プロリーグ(鳳凰戦)レポート

第31期A2リーグ第7節レポート 佐々木 寿人

第7節は奇しくも上位3名がぶつかる対局となった。

この日の展開次第では、今後の勢力図が大きく変わってくる可能性もあり、卓内のみならず、卓外の12名にとっても重要な意味を持つ1節だったのではないだろうか。

だが、当の私は至って平静だった。
皆が皆勝ちに来ることは目に見えているのだ。ならば私のテーマは、丁寧に1節をこなすことである。
もちろん今節をプラスで終えることに越したことはないが、理想ばかりを追いかけていたわけではなかったのである。

勝負事にたらればは禁物だとよく言われる。
しかし、今回はあえてそれのみを中心に対局を振り返ってみたい。

まずは1回戦の東2局。
親の内川が2フーロしてのテンパイ。

二索三索四索六索六索二筒四筒  ポン東東東  チー三万 左向き四万 上向き五万 上向き  ドラ一筒

この五万チーで既にテンパイしていた紺野にドラの一筒が流れる。

六万七万八万五索五索一筒一筒二筒三筒三筒七筒八筒九筒  ツモ一筒

ピンズの下は親の内川にいかにも切り辛いが、四柳の河に一筒が打たれていることと、他のファン牌が全て出切っていることから、ドラをツモ切らない限りは、打っても2,900が濃厚である。

私なら間違いなく三筒を打って捕まっていたところだが、紺野は打二筒のリーチを選択。
ただ、これによって真っ先に仕掛けていた私にアガリが生まれる。

六万七万二索二索二筒三筒四筒  ポン二万 上向き二万 上向き二万 上向き  チー四索 左向き五索 上向き六索 上向き  ロン八万

点数こそ安いが、親の仕掛けとリーチを蹴ってのアガリである。
もし紺野が打三筒としていれば親の連荘となり、全く別のゲームになっていたことだけは間違いない。

続けてが3回戦の東4局である。
相変わらずの安仕掛けで南家の私がまずテンパイ。

一万一万二万三万四万六万八万  ポン中中中  ポン一索 上向き一索 上向き一索 上向き  ドラ三筒

同巡、西家・四柳も追いつく。

二万三万四万八万八万八万四索四索四索六筒六筒七筒七筒  

だが、ここに目下2連勝中の親・紺野からリーチ。

三万四万七万七万三索四索五索三筒四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ

五万なら出アガリでも跳満という大物手だ。
そんなこととは露知らず、私は一発目に持ってきた無スジの六索を平然とツモ切る。
もちろんこれには訳がある。

21,200とはいえ、ここまで+39.4Pの紺野がラス目に落ち込んでいたのだ。
となれば私がここでオリて、親の1人旅にさせる訳にはいかない(ハナからオリる気などないが)。
ここは1つの勝負所なのである。

するとそこに、北家の内川も参戦。
テンパイ気配のある四柳の二筒をチーして、こちらもテンパイだ。

五万五万五万三索三索七索七索七索四筒五筒  チー二筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き
 
やはり3者ともが紺野の親を潰すことに共通の意識を持っている。
しかし次巡、内川が七筒を持ってきて長考に入る。
これは四柳のロン牌だが、結果的には満貫ツモを食い下げて打てばわずか1,300の支出だ。
 (おい、止めんのかい!みんなでこの親落とすんとちゃうかったんかい!)
私の心の声である。だが内川に私の声が届くことはなかった。

確かに紺野のリーチにピンズの中目は切り辛い。
はい、止めー!という音が聞こえるかのような打三索である。

そして今度は四柳だ。
私のアガリ牌である七万を持ってきて少考。
(止めんなー!こっちだってこんな蚊とんぼみたいな手じゃあ、いつ飛ばされてしまうかわからんよ。)

幸いにも今度はその声が届いた。
四柳がそのまま七万をツモ切り、どうにか怖い親が落ちた。
ここで2度目の“れば”である。

もし、内川のみならず、四柳にまでオリを選択されていれば…
もうどうなったかはわからない。いや、考えるだけで恐ろしい。
つくづく麻雀とは4人の絡みが織り成す戦いである。

そして最後は4回戦の南2局、私の親番である。
8巡目、南家の四柳が以下の捨て牌でリーチ。

七索 上向き北中八筒 上向き中五筒 上向き四索 上向き五万 左向き  ドラ六筒

そこに向かって北家の内川が追っかける。

一筒 上向き中白八万 上向き八索 上向き二万 上向き三筒 上向き三索 上向き九筒 上向き九筒 左向き

これを受けての私の手がこうだ。

七万八万八万四索五索七索八索八索二筒三筒四筒東東  ツモ一索

2人の共通安全牌はない。
しかし、高いのがどちらかだけは誰の目からも明らかだった。

あの時の内川の腕の振り下ろし方とリーチ音は異常だった。
仕方なく、半分オリ