グランプリ 決勝観戦記/第8期麻雀グランプリMAX決勝 最終日観戦記 前田 直哉
2018年04月25日
初日は前原劇場で終わった印象だが、この最終日は誰の日になるのか?そして全てが終わった時に頂点に立っているのは誰なのだろうか?まだ半分ある。ここから何が起こってもおかしくはない。
初日4回戦までの成績
前原雄大+61.4P 勝又健志+6.8P 森山茂和▲11.2P 藤崎智▲57.0P
5回戦(起家から勝又、藤崎、森山、前原)
まずは東2局森山の手牌がこうなる。
ツモ ドラ
既に待ちでのタンヤオテンパイを入れていたがここにを持ってくる。捨て牌にはが2枚切れているがここは切りを選択する。これはでのアガリを期待してではなく、の重なりを見ての一打である。手役アーティストと言われるほど常に手役を考えての進行であるがこれが見事に成就する。2巡後にを暗刻にして単騎待ちに受ける。もちろんを切れば3面待ちになるがこの手はあくまで三暗刻にしたいという思いが伝わってくる。だがそこへドラドラでのテンパイを入れた前原がリーチとくる。
リーチ
更に勝又もを鳴いてここに参戦してくる。
ポン
だがこの仕掛けで引かされたのは。前原には比較的安全そうに見えたがこれを森山が捉え6,400を手にする。
ロン
ここまでかなり苦しい展開になっている藤崎も黙ってはいない。次局の東3局、5巡目に早くもテンパイ。
ドラ
ここはリーチかと思いきや、更なる上を目指してのヤミテンとした。そして10巡目にを持ってきて切りとする。待ちであるは既に山に残っていないため、逆に四暗刻への期待が高まる。だが終盤に形式テンパイを入れようと前原が仕掛けてが出て行ってしまう。打点こそ3,200だが、トップをひた走る前原からの直撃は3者にとっては良いアガリとなった。そして今度は勝又がアガリをものにする。
ツモ ドラ
タンヤオに振り替わればリーチもあるだろうが、ここはキッチリと前原の親番を流していく。これで東場が終わり、前原はアガリの無いままラス目。3者にとってはイメージ通りの展開だろう。
だがこの男は黙っていない。南1局1枚目のを鳴いて、その後もポンをしてテンパイを入れた。
ポン ポン ドラ
打点こそ無いがここは一旦アガリを取りに行く姿勢を見せようというところか。だがそうはさせまいと藤崎が3枚目のをチーしてテンパイ。
チー ドラ
面前で進めたいところだが、前原に持って行かれまいとスピードを合わせる。しかし11巡目に前原のアタリ牌であるを引かされ、しばらく考えた後スッとを抜いた。ここはさすがである。だが結果前原の1人テンパイとなりまずはラス目から抜け出す。そして南2局は勝又が仕掛けて牽制するも、前原が丁寧に手を進めテンパイを果たす。これに3者は対応しながらも手を進めるがまたしても前原の1人テンパイ。ここまでアガリは1度も無いが2局連続の1人テンパイだけで原点復帰を果たしてしまう。
そして南3局まずテンパイを入れたのは森山。
ドラ
打点も十分ここはヤミテンとした。そして同巡勝又もテンパイを入れる。
ツモ
を切ればとのシャンポン待ちだがを切ればイーペーコーとなる。ここはを切って後者を選択する。ここに次巡前原もテンパイを入れる。
ツモ
打ち出される牌は、シャンポン待ちなら勝又が捉えていた牌だ。それを見て勝又はツモ切りリーチとする!ここはなんとしてでも前原を沈めたいのと、を切られたことで危険を感じたのだろう。これに前原はドラを持ってくるが一歩も引かないと、当たり前のように切り飛ばす!そして終局間際に勝又がを持ってきて森山への放銃となった。
ロン
勝又にとってはアガリ逃しもあり、前原を追う一番手として手痛い放銃となってしまった。更に森山は畳み掛ける。次はなんとダブりー!ここもドラドラの1シャンテンとなった勝又がこれに捕まってしまう。
