第37期鳳凰位決定戦初日観戦記 HIRO柴田
2021年02月18日
~2020年6月~
歴史に残る感染症が流行した今年、新型コロナウィルス(COVID-19)による影響で開催も危ぶまれてはいたが、夏の近づくこの時季に第37期鳳凰位戦は開幕された。
今期のA1リーグは10名での開催、13節で行い降級者1名という変則の対局を見事に勝ち上がり決勝戦へ進んだのは沢崎・佐々木・勝又の3名。
そして待ち構えるは第36期鳳凰位藤崎、この4名による鳳凰位決定戦が2021年1月16日に行われた。
今回は初日の各選手の内容と私からの視点で対局を振り返りたいと思う。
まずは予選通過1位の沢崎。その変幻自在な麻雀と、近年では「マムシ」の異名を連盟チャンネルで良く耳にする。今期はその粘り強さと多彩な技を何度も見せられたことだろう。
開局の沢崎3巡目に
この形から当然の打としテンパイとらずとする。
A1のメンバーで高打点と言えば、吉田、前田、昇級した近藤などのイメージはあるが、沢崎もその打点に対するこだわりもトップクラスである。
ここから沢崎→
を引き込み、三色も一気通貫も崩れ不服ではあるが感触を確かめにとばかりのリーチとする。
1回戦東1局
勝又
リーチ ツモ
しかしここは親の勝又から追っかけリーチ。そしてツモアガリの1,000オールとなり、沢崎の雲行きは決して晴れではないと思わされる。
きっかけは早いほうが良い。そう思わせるかの様に、下家佐々木のマンズホンイツに被せるように沢崎親で単騎の七対子リーチを打つ。
場にはが3枚、沢崎の河には
が置かれている。
特別良い待ちとは言えないが、佐々木の速度が遅く勝又の打点が低いと読みきって、相手が一歩下がったのを機に自分のペースを作るなど、様々なプランが沢崎には用意されているのだろう。
1回戦東2局
勝又
ポン
ロン
しかしここも勝又が沢崎のリーチに対して押し切り1,000点をアガリきる。
相手がオリてくれればいかに楽か・・しかし決定戦メンバーとなると、中々相手にペースを作らせてはくれない。皆が自分のペースを作りにいくからだ。
ここまで苦しい展開が続いた沢崎・藤崎の両名がここでぶつかる。
まずはこの藤崎の手牌。ドラは、ピンフの手替わりやドラ受けが残る
打ちからと思ったが、ここは絞りや安全度で打
とし
を残したかの様に見えた。
3回戦南3局
藤崎
打
しかし藤崎の構想はさらに上であった。6巡目にそのをトイツにすると、打
としホンイツの2シャンテンへ渡っていく。
藤崎
チー
ポン
この藤崎の1メンツ落とし、ドラ色のホンイツでは無いので2つ目の役牌は怖い所だが、沢崎はを勝負し見事に8,000のアガリをものにした。
3回戦南4局 1本場 ドラ
勝又
リーチ
沢崎
リーチ ツモ
オーラスも勝又の親のリーチに追いかけトップをものにした。
初日の数字は厳しいマイナスとはなってしまったがここ一番の沢崎の勝負強さを見た。
先に述べてしまうが、初日の主役は予選通過2位の佐々木。昨年A1への昇級を決め、真っ直ぐに鳳凰位という目標へ突き進むその姿は風格を感じさせられる。
開局は勝又の1,000オールスタートとなった、東1局1本場、佐々木の手牌はこうだった。
1回戦東1局1本場
佐々木
ドラ
親の勝又が→
の手出しと不穏な捨て牌、河にはピンズは無く勝又がホンイツ進行なら佐々木にとってキー牌となる
。
これを上家沢崎に打たれるが、見向きもせず牌山に手を伸ばす姿は堂々としたものだと感じた。
それに呼応するようにを引き入れ一旦はシャンポンテンパイに取るが、場に良さそうな
単騎に待ちを変えるとあっさりと1,600・3,200のツモアガリ。自身の仕上がりは万全といったところか。
1回戦東4局1本場
藤崎
ポン
ドラ
まず親の藤崎4巡目にをポンしてホンイツへ向かう。藤崎が1枚目の
をポンなら周囲の警戒度はかなりのものだろう。
藤崎
ポン
藤崎9巡目にこの12,000テンパイをいれるも、佐々木が11巡目に絶好のカンを引き入れリーチと行く。
佐々木
リーチ ツモ
この戦い方は用意していたものなのかもしれない。そして他の3者にはどう映ったのだろうか?それくらい強烈な佐々木のリーチをしてのツモアガリとなった。
4回戦南2局
藤崎
ポン
ドラ
藤崎が6巡目のをポンして早いテンパイを入れる。
佐々木
ツモ
好配牌を貰った親の佐々木。ツモも良好でドラ→
と引き入れ1回戦を思い出させるような、タンヤオドラ3のリーチを打ち見事な6,000オールのツモアガリ。
