八万をノータイムでツモ切り。
そして、遂にヒサトが要のツモ七万で「リーチ」
一万二万三万七万八万九万二索三索九筒九筒  暗カン牌の背北北牌の背  リーチ  ドラ八万
同巡、親番の内川が追いかけリーチを打つ。
六万七万八万七索八索九索一筒二筒三筒八筒九筒西西 リーチ
ちなみに、内川の入り目は六万である。
内川がリーチを打つ理由は、まずは親番であること、そして、杉浦の長所である気配が出ていなかったことで、ヒサトとの刺し勝負であれば、条件としては悪くはないと考えたのかもしれない。
このツモ六万の意味を解釈するのは、これも人それぞれだが、弱いツモであることは論をまたないところだろう。
ツモが弱いからヤミテンに構え、ツモ九万に備える打ち手もいれば、ヒサトに対し危なげな牌を引けばオリに向うのも1手ではある。そこら辺りの部分はデリケートなところで、これも人それぞれだろう。
2人の挟撃にあったのが、一番速く充分な打点を伴った杉浦である。
二万二万四万四万五万五万六万六万四索六索四筒五筒六筒
この牌姿に一発で掴まされたのが、内川のロン牌である七筒であった。
杉浦の出した答えは、打六索のテンパイ崩し。
麻雀というゲームは、本当に正直にできているゲームであることを思い知らされた一局ではある。
「そうかな・・先行きに不安が残るように思えるけど・・・」
私がそういったのは、この展開になることを予測しただけのことである。
最初のテンパイでリーチを打つのは、周りを降ろし、負けのない山だけとの勝負に持ち込むことと、仮に流局してもテンパイ料以上の効果があると考えられるからである。
ヒサトはまず、北を4枚河に並べるだろう。ガースは、ドラである八万で退くだろう。
そして内川も、真っ直ぐにオリに向う。
それは私のリーチではなく、杉浦のリーチならばこそ誰も立ち向かえないと考えるからだ。
それが、何年もかけて築き上げた、杉浦というプレイヤーのブランドの力である。
「前原さんの言葉は良くわかります・・ただ僕は、次回同じ場面が訪れたとしても、
今局と同じ方法論をとるかもしれません」
「それで良いと思うよ。貴方が長い間、それこそ膨大な時間を懸けて麻雀に正面から取り組んできたカタチなのだから、ただ、こういう戦い方も在るということを頭の片隅の何処かにしまっておいて麻雀に取り組んでいけば、また新しい、その先に在るものが、見えてくるかもしれないから・・」
私達が毎週やっていることは研究会ではない、勉強会である。
勉強とは教わるものではなく、自分から学ぼうという姿勢と、強くなりたくてどうしょうもない、プロと呼ばれる人種の集う会であるべきだと私は考えている。
私も先輩から教わり、観ること、打つことで後輩からも学んでいるのである。
この勉強会を立ち上げたのは、現会長である森山茂和プロである。
当初とは、全く違うカタチに会そのものが変容したようにも思えるし、そこには決して少なくない試行錯誤の繰り返しが存在していたと思う。今後も澱むことなく変容していくのだろう。
どういうカタチになるかは、その時代の中心に生きている若い後輩達が懸命に考え続け、言葉を交わし、時には言葉を投げつけあっても良いとさえ思う。
それは、彼等が真剣に麻雀に取り組んでいる証であるはずだから___。

第76回『その先に在るもの』

私達は、毎週木曜日に麻雀の勉強会をしている。
もう、かれこれ5年くらいにはなっただろうか。

当初は、あらゆる意味で厳しい会だったように思う。
教える側も本気だった分、言葉の行き違いがあったようにも思われる。
あの温厚な山田浩之でさえ、登校拒否になったくらいだ。

ひとつに、若手はその局面の最善手を求めすぎるあまり、全体、もしくはその半荘からの最善手を求められない傾向にあったため、いつの間にか語気が荒くなったせいもあると思われる。

ただ、私はそれでも良いと考えていた。
なぜならば、その語気の裏側に後輩を思う気持ち、良くなってほしいという祈りにも近い愛情がそこには間違いなく存在していたからである。

若いうちは手順、局面の読みに頼りがちになることは致し方ないことのように思う。
なぜならば、私自身が若い頃そうだったからである。

私に運があったのは、プロになって優れた先輩達に恵まれたことである。
麻雀というゲームは包容力があり、手順だけでも相手が弱ければ勝てるものである。
言葉を変えるならば、手順は基本であり、ここだけはきちんと掌握しておかねばならない部分である。

以前にも記したが、手順を疎かにして思い込みだけで麻雀を打つことのほうが、その打ち手を遥かに危うく脆いものにしてしまう。

例えば、箸の持ち方、扱い方に似ている。
幼い頃、箸の扱い方をきちんと躾けてもらえないまま大人になった人は、なかなか矯正できないように、何事においてもまずは基本を学ぶことが大切なことなのである。

条件計算も基本の1つである。
私達の世代は、テンリーダーなど存在しておらず、相手の持ち点を記憶していた。
記憶、計算しておかないと、ラスのラスアガリなどということにもなりかねない、もしくは1,300点差の2着目が、1,000点アガって2着のままなどということになりかねないから、100点単位の計算もキチンとしていた。これも基本の1つではある。

先日の勉強会のひとコマから。
親番・内川幸太郎23,700
南家・杉浦勘助23,200点
西家・佐々木寿人34,800点
北家・ガース38,300点

6巡目、杉浦の手牌。

二万二万三万四万四万五万五万六万四索六索四筒五筒六筒  ドラ八万

杉浦は静かに潜航策のヤミテンを選択した。
杉浦という男は風貌通り物静かで、麻雀に牌理というものが存在するならば、勝又健志か杉浦勘介かといわれるほどの打ち手であり、遠く中京から、月に何度か勉強会に参加するためだけに上京してくる。
それは、彼自身は語らないが、強くなりたい、強くありたいという衝動にも似た志が、かれを上京の道へと突き動かしているのだろうと私は思っている。