ダブルリーチ ロン ドラ
次局は森山が5,800のテンパイを入れるがここは前原がアガリをものにして連荘を終わらせた。オーラスには勝又がツモれば倍満のリーチをして意地を見せるが流局し、5回戦は終了した。
5回戦成績
森山茂和+25.9P 前原雄大+11.4P 藤崎智▲4.2P 勝又健志▲33.1P
5回戦終了時
前原雄大+72.8P 森山茂和+13.7P 勝又健志▲26.3P 藤崎智▲61.2P
6回戦(起家から勝又、藤崎、前原、森山)
まずは開局を前原が制す。
ツモ ドラ
三色こそならなかったがこれをアッサリとツモり精神的にもかなり嬉しいアガリである。東場は前原が攻撃の姿勢を崩さず、リードしたまま南入する。なんとか3者に意地を見せて欲しい!そう思っていると南2局3巡目に森山の手がこうなる。
ドラ
最低でも満貫は狙える大物手だ!出来れば前原からアガリたいところであろう。そしてすぐにが打たれる。当然ポンするのかと思いきやこれをスルー。重い!凄まじく重い!こうすることによってテンパイ後に前原からが打たれる可能性もあるし、ここまでのツモが効いているのでまだ鳴きを入れたくなかったのだろう。そして7巡目に持って来た暗刻のをそのままツモ切る。本手なだけにここは繊細な一打だ。だが先にテンパイを入れたのは前原。
その後を持ってきて待ちにするが森山も仕掛けを入れて追いつく。
チー ポン
すると今度は勝又も負けまいとドラを引いてリーチとした。
リーチ
その同巡藤崎も絶好のを引き追いかけリーチ!
リーチ
これで4者テンパイ!結果はすぐに出た。勝又がをツモリあげこの大勝負を制した。
その勝又が南3局でもドラを重ねて先制リーチと来た。
リーチ ドラ
ここはツモって前原に親被りをさせたいところではある。しかしここ森山でがを鳴いて追いつく。
ポン
そこに勝又がを掴んで7,700の放銃となった。そして迎えたオーラス、20,900点持ちの勝又が高目ツモなら跳満となるリーチをする。
ドラ
それを受けて親の森山の手牌がこうなる。
この状況でリーチと来るからには打点があることはわかる。オリる選択ももちろんあるがここは優勝するためにはなんとしてでも連荘したいところ。そして悩んだ末に選んだ牌はであった。高目放銃…の牌だが勝又はこれを見逃す。ここで森山からアガれば前原のトップで終わりほぼ優勝は決まってしまう為、当然のスルーである。追いかける立場となってしまってはこうする他ないのである。これで森山にチャンスが来たと思いきや、勝又が持って来た牌はであった!諦めない気持ちがこの跳満を呼び込んだに違いない。これでラスから一気にトップまで行き6回戦が終了した。
6回戦成績
勝又健志+10.9P 前原雄大+5.5P 森山茂和+3.3P 藤崎智▲80.9P
6回戦終了時
前原雄大+78.3P 森山茂和+17.0P 勝又健志▲15.4P 藤崎智▲80.9P
皆戦っている、前原を捕まえようと必死に戦っている…だが前原の点棒が全く減らない。
7回戦(起家から前原、藤崎、森山、勝又)
小場で迎えた東4局親の勝又が先制リーチを入れる。
リーチ ドラ
この親でなんとかポイントを大きく伸ばしたいところだが前原もそうはさせまいと仕掛けてテンパイを入れる。
ポン
次巡にはドラのを持ってくるが、待ちに自信があるのかここはをツモ切る。更に森山もこれに追いつく。
暗カン
待ちこそ悪いが跳満のテンパイである。だがここも前原がキッチリをツモリ2人のチャンス手を潰してしまった。
南2局、森山が一気にホンイツへと手を進め、7巡目にテンパイを入れる。
ドラ
南家なので出アガリでも跳満だ。ここは前原からの直撃が欲しいところだが、前原も欲しい牌である。その後を引き一通も付いて倍満に変化!すると前原もドラを暗刻にしてリーチ!
