グランプリ 決勝観戦記

グランプリ 決勝観戦記/第6期麻雀グランプリMAX決勝観戦記 最終日 紺野 真太郎

前半4回戦を終了してのポイントは以下の通り。
4回戦終了時
灘+26.2P 和久津▲6.0P 柴田▲9.3P  HIRO▲10.9P
灘の1人浮きの形だが、現状最下位のHIROでさえ、まだ37.1P差と勝負の行方は展開次第でどうとでも転がる。
灘が初日のような自在の立ち回りで逃げ切ってしまうのか。爆発力を持つ3者が灘を捕まえるのか。残り4回も目を離せない。
 
100
 
5回戦 起親から 灘 和久津 柴田 HIRO
開局の手がすんなりまとまるようであれば士気も上がるというもの。
そういった意味で注目の東1局。すんなりとまとまったのは和久津であった。
四万五万六万九万九万一索二索三索四筒五筒五筒六筒六筒  ドラ四筒
8巡目にこの形でリーチ。高目ツモで跳満。ツモるようであればまだ先は長いとはいえ、トータルポイントで灘を逆転する。
しかし、空振りしてしまうと、今日も苦しい展開なのかと疑心暗鬼に陥ることも。
高目の四筒は最後まで山に残ってはいたが、和久津の手元にはやってこなかった。親の灘も粘り2人テンパイ。
続く1本場、親の灘は早々に仕掛け5巡目にはこの形。
三万四万六索六索五筒五筒南  ポン一万 上向き一万 上向き一万 上向き  ポン発発発  ドラ白
対する和久津は6巡目、
六万六万六万二索二索四索五索六索五筒七筒七筒八筒白  ツモ七筒  ドラ白
「とりあえずは八筒辺りか・・」そんな予想を覆す打白。真っ向から戦うことを決めた。
全8回戦のまだ中盤と考えればなかなか打てる牌ではない。
ただ、このまま白を抱えていたとしても、灘に好きに打たれてしまうのも事実である。和久津はここを勝負所と捉えて切り込むことを選択した。
灘は8巡目に二万を引きテンパイ。和久津は四索を引いて打八筒
六万六万六万二索二索四索四索五索六索五筒七筒七筒七筒  ドラ白
五筒にくっつかない限り和久津の放銃となってしまいそうだが、灘が手変わり。
二万三万四万五索六索五筒五筒  ポン一万 上向き一万 上向き一万 上向き  ポン発発発  ドラ白
五筒は通るようになったが、今度は四索がピンチに。だが和久津の気が上回ったのか七索を引き放銃を回避し、ツモり三暗刻テンパイ。
流局間近にテンパイを入れていたHIROから二索でアガリ1,300。点数は安いが戦う姿勢を貫き通した。
100
東3局、西家の灘、4巡目テンパイ。
三索三索四索五索一筒二筒三筒五筒六筒七筒西西西  ドラ四索
リャンメン待ちとはいえ、ドラ表示牌にも三索で待ちはそこまで良くない。変化を待ってのヤミテンか。
だが、あっさり六索を引き1,000・2,000。このアガリは灘本人にも、周り3者にも好調を印象付けるには十分過ぎるか。
こうなってくると周りは灘に翻弄される。東4局は親の第一打を仕掛け1,000、南1局の親番では、じっくり手を育てこのテンパイ。
三万四万四万五万六万五索六索七索二筒三筒四筒六筒六筒  ドラ四万
二万ツモで4,000オールと、この5回戦の勝負を決めてしまった。
灘を止めることは出来ないのか。その差は更に広がった。
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5回戦終了
灘+27.6P 和久津▲2.7P HIRO▲8.5P 柴田▲19.4P
5回戦トータル
灘+53.8P 和久津▲8.7P  HIRO▲19.4P 柴田▲28.7P
 
