JPML WRCリーグ レポート

第14期JPMLWRCリーグベスト16C卓レポート

【~JPML WRCベスト16C卓~十段位三浦が圧倒。もう1人は…】

ベスト16のC卓の選手はこちらの4名。

 

 

写真の配置には、少し遊び心を入れてみた。
現十段位、現王位の二冠を持つ三浦智博が圧倒的な一番人気。
小林正和と渡邉浩史郎が二番手。
そして、39期後期入会、まだ半年の新人、松下一真。

小林は、このJPML WRCリーグを過去2回(第3期、第9期)優勝、対する渡邉も、The Legend of Dragon Youth2020を優勝している。
奇遇にも2人とも今期のMリーグの観戦記者を務めており、どちらも面白いと評判だ。
言葉遣いもウイットに富んでいる上に、内容からも雀力の高さが垣間見える。

小林も渡邉も策士タイプ。
『どちらかに抜けられて、三浦と自分で2位の座を争う展開は避けたい。』
『三浦と手がぶつかって、痛手を負うのは避けよう。』
そういう作戦が見え隠れした。

松下は、デビューしてまだ半年で放送のベスト16まで勝ち上がるのは、お見事の一言。
しかし、初の放送対局の緊張感が無くなるよりも早く、持ち点が無くなっていく。

 

 

1回戦東3局2本場、
親、三浦のリーチに松下が捕まり、12,000。

三浦は、この三色同順の手順もお手本そのものだったが、
1本場のピンフのアガリが素晴らしく、これが連荘を生んだキッカケだった。

 

 

(画像補足:2件リーチに対して、無筋を押してアガリ切る)

三浦は2回戦も、親の小林のリーチに押し切ってハイテイでツモアガリ。2,000・4,000。

 

 

三浦「自信はなかったです。この2回戦が連勝だと大きく、3着だとまだ通過がわからないので、勝負してトップを取りに行った。」
このアガリで狙い通りの連勝。
勝ち上がりのひと席をほぼこの時点で確定させた。

逆に小林は、ここがトドメだった様子。連続ラスで脱落。
「自分の九万の手出しがあり、七万を持っている読みはあったはずなのに、押し切られるのは見事すぎます。完敗です。」
とただただ脱帽するしかなかった。

話を1回戦に戻そう。
松下がペースを取り戻せたのは、この1つのアガリだった。

 

 

小林「マンズの中張牌は止める予定だったが、一万から来てしまった(ので勝負して放銃になった)」
僕も仕掛けてテンパイしている状況では、一万を止めるのは方針がブレていると思う。
松下に取って幸運だったのは、小林が最初に掴んだマンズが一万、そして裏ドラが乗ったことだ。
大きな大きな12,000。

 

 

(画像補足:小林の手は白発をポンしている)
ただ、小林の手には解説の藤島健二郎からアドバイスがあった。
藤島「捌き手の予定がドラの二筒が来てしまったことで、アガリ易さから打点にしてしまったのが良くなかったと思う。(一筒二筒二筒三筒四筒四筒から一筒切りではなく)ドラを切ってシャンポンに受ける手はあった。」
さすが麻雀界の『捌きのアーティスト』である。

 

2回戦早々も、復活した松下は小林とのめくり合いに勝つ。

 

 

小林の手はピンフ、ドラ1。
セオリーはリーチではあるものの、ヤミテンの選択もないわけではない。
ただそれは、1回戦がラスでなければ…という条件付きなのだが。
つくづく、前述の12,000の放銃が痛い。

戦いを先に進めて、最終4回戦。
2番手争いは松下と渡邉のデッドヒート。
積極的な選択が良い結果を産み、松下がトータル2番手をキープして進む。
そして、最終4回戦の南3局1本場で、渡邉を突き放す大きなツモアガリが出る。

 

 

流局を願う渡邉には残酷な、松下のツモアガリ。トドメの裏ドラ1枚。
この4,000オールが決定打になり、松下が勝ち上がりを決めた。

という、レポートの締めの予定だったのだが…
(この時点で80ポイント以上の差)

 

南3局4本場、渡邉が松下を直撃する。12,000(+1,200)。

 

 

渡邉の周りに漂っていた絶望的な空気、松下の周りの決定的な空気、それが変わった。

南4局、親は渡邉。
もちろん、この局が終わればゲームセットだ。

 

 

1人テンパイ、
リーチ、ツモの1,000オール、
白のみのアガリ、と親を繋ぐ。
この親番、祈りを込めて振り続けたサイコロで、とうとう手が入った。

 

 

 

三色同順になる高目のツモアガリで4,000オール(+900)。
これで松下のリードはわずか7.9ポイント。
背中に手がかかってしまった。

松下は気が気でなかったはずだ。
つい20分前まで大楽勝ムードだったのだから。

 

 

 

不格好ではあったかもしれない。
それでも、三浦に任せようとは思わず、自分で決めるという強い意志はとても良かったと思う。
リーチはいらなかったが、アガリをもぎ取って通過を決めた。

松下「今日が楽しみだった。次は鳳凰位のHIRO柴田さんと対戦できるのがとても楽しみ。」
デビューして半年で、十段位と鳳凰位と対戦できるなんて、同期どころか、若手にとっては羨ましいかぎりだろう。
僕ですら、少し羨ましく思ってしまう。

きっと、非常に濃密な4半荘だっただろう。
この貴重な経験が、彼の血となり肉となるはずである。
『早い段階でこの対局を経験していたことが、大きな差になった。』
松下には、5年後や10年後に振り返って、そう思えるようになってほしいし、
他の若手も、可能な試合は全部出場して、経験する場を掴み取ってほしいと思う。

 

 

(文:福光聖雄)