そんな杉浦の選択である以上、これは1つのセオリーと言っても良いだろう。
ただ、少し状況を付け加える。

捨牌
内川  四索四索五筒五万白二筒
杉浦  一索二索九万西白
ヒサト 一万四万五索五索四筒
ガース 四万四筒六筒八筒二筒

ガースは、ヒサトの2枚目の五索を逡巡したのち仕掛けている。
チー五索六索七索

「そうかな・・先行きに不安が残るように思えるけど・・・」

杉浦にだけ聞こえるように私は呟いた。
以前は、局を途中で止めて、その打ち手の打牌について意味を問いただすこともあったが、今はそういう形をなるべくとらないようにしている。

セオリー、もしくは本手、最善手ということであれば、杉浦の方法論はそこに乗っ取っていることは確かな部分である。良い、悪いは別として、リーチを打つのも悪くない局面に思えたからである。

ガースの仕掛けは明らかな一色模様である。
ただ、五索を仕掛ける時に逡巡があったように、そこまで、信用に値する仕掛けではないように映ったこと。
ヒサト、内川の手牌進行の速度が遅いことは捨牌だけでなく、場面の雰囲気からも読み取れた。

ここまでは、杉浦も私と同様の読みを入れていたように思う。だからこその選択なのだろう。
五索は見えているだけで2枚・・ガースの一色を考えれば、残りはおそらくあって1枚。
ただ、その1枚は確実に山に眠っていることは私もそうだが、杉浦も確信していた。

持ち点は1つの形勢判断のバロメーターである。
ヒサト、ガースが良くて、内川、杉浦が悪い、というのが私の見立てである。
杉浦と内川ならば、同じような点数でありながらも、途中の経過から推し量れば、わずかながら内川の方に分があるように私は考えていた。

ちなみに、私の目に見える手牌は、前述の杉浦の手牌とヒサトの手牌のみである。
この時点でヒサトの手牌は、

一万二万三万八万九万二索三索九筒九筒南北北中

杉浦の良い部分、いわゆる長所は、気配を全く出さないところである。
この時点ならば、ヒサト、内川が五索を掴めば、間違いなく放銃で終わるだろう。

ただ、果たして今のヒサトが五索を掴むかと問われれば、掴まないと私は考える。
ガースからは、ソーズは欲しいところではあっても、まず、こぼれるほどの姿形にはなっていないだろう。
内川はチャンタ、もしくは上目の三色の手牌構成に映ったが、1シャンテンから2シャンテンの間だろう。
状態から考えれば、内川からの出アガリはあるかもしれないという場面である。
ここまでは、ほぼ杉浦と私の認識は同じだろう。

そして、次巡の杉浦のツモが六万で打三万

二万二万四万四万五万五万六万六万四索六索四筒五筒六筒

この牌姿になってしまえば、さらに杉浦はリーチを打つ理由、根拠がなくなる。
そしてツモ二万。ここが1つのターニングポイントである。

二万二万二万四万四万五万五万六万六万四索六索四筒五筒六筒

ほんの僅かな少考後、杉浦の選択は手出し打二万

「手出しとツモ切りと、どちらが効果的か考えていました…少し柔軟性に欠けていたかもしれませんね」

私はいわゆる流れ論者と捉えられているようだが、麻雀を、偏りを捕まえるゲーム、もしくはその偏りを捕まえた時に、いかに維持させ続けるかのゲームと捉えている。
今局のツモ二万の意味するところは、私が杉浦の立場であったなら、とにかく、アガリ切り親番につなげることをテーマに持ってくる。ならば、打つべき打牌候補は四索六索となる。

マンズのフリテン形も、相手の速度を加味すればそれほど悪くはない。何しろ五索待ちよりはマシだろう。
これは私が正しいと言っているわけではなく、私ならばそうすると言うだけのことであるから、誤解なさらぬよう。

いずれにしても、テーマの在り方は人それぞれだが、杉浦と私のテーマがここで別れた。
杉浦の連綿としたツモ切りが続く中で、まず、好調者のヒサトに牌が雪崩れ込んでくる。

ツモ北北と続き、まずは1シャンテンから暗槓。
ガースがドラである八万をノータイムでツモ切り。
そして、遂にヒサトが要のツモ七万で「リーチ」

一万二万三万七万八万九万二索三索九筒九筒  暗カン牌の背北北牌の背  リーチ  ドラ八万

同巡、親番の内川が追いかけリーチを打つ。

六万七万八万七索八索九索一筒二筒三筒八筒九筒西西 リーチ

ちなみに、内川の入り目は六万である。
内川がリーチを打つ理由は、まずは親番であること、そして、杉浦の長所である気配が出ていなかったことで、ヒサトとの刺し勝負であれば、条件としては悪くはないと考えたのかもしれない。

このツモ六万の意味を解釈するのは、これも人それぞれだが、弱いツモであることは論をまたないところだろう。
ツモが弱いからヤミテンに構え、ツモ九万に備える打ち手もいれば、ヒサトに対し危なげな牌を引けばオリに向うのも1手ではある。そこら辺りの部分はデリケートなところで、これも人それぞれだろう。
2人の挟撃にあったのが、一番速く充分な打点を伴った杉浦である。

二万二万四万四万五万五万六万六万四索六索四筒五筒六筒

この牌姿に一発で掴まされたのが、内川のロン牌である七筒であった。
杉浦の出した答えは、打六索のテンパイ崩し。
麻雀というゲームは、本当に正直にできているゲームであることを思い知らされた一局ではある。

「そうかな・・先行きに不安が残るように思えるけど・・・」

私がそういったのは、この展開になることを予測しただけのことである。
最初のテンパイでリーチを打つのは、周りを降ろし、負けのない山だけとの勝負に持ち込むことと、仮に流局してもテンパイ料以上の効果があると考えられるからである。