6回戦 起親から 灘 HIRO 柴田 和久津
少しでもトップを走る灘との点差を詰めたかった3者であるが、反対に突き放されてしまった。
2番手和久津でもその差60ポイント強。残り3回ここで灘がさらに離すようだとマジックが点灯する。
東1局、親の灘、9巡目にドラ単騎の先制リーチ。プレッシャーを与える。
四万五万六万三索四索五索六筒七筒八筒九筒九筒九筒中  ドラ中
この時の北家・和久津の手牌。
二万二万四万二筒三筒五筒五筒北白白発発中  ドラ中
大物手の予感も感じさせる手牌だが、肝心の中は灘のアタリ牌。進め方によっては放銃まである。
直後に発を暗刻にして打北。理想的にも見えるが、中が余る可能性が高くなったとも言える。
HIROも四暗刻まで見える手牌が入っており、1枚切れの白を切ってきた。和久津は動いた。
二万二万四万二筒三筒五筒五筒白白発発発中  ポン白白白  ドラ中
和久津がこの手を捌き手として動いたのならばここで勝負は決していたであろう。
これ以上離されたくないと動かずにいたとしても、結果を先延ばしにするだけで、波乱は起きずに終わっていたこもしれない。
和久津は白を鳴き、通っていない四万を河に置いた。
ほんの少しだが、風向きが変わった気がした。和久津は自らの勝負感覚で切り開きに行った。
先に五筒が暗刻になった。が、迷いはない。HIROが通していたこともあろうが、二万を落とす。16巡目ついに中を引き入れた。1つ間違えばいつ放銃になってもおかしくなかった中をついに重ねた。
二筒三筒五筒五筒五筒発発発中中  ポン白白白  ドラ中
灘が四筒をツモ切ったのはその直後だった。16,000の直撃。62.5Pあった差は一気に8.5P差にまで縮まった。
東2局、和久津の配牌。
一万一万一万三万五万六万九万一索二索六索七索六筒発  ドラ中
特に良くも悪くもない配牌。567の三色が少し見える程度か。しかし、この手が7巡目には
一万一万一万二万三万三万四万五万六万七万九万六索七索  ドラ中
ここまで育つ。次巡八万をチー。もちろん一気通貫のみの捌き手になどしない。ソウズを落として一気に灘を捕らえにいった。
更に三万を引き入れテンパイ。一万二万三万四万七万待ちとし、七万をツモ。
一万一万一万二万三万三万三万四万五万六万  チー八万 左向き七万 上向き九万 上向き  ドラ中
2,000・4,000。たった2局で逆転してしまった。
観戦記者は立会人と共に対局室にいるので、何があろうが声も出せないし、アクションも起こせないが、外で見ていたら「うおぉぉぉォー!」と声をあげていたことだろう。それぐらい見事で鮮やかな逆転劇であった。
東3局、逆転したと言っても僅かに上回っただけの和久津。並んだ勢いのまま一気に突き放したいところ。
手牌も呼応し、5巡目にドラ七筒を引き、早くも1シャンテン。
二万二万三索四索七索八索八索七筒七筒八筒八筒九筒九筒  ドラ七筒
5巡目にこの形ならもらったも同然か。
だが、この広い1シャンテンがここから全く入らなくなる。
何巡ツモ切りしたであろうか。その間にも親の柴田、仕掛けたHIROに手出しが入り、追いつき追い越されていく。先に手を開いたのは親の柴田であった。
四万六万三索三索四索五索六索三筒四筒五筒白白白  ツモ五万  ドラ七筒
1,300オール。柴田が浮きに回った為、順位点の差でまた灘がトータルトップに返り咲く。
東3局1本場は、HIROが5,200を柴田よりアガリ、今度はHIROの反撃開始。
続く東4局には7巡目に先制リーチ。
七万八万九万四索五索六索七索八索五筒五筒六筒七筒八筒  リーチ  ドラ八万
HIROのリーチを見たのは久しぶりな気がする。それだけ苦しい戦いを強いられているということであろう。
だがここは、すぐにツモり1,300・2,600。HIROもこれ以上離されるわけにはいかないのだ。
100
南1局、追いつかれたといっても、それがどうかしたのかといった風情で淡々と手を進めて行く親番の灘。
四万五万六万八万八万五索二筒三筒四筒四筒六筒西西  ツモ四筒  ドラ八索
こんな形になっても、落ち着いて西に手をかけ落としていく。そして7巡目、狙い通りに手役を仕上げリーチ。
四万五万六万八万八万五索六索二筒三筒四筒四筒五筒六筒  リーチ
8巡目、柴田にもテンパイが入る。ツモり三暗刻に受けリーチ。追いかけリーチだけに多少のリスクはあるが、灘が沈んでいるという状況は柴田にとってもチャンスであり、勝負を賭けた。
五万五万五万七万七万七万一索二索三索五索六索六索東東  打五索 左向き
だが、無情にも柴田のツモはアガリ逃し、そして灘の高目の四索であった。
南1局1本場、追いついたものをまた離されるわけにはいかない和久津、中を仕掛け、6巡目テンパイ。
六万七万八万一索二索八索八索二筒三筒四筒  ポン中中中  ドラ一索
対する親の灘、和久津の当たり牌三索を使い切りリーチ。
三万四万三索四索五索六索七索八索四筒四筒五筒六筒七筒  リーチ  ドラ一索
リーチを受けた和久津、怯まずに押すが、当たり牌を使い切られて追いつかれては分が悪い。灘が五をツモり2,600オール。トータルポイントを再び突き放す。
南4局、厳しい展開の中置かれていた柴田が最後に意地を見せた。
三索三索五索五索六索八索八索五筒五筒六筒六筒九筒九筒  ドラ九筒
難しい手を七対子にまとめてリーチを打ち、流局かと思われた最後のツモでツモり3000・6000。もう一度灘にラスを押し付け返した。
6回戦終了
和久津+20.5P  HIRO▲2.3P 柴田▲5.7P 灘▲12.5P
6回戦トータル
灘+41.3P 和久津+11.8P  HIRO▲21.7P 柴田▲34.4P
 
