十段戦 レポート

十段戦 レポート/第32期十段戦 ベスト16A卓レポート 内川 幸太郎

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十段戦ベスト16、A卓
瀬戸熊直樹、前田直哉、柴田吉和、高谷圭一の対局の模様をお送りします。
戦前予想は、現鳳凰位である前田、十段三連覇を果たした王者瀬戸熊に、新人王柴田と初段戦から唯一の勝ち上がりの高谷が挑む構図ですが、A1の2人がぐりぐりの本命であるのは間違いないでしょう。
ベスト16からは、連盟チャンネル内のニコ生放送ということで、リーグ戦などで映像対局の経験豊富なA1の2人は問題ないが、新人2人は変な緊張で対局に影響しなければいいな、と思いながら開局を見守りました。
東1局、南家の柴田が9巡目に手なりで本手のリーチ
三万四万五万八万八万四索五索六索六索七索四筒五筒六筒  リーチ  ドラ七索
柴田にとって、大きな選択がなく値段的にも素直にリーチに行ける入りで、好感触であったと思います。
結果どうあれ、リーチがかけられ気持ちも楽になったのではないでしょうか。
ここに無筋をきっていくのが、北家の高谷。
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三万四万四万五万五万六万三索五索二筒三筒四筒東東
役なし、ドラなし、待ちの四索は場に3枚切られているのだが、果敢に無筋を切っていきます。
この高谷の押しっぷりに、親の前田も1シャンテンで粘っていたのですが、高谷はドラを引き入れるとカン六索待ちでリーチと行き、これには前田もさすがにギブアップ。
結果2人テンパイで流局となりましたが、開かれた手牌に前田、瀬戸熊両者の視線がしばらく注がれていたのが印象的でした。
また開局から、新人とは思えない落ち着きというか腹のくくり方にここまで勝ち上がってきた理由が分かったような局でした。
東4局に柴田が捨て牌に気を配った、素晴らしい手順でメンホン七対子を高谷から打ち取ります。
一筒一筒五筒五筒九筒東東南南白白中中  ドラ六万
南3局、ここまで大変苦しい牌勢の瀬戸熊でしたが1,000オール、3人テンパイ、2,000オール、2,400、1,500と本手こそ決まらなかったもののプチクマクマタイムを発動し、本場もあわせて2万点ほど加算に成功。
中でも、1本場の3人テンパイが秀逸で、前田の先制リーチを受けてのこの手牌
二万二万三万四万五万一索二索三索四索五索五筒五筒六筒七筒  ドラ四筒
ここで瀬戸熊はテンパイ取らずの打二索一索として行き、六筒を引き入れのリーチ。
もちろんこの時の前田の待ちが五筒だったのが一番大きいですが、自身の勢いに基づいての押しひきに惚れ惚れしました。
高谷も5本場で満貫をツモアガリ一死報いるが、オーラスも瀬戸熊がアガリきり、新人2人が伸び伸び打てていたものの、さすが瀬戸熊見事結果1人浮きで1回戦を締めくくりました。
1回戦結果
瀬戸熊+29.8P 柴田▲2.2P 前田▲8.9P 高谷▲18.7P
 
2回戦、東2局西家柴田が
四万五万六万九万九万六筒七筒八筒九筒九筒九筒白白  リーチ  ツモ白  ドラ六万
これを力強く白をツモり一歩リードし、東4局の親でも
一万二万三万四万五万一索二索三索一筒二筒三筒六筒六筒  ドラ六筒
本手を決めに行くも高谷がこれを阻止。
一万二万三万三万四万五万四索四索七索八索九索六筒七筒  ロン八筒
高谷はこの後も5,800を前田から出アガリ持ち点も4万点を超えてなお親番1本場となったところで、疑問手がでます。
配牌からホンイツも見えていましたが第2打で九索を打った後の5巡目でこの形。
一索二索二索三索三索四索五索六索七筒八筒南南発  ドラ二筒
ここで上家・瀬戸熊からでた一索をチーとし、打八筒
格段ピンズ、ソウズ場況が悪いわけではなかったし、何より前局ピンフドラ2をきっちりアガった次の局であったので、ホンイツに行くなら九索を残しておいて欲しかったし、面前でリーチと行っても効果は大きい場面に見えました。
このチーは残念だったなと。
結果は、丁寧に受けた瀬戸熊が、高谷からドラを打ち取り5,200。
二万二万二万五万六万七万六索七索八索二筒四筒五筒六筒  ロン二筒  ドラ二筒
さて、ここまで全く見せ場のない前田がラス前の親でようやく本手をものにします。
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二万四万六万七万八万三索四索五索六索六索中中中  ロン三万  ドラ中
これに飛び込んだのが、さばきに行った柴田。大きな12,000点。
次も前田は難しい手組を上手く作って3面張リーチ!
五万六万七万三索四索五索五索六索七索八索三筒四筒五筒  ドラ一筒
これに真っ向勝負したのは、瀬戸熊。
四万五万六万四索五索六索一筒二筒三筒四筒五筒東東
一騎打ちかと思われたが、ここに全局放銃の柴田も参戦。
六索七索八索一筒一筒三筒三筒五筒六筒七筒七筒八筒九筒
勝負所を制したのは柴田。前田からドラを打ち取り8,000の大きいアガリとなりました。
オーラスは瀬戸熊、高谷、柴田の接戦となったが、瀬戸熊がアガリきり2連勝で2回戦を終えました。
2回戦終了時
瀬戸熊+48.4P 柴田▲7.8P 高谷▲9.8P 前田▲30.8P
 