ヒサトはまず、北を4枚河に並べるだろう。ガースは、ドラである八万で退くだろう。
そして内川も、真っ直ぐにオリに向う。
それは私のリーチではなく、杉浦のリーチならばこそ誰も立ち向かえないと考えるからだ。
それが、何年もかけて築き上げた、杉浦というプレイヤーのブランドの力である。

「前原さんの言葉は良くわかります・・ただ僕は、次回同じ場面が訪れたとしても、
今局と同じ方法論をとるかもしれません」

「それで良いと思うよ。貴方が長い間、それこそ膨大な時間を懸けて麻雀に正面から取り組んできたカタチなのだから、ただ、こういう戦い方も在るということを頭の片隅の何処かにしまっておいて麻雀に取り組んでいけば、また新しい、その先に在るものが、見えてくるかもしれないから・・」

私達が毎週やっていることは研究会ではない、勉強会である。
勉強とは教わるものではなく、自分から学ぼうという姿勢と、強くなりたくてどうしょうもない、プロと呼ばれる人種の集う会であるべきだと私は考えている。
私も先輩から教わり、観ること、打つことで後輩からも学んでいるのである。

この勉強会を立ち上げたのは、現会長である森山茂和プロである。
当初とは、全く違うカタチに会そのものが変容したようにも思えるし、そこには決して少なくない試行錯誤の繰り返しが存在していたと思う。今後も澱むことなく変容していくのだろう。

どういうカタチになるかは、その時代の中心に生きている若い後輩達が懸命に考え続け、言葉を交わし、時には言葉を投げつけあっても良いとさえ思う。

それは、彼等が真剣に麻雀に取り組んでいる証であるはずだから___。

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第30期プロリーグ A1 第1節レポート

2月17日鳳凰意決定戦最終日、前原の怒涛の追い上げを凌ぎ切り、いや、自分の全てを懸け最後まで戦い抜いた、瀬戸熊が鳳凰位に返り咲いた。
見るもの全てに感動を与えてくれた決定戦から1ヵ月半。
また新たな戦いがスタートした。

30_a1_01

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30_a1_01

第30期プロリーグ。今期よりA1に昇級したのは猿川真寿と古川孝次。
猿川は、相手との距離感を重視し、鋭い攻撃を繰り出す若手を代表する打ち手の1人。
古川は、最早紹介は不要であろう。過去鳳凰位3連覇の実績を持つ。
昨期のA2リーグでは力の違いを見せつけ、わずか1年でA1に復帰となった。
この2人が加わり、昨年以上の大激戦が期待される。さあ瀬戸熊への挑戦権を得るのは誰か?
第1節はA1、A2が同時刻開催のため観戦がかなわなかったので、牌譜から紹介させていただく。
注目したのは、近藤、望月、前原、猿川の卓。
1回戦東1局。4巡目に猿川が、
三索三索四索七索八索九索二筒三筒七筒八筒九筒白白発  ドラ五筒
ここから打四索と構える。
フラットな東1局ならば打発といくのが自然である。
しかし、ここは最終形が1,300のリーチになるのを避け、慎重に進めていく。
結果は10巡目、
三索三索六索七索八索二筒三筒四筒七筒八筒九筒白白  ツモ三索
このアガリとなった。
東3局10巡目、猿川にテンパイが入る。
一万二万三万九万九万七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒  ドラ五索
他3人の手牌が内側によっていることもあり絶好のテンパイである。
その中で私は、猿川の戦い方ならばリーチに行くものだと思っていたが、ヤミテンを選択。
そしてすぐに前原から出アガリとなった。
一万二万三万九万九万七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒  ロン九筒
東4局は望月が、
一万一万一万三万三万八万八万九万九万九万  ポン六万六万六万  ツモ八万
この倍満をツモ。南1局は近藤が6本場まで積む。
こうなると猿川は、一気にガードを固め失点を最小限に抑えた。
そして南3局、
七万七万一索一索二索二索三索三索四索五索六索八索九索  ロン七索  ドラ九索
この満貫をアガリ切って1回戦は猿川のトップとなった。
A1初参戦の猿川が、好調者近藤との距離感をしっかりと見極め、安定感のある戦いを見せた。
4回戦こそラスを引いてしまったが、+39.8Pは決定戦に向け、大きな足がかりとなったのではないだろうか。
第1節を終え首位にたったのは実力者沢崎。1、3、1、1で+59.4Pポイント。
昨年は、中々その力を発揮できなかったが、今期は開幕戦から好スタートをきった。
今期より全9節36回戦となったA1リーグ。今後の展開にも目が離せない。
第2節組み合わせ
A卓 前原 雄大 vs 近藤 久春 vs 荒 正義 vs 沢崎 誠
B卓 望月 雅継 vs 伊藤 優孝 vs 古川 孝次 vs 柴田 弘幸
C卓 朝武 雅晴 vs ダンプ大橋 vs 猿川 真寿 vs 藤崎 智

第30期プロリーグ A1 第1節レポート

2月17日鳳凰意決定戦最終日、前原の怒涛の追い上げを凌ぎ切り、いや、自分の全てを懸け最後まで戦い抜いた、瀬戸熊が鳳凰位に返り咲いた。
見るもの全てに感動を与えてくれた決定戦から1ヵ月半。
また新たな戦いがスタートした。

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第30期プロリーグ。今期よりA1に昇級したのは猿川真寿と古川孝次。
猿川は、相手との距離感を重視し、鋭い攻撃を繰り出す若手を代表する打ち手の1人。

古川は、最早紹介は不要であろう。過去鳳凰位3連覇の実績を持つ。
昨期のA2リーグでは力の違いを見せつけ、わずか1年でA1に復帰となった。

この2人が加わり、昨年以上の大激戦が期待される。さあ瀬戸熊への挑戦権を得るのは誰か?
第1節はA1、A2が同時刻開催のため観戦がかなわなかったので、牌譜から紹介させていただく。