7回戦 起親から HIRO 灘 和久津 柴田
ここまでは灘VS和久津がバトルの中心であった。HIROと柴田は展開的に受けに回らされることが多く、耐える場面が多かった。
ここまで圏外にならないよう必死で繋いできたが、残りは2回戦。自ら勝負を仕掛けていかなければいけない時間帯となった。
東1局、親のHIRO、終盤15巡目であるが、リーチに行く。
一万一万一万二万三万四万二索三索三筒四筒五筒中中  リーチ  ドラ三筒
一索はすでに4枚切られており、手変わりや流局を待っても良さそうな手牌だが、灘との差は63ポイント。もう親番を流す余裕はなく、灘の仕掛けが入っていることも終盤でもリーチを打たせた理由であろう。
一方の柴田。ドラ2のチャンス手。こちらも手変わりや流局を待つ時間的余裕はない。カン四筒で追いかけリーチ。
五万六万七万五索五索五索六索六索一筒二筒三筒三筒五筒  リーチ
四索四筒も残り1枚ずつであったが、柴田が四索を掴みHIROの3,900。続く1本場もHIROが2,000を和久津からアガリ連荘に成功。2本場を迎える。
東1局2本場4巡目、HIROはドラ表示牌の七筒をチー。
一万三万五万八万九万一索一索二索八索三筒白  チー七筒 左向き八筒 上向き九筒 上向き  ドラ八筒  打五万 上向き
メンゼンではスピードが乏しい手牌。それでもドラ表示牌でなければ動かなかったであろうが、この動きが裏目に出る。
柴田の11巡目、手牌を仕上げリーチ。
二万三万四万六万七万二索三索四索五索六索七索八筒八筒  リーチ
HIROは3フーロして牽制していたが、勝負手の入った柴田は真っすぐ打ち抜き、八万をツモり3,000・6,000。更に東2局にもリーチ。
八万八万八万四索五索六索四筒四筒五筒六筒六筒中中  リーチ  ドラ四索
これも力強く五筒をツモり2,000・3,900。親は灘。親被りに成功する。
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このまま柴田にだけ走らせるわけにはいかないHIRO。東3局反撃に出る。9巡目にリーチ。
五万六万七万二索三索三索四索四索八索八索四筒五筒六筒  リーチ  ドラ一索
トータル2番手とはいえ、このままズルズルとポイントを削られると苦しくなる親の和久津。灘が沈んでいるこの場面はチャンスでもある。
HIROのリーチに対して四万六万三筒と無スジを通しまくる。17巡目テンパイ。打った牌は4つ目の無スジ二索であった。
和久津、痛恨の7,700放銃。だが、これくらいでは諦める和久津ではない。次局、4巡目にリーチ。
二万三万四万六万七万五索六索七索二筒二筒五筒六筒七筒  リーチ  ドラ西
これを安目八万ながらツモり1,300・2,600。踏みとどまり食らいつく。
続く南1局、和久津は4巡目、南を暗刻にして打四筒、方針を決めた。
三万三万六万六万六万五索五索二筒四筒六筒七筒南南  ツモ南  打四筒 上向き  ドラ二筒
灘との差は約30ポイント。2回戦で決められた四暗刻を決め返せば、戴冠に大きく近づく。
次巡には、ドラ二筒を重ねて1シャンテン。ただ、当然のことではあるが、ここからが難しい。
親のHIROはこの時まだ、七対子3シャンテンであったが、1つ、1つ重ねて先にテンパイ。そしてリーチ。
一万二万二万八万八万一索一索四索四索九筒九筒北北  リーチ
こんな時は不思議と勝負を分ける牌がやってくる。三万五索二筒であれば和久津はツモるか、そうでなくてもHIROから直撃していたように思う。
ただこの時はそれが一万であった・・
南1局2本場、またもやHIROのリーチ。
二万三万三万四万四万五万七万七万三筒四筒五筒南南  リーチ  ドラ五筒
直後に和久津の元にやってきたのは、またもやHIROの当たり牌の南
四万六万六万二索二索三索三索四筒四筒五筒六筒白白  ツモ南  ドラ五筒
安全牌は無い。引くにも引けない。それでもここは耐えて欲しかったが・・南をツモ切りし7,700の放銃となった。
南1局3本場は柴田が3,000・6,000。ドラ入りの七対子をノーミスで決めた。
五万五万七万七万九万九万四索四索一筒一筒七筒七筒発  リーチ  ツモ発  ドラ九万
この7回戦、HIROと柴田がついに爆発。両者とも灘との差を20ポイント強まで詰め寄り、最終戦を迎えることとなった。
7回戦終了
柴田+31.9P HIRO+21.6P 灘▲18.1P 和久津▲36.4P
7回戦トータル
灘+23.2P HIRO▲0.1P 柴田▲2.5P 和久津▲24.6P
 