4回戦南4局1本場
勝又
リーチ
沢崎
ドラ
1人浮き状態でオーラスを迎えた佐々木。追いかけてくる親の勝又からリーチ。さらにその現物ので待ち構えている沢崎がいる。
佐々木
ツモ
に手を掛ける選択など佐々木には無かったのだろう、自らを充実期と語るように見事にアガリ、初日は大きくポイントをプラスして終る事となった。
続いては、最終節に西川との接戦を見事に制し、予選3位でこの決定戦の挑戦権を得た「IQ220」の異名は皆が納得する頭脳の持ち主である勝又。
その麻雀は現代の最先端と言われる麻雀の、さらに先を見た技術を駆使してくる打ち手という印象だ。
初日の勝又、その内容は好調とは言えないものの、佐々木の猛攻を受けつつ苦しい所もしっかり攻めてポイントを纏め上げる事に成功したといった感じか。
1回戦南1局
勝又
リーチ ロン
ドラ
この手を南場の親番でリーチし、沢崎もここは勝負と放ったが勝又のアガリ牌となり加点する。
1回戦南3局3本場
藤崎
リーチ ドラ
勝又
チー
ロン
佐々木の猛攻に対し藤崎が勝負リーチをかけるも、勝又は受けと攻めの打牌をしっかり選びつつ1,000のアガリ。
1回戦南4局
ポン
ポン
ドラ
1人浮きを狙う佐々木。わずか6巡のテンパイから勝負は長引き、ツモから暗カンを選択。リンシャン牌は
。よれて選んだ
は勝又のアガリとなった。
勝又
チー
加カン
ポン
ロン
ドラ
勝又はこのダブドラ1の5,200のアガリにより1回戦浮くと、
2回戦東1局1本場
勝又
ポン
ツモ
2回戦東4局1本場
勝又
ツモ
ドラ
2回戦南4局
勝又
リーチ ドラ
2回戦は400・700、500・1,000の2つのアガリと1度のテンパイ料で浮きとなる。
4回戦南4局
沢崎
チー
ドラ
28,400持ちの沢崎、自身の浮きを取りに仕掛けを入れる。リーチをしている勝又の捨て牌には、もありここは勝負であろう。
勝又
リーチ ロン
1~3回戦は浮きの2着の勝又。これを良しとみるか、不完全燃焼とみるかは人それぞれだと思うが、オーラスのこの手を沢崎から討ち取り2番手に付けて終える事となった。
最後は第36期鳳凰位の藤崎。その行雲流水の様な麻雀と静かなるアガリで「忍者」の異名を持つ。
しかしそのイメージとは反し、攻めに転じた時の熱い一打を放つその瞬間も見逃してはならない。
1回戦南1局1本場
沢崎
ポン
ドラ
最初に動いたのは南家の沢崎。6巡目にをポンして充分形の1シャンテンになる。
佐々木
打
それを見てか、それとも他3者の全体的な速度を感じたのか、佐々木がここからドラを先切りしスリムに手牌を構える。
勝又
リーチ
佐々木がドラを打つと、親の勝又がテンパイを入れリーチと来る。
藤崎
リーチ ロン
ドラ
沢崎・佐々木・勝又の主張に応えるかの様に藤崎もリーチと来る。
藤崎だからこそリーチは以外ではあったが、状況や場況はもちろん鳳凰位として迎え撃つというアプローチの様に見えるアガリとなった。
2回戦・3回戦と連続でラスとなり、ここまで▲45.1Pの藤崎、なんとしても4回戦はプラスしたい所にチャンスが訪れた。
4回戦東2局
藤崎
ポン
ドラ
この牌姿での打牌選択となる。ターツは足りているので、守備的に行くのならばだが藤崎の選択は
。
続いて勝又からドラが打たれ藤崎はその
をポンしたところで打
となる。
勝又
ポン
トイトイで仕掛けを入れたが手が伸びず、受けに回らされた勝又。藤崎の→
→
の切り出しに、メンツ構成やシャンポンの可能性などの読みがあったのだろう。
藤崎
ポン
ポン
ロン
勝又が手にしたのはとなり、これまで苦しかった藤崎にとって非常に大きい7,700のアガリとなった。
初日は藤崎にとって終始厳しい3着4着4着2着(沈み)ではあったが、残りまだ3日間、雨の日もあれば晴れの日もあるので巻き返しを期待したい。
初日の結果は以下となる。
1回戦
佐々木+31.4P 勝又+6.2P 藤崎▲10.0P 沢崎▲27.6P
2回戦
佐々木+9.8P 勝又+4.6P 沢崎▲4.5P 藤崎▲10.9P
3回戦
沢崎+21.1P 勝又+8.6P 佐々木▲5.5P 藤崎▲24.2P
4回戦
佐々木+30.3P 藤崎▲4.3P 勝又▲7.9P 沢崎▲18.1P
トータル
佐々木+66.0P 勝又+11.5P 沢崎▲29.1P 藤崎▲49.4P
上下100P差ができた初日、リードを広げようとする佐々木に対して他3者はどう戦うのかが見ものだ。
カテゴリ:プロリーグ(鳳凰戦)決勝観戦記