注目したのは、近藤、望月、前原、猿川の卓。

1回戦東1局。4巡目に猿川が、

三索三索四索七索八索九索二筒三筒七筒八筒九筒白白発  ドラ五筒

ここから打四索と構える。
フラットな東1局ならば打発といくのが自然である。
しかし、ここは最終形が1,300のリーチになるのを避け、慎重に進めていく。
結果は10巡目、

三索三索六索七索八索二筒三筒四筒七筒八筒九筒白白  ツモ三索

このアガリとなった。

東3局10巡目、猿川にテンパイが入る。

一万二万三万九万九万七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒  ドラ五索

他3人の手牌が内側によっていることもあり絶好のテンパイである。
その中で私は、猿川の戦い方ならばリーチに行くものだと思っていたが、ヤミテンを選択。
そしてすぐに前原から出アガリとなった。

一万二万三万九万九万七索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒  ロン九筒

東4局は望月が、

一万一万一万三万三万八万八万九万九万九万  ポン六万六万六万  ツモ八万

この倍満をツモ。南1局は近藤が6本場まで積む。
こうなると猿川は、一気にガードを固め失点を最小限に抑えた。
そして南3局、

七万七万一索一索二索二索三索三索四索五索六索八索九索  ロン七索  ドラ九索

この満貫をアガリ切って1回戦は猿川のトップとなった。

A1初参戦の猿川が、好調者近藤との距離感をしっかりと見極め、安定感のある戦いを見せた。
4回戦こそラスを引いてしまったが、+39.8Pは決定戦に向け、大きな足がかりとなったのではないだろうか。

第1節を終え首位にたったのは実力者沢崎。1、3、1、1で+59.4Pポイント。
昨年は、中々その力を発揮できなかったが、今期は開幕戦から好スタートをきった。

今期より全9節36回戦となったA1リーグ。今後の展開にも目が離せない。

第2節組み合わせ
A卓 前原 雄大 vs 近藤 久春 vs 荒 正義 vs 沢崎 誠
B卓 望月 雅継 vs 伊藤 優孝 vs 古川 孝次 vs 柴田 弘幸
C卓 朝武 雅晴 vs ダンプ大橋 vs 猿川 真寿 vs 藤崎 智