2連勝で1人突き抜けた感のある瀬戸熊であるが、それほどエネルギーを使っているようにも見えないなぁなんて思っていたら、3回戦開局からクマクマタイムを発動させます。
四万四万五万五万六万六万五索六索四筒五筒六筒七筒七筒  ハイテイロン七索  ドラ九万
まずはこれを高谷からアガると、一局挟んで
二万二万七万七万八万八万六索七筒七筒八筒八筒九筒九筒  ドラ八万
リャンペーコー変化を見て数巡様子を見ていたが、七索が4枚見えたのと自身が序盤に三索を切っていたのも考慮してリーチ。
これに七対子で粘っていた前田が六索の暗刻落としでまさかの12,000。
これには前田もぎょっとした様子、ノーチャンスのほぼほぼ安全牌だと思って切った牌が捕まりがっくり。
以降、前田はさらに元気がなくなり実質この局でノックアウトとなりました。
このあと3回戦は、瀬戸熊が危なげなく局をまわし怒涛の3連勝!独走です。
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3回戦終了位時
瀬戸熊+83.5 高谷▲1.7 柴田▲16.5 前田▲65.3
 
ここまで点差が開くと、実質、高谷と柴田の2番手争いが現実的であろうかと皆が見守る中、柴田、高谷の両者がいきなり開局でぶつかります。
柴田が先制リーチ!
二万二万五万五万九万一筒一筒四筒四筒六筒六筒北北  リーチ  ロン九万  ドラ九万
このリーチに高谷もこの手牌で追いつくも宣言牌のドラがつかまり痛恨の満貫直撃。
五万六万七万五索六索七索三筒三筒五筒五筒六筒六筒七筒
ここから柴田の怒涛のアガリが連発し、この半荘を完全に制圧。
南1局に親の瀬戸熊からダブ南ドラ2をアガリ。
八万九万三索三索七筒八筒九筒  ポン南南南  ポン六万 上向き六万 上向き六万 上向き  ロン七万  ドラ三索
南2局の親番でも
四索五索六索一筒二筒三筒五筒六筒七筒八筒九筒白白  リーチ  ロン四筒  ドラ白
この12,000をまたも瀬戸熊からアガリ、この半荘を6万点オーバーの大トップで終えました。
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4回戦終了時
瀬戸熊+50.1P 柴田+25.8P 高谷▲17.0P 前田▲58.9P
 
4回戦目でまさかのハコ近くのラスを引いた瀬戸熊ですが、序盤の貯金は大きく高谷との差は67.1Pとまだまだ安全圏。
大きいトップをとった柴田も高谷と42.8Pと比較的大きい差が付きました。
高谷は、6万点近いトップが必要、前田に至っては10万点とかなり厳しくなった様子。
攻めるしかない高谷は、開局から果敢に仕掛けていきます
一万一万七万七万一筒二筒三筒  ポン発発発  チー三索 左向き四索 上向き五索 上向き  ドラ七万
ここに後のない前田がハイテイで一万を掴み、嫌々ながらもリリース、高谷の7,700スタート!
このあとの東場は柴田も細かいアガリを拾い、原点を割りそうにない安全圏まで点数を伸ばします。
南場に入ると高谷が苦しい状況ながらも攻めつづけ驚異の追い上げをみせる。
まず南2局に
三索四索五索六索七索四筒四筒五筒五筒六筒六筒中中  リーチ  ツモ八索  ドラ四筒
まず一撃、そして続く南3局親番でも
六万七万五索五索一筒一筒一筒四筒四筒四筒  暗カン牌の背北北牌の背  リーチ  ツモ八万  ドラ七筒
この4,000オールで柴田までわずか7ポイント、この半荘ノー和了の瀬戸熊にも6ポイントと肉薄する。
ツモられツモられで、まさかの瀬戸熊までの射程圏内でのオーラスを迎え、なんと3人が条件のある状態。
親が瀬戸熊であるため、本場を含め1,000・2,000で高谷は逆転できます。
ここまで一貫して攻め続ける高谷の姿勢に、見ている方には逆転は十分あると思わせたのではないでしょうか。
ノーテン罰符では変わらないので、一局で終わる可能性が高いこのオーラス。
高谷は、選択があったものの上手く打ち13巡目にドラターツを埋めての条件を満たしたリーチ!
その声を聞いて一度瀬戸熊が天井を見上げます。
一万二万三万六万七万八万三索四索六索六索五筒六筒七筒  ドラ一万
一打一打、高谷のツモに力がこもる。
瀬戸熊も歯を食いしばる。
結果はアガリ牌の二索が2枚居たが、高谷に舞い降りることありませんでした。
通過者:瀬戸熊直樹、柴田吉和
負けはしたものの、高谷の攻め続けた姿勢は見ている人がわくわくしたと思います。
終始牌勢が渋く、辛い1日となった鳳凰位・前田。
自身の親が終わると甘い牌を1枚も切る事なく、3人の好勝負が生まれました。
ベスト16B卓以降もご期待ください!