プロリーグ(鳳凰戦)決勝観戦記

第37期鳳凰位決定戦最終日観戦記 HIRO柴田

鳳凰位決定戦もいよいよ迎えた最終日。
ポイント状況は以下となっていた。

佐々木+50.7P 勝又▲10.3P 藤崎▲12.7P 沢崎▲28.7P

マイナスの3者にとっては4半荘で追いつけそうなポイント差だが、佐々木に追いつけるとしたら1人といったところか。
佐々木は初日から早くも首位に立ち、道中一度は勝又に抜かれるが、そのプレッシャーを感じさせない堂々とした戦いっぷりで3日間通して常に首位で終えている。
その佐々木が最終日はどのような戦い方をするか楽しみである。

 

13回戦 (起家から勝又・沢崎・藤崎・佐々木)

東1局

沢崎
一万二万三万六万六万五索五索五索六索七索六筒七筒八筒  リーチ  ドラ五索

まずは南家の沢崎ドラが暗刻のリーチ、沢崎の河には八索があるフリテンでもお構いなしといった所か。

勝又
五万五万六万七万七万二索二索  ポン四万 上向き四万 上向き四万 上向き  ポン中中中  ツモ五索

親の勝又、中ポン、そして沢崎から四万ポンとして持ってきた牌はドラの五索、沢崎にとっては痛恨ではあったが勝又もこれでギブアップとなり沢崎1人テンパイ。

東2局1本場

佐々木
五万六万七万二筒二筒三筒三筒六筒六筒七筒七筒八筒八筒  リーチ  ドラ東

西家の佐々木、緩める事無くこの手をリーチ。

沢崎
一万二万三万九万九万四索五索二筒五筒六筒七筒八筒東東

親の沢崎ドラ2枚持ちの勝負手。持ってきた二筒を真っ直ぐ打ち抜くと、佐々木への放銃となり5,200+1,300の加点で佐々木好スタート。

東3局

勝又
五万六万七万九万九万九万三筒五筒七筒七筒  ポン東東東  ドラ七万

西家の勝又が難なくこの2,600を沢崎からアガると

東4局

勝又
二万二万二万三万三万五索六索七索五筒五筒六筒六筒七筒  リーチ  ドラ一索

さらに加点すべくリーチを打つ。少しでも親の佐々木の持ち点を減らしたいところだ。

佐々木
九万九万二索三索四索七索八索九索一筒一筒 ポン東東東  ロン九万

しかし勝又がすぐに佐々木の待ちである九万を掴み佐々木のアガリ。佐々木これで持ち点を39,400まで伸ばし足元を固めていく。

東4局1本場

沢崎
一万二万三万一索三索四索四索四索一筒二筒三筒西西  ドラ八索

沢崎3巡目でこの三色のリーチを打つが、この巡目ですでに待ち牌は山に無く、他家からも出る雰囲気が無いのはこの決定戦不調の表れであろう。

勝又
一万一万二索三索七索八索九索九索二筒八筒東白白中

勝又は沢崎のリーチを受けた時点ではまだこの牌姿だったが、通っていない八筒を切ると一気に手が伸びる。

勝又
一索二索三索六索七索八索九索九索中中  ポン白白白  ロン九索

勝又がこの7,700を沢崎からアガる。沢崎はこの放銃で持ち点を14,900まで減らしてしまう。

南1局

沢崎
一万二万六万六万五筒五筒五筒東東東白白白  ロン三万  ドラ四索

南家の沢崎、四暗刻のチャンスではあったが、ここは巡目的に折り合いを付けて勝又からアガる。60符で7,700点のアガリ。

南2局

沢崎
二万三万四万五万五万七万五索六索七索二筒四筒六筒八筒八筒  ドラ六万

親の沢崎6巡目の選択が面白い。
場には五筒が1枚切れ、567の三色も見据えて二万五万切りになるのかと思いきや沢崎の選択は打六筒

沢崎
三万四万五万五万六万七万五索六索七索二筒四筒八筒八筒  ロン三筒

次巡すぐに六万を引き入れ打二万のリーチに行くと、見事にはまって藤崎から7,700をアガリ沢崎の連荘。

南2局1本場

佐々木
七索八索九索一筒二筒三筒三筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒  ロン九筒  ドラ七万

