リレーエッセィ

第94回:櫻井 秀樹

みなさん、はじめまして。
柴田新人王からのバトンを受けました。連盟18期生、櫻井秀樹です。
18期ですからもう13年以上、競技麻雀をやっている事になるのですかね。

そんな私も、このたびようやくタイトルを獲得する事ができました。
これもひとえに私の努力と才能の賜物・・・
もとい、尊敬する全ての麻雀プロの皆様、応援していただいた皆様、支えてくれた家族のおかげであります。
ようやく麻雀プロとしてのスタートラインに立つ事が出来ました。
今後もより一層精進して参る次第です。本当にありがとうございました。

さて、十段戦の内容は後日のインタビューで書いてくれると思いますので、今回は少し私自身の自己紹介など。

1978年5月15日生まれの36歳、B型。出身は森山会長と同郷の山口県は山陽小野田市です。
両親の影響もあり、子どもの頃は運動が大好きで、かけっこは1等が当たり前!
父親も、「頑張るのは当たり前、1等をとってこそ」という感じの人でした。

そんな父親は無類の麻雀好きでして、毎日のように麻雀。
同年代という事もあり、わかかりし頃の会長と打った事もあるとかないとか。

また、田舎の家にはありがちな感じで、盆や正月に家族が集まれば麻雀。
私も誰に習う事なく自然に覚えてしまいました。

ただ、父親と麻雀をした記憶は1回くらいしかありません。
レベルの違いすぎる母や子ども達と打ってもつまらないからでしょうか、家族麻雀へはほとんど不参加でした。

麻雀プロとして腕を磨き、一回は1等をとってから父に挑戦するつもりでしたが、父は私が28歳の時、53歳という若さで他界。その夢は叶う事はありませんでした。

父親の話でもう1つ。
十段戦決勝の親番の配牌時など、私が右ポケットのあたりを触ってるのが、よーく映像を見るとわかります。
実は右のポケットにはボロボロの麻雀牌「中」が入っており、それを重要な局面で握りしめていたのです。

これは、父の遺言で棺桶に入れた麻雀牌のセットの中から1牌だけそっと抜き取ったもの。
決勝に残ったら「お守り」として持っていこうと飾っていたものです。

次に帰省した際は、父に初めて良い報告ができそうです!

続けます。

少年期、麻雀は身近でしたが深くはまる事もなく、高校生までは家族麻雀とゲーム、3年生くらいになってようやく麻雀をする友達がちらほら、という程度。

どっぷり浸かったのは大学生時代。
なんせキャンパスが田舎にあった為、ほかに娯楽が少なく、週に6日は麻雀でした。

競技麻雀に目覚めたのは、学生時代にハマりまくったMONDOの麻雀番組。
そして、麻雀最強戦の広島予選で優勝して行った全国大会。
あの痺れるような緊張感と、ピリピリとした空気が忘れられず、一度は就職するものの、カバン1つで上京してプロ試験を受ける事となったのです。

プロになってタイトルを獲る!!
当時は麻雀に自信もあり、5年の間にタイトルを獲ってトップリーグにいるつもりでした。(まあ、麻雀プロはみんなそう思ってなってますよね?)
それがなんと13年・・・しかもようやく50%
自分は凡人である事を思い知りました(笑)

では、その凡人の麻雀の話でも。

最近、雀風について何度か聞かることがあります。
自分の型など意識した事もなく、よくわからないので、「万能型!!」と偉そうにこたえる事にしてます。
ただ、プロとしては何らか特徴的な部分があった方が、覚えてもらいやすいし華もあるんでしょう。
今後の課題の1つでもあります。

ただ、雀風とは異なりますが、自分の強みは意識してます。
それは、圧倒的な身体の強さ。
十段戦後に「強い精神力」など、おほめの言葉を頂きましたが、精神を強く保つには、とにかく集中力を切らさない事。集中力を保つには、とにかく体力が必要であると思っています。

私はもともとなのか、少年期の習慣からなのか、とにかく身体が丈夫にできています。
2、3日寝なくても平気、風邪をひくこともなく、肩こりや筋肉痛なども2、3日で回復。
麻雀も何時間打ち続けても、乱れる事はありません。
おかげさまで働きながらにして、その辺の若手プロよりも打ち込み数を稼げているかもしれません。

決勝にて心が揺れなかったように見えたのも、その辺の自信から来ていたんでしょうか。
丈夫に生んで育ててくれた両親、日々の生活を支えてくれる妻にただただ感謝の念です。

健全な肉体に強靭な精神が宿る。

これが私の麻雀の幹となる部分です。

あと、これは補足なのですが、決勝で自分を見失う事がなく打ちきれたのは、運営や採譜などいわゆる裏方の仕事をずっとやってきたからというのも、重要なファクターだと思います。
いろんな舞台の勝者と敗者を間近で見続けていたため、いろんな展開、及び勝敗のパターンが経験値に近い形で頭に刷り込まれていたのかもしれません。

若い人たちにも、是非そのような仕事に手をあげて参加してほしい。
それが無理なら、必ず対局配信は何度も見てほしい。
それぞれ4人の立場になって、色々シミュレーションしてほしいですね。

事前準備は、「きたる日」の前日も1週間前ももちろん重要ですが、日々のトレーニング、勉強を欠かしては意味がないと思います。

13年かけて準備してきたと思えば・・・本番で100%に近いパフォーマンスもできないと嘘ですよね!

最後にちょっと自己主張。
決勝終了後のインタビュー番組でも話した事ですが、私は現在麻雀以外の仕事をしながら対局に出ています。
若いころは私も「麻雀プロなら麻雀の仕事だけで生活すべき」という考えでした。

ただ、自分はわがままで、強欲な性質なのです。
やりたい事は全てやるし、欲しいものはすべて手に入れたい。
麻雀はもちろんイコール人生だが、結婚も子供もすべて欲しい。今の仕事もやりがいはある。
普通の人なら時間や体がいくらあっても足りない事でしょう。つくづく丈夫な体にうまれて良かった(笑)

今後の事はわからないですけど、麻雀に関わっていけて、尚且つ家族を幸せにできる事が私の最大の理想です。
そこに近づくためにもここからが本番です。
尊敬する大先輩達と戦えた決勝を糧に、自らの価値を高めていければと思います。

そして、今回の決勝の内容、結果に関しては色々言いたい事がある人たちもいると思います。
もしかしたら若いプロの方たちの中には、私の麻雀や生き方に納得できない人もいるのかもしれません。

ただ言いたい事があるのなら、勝ってきて下さい。
我々は勝って主張するしかないんです。

私も13年間負け続けていますので、これからはもっと勝ってもっと自己主張しようと思います。

共にがんばりましょう!!

では次回のバトンですが、現在、人気急上昇中の東城りおプロに渡したいと思います。
よろしくお願いします。