大勝負となった!!と、同時に森山が自身の捨て牌を整理し、前にある山を少し下げる。これは…!出るぞ!アトミックリーチ炸裂するぞ!期待に胸が膨らむ。そして森山が切る動作を期待していたら…持って来た牌はであった。
ツモ ドラ
見たかった…アトミックリーチが見たかった。しかし倍満で一気にこの半荘トップ目に立った。この現状でのトータルポイントは40ポイント強まで縮まる。そして持って来た親番で更なる加点と思っていると、前原がキッチリ1,000点で終わらせた。そしてオーラスも七対子をアガリ浮きのまま7回戦を終了した。
7回戦成績
森山茂和+24.4P 前原雄大+7.6P 藤崎智▲8.1P 勝又健志▲23.9P
7回戦終了時
前原雄大+85.9P 森山茂和+41.4P 勝又健志▲39.3P 藤崎智▲89.0P
ついに残り一戦となった。それにしても前原が安定している。だが森山とのポイント差は44.5Pとかなり面白くなってきた。勝又、藤崎はかなり厳しい条件での最終戦となる。
最終戦(起家から森山、勝又、藤崎、前原)
東1局まず前原が森山の親番をさらっと流し、迎えた東2局に藤崎からリーチが入る。
ドラ
この状況、親番でもない藤崎のリーチなので安いはずもない。だが前原もテンパイを入れると無筋の、更にはドラまでをも切り飛ばしていく。この姿勢が前原雄大という男なのである。ここは藤崎がツモるがこれで一局消化なら前原としても悪くない。東3局も前原は森山から2,000をアガリ原点復帰。そして迎えた東4局終盤に森山にテンパイが入る。
ツモ ドラ
残りツモ番はハイテイの1回のみ。もも2枚切れだがここはノータイムでを切って待ちを選択する。ツモれば倍満となり、前原が親被りとなるためポイントがかなり詰まるところだ!森山がハイテイ牌に手を伸ばす!!そして山から持って来た牌はなんと皮肉にもであった。苦悶の表情を浮かべながらツモ切る…開けられた手牌を見て前原はどう思っただろう。次局は藤崎が異様な捨て牌からリーチ。3者は慎重にオリるが藤崎がツモ。
リーチ ツモ ドラ
この手がもっと早くアガれていれば…藤崎ももどかしく思っているに違いない。これで前原が跳満を親被りとなり東場は終了。いよいよ南入し、森山の最後の親番を迎える。まずは連荘に成功して1本場、ついに森山渾身のリーチが入る。
ドラ
これをツモれば前原の背中がグッと近くなる。は1枚切れているが残り2枚は山にいる!前原も役無しではあるがテンパイを入れて無筋を切っていく。「会長、私も一歩も引きませんよ」そう声が聞こえてくるようであった。結局森山の手には訪れることなく流局した。2本場には勝又が国士無双をテンパイするがこれも流局し、森山もテンパイを取ることが出来ずにかなり厳しい状況となり、結果このまま危なげなく局が進み前原が第8期麻雀グランプリMAXの勝者へと輝いた。
最終戦成績
藤崎智+20.6P 前原雄大+13.9P 勝又健志▲14.9P 森山茂和▲19.6P
最終戦終了時
前原雄大+99.8P 森山茂和+21.8P 勝又健志▲54.2P 藤崎智▲68.4P
終わってみれば前原の圧勝となったがそれぞれに見せ場のある戦いだった。試合後に前原に勝因を聞いてみた。
「もちろん稽古はしてきたけど、なによりもアタリ牌を持って来ないんだよ」
呆れてこれ以上は聞く気になれなかった(笑)だが、実際今回の決勝ではアタリ牌を掴むことは少なく、他3者が前原のアタリ牌を掴まされ回ることを余儀なくされていた印象がある。
だがあれだけ前に出て戦っているからこそ、そのような展開になるようにも思える。無謀な戦いに思えても前原にとっては必然の戦いなのかもしれない。
鳳凰位を連覇し更にグランプリまで獲り、どこまで強くなるのだろうか。日本プロ麻雀連盟にはずっと一線を走り続けるレジェンドが数多くいる。これは本当に有り難いことだと思うし、尊敬に値する。だがいつかこの大きな壁を乗り越えなければならないし、今度は自分が大きな壁とならなければならない。この決勝を見て感じたことは人それぞれだろうが、若手プロには面白かったでは無く、この決勝の舞台に上がれないことを悔しく思ってもらいたいと思う。決勝での経験は決勝でしか味わえないのである。そしてその経験がまた己を強くする。いよいよ2018年度の戦いが続いていくが、その全てがこの舞台に繋がっているのである。
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