リレーエッセィ

第103回:増田 隆一

2013年8月12日、第12回野口賞の準決勝最終戦オーラス、私は井出(その後、受賞)とのマッチレースに敗れた。

「ありがとうございました」

立会いを務めた梶本氏に小さく呟いて会場を後にし、それ以降の記憶が全くない。

ふと気がつくと、神楽坂にいたはずが江戸川橋の交差点にいた。

いわゆる放心状態だったのであろう。

私は当時、4回ほど決勝の経験があったのだが、準決勝にも関わらず、そのどれに負けた時よりも悔しかった。

あれから早1年と10ヶ月。私は第13回野口賞の決勝の舞台に立っていた。

ああ、やめた!やめた!

その悔しさをバネに、第13回野口賞を優勝したなんて話ならば、ボクのカッコもつくし、文章としてもまとまりやすいんだけど、事実を捏造するわけにもいかないしな・・・

そもそも、柚木がバトンなんて渡してくるから、負けた試合の話をしなくちゃなんねーじゃねーかよ!けっ!

所詮はこれが本心である。

大体さー、勝った話ならコッチも気分良く書くけれどさー、柚木が先に野口賞のシステムの話でお茶を濁すから、コッチはそれも出来ないしさー、店(まあじゃん まっすー)は忙しいしさー

ああ、本当に書きたくない。

平たく言っちゃえば、準決勝で競り負けて悔しくて、その次の回は決勝残ったけど結局負けたって話ですよ。

ああ、勝負弱くてイヤになるね。

まあ愚痴ってても仕方がないので、文字数稼ぎ・・・ではなく、自己紹介として、プロフィール的なものを書いてみましょう。

増田 隆一(ますだ りゅういち)
198×年8月24日生
おとめ座、B型、東京都豊島区出身
17期生
王位戦1回、チャンピオンズリーグ3回の決勝進出経験あり
好きな女性のタイプは、い・・・やめよう。きゃりーぱみゅぱみゅさん、北川景子さん。

うーん・・・なかなか文字数が埋まらない(涙)

仕方ないから、自分の弱さの話でもしますかねぇ。

数年前、C1から降級したときの話であります。

都内某所の居酒屋で、同期の猿ちゃん(猿川真寿)と飲んでいました。

アルコールも回ってきた頃・・・

「オレの何が悪いのかな?」

何年か共にB1で戦っていた猿ちゃんは、プロリーグの頂点A1へと昇級、対する私は欠場や退会の人数調整で何回か助かりながらも、順調(?)にC2への降級が決まっていました。

そんなときに、藁をもすがる一心で出たセリフであります。

「分かんないよ」

猿ちゃんの返事はその一言でした。

今ならば、その時に猿ちゃんが本当に言いたかったセリフがよく分かります。

「友達ではあっても、同じ舞台で戦ってきた相手でしょ?そんなことを聞くのは、勝負師として終わってるよ」

今の時代は分かりませんが、私たちがプロ連盟に入会した当時は、みんなが自分の強さを信じて戦っていました。

舞台に立てば、起こることのすべてが自己責任であることも理解していました。

驕りかもしれませんが、強いからプロになったのであって、強くなるための手段としてプロになるなんてことは考えたこともありませんでした。

親友である猿ちゃんとの10年以上の付き合いの中で、ボクがそんなセリフを吐いたことはありません。

いつからそんなことも忘れちゃったんだろうな・・・

野口賞に関して言うと、手が悪いことを言い訳にして、自ら局面を打開しに行かなかったことが、言い換えれば、ラクをしたのが敗因なんでしょうね。

ああ、本当に負けた試合の話なんて書きたくないよ!

さて、最後は仲間や、ファンの方へのお礼で締めたいと思います。

舞台に立てば自己責任と言っておきながら、矛盾していると感じる方もいると思いますが、ボクがこれまで何とかやってこれたのは、たくさんの先輩や仲間、ファンの方の後押しがあったからです。

勝負の最中、ここ一番の踏ん張り所を乗り越えられた時は、必ず頭の中にそんな人たちの顔や、メッセージが浮かんでいました。

最後の最後で及びませんでしたが、第13回野口賞でも決勝という舞台に立てたのは、そんな人たちのお陰であると言うことは、まぎれもない真実であります。

Twitterやお店で、たくさんの応援メッセージを下さったファンの方、電話やメールをくれた先輩や仲間たち、当日、パソコンの前にかぶり付いて応援して下さった方々・・・全ての方に感謝をしたいと思います。

本当に応援ありがとうございました。

麻雀にゴールはありません。

いつの日か、そんな人たちに良い報告ができるように、これからも精進していきたいと思いますので、応援、よろしくお願いします!

さて、次のバトンをダレに渡すかと言うのが、あまりトモダチのいないボクにとって大きな問題なのですが・・・

麻雀格闘倶楽部に出演、女流でもAリーグに在籍している古谷知美プロに致しましょう!

決して、先輩に渡すと気を使うからという理由ではありませんからねー!

古谷、よろしく!