浮きまで浮上した沢崎の連荘であったが、佐々木以外の3者は手が伸びずこの3,900を勝又からアガリ、佐々木は43,600持ちで充分なリードを広げる。

南3局

藤崎
六万六万一索二索三索四索五索六索一筒二筒三筒六筒八筒  リーチ  ドラ五筒

勝又
二万三万一索二索三索一筒二筒三筒四筒五筒六筒北北  リーチ  ロン一万

先制リーチは西家の勝又。そして親の藤崎はこの決定戦が終わりに近づいているのを感じさせるようなリーチを選択。
勝又が藤崎から高めである一万でアガリ3人浮きでオーラスへ。

南4局

持ち点は、佐々木43,600、勝又33,800、沢崎30,300、藤崎12,300。

勝又
四万五万七万八万九万一索二索八索九索一筒八筒九筒北白  ドラ一万

ここから打五万、親である佐々木の連荘は望ましくはないが、残りの半荘数を考えるとここはトップ狙いという判断か。

沢崎
六万八万一索二索三索五索六筒東南南西白白中

西家の沢崎の配牌。勝又と同様に役牌2つを生かして大きく加点したいところ。第一打は八万を選択。

佐々木
三万三万七万七万三索四索五索二筒二筒三筒三筒五筒五筒

親の佐々木も4巡目にタンヤオ七対子の1シャンテンという手で、2巡後に切った東で沢崎の手が開かれた。

 

100

 

沢崎
一索二索三索五索五索東東南南南  ポン白白白  ロン東

一時は厳しい状況に置かれていた沢崎、この13回戦の乱打戦を、最後は佐々木から満貫の直撃を取って見事にトップとなった。

13回戦成績
沢崎+16.3P 佐々木+8.6P 勝又+4.8P 藤崎▲29.7P

13回戦終了時成績
佐々木+59.3P 勝又▲5.5P 沢崎▲12.4P 藤崎▲42.4P

 

 

14回戦 (起家から、佐々木・勝又・沢崎・藤崎)

東1局

沢崎
三万三万四万四万五万六万四索六索七索八索四筒六筒七筒八筒  ドラ三万

西家沢崎8巡目の手牌。自身の河には九索があるので打牌選択は四索四万あたりか?
沢崎は四万を選択するとすぐに三筒を引き入れリーチを打つ。

 

100

 

あっさりとこの3,000・6,000をツモアガリ、親の佐々木との差を縮める。佐々木にとっては残す3回戦を戦うにあたって試練となる立ち上がりか。

東2局

佐々木
六万六万七万四索五索六索六索八索六筒七筒八筒九筒中中  ドラ三万

ここから打六万とし中は鳴かないという意思を示す、この大舞台、このポイント状況で自らの勝ち方を通そうという姿はさすがだ。

佐々木
六万七万八万三索四索五索六索八索六筒七筒八筒中中  リーチ

八万を引き入れ迷わずカンチャン選択リーチと行く。七索は山に3枚あり今にもツモりそうだ。

勝又
六万七万八万九万九万三索四索五索七索八索七筒八筒九筒  ロン六索

そこへ追いついた勝又が二索を勝負し、藤崎からこの1,500をアガる。
藤崎の放銃ではあったが、佐々木へのマークが最大限である以上、こうなってしまうといったところか。

東2局1本場

沢崎
二万三万七万八万九万四索五索六索四筒五筒六筒九筒九筒  リーチ  ツモ一万  ドラ七万

東3局

沢崎
六万六万六万五索五索六索七索  ポン一索 上向き一索 上向き一索 上向き  ポン東東東  ドラ四万

東4局

沢崎
一万一万一万二万三万四万五万五万四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ九筒  ドラ八筒

追いかける側の3人にとって、一気に名乗りを上げたのは沢崎。
開局の跳満ツモアガリからさらに加点し、東場で一気に5万点オーバーとなる。

南2局

藤崎
四万五万六万七万五索六索七索三筒四筒五筒六筒七筒白白  ドラ二万

9巡目にテンパイが入るがフリテンを嫌い打三筒

佐々木
一万二万八索八索一筒一筒一筒北北北  ポン三筒 上向き三筒 上向き三筒 上向き

北家佐々木がその三筒をポンとしペン三万のテンパイを入れると、藤崎も六万を引き不本意ではあるが五万八万のリーチ。

勝又
二万二万二万五万六万七万五索七索二筒三筒四筒六筒六筒  ツモ五万

タンヤオドラ3で息を潜めていた親の勝又のツモは苦しくも五万。覚悟したかのように打五万とし藤崎5,200のアガリとなった。

南3局

佐々木
二万四万三索四索五索六索六索七索八索九索五筒東南  ツモ八索  ドラ七索

佐々木、第一ツモの八索を見ると一色手も見据え打二万とした。

 