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第30期プロリーグ A2 第1節レポート

Aリーグ。それはプロ連盟に在籍し、リーグ戦に挑む者なら誰もが夢焦がれる舞台。
320名の選手がプロリーグに参加する中、11ものカテゴリーを経てA1、A2合わせて選ばれた28名だけがその舞台で踊ることができるのだ。このレポートをご覧になっている皆さんもそのステージの高さを感じ取ることが出来るだろう。
思い返せば、私のプロ人生が始まったと言えるのも、Aリーグ入りを果たしてからだったように思う。
Bリーグに昇級するまでは、決してプロであるだなんて口にしないと誓って臨んだリーグ戦。
B1リーグを優勝し、共に昇級した者と交わした強い握手は今でもしっかりと私の手の感触として残っているし、A2リーグを優勝し、初めてA1リーグに昇級した時に、共に喜んでくれた仲間の涙は生涯忘れることができないだろう。
麻雀で生きていく事を決めた者が、その想いを表現するための場所。
そう定義づけても間違いでないこのA2リーグの舞台に、今期駆け上がってきた男達は4人。
刀川と佐々木は悲願の昇級、前田と滝沢はかつてその厚い壁に阻まれた経験を生かしての再挑戦となる。
迎え撃つ者達の想いはそれぞれだろう。
A1最終節の激闘に敗れ、降級の苦汁を呑んだ右田と石渡は再浮上を目論むのであろうし、昨年度最後まで昇級を争い、二階堂の休場によって1人で女流最高峰の重責を担うことになった、黒沢の決意は相当のものだろう。
また、A1経験者の仁平、山田も虎視眈々と復位を狙い、毎回昇級候補に挙げられる山井や勝又も黙ってはいないはずだ。他の面々も、もう少しで手の届く山の頂に向けて万全の準備で、このA2リーグの開幕に照準を合わせているに違いない。
各選手の熱い想いが交錯する開幕戦。
外は爆弾低気圧の影響で大荒れな悪天候の中、会場も同様、春の嵐が吹き荒れたのだった。
まず始めに注目したのは、今期昇級した佐々木、右田、四柳、勝又、金子の卓。
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3回戦東1局、一際大きい『ツモ』の発声は右田。
隣の卓で対局中の私も驚くほどのそれは、国士無双のツモアガリ。
緒戦をラススタートと、苦しい開幕を強いられると思った矢先の力強いアガリに、一期での復位を期待したファンも多いはず。
しかし、この右田の国士無双は開幕戦の序章に過ぎなかった。
続く3回戦東2局、前局国士無双を親っかぶりした勝又が今度は四暗刻単騎のツモアガリ。
一気に負債を完済し、今期もプラススタートと上々の滑り出しを見せた。
すると4回戦、2人に続けと言わんばかりに、今期昇級したばかりの佐々木が魅せる。
南3局3本場、佐々木の配牌は、
一万二万一筒五筒九筒一索九索南西西白中中  ドラ七索
佐々木が手にした配牌は9種11牌。
第一ツモで九万を引き込み2シャンテンとすると、丁寧に打西
この西切りが後々の展開を大きく左右する。
4巡目、東を引き早くも1シャンテンに。佐々木の捨て牌に違和感は全く現れない。
残るは3枚切れの発と金子が第一打に選んでいる1枚切れの西
8巡目、佐々木の手にはラス牌の発が。テンパイを果たすものの、テンパイ気配は全く表れない。
3者共、自身の手牌を進めることに専念しているようだ。
10巡目、場が一気に動き出す。
国士無双をアガったものの、いまいち勢いに乗りきれない様子の親・右田がリーチ。
三万三万五万六万七万四索四索四索六索八索六筒七筒八筒  リーチ  ドラ七索
抑え込みも兼ねたのか、役有り一手変わり三色のドラ待ちカンチャンリーチ。
佐々木から気配を感じていたなら当然のヤミも、第一打の西が右田のマークを一瞬外したのだろう。
このリーチは右田らしい駆け引きリーチではあるが、この待ちは既に純カラ。
引き気味の四柳の手に1枚と、金子に暗刻。
ドラが暗刻の金子の手は、
四万四万五万六万七万八万三索三索七索七索七索中中 
右田のリーチを受けても真っ向勝負の構えの金子。しかしその積極策が裏目に出る。
15巡目、佐々木がツモ切った四万にポンの声を掛け、中バックのテンパイに。
この仕掛けによって、本来、佐々木がツモるはずだった、国士無双の当たり牌の北が金子の手に。  
一万九万一索九索一筒九筒東南西白発中中  ロン北 
金子の片アガリの中は無情にも佐々木の手中にトイツ。仕掛けさえ打たなければ、佐々木のツモアガリだっただけに、親の右田はホッと胸をなで下ろしたところだろう。逆に金子としては、3度の役満が全て金子の動きの後とあっては、胸中穏やかではないのかもしれない。
役満が3回も出た波乱の開幕であったが、真の主役は他にいた。四柳だ。
国士無双をアガった佐々木からも、
「四柳さんはパーフェクトだった。」
と言わせるほどの完璧な内容に笑顔を見せた四柳。
攻撃力が持ち味の対戦相手を横目に、次々とアガリを重ねて行ったのだが、その四柳が会心のアガリと語ったのが、佐々木の親リーチを受け、一歩も引かずに戦いを挑んで掴み取ったこの12,000。
三万三万五万六万七万四索五索六索四筒五筒五筒六筒六筒  リーチ  ロン四筒  ドラ五筒 
佐々木が役満をアガった4回戦でも、
一索二索三索四索五索六索八索九索六筒七筒八筒九筒九筒  ロン七索  ドラ四索
金子から7,700を打ち取る。
このアガリを皮切りに攻めに攻め、ポイントを積み重ねた四柳。
「しっかりと攻めることが出来ました。」と語る表情からは、自然と笑みがこぼれる。
結果、役満をアガった3人を上回る4戦3勝、2着1回。
積み重ねたポイントは、+78.3Pと会心の首位スタートとなった。
逆に残念だったのが金子。
国士無双の放銃をはじめ、前述したように金子の動きはことごとく裏目に。
四柳の7,700点のアガリも、金子3巡目、
七万八万九万六索七索七索一筒一筒四筒五筒七筒八筒八筒  ツモ九万  ドラ四索
この九万をツモ切り。
一見自然なツモ切りに見えるが、一発裏ドラの無い競技ルールにおいては、この手の余剰牌八筒七索にはあまり魅力を感じない。ここでスリムに打八筒や打七索としておけば、7巡目のツモ九万で三色の渡りと雀頭選択、ターツ選択が出来るこの形に。
七万八万九万九万九万六索七索一筒一筒四筒五筒七筒八筒  ドラ四索
この牌姿になっていたはずであり、四柳に七索を放銃することなく、手牌進行を果たしていたとみるがどうであろうか?
もちろん、序盤から失点が続き、ポイント的に余裕がないからこそ、この八筒七索が手中に残る手組になるのであるし、そういった心の余裕を生ませないのがA2の対局だと言えるのだが。
まだ開幕したばかりであるだけに、2節以降の金子の奮起を期待したい。
春の嵐は巻き起こしたのは四柳1人だけではなかった。
隣の卓に目を移すと、こちらも今期初挑戦の刀川が、山井、黒沢、白鳥、山田に挑戦を挑む形となっていた。この卓では、山井が持ち前の爆発力を発揮する。
30_a2_01_02_smpwidth280_ktaiwidth240.jpg
着順的には3、1、1、3とまずまずと言えるのだが、特筆すべきはその内容。
4回戦、77,000点越えの特大トップで大幅な加点。
特にオーラスの親番で、跳満を2発ツモアガリ。本人曰く、
「まだまだ全然ですよ。」
とのことであるが、山井のストロングポイントを如何なく発揮したスタートダッシュに、今期こそはとの想いも強いだろう。
A2初参戦の刀川も、道中苦しみながらも最終戦で嬉しい初トップを飾り、ポイント的にはマイナスも本人的には納得の結果ではないか。
もう1つの卓、滝沢、遠藤、石渡、前田、仁平の卓は比較的穏やかな結果に。
30_a2_01_03_smpwidth280_ktaiwidth240.jpg
A2復帰の滝沢と前田は手堅くまとめ、こちらの卓内トップは遠藤。首位の四柳、2位の山井とはポイント的には大きく離れてしまったとはいえ、上々の滑り出しに本人も満足に違いない。
今期よりAリーグは9節半荘36回の戦いとなった。
昨年とは対戦数が若干減ったため、時期尚早とはいえスタートダッシュを決めた四柳と山井が昇級争いをリードしていく事は間違いない。
昇級組の4名も中位につけ、上位進出を窺うポジションに陣取ったことは今後の昇級争いもますます熾烈を極めることだろう。
とはいえ、長いリーグ戦はまだ始まったばかり。
最終節まで息の抜けない戦いが続くはずだ。

第30期プロリーグ A2 第1節レポート

Aリーグ。それはプロ連盟に在籍し、リーグ戦に挑む者なら誰もが夢焦がれる舞台。
320名の選手がプロリーグに参加する中、11ものカテゴリーを経てA1、A2合わせて選ばれた28名だけがその舞台で踊ることができるのだ。このレポートをご覧になっている皆さんもそのステージの高さを感じ取ることが出来るだろう。

思い返せば、私のプロ人生が始まったと言えるのも、Aリーグ入りを果たしてからだったように思う。

Bリーグに昇級するまでは、決してプロであるだなんて口にしないと誓って臨んだリーグ戦。
B1リーグを優勝し、共に昇級した者と交わした強い握手は今でもしっかりと私の手の感触として残っているし、A2リーグを優勝し、初めてA1リーグに昇級した時に、共に喜んでくれた仲間の涙は生涯忘れることができないだろう。

