十段戦 レポート

十段戦 レポート/第31期十段戦ベスト8B卓レポート 荒 正義

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十段戦ベスト8・B卓のメンバーは前原・沢崎・柴田・中尾の4名だ。
とくに中尾は九州リーグで優勝し、4段戦S級からの出場であるからここまで乗り越えたハードルは6つである。
あと1つ越えたら念願の決定戦進出だ。
前原は「十段」のタイトルを5回制覇している。これは異常な強さだ。
前原より1歳上の沢崎も過去にこれを制覇している。沢崎は深い読みと鋭い踏み込みに定評があり、技のキレ味も抜群である。もちろん連盟を代表する打ち手の1人だ。
そして柴田は、大きなタイトルにこそ縁がなかったがA1リーガーである。
はたから見れば、ベテラン2人対若者2人の戦いに見えるがどうだろう。
勝ちアガリの権利はトーナメント方式の上位2名である。
 
1回戦。
大きく点棒が動いたのは東2局の沢崎の親番だった。
南家・前原の手が早い。5巡目でこの手だ。
六万七万七万七万一索二索三索七索八索九索二筒三筒五筒 ツモ六筒 ドラ五筒
打牌は色々あるが前原は六万切りを選択。
すると次のツモがドラの五筒だったのである。勘もよし、ツモもよしである。
この河で当然リーチだ。
一万 上向き五索 上向き一万 上向き白六万 上向き六筒 左向き
この時点でマチは河に一筒が1枚出ているだけだから、前原から見ればアガリ目十分。
しかしこの後、6巡の間一筒四筒はツモリもしなければ出もしなかった。
この間にじっくり手を育てていたのが沢崎だった。
三万三万三万五万六万七万三筒三筒四筒五筒五筒八筒八筒
これが12巡目の仕上がり。
しかし、この時点で四筒はドラの指示牌で、残りは1枚。一筒は残り2枚だ。
まだ、前原が有利だ。だが4巡後四筒を引いたのは沢崎だった。価値ある4,000オールだ。
この後、沢崎は2,600オールを引き5本積んで3人沈めて大トップをモノにした。
その戦い方はまるで風林火山の如し。この時点で沢崎の決定戦進出を
「8割は堅い!」と、見たのは私だけではあるまい。
 
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沢崎+37.9P  前原▲11.9P  柴田▲5.2P  中尾▲20.3P
 
2・3・4回戦。
2回戦は前原がトップで、沢崎が浮きの2着。
前原は浮きに回り沢崎は得点を伸ばした。中尾は2ラスで苦しい。
3回戦も前原がトップ。沢崎は沈み3着だが態勢的には影響なしである。
 
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4回戦になって、ようやく柴田の初日が出た。
小さなトップだが失点を減らし、最終戦へと望みをつないだ。
ここまでの4者の成績はこうだ。
前原+40.4P  沢崎21.4P  柴田▲4.1P  中尾▲57.7P
 
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5回戦(最終戦)
前原は安全圏。中尾は残念ながら圏外。勝負は沢崎と柴田の争いだがその点差は25.5Pだ。トップを取れば簡単そうに見えるが、捲れそうで捲れないのがこの点差なのである。
最終戦となれば、相手も場を流し受けに入るからだ。しかも相手は受け名手・沢崎誠である。
しかしそれでも、柴田の目標は沢崎一点である。相手が岩でも、頭から突っ込んで勝負だ。点棒が大きく動いたのは東2局だ。沢崎のリーチに前原が飛び込んだ。これがメンタンピン・一ペーコの7,700。前原も親でテンパイだからしょうがない。よりによって点棒が守備も鉄壁の沢崎に流れるとは柴田にとっては苦しい展開だが、見方を変えるなら、今度は前原を目標にすればいいのだ。前原をラスにし、柴田は沢崎を捲りトップを狙えばいい。
前原との差は順位点以外で約2万点である。
 
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柴田は沢崎の親を1,000点で蹴り、満貫ツモを決めた。
これで前原との差は約9,000点。そして迎えたのが南1局の柴田の親番である。
前原は自分が「今そこにある危機」であることは百も承知だ。この映画の題名はテロと戦うハリソン・フォードだ。ただし、今日の主演は前原雄大である。
その前原が先手を取って6巡目にリーチを打つ。
六万七万二索三索四索一筒二筒三筒南南西西西  リーチ  ドラ東
入り目は西。できればダブル風の南が欲しかったが、それならヤミテンか。
だが、危機だから贅沢は言っていられない。その南を一発で切る柴田。
前原からすれば(チクショウ!)である。しかし、マチの五万八万は山にあると踏んだリーチであったことは確かだ。事実、五万八万は山ほど生きていた。だが、流れていった先は沢崎と中尾だ。2人は完全オリだから出るはずもない。そして、オール突っ張りの柴田から13巡目にリーチがかかる。
二万二万三万五万三索四索五索八索八索八索三筒四筒五筒  リーチ
四万は2枚残りだ。ところが一発目のツモがなんと四万だったのである。
4,000点オールだ。リーチ棒込みでこれは大きいアガリだ。
この時点で柴田は前原を約7,000点かわした。
これで勝負は沢崎を含め3つ巴の様相となったのである。
前原をかわし沢崎もかわしたから断然有利なのは現状1位を走る柴田だ。
柴田の連チャンは安手で前原がかわす。
そしてこの後、前原の親の粘りがすごかった。
 
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前原の親は2度とも前原と沢崎がテンパイで、連チャン。
つづく2本場は、前原が1,200オール。そして次の3本場はリーチで4,300オールとアガリ、安全圏に入る。これが6巡目の仕上がりなのだ。
三万四万五万八万八万三索四索五索六索七索二筒三筒四筒 リーチ
ツモ五索 ドラ三索
美しいメンタンピンの3面チャンだ。これで「今そこにある危機」…を脱出である。
さらにこの後、沢崎から5,800の4本場の追加点。
これは沢崎にとって、痛い打ち込みである。
5本場でまた前原からリーチだ。これは沢崎が中尾から2,000点アガってさばいた。
リーチ棒と積み場で4,500の収入。これで沢崎が柴田より総合で300点上になる。
南3局―。
すると今度は、柴田が沢崎の親を1,000点で蹴る。
これで柴田がまたまた逆転で700点上になる。
そしてオーラス、沢崎がタンヤオで終わらせに入るが、親の中尾からリーチがかかる。
その2巡後、沢崎が待ちの選択の場面になる。親のリーチの河はこうだ。
中八索 上向き発六筒 上向き一万 上向き西八索 上向き四索 上向き四万 左向き
沢崎の手はこうである。
六万七万八万五索五索六索七索七筒七筒七筒  加カン二筒 上向き二筒 上向き二筒 上向き二筒 上向き  ツモ五万
この時点で八索は場に3枚見えているから沢崎は五索切りを選択。
この時、中尾からロンの声。
三万三万六万七万八万三索四索三筒四筒五筒九筒九筒九筒  リーチ
三色崩れで、どうと云うことのない手だがドラが九筒なのである。これが入り目。
これで勝負ありだ。1本場は、前原が捌いて幕となる。
最終5回戦成績
前原+23.2P 柴田+15.7P 中尾▲13.7P 沢崎▲25.2P
総合成績
前原+63.6P 柴田+11.6P 沢崎▲3.8P 中尾▲71.4P
これでB卓の勝ちアガリ者は前原と柴田だ。
A卓は藤崎と櫻井。あとは前期「十段」の瀬戸熊である。
誰が勝つのか…今から興味津々である―。
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