中級

第86回『終盤の組み立て方』

2014年が始まりはや1ヶ月。
歳を取るたびに一日一日が早く過ぎていってしまうように感じる現象はなんなんでしょうね。
子供の頃は学校の授業の1時間1時間が非常に長く感じたのに、
30を超えた今は仕事をしているとあっという間に数時間が過ぎてしまいます。
時間を無駄にしない様な生活を心がけていきたいものです。

さて、私ダンプ大橋がどんな事を考えながら麻雀を打っているかを書いてきましたが、
今回はいよいよ終盤の組み立てかたについて話していきます。

とはいっても、終盤は序盤中盤に比べて選択肢が少ないので、
考える事は多くても、実際のアクションは結構限られるかと思います。

2段目後半で、オリを選択した人は放銃しない様に、鳴かせない様に努めるわけですし、
リーチをかけた人は、ロン牌が出る、自分でツモるよう祈るだけです。
それ以外の状態の場合を、パターン毎に説明していきましょう。

まずはヤミでテンパイが入っている、仕掛けを入れてテンパイが入っている場合。
オリる気が無ければ、心の中でリーチをかけて全ツッパですよね。
ただ、最後のツモに限っては、オリの選択肢を忘れてはいけません。

もちろんテンパイして流局すればテンパイ料が入るので、わざわざオリる必要はないでしょう。
しかし、自分のツモアガリが無い状況となれば、もらえるテンパイ料は0~3,000点。
その為に放銃のリスクをどこまで負っていいかは非常に難しいところ。
特に、自分以外が全員テンパイしていると思われる様な状況で、自分がテンパイだからという理由で、数人に通っていない牌を切るのはあまりお勧めできません。

他の理由(例えば自分にドラが固まっていて相手が安そう、順位的な理由、相手の手牌読みetc…)があり、
考えた結果、テンパイを取りにいくことのメリットが大きいというのなら結果放銃してしまっても、それは考えた結果であるので、その考えが合っている、間違っているは別として問題ないと思います。
結果、間違っていたのなら、反省して次回に生かせばいいだけです。

しかし、何も考えず、反省もせず同じ事を延々と行ってしまっては成長しません。
考えすぎるのも、時には毒となるかもしれませんが、今回のケースに限らず、今まで自分が行ってきた一辺倒なアクションがあれば、他に選択肢が無いのか立ち止まって考える事も、雀力アップの為に必要かと思います。

さて、少しオリについて書いていきましょう。
基本、攻める場合は自分の手牌と河をにらめっこしながら手牌を組み立てるのですが、オリはどうしても他3人の事を考えなければいけません。まぁ当然ですけど。

となると、オリにおいて何が大事かという話なんですが、相手の手出しツモ切りを把握する事が非常に重要となっていきます。
なぜ手出しツモ切りが大事なのかといいますと、まずはこれを見て下さい。

八索 上向き二万 上向き四筒 上向き五筒 上向き三索 上向き九筒 上向き東西

こんな河でリーチが入りました。変則的なリーチに見えますね。
しかし、このリーチの手出しが八索西だけでリーチが入った場合と、全て手出しでリーチが入った場合は、相手の手牌が全く違います。

八索西だけが手出しでリーチが入った場合は、好配牌であった事と、西を最後まで残していたので第一打の時点で1シャンテン。
何かをツモって西切りリーチという事になりますので、いわゆるシュンツ系のテンパイが入っている可能性も考えられます。
さらに、東をツモ切りしているので、字牌を絞る必要がない→そこそこの打点があるといった推測もできます。

一方、全て手出しだった場合は、まず七対子を疑います。
というか、チャンタのように端に寄った手牌なら四筒五筒の手出しが先に来るので、ますます七対子が濃くなります。
西切りリーチなので、南北辺りが非常に危ないのではないかと考えられますね。
七対子でなくても、暗刻が多い縦のテンパイが入っていそうな感じです。

こんな感じで、手出しとツモ切りがわかると、同じ捨て牌でも全く印象が違ってくる場合があります。
しかし、手出しツモ切りをよくみていないと、どちらも七対子みたいだと考えてしまい、不用意な放銃をしてしまうかもしれません。
変則的な捨て牌だけど、蓋を開けてみればタンピン三色だったなんて事もよくありますよね。

そういった見かけの捨て牌に騙されない様、手出しツモ切りを把握する事が、初心者を脱出する鍵となります。
ベストは3人の手出しツモ切りを、第一打から最後まで覚える事ですが、こればっかりは向き不向きがあるものです。というか、完璧に手出しツモ切りを覚えてられる人なんてそうはいません。

最近のネット麻雀は手出しツモ切りが、河を見ればわかるので便利なんですが、実際に麻雀牌を使って麻雀を打つとなるとそんな便利機能があるわけもなく。がむしゃらに覚えていようとしても、簡単にはいかないので、自分がお勧めする方法はというと、まずは手出しツモ切りの回数を覚えてみるという事です。

何が手出し、何がツモ切りというの一々覚えなければいけないのではなく、
この人は何回、この人は何回といった様に回数だけ数えてみれば意外に覚えられます。

それも難しいなら点棒を使って、上家が手出しをする度にこのスペースに一本置く、
下家ならここみたいな感じで点棒を置いていけば覚えやすいです。
回数を覚えるだけでも、序盤の変則な捨て牌でのリーチに対してはある程度対応できるので、
方法はともかくやる価値はあると思います。

結構、自分の手番以外はボーっとしちゃったりする人もいるかも知れませんが、相手の手番こそ情報がぎっしりと詰まっているので、常に集中を切らさない様、自分のアンテナを伸ばしておきましょう。
手出しツモ切りを把握する事によって、守備力が飛躍的に上昇します。
守備力が上がればオリの精度が増し、オリの精度が増せば、それだけギリギリまで攻める事ができます。

といった感じで、そこそこ駆け足になってしまいましたが、どんな事を考えながら自分が麻雀を打っているか
この3ヶ月でお分かりいただけましたでしょうか。
実際は、これに感覚的なものであったり、その日の気分や状態といった目に見えないものも加味されるので
毎回この通りに打っているわけではありませんが、自分の基本的な部分は話せたかと思います。

降級はしてしまいましたが、A1リーグに一度は身をおかせていただいたわけですし、
日本プロ麻雀連盟に在籍して12年、そりゃ麻雀の事ばかり考えていた人間の文章なので、
参考になる部分は少なからずあるのではないかと思います。

こんな自分の書き物まで読みに来ていただいている読者の皆様のことですから、
麻雀が好きで好きでたまらなく、麻雀に対して向上心をお持ちな方がほとんどでしょう。

だからこそ、覚えておいていただきたい事があります。
麻雀はどんな上級者であっても負けるからこそ奥が深いものです。

『勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし』

とある江戸時代の大名の言葉ですが、麻雀に限らず全ての勝負事はこれに尽きるかと思います。
負けて感情的になり、誰かのせいにすれば心は晴れますが、自分自身の成長には繋がりません。
その前に、自分に何か原因がなかったのかを考えると、大体は何か見つかるものです。

自分自身もどちらかといえば気の短い方なので、感情的にもなってしまいやすいのですが、
連盟に入りたての頃は、その感情のままに無駄な数年を過ごしていたとなと。
人対人の戦いですから、技術が伴ってもメンタルが弱ければ強い人にはなれませんよね。

次回は、そんな精神的な部分が書けたらいいなと思います。
人対人の戦いですから、技術が伴ってもメンタルが弱ければ強い人にはなれませんよね。