麻雀で生きていく事を決めた者が、その想いを表現するための場所。
そう定義づけても間違いでないこのA2リーグの舞台に、今期駆け上がってきた男達は4人。

刀川と佐々木は悲願の昇級、前田と滝沢はかつてその厚い壁に阻まれた経験を生かしての再挑戦となる。
迎え撃つ者達の想いはそれぞれだろう。

A1最終節の激闘に敗れ、降級の苦汁を呑んだ右田と石渡は再浮上を目論むのであろうし、昨年度最後まで昇級を争い、二階堂の休場によって1人で女流最高峰の重責を担うことになった、黒沢の決意は相当のものだろう。

また、A1経験者の仁平、山田も虎視眈々と復位を狙い、毎回昇級候補に挙げられる山井や勝又も黙ってはいないはずだ。他の面々も、もう少しで手の届く山の頂に向けて万全の準備で、このA2リーグの開幕に照準を合わせているに違いない。

各選手の熱い想いが交錯する開幕戦。
外は爆弾低気圧の影響で大荒れな悪天候の中、会場も同様、春の嵐が吹き荒れたのだった。

まず始めに注目したのは、今期昇級した佐々木、右田、四柳、勝又、金子の卓。

30_a2_01_01_smpwidth280_ktaiwidth240.jpg

3回戦東1局、一際大きい『ツモ』の発声は右田。
隣の卓で対局中の私も驚くほどのそれは、国士無双のツモアガリ。
緒戦をラススタートと、苦しい開幕を強いられると思った矢先の力強いアガリに、一期での復位を期待したファンも多いはず。

しかし、この右田の国士無双は開幕戦の序章に過ぎなかった。

続く3回戦東2局、前局国士無双を親っかぶりした勝又が今度は四暗刻単騎のツモアガリ。
一気に負債を完済し、今期もプラススタートと上々の滑り出しを見せた。
すると4回戦、2人に続けと言わんばかりに、今期昇級したばかりの佐々木が魅せる。

南3局3本場、佐々木の配牌は、

一万二万一筒五筒九筒一索九索南西西白中中  ドラ七索

佐々木が手にした配牌は9種11牌。
第一ツモで九万を引き込み2シャンテンとすると、丁寧に打西

この西切りが後々の展開を大きく左右する。
4巡目、東を引き早くも1シャンテンに。佐々木の捨て牌に違和感は全く現れない。

残るは3枚切れの発と金子が第一打に選んでいる1枚切れの西
8巡目、佐々木の手にはラス牌の発が。テンパイを果たすものの、テンパイ気配は全く表れない。
3者共、自身の手牌を進めることに専念しているようだ。

10巡目、場が一気に動き出す。
国士無双をアガったものの、いまいち勢いに乗りきれない様子の親・右田がリーチ。

三万三万五万六万七万四索四索四索六索八索六筒七筒八筒  リーチ  ドラ七索

抑え込みも兼ねたのか、役有り一手変わり三色のドラ待ちカンチャンリーチ。
佐々木から気配を感じていたなら当然のヤミも、第一打の西が右田のマークを一瞬外したのだろう。
このリーチは右田らしい駆け引きリーチではあるが、この待ちは既に純カラ。
引き気味の四柳の手に1枚と、金子に暗刻。

ドラが暗刻の金子の手は、

四万四万五万六万七万八万三索三索七索七索七索中中 

右田のリーチを受けても真っ向勝負の構えの金子。しかしその積極策が裏目に出る。
15巡目、佐々木がツモ切った四万にポンの声を掛け、中バックのテンパイに。
この仕掛けによって、本来、佐々木がツモるはずだった、国士無双の当たり牌の北が金子の手に。  

一万九万一索九索一筒九筒東南西白発中中  ロン北 

金子の片アガリの中は無情にも佐々木の手中にトイツ。仕掛けさえ打たなければ、佐々木のツモアガリだっただけに、親の右田はホッと胸をなで下ろしたところだろう。逆に金子としては、3度の役満が全て金子の動きの後とあっては、胸中穏やかではないのかもしれない。

役満が3回も出た波乱の開幕であったが、真の主役は他にいた。四柳だ。
国士無双をアガった佐々木からも、

「四柳さんはパーフェクトだった。」

と言わせるほどの完璧な内容に笑顔を見せた四柳。
攻撃力が持ち味の対戦相手を横目に、次々とアガリを重ねて行ったのだが、その四柳が会心のアガリと語ったのが、佐々木の親リーチを受け、一歩も引かずに戦いを挑んで掴み取ったこの12,000。

三万三万五万六万七万四索五索六索四筒五筒五筒六筒六筒  リーチ  ロン四筒  ドラ五筒 

佐々木が役満をアガった4回戦でも、

一索二索三索四索五索六索八索九索六筒七筒八筒九筒九筒  ロン七索  ドラ四索

金子から7,700を打ち取る。
このアガリを皮切りに攻めに攻め、ポイントを積み重ねた四柳。

「しっかりと攻めることが出来ました。」と語る表情からは、自然と笑みがこぼれる。

結果、役満をアガった3人を上回る4戦3勝、2着1回。
積み重ねたポイントは、+78.3Pと会心の首位スタートとなった。

逆に残念だったのが金子。
国士無双の放銃をはじめ、前述したように金子の動きはことごとく裏目に。
四柳の7,700点のアガリも、金子3巡目、

七万八万九万六索七索七索一筒一筒四筒五筒七筒八筒八筒  ツモ九万  ドラ四索

この九万をツモ切り。
一見自然なツモ切りに見えるが、一発裏ドラの無い競技ルールにおいては、この手の余剰牌八筒七索にはあまり魅力を感じない。ここでスリムに打八筒や打七索としておけば、7巡目のツモ九万で三色の渡りと雀頭選択、ターツ選択が出来るこの形に。

七万八万九万九万九万六索七索一筒一筒四筒五筒七筒八筒  ドラ四索

この牌姿になっていたはずであり、四柳に七索を放銃することなく、手牌進行を果たしていたとみるがどうであろうか?