最終戦 起親から HIRO 柴田 和久津 灘
100
 
ポイント差を考えると灘が原点をキープ出来るかが焦点となるが、東2局、和久津からリーチが入る。
二万三万四万六万六万六万二索二索六索七索八索五筒六筒  リーチ  ドラ四万
この時灘は既にテンパイ。
五万五万五万三索四索五索六索  チー六筒 上向き七筒 上向き八筒 上向き  チー二筒 上向き三筒 上向き四筒 上向き  ドラ四万
灘の仕掛けが入っているこの場面、和久津からのリーチは打点も待ちも悪くないことは予想できる。普通に考えれば灘は放銃出来ない場面。
灘のツモは七索。安全牌は全くない。灘の選択は七索ツモ切り。ただ、この選択を考えて導いたのではなく、さして時間もかけずに感覚で導いた。
そして、和久津に三索を掴ませ1,000。ピンチを切り抜けた。いや、捻じ伏せたと言うほうが正しい気がする。
東3局、HIRO、灘の仕掛けに合わせ、動いてテンパイを入れる。
二万二万五万六万七万四筒五筒六筒七筒七筒  チー四索 上向き五索 上向き六索 上向き  ドラ七筒
二万でもいいから、アガリが欲しい場面。HIROがツモったのは望外の七筒だった。2,000・3,900。ついに灘に2.6P差まで詰め寄った。
HIROはこの決勝戦この最終戦を迎えるまで1回もトップが無かった。そんな中で勝負圏に踏みとどまり、あと一歩のところまで迫った。このまま一気に捕まえることが出来るか・・
東4局1本場、親の灘2巡目テンパイ。だが、ここは様子見なのか、ヤミテンに構えた。
一万一万五万六万七万二索四索七索八索九索七筒七筒七筒  ドラ八万
2巡ほど様子を見た後リーチを決行。灘がリーチをかけた以上チャンスとHIROも押す。が、灘はこの三索を僅か2巡でツモアガった。1,000オール。
これで灘は原点を超えた為、点数以上に大きいアガリとなった。
続く2本場、柴田からリーチ。
一万二万三万六万四索五索六索七索八索九索七筒八筒九筒  ドラ六万
灘はこの直後カン三万を引き入れ1シャンテン。
二万四万二索二索二索四索五索三筒三筒四筒六筒八筒白  ツモ三万
浮きにも回ったので安全に行く手もあるだろうが、灘は生牌の白を打つ。灘はここで引けばどんな結末になるか解っている。僅かな浮きを守っていても、それは隙となるだけという事も。勝負感はそれぞれだが、灘の磨き抜かれた勝負感はここを攻める事を選んだ。
カン五筒を引き入れテンパイしHIROから2,000。浮くどころかこの半荘のトップに躍り出た。
南1局、HIRO最後の親。ここで踏ん張りアガリを重ねればまだまだわからない。が、しかし・・
一万三万七索七索七筒八筒九筒東東東  ポン中中中  ドラ二筒  ツモ二万
これも僅か5巡。最後までカミソリの切れ味は衰えなかった。この局で事実上の決着を見たのであった。
最終戦終了
灘+16.6P 柴田▲2.1P 和久津▲5.1P HIRO▲10.4P
最終成績
灘+39.8P 柴田▲4.6P HIRO▲10.P5 和久津▲29.7P
灘はこれで79歳という最高齢タイトル戴冠記録を更新。また1つ伝説が加わった。
しかし、灘本人からは年齢を感じさせることはほとんどない。一度卓につけば、まだまだ現役の勝負師の顔を見せる。
灘は今回の決勝戦、全く気負いが無かったようにも見えた。
昭和という激動の時代を戦い抜いてきた事を考えれば、気負う必要も無かったのだろう。
麻雀プロ灘麻太郎を存分に見せてくれた決勝戦であった。
 
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