プロリーグ(鳳凰戦)レポート

第29期プロリーグ A2 第5節レポート

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昨日はポイントに関係無く純粋に麻雀が楽しかったです。
自分より格上の人達に囲まれているせいか、中々手が入らず苦しい局面が多い中、現状の自分の麻雀は打ち切れたと思います。
自分の麻雀を打ち切って負けた事に関して、麻雀はもちろん運もありますが、自分に運を持ってくるのも雀力であり、
やっていて、運だけでは片付けられない壁を3人の対戦者には感じました。

本当にA2まで来られて良かったと思います。
なぜなら、倒しがいがのある人達がいっぱいいるから。
以前提出したA2とはという問いに「通過点」と簡単に書きましたが、最近は「通過する過程を大事にしたい」と思うようになりました。
自分がこれから活躍できるかは努力次第だと思いますが、いつかアマチュアの皆さんに見ていただける機会がきた時に、
吉田の麻雀は“カッコイイ”と言ってもらえるよう自分が今目指している面前手役型にもっと磨きを懸けていきたいと思います。

吉田直

プロリーグの翌日、吉田から送られてきたメールである。
人は人によってしか変容、進化しないというのが私の考えである。
吉田はAリーグに昇級して半年間の間に成長したのだろう。
リーグ戦に対する捉え方が変わってきた。

だからこそ、私にメールを寄越したのだろう。以前の吉田ならば考えられないことである。
吉田は麻雀をゲームとは捉えていない、勝負とも捉えていない。それは、吉田の記した文を眺めれば解ることである。
負けても楽しかったと記しているからである。勝負に拘るならばこうは記せない。

おそらく吉田は、麻雀を人生、もしくは生きるということと近い部分で捉えているように思える。
そして、それは的外れな私の見方ではないだろう。
全10節終了後の吉田は、また違う捉え方をしているように思えてならない。
それだけ吉田は、日々変容、成長している気がするからである。

2回戦東2局、親番の板川からリーチが入る。

五万六万四索五索五索六索六索七索二筒二筒七筒八筒九筒 リーチ ドラ五索

それを受けて西家の吉田。

一万三万五万六万八万八万南南南西 ポン北北北 ツモ八筒

私は、南家の仁平と吉田の間で観戦していた。
__とりあえず現物の打西だナ・・それでも何処まで吉田は押せるのかな。
そう思っていたら、腕も折れよとばかりにツモ切りの八筒。たかが2,600点ではあるが、ここが勝負処と吉田は読んだのだろう。
両脇の仁平、勝又を降ろすためである。場面を読む力が優れているこの2人ならば退くだろうと。
確かに勝又は退いたように見えた。そして仁平も安全な道を選んだ。

結果は、吉田が二万を引き込みそっと現物の西を手から放ちオナテンに持ち込み引きアガる。
なかなか出来そうで出来ない手筋ではある。
肚を括り損なったのが仁平。

一万一万二万二万四万四万七万七万九万九万白白中

このカタチのアガリがあった。いや、仁平の能力ならば、このアガリが存在しなければならない。
鳳凰位決定戦に残っていたころの仁平ならば、間違いなくアガリ切っていた。
何が仁平を変えたか・・
それは安全そうな道を選ぶようになったからである。

確かに昔から仁平は受けが強かった。
ただ、昔の仁平にはここ一番という時の狂気にも似た打牌があり、他者のアガリを受け潰していた。
__自分自身の態勢の読みに殉ずる狂気にも似た覚悟があった。

仁平は今期十段戦の直前に40歳を迎える。
知識も増え、それだけ大人になったということなのだろうが、安全で確実に勝てる勝負など存在しない。
それを一番知っているのは仁平自身である。

私のA2レポートの駄文に毎回反省の長文のメールを仁平は出してくる。
良くそこまで局面を覚えているなと感心するほど、巡目、相手の手出し、ツモ切りまで事細かに記してくる。
プライベートで食事はおろか、お茶さえしたことはない。
それでも長文のメールを送り続けるのは、仁平の麻雀に対峙する姿勢である。

1回戦東1局、テンパイ1番乗りは、親である板川の6巡目。

一万二万三万三万四万五万六万六万三索五索三筒四筒五筒 ドラ五筒

10巡目にはノータイムで二索もツモ切る。12巡目に仁平が追いつく。

四索五索六索七索八索三筒四筒五筒六筒七筒七筒七筒八筒 リーチ

その仁平のリーチを確認して、板川がツモ切り追いかけリーチを打つ。
結果は、板川から仁平への六索放銃である。

アガリがあったということは簡単に記せばツイていたということである。
そのツキを活かすのが、技術であるはずである。ところが仁平は、そのアガリを今日は活かせなかった。