100

 

我慢が続いた佐々木ではあったが、この12,000を勝又からアガリ一気に浮きへまわる。

南4局

藤崎
一万二万七万八万九万一索一索七索八索九索  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  ロン三万  ドラ一筒

佐々木とのポイント差は100以上、厳しい差ではあるが、藤崎はこの11,600を沢崎からアガリ浮きとなる。
沢崎は一度止めた三万だっただけに意外ではあったが、アガった藤崎の手順が優秀だったと言うべきか。

南4局1本場

佐々木
四万五万六万七万七万一筒三筒四筒五筒六筒  ポン南南南  ロン二筒  ドラ七万

何が起きてもおかしくないそんな半荘、トップは佐々木。この7,700を沢崎からのアガリとなった。
佐々木にとっては僥倖のトップ、残り2半荘は体力と集中力の勝負か。

14回戦成績
佐々木+16.0P 藤崎+10.3P 沢崎+3.1P 勝又▲29.4P

14回戦終了時成績
佐々木+75.3P 沢崎▲9.3P 藤崎▲32.1P 勝又▲34.9P

 

 

15回戦(起家から、佐々木・沢崎・勝又・藤崎)

東2局1本場

勝又
二万三万四万六万六万七万七万八万四索四索四筒五筒六筒  リーチ  ロン五万  ドラ四筒

先制したのは勝又。7,700を沢崎からアガる。

東3局

藤崎
九万九万一索二索三索四索五索六索一筒二筒三筒四筒五筒  リーチ  ツモ六筒  ドラ六筒

続いて藤崎がリーチを打ち、ドラ六筒をツモり1,300・2,600のアガリ。決定戦が終わりに近づいているのを感じる。

南1局

佐々木
三万三万四万四万八万八万二索二索六筒六筒北北白  リーチ  ツモ白  ドラ二筒

3者の体力までもを奪い取るような佐々木の3,200オール。

南1局1本場

藤崎
五万五万七万八万二索三索四索四筒五筒六筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ九万  ドラ四索

南3局

沢崎
一万一万二万三万四万六万七万八万三索四索六筒七筒八筒  リーチ  ツモ五索  ドラ四索

藤崎・沢崎がアガるも、静かに淡々と局が進行していく。

南4局4本場

沢崎
六万七万八万一索二索三索三索四索五索三筒四筒六筒六筒  リーチ  ツモ五筒  ドラ四索

沢崎・藤崎・勝又の意地であろう、佐々木渾身の3,200オールも、この半荘放銃無しで沈みの3着に落とされる。

15回戦成績
藤崎+28.4P 沢崎▲3.9P 佐々木▲7.0P 勝又▲17.5P

15回戦終了時成績
佐々木+68.3P 藤崎▲3.7P 沢崎▲13.2P 勝又▲52.4P

 

 

最終16戦(起家から、藤崎・沢崎・勝又・佐々木)

南4局10本場
静かに佐々木の牌は伏せられた。優勝は佐々木寿人。

ウイニングランを見届けようとたくさんの視聴者が見守っていたはずだ、しかしここへ辿り着くまでの道のりはウイニングランなどと生易しいものものではなく、苦難の道であったのだ。

沢崎+79.2P
佐々木+55.2P
藤崎▲52.8P
勝又▲83.6P

このポイントは最終戦のオーラスを迎えたポイント状況である。つい先程までマイナスしていた沢崎が、現状では+90Pの加点をしている。その経過を辿ってみたい。

南2局、積み場は無い。佐々木の持ち点は39,400持ちのトップ目。いたって無風のはず・・だった。

佐々木
六万七万九万四索五索六索南南中中  ポン九筒 上向き九筒 上向き九筒 上向き  ドラ二筒

西家佐々木、3巡目に九筒をポンとし打九万南中も役牌だが、この仕掛けを入れられたら勝又・藤崎からは南中も期待できないので、ここからは自力勝負、親は沢崎だ。

沢崎
一万二万六万六万六万一索二索三索七索八索九索二筒二筒  リーチ  ツモ三万

沢崎は三色は崩れたものの、ドラ二筒を重ねての11巡目にリーチを打つ。三万は場に3枚出ているので佐々木への押さえつけも込みであろうか、
しかし、佐々木もこのポイント差なら十分勝負、いやポイント差がなくても佐々木は勝負構えか。
決着は沢崎がハイテイでの4,000オールツモ。