もちろん、序盤から失点が続き、ポイント的に余裕がないからこそ、この八筒七索が手中に残る手組になるのであるし、そういった心の余裕を生ませないのがA2の対局だと言えるのだが。
まだ開幕したばかりであるだけに、2節以降の金子の奮起を期待したい。

春の嵐は巻き起こしたのは四柳1人だけではなかった。
隣の卓に目を移すと、こちらも今期初挑戦の刀川が、山井、黒沢、白鳥、山田に挑戦を挑む形となっていた。この卓では、山井が持ち前の爆発力を発揮する。

30_a2_01_02_smpwidth280_ktaiwidth240.jpg

着順的には3、1、1、3とまずまずと言えるのだが、特筆すべきはその内容。
4回戦、77,000点越えの特大トップで大幅な加点。
特にオーラスの親番で、跳満を2発ツモアガリ。本人曰く、

「まだまだ全然ですよ。」

とのことであるが、山井のストロングポイントを如何なく発揮したスタートダッシュに、今期こそはとの想いも強いだろう。

A2初参戦の刀川も、道中苦しみながらも最終戦で嬉しい初トップを飾り、ポイント的にはマイナスも本人的には納得の結果ではないか。

もう1つの卓、滝沢、遠藤、石渡、前田、仁平の卓は比較的穏やかな結果に。

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A2復帰の滝沢と前田は手堅くまとめ、こちらの卓内トップは遠藤。首位の四柳、2位の山井とはポイント的には大きく離れてしまったとはいえ、上々の滑り出しに本人も満足に違いない。

今期よりAリーグは9節半荘36回の戦いとなった。
昨年とは対戦数が若干減ったため、時期尚早とはいえスタートダッシュを決めた四柳と山井が昇級争いをリードしていく事は間違いない。

昇級組の4名も中位につけ、上位進出を窺うポジションに陣取ったことは今後の昇級争いもますます熾烈を極めることだろう。

とはいえ、長いリーグ戦はまだ始まったばかり。
最終節まで息の抜けない戦いが続くはずだ。

中級/第76回『基盤』

 
「麻雀の強さはルールを選ばない」
これは、「SSG第4回麻雀格闘倶楽部麻雀トライアスロン雀豪決定戦」のサブタイトルとなった言葉である。
この大会では、東風戦、半荘戦、3人麻雀の3モードから成るセットを1クールとし、得点の多寡を競う。
当然のことながら、全てのモードで満遍なく好成績を収めなければ、上位に入賞することは難しい。
初めてこの標語を目にしたとき、十数年前の自分の姿がふと頭に思い浮かんだ。
雨霰のように東風戦を打ち込んだあと、別の街へと3人麻雀を打ちに行く。
そして、誘いがあれば東南戦を戦いに、赤坂や六本木まで繰り出す。
そう、毎日がトライアスロンのような生活だったのである。
当時私は、どんな麻雀であっても得手不得手があってはならないと考えていた。
いつ何時、どんな麻雀が転がっているかわからないのに、自分が得意なものだけやっていればいいはずがなかったのだ。
冒頭の標語は、正に私の思いを表していた。
もちろん、今もその思いに変わりはない。
さて、今では「麻雀格闘倶楽部」や「ロン2」などでもお馴染みとなった3人麻雀だが、リアルとなれば話は別だ。実際打ったことのない人もたくさんいるだろうし、その必要すらないと考えている人も多いだろう。
しかし、3人麻雀から学べるもの、つまりは4人麻雀に応用できるものは数多い。
相手が1人削られて、使われる牌の枚数も減るわけだからそれも当然である。
そして何より、3人麻雀にはチーがないことも大きい。
例えば以下のような手があったとしよう。
赤五索六索六索七索七索九索九索三筒三筒四筒五筒六筒七筒中  ドラ四筒
テンパイ最優先なら中切りがベストであるが、3人麻雀では字牌の占めるウェイトが非常に大きい。
中が生牌なら、打点ということではなく、鳴かれることのない三筒を先に外していくのがセオリーとなる。
切り順を誤ればアガリ番が変わるケースもあり、一打一打の重みを知る上でも、3人麻雀は格好の稽古場となるのだ。
他にもある。
二索三索赤五索五索六索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒南
3人麻雀なら平均的とも言える配牌だ。ここにツモが西なら何を打つか。
ちなみに、自分は西家でドラが西。東家と南家の第一打は共に南である。
答えは南である。
九索でいいじゃないかと思われる人もいるだろう。
だが、純粋にアガリを目指すなら南切りしかないのだ。
3人麻雀は4人麻雀に比べ、より早く正確な手順が要求される。
アガリが出る局面も紙一重であるケースが非常に多く、1巡のミスが命取りとなるのである。
賢明な読者ならもうおわかりだろうが、南は安全牌にこそなれ、攻撃には全く使えない牌である。
では九索はどうか。ソーズの上目をカン七索の受けと見れば、確かに不要牌には見える。
しかし、九索にはトイツになる可能性、すなわち雀頭候補になる可能性が残されている。
二索三索赤五索五索六索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒西  ツモ九索
こうなればしめたもの。配牌から怖がって南を抱えるのは、優れた手順とは言い難い。
アガリを見据えたときにどの牌を活かすか。これは当然、4人麻雀にも通じることである。
 