「多分、仁平ははこの半荘沈むよ」

東3局が終わった頃、私は友人にそう洩らした。
それは、そうならないようにという願いもあったのだが・・
そして仁平はその半荘沈んだ。

「昨日のリーグ戦の内容については、1回戦の東1局にその日の全てがあったと思います。
あれだけ調子の悪い板川さんを、復活させてしまった原因は僕にあると思います。
僕も態勢で打つ麻雀なので、良い時はどこまでも行くのがスタイルなのですが・・・。
今日の対局は、十段戦の決勝を戦うにあたって、もの凄く良い経験になったと思います。
瀬戸熊さんは凄く強いですけど、僕みたいなスタイルの麻雀でもタイトルを取れることを証明したいと思います」

仁平宣明

仁平は解っているのである。
確かに7,700点プラスリーチ棒の収入は大きい。
しかし、その収入を活かすためには戦わねばならないのである。

この日一番ツイていた、勝ち運があったのは仁平である。逆に、勝ち運がなかったのは板川であり、吉田である。
勝又はプロリーグの2日ほど前、「今回はマイナス20Pは覚悟しています」そう言っていた。
板川にしても吉田にしても、その晩機嫌が良かったのは、状態に比べマイナスが少なかったこともあるように思える。

3回戦オーラス、親番・吉田。
テンパイ一番乗りは吉田である。ただ、難解な手順を踏んだのはいかにも吉田らしい。

「麻雀の内容でひとつだけ気になっているのは、ドラが六筒の親番で二索とシャンポン待ちでテンパイをしていて、
七筒を持ってきた時に、ツモ切りヤミテンという一番中途半端な選択をしてしまったということです。
態勢がいい時は牌が迷う様に来ないと思いますが、半ヅキぐらいならシャンポン待ちでヤミテンから七筒を持ってきて、
ドラの六筒を切ってリーチをすることが多いと思います。
しかしあのオーラスは、自分はあまり態勢がいいと思っていなかったので、シャンポン待ちでテンパイした瞬間に即リーだったなと思いました。
また、カン三索のアガリ逃しについては、自分ではしょうがないかなと思います。

二万三万四万六万七万八万二索二索四索五索六索七索六筒 ツモ一万 ドラ六筒

五索八索のテンパイをしましたが、五索が1枚八索が3枚切れていたので、テンパイとらずの打六索とした後、上記の形。
自分は一通とドラのくっつきを見てしまうので、一万をツモ切ることは考えられないからです。」
本人が語っているように吉田の最終形。

二万三万四万六万七万八万二索二索五索六索七索六筒六筒

連綿とツモ切りを続ける吉田。そこに点数のない板川がリーチを打つ。

二万三万四万四万五万六万三筒四筒五筒五筒七筒八筒八筒 リーチ

そして仁平が音もなく無筋の一を卓上に並べる。
私の観戦位置からは、仁平の手牌は見えないが、間違いなくテンパイを感じたのは私だけではなく対局者全員だったと思う。

三万四万五万六万七万八万三索四索南南発発発

そして勝又にもテンパイが入る。

六万七万八万二索三索四索五索六索七索三筒三筒五筒六筒

ちなみに、勝又はドラである六筒五筒が来てのテンパイである。
__誰がアガリを見るのだろうか。
そう見ていると、板川が卓上に最後の六筒を躍らせた。
牌譜がないのが残念で仕方ないが・・・。

今局だけの結果だけとりあげるならば、この板川のツモアガリは間違いなく板川のちからと私は見る。
ただ、ここまでに至る過程はやはり仁平本人が語っているように、復活させた仁平に問題があったように思える。
酷な言い様かもしれないが・・・。

「ただいつも思うのは、こういう結果がでた時、数年後の自分はどう思っているんだろうと考えます。」

吉田の最後の言葉である。
好い言葉だな___私はそう思う。

リーグ戦の始まる数日前、とある小学校の教師が言っていた。
プロとは、常に自己否定しながらも進化を続けようとする人。
常に今を変えていく。進化するために変えていく。
そういった取り組みを苦に思わない。そういった人だと思いますね。

____どの世界も同じことなんだろう。

第6節組み合わせ

A卓  古川 孝次 vs 勝又 健志 vs 山田 浩之 vs 中村 毅
B卓  猿川 真寿 vs 板川 和俊 vs 山井 弘 vs 仁平 宣明
C卓  四柳 弘樹 vs 吉田 直 vs 二階堂 亜樹 vs 遠藤 啓太
D卓  黒沢 咲 vs 金子 貴行 vs 白鳥 翔 vs 老月 貴紀