南2局1本場

沢崎
二万四万六万六万三索四索五索六索白白  チー六筒 左向き五筒 上向き七筒 上向き  ドラ二万

5巡目に六筒をチーすると、すぐに三万を引き打白とタンヤオへ渡る。

沢崎
二万三万四万六万六万三索四索五索四筒五筒  チー六筒 左向き五筒 上向き七筒 上向き  ツモ六筒

1,000オールの1本場のツモアガリ。ポイント差を見てもこの六筒にチーの声が出る人は中々いないように見える。

南2局2本場

沢崎
一索二索三索四索五索五索六索七索中中  チー九索 左向き七索 上向き八索 上向き  ドラ三索

2本場は、沢崎1人テンパイでの流局。佐々木に軽い手が入らない。

南2局3本場

 

100

 

一閃である。全4日間開催の決定戦、一度もプラス域に回らなかった沢崎が、ここへ来て浮上どころか佐々木をかわしての大逆転。
麻雀とは恐ろしくもあるなと思える1局であった。自分が佐々木の立場であったら、現状を把握しきれないくらい心が揺れそうだ。

南2局4本場

沢崎
四万五万六万五索六索七索一筒一筒三筒四筒六筒七筒八筒  リーチ

4本場、沢崎さらに加点を狙うがここは流局。

南2局5本場ドラ中

沢崎
七索八索九索二筒三筒四筒六筒七筒八筒北北中中  ツモ北

沢崎ここは2,600オールのツモアガリでさらに加点。リーチの選択もあったかもしれないが、供託が増えて佐々木の浮上するチャンスを減らすのが狙いだったのかもしれない。

南2局6本場

佐々木
七万七索八索九索四筒五筒六筒七筒八筒九筒  チー六索 左向き四索 上向き五索 上向き  ドラ九索

なんとか佐々木1人テンパイで沢崎の親を落とす事に成功。

南3局7本場

佐々木
一万一万二万三万三万六索六索六索八索八索五筒六筒七筒  ドラ八索

勝又・佐々木の2人テンパイ

南3局8本場

佐々木
三万四万五万六万七万七万七万七万八万五索六索八筒八筒  リーチ  ドラ七索

沢崎・佐々木のテンパイ。勝又ノーテンによりオーラスへ。佐々木は3連続のテンパイ料で少しずつ加点していく。

南4局9本場

現在のポイントは以下のとおり。
沢崎+79.2P 佐々木+55.2P 藤崎▲52.8P 勝又▲83.6P
佐々木の開始前のポイントは+68.3P。24ポイント差ではあるが浮けばほぼ並ぶ差だ。

佐々木
一万五万一索二索三索四索五索六索七索二筒三筒七筒西白  ドラ三索

佐々木の第一打は白

佐々木
一万五万八万一索二索二索三索四索五索六索七索二筒三筒七筒

字牌を処理してもまだ不十分形だ。打一万

佐々木
五万八万一索二索二索三索三索四索五索六索七索二筒三筒七筒

見ている人も声がでたであろう三索ツモ。打八万

佐々木
五万一索二索二索三索三索四索五索六索七索二筒三筒五筒七筒

雀頭が欲しいこの形。ピンズは場に安いが二筒五筒は2枚切れ。佐々木少し間を置いて打五万

佐々木
一索二索二索三索三索四索五索六索七索八索二筒三筒五筒七筒

ツモ八索でソーズの形を生かすか、それとも場に安いピンズと心中か、佐々木の選択は打五筒

佐々木
一索二索二索二索三索三索四索五索六索七索八索二筒三筒  リーチ

ツモ二索でリーチを宣言。後は信じるのみ。

 

100

 

4,000は4,900オール。僅かながらではあるが佐々木の再逆転で決着となった。

なんという劇的な展開だったのだろうか。佐々木は最後の試練を乗り越えて見事にツモアガったのだ。
ここへ辿り着くまで集中力を良く切らさずに打つ精神力も当然ながら、初日からの戦う姿勢は本当に勝者として新たな鳳凰位として素晴らしい姿であった。
第37期鳳凰位は佐々木寿人。

最終16回戦成績
沢崎+83.5P 佐々木+7.6P 勝又▲37.1P 藤崎▲54.0P

最終16回戦終了時成績
佐々木+75.9P 沢崎70.3P 藤崎▲57.7P 勝又▲89.5P

 

100