以下の手牌は、昨年私が地元仙台で手にしたものである。
東1局、西家7巡目。
四万赤五万六万七万二索四索赤五索五索一筒二筒三筒七筒九筒  ツモ七筒  ドラ八万
欲しいのはテンパイでもノーテン罰でもなく、より確実なアガリである。
となればもう選択肢は1つしかない。
二索である。
四万七万のどちらかをを外して、1シャンテンに取ったところで、所詮それは気持ちに焦りがあるだけ。
頭の中に限られた最終形しか思い浮かばないようでは、この手牌がかわいそうである。
まだ7巡目という段階で形を決める必要はどこにもない。
仮に先手を取られても、こちらが磐石の形を作ればいくらでも押し返せるのだ。
今はその基盤を作り上げるときなのである。
さて、実戦ではこのあとのツモが八万ときた。
これはドラの指示牌を抱えている強みでもある。
四万赤五万六万七万四索赤五索五索一筒二筒三筒七筒七筒九筒  ツモ八万
ここで自然に打九筒。これはベストのツモと言えるが、それも受け入れの広さが成せる業。
この形が出来ればあとはひたすら押しあるのみである。
皆さんにも経験があると思うが、いつも手なりで勝負手は作れない。
雀頭作り、ターツ作り、メンツ選択、そして鍵となる牌の取捨。
さまざまなプロセスを経て、ようやくひとつのアガリが生まれるのである。
身の保全に走る気持ちもわからなくはないが、それでは手牌の要となる牌を逃してしまうこともある。
安全牌ばかり抱えていたって、手牌は育たないのだ。

第76回『基盤』

 

「麻雀の強さはルールを選ばない」
これは、「SSG第4回麻雀格闘倶楽部麻雀トライアスロン雀豪決定戦」のサブタイトルとなった言葉である。

この大会では、東風戦、半荘戦、3人麻雀の3モードから成るセットを1クールとし、得点の多寡を競う。
当然のことながら、全てのモードで満遍なく好成績を収めなければ、上位に入賞することは難しい。

初めてこの標語を目にしたとき、十数年前の自分の姿がふと頭に思い浮かんだ。
雨霰のように東風戦を打ち込んだあと、別の街へと3人麻雀を打ちに行く。
そして、誘いがあれば東南戦を戦いに、赤坂や六本木まで繰り出す。
そう、毎日がトライアスロンのような生活だったのである。

当時私は、どんな麻雀であっても得手不得手があってはならないと考えていた。
いつ何時、どんな麻雀が転がっているかわからないのに、自分が得意なものだけやっていればいいはずがなかったのだ。

冒頭の標語は、正に私の思いを表していた。
もちろん、今もその思いに変わりはない。

さて、今では「麻雀格闘倶楽部」や「ロン2」などでもお馴染みとなった3人麻雀だが、リアルとなれば話は別だ。実際打ったことのない人もたくさんいるだろうし、その必要すらないと考えている人も多いだろう。

しかし、3人麻雀から学べるもの、つまりは4人麻雀に応用できるものは数多い。
相手が1人削られて、使われる牌の枚数も減るわけだからそれも当然である。
そして何より、3人麻雀にはチーがないことも大きい。
例えば以下のような手があったとしよう。

赤五索六索六索七索七索九索九索三筒三筒四筒五筒六筒七筒中  ドラ四筒

テンパイ最優先なら中切りがベストであるが、3人麻雀では字牌の占めるウェイトが非常に大きい。
中が生牌なら、打点ということではなく、鳴かれることのない三筒を先に外していくのがセオリーとなる。
切り順を誤ればアガリ番が変わるケースもあり、一打一打の重みを知る上でも、3人麻雀は格好の稽古場となるのだ。

他にもある。

二索三索赤五索五索六索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒南

3人麻雀なら平均的とも言える配牌だ。ここにツモが西なら何を打つか。
ちなみに、自分は西家でドラが西。東家と南家の第一打は共に南である。

答えは南である。

九索でいいじゃないかと思われる人もいるだろう。
だが、純粋にアガリを目指すなら南切りしかないのだ。

3人麻雀は4人麻雀に比べ、より早く正確な手順が要求される。
アガリが出る局面も紙一重であるケースが非常に多く、1巡のミスが命取りとなるのである。

賢明な読者ならもうおわかりだろうが、南は安全牌にこそなれ、攻撃には全く使えない牌である。
では九索はどうか。ソーズの上目をカン七索の受けと見れば、確かに不要牌には見える。
しかし、九索にはトイツになる可能性、すなわち雀頭候補になる可能性が残されている。

二索三索赤五索五索六索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒西  ツモ九索

こうなればしめたもの。配牌から怖がって南を抱えるのは、優れた手順とは言い難い。
アガリを見据えたときにどの牌を活かすか。これは当然、4人麻雀にも通じることである。

 

以下の手牌は、昨年私が地元仙台で手にしたものである。
東1局、西家7巡目。

四万赤五万六万七万二索四索赤五索五索一筒二筒三筒七筒九筒  ツモ七筒  ドラ八万

欲しいのはテンパイでもノーテン罰でもなく、より確実なアガリである。
となればもう選択肢は1つしかない。

二索である。

四万七万のどちらかをを外して、1シャンテンに取ったところで、所詮それは気持ちに焦りがあるだけ。
頭の中に限られた最終形しか思い浮かばないようでは、この手牌がかわいそうである。

まだ7巡目という段階で形を決める必要はどこにもない。
仮に先手を取られても、こちらが磐石の形を作ればいくらでも押し返せるのだ。
今はその基盤を作り上げるときなのである。

さて、実戦ではこのあとのツモが八万ときた。
これはドラの指示牌を抱えている強みでもある。

四万赤五万六万七万四索赤五索五索一筒二筒三筒七筒七筒九筒  ツモ八万

ここで自然に打九筒。これはベストのツモと言えるが、それも受け入れの広さが成せる業。
この形が出来ればあとはひたすら押しあるのみである。

皆さんにも経験があると思うが、いつも手なりで勝負手は作れない。
雀頭作り、ターツ作り、メンツ選択、そして鍵となる牌の取捨。
さまざまなプロセスを経て、ようやくひとつのアガリが生まれるのである。

身の保全に走る気持ちもわからなくはないが、それでは手牌の要となる牌を逃してしまうこともある。
安全牌ばかり抱えていたって、手牌は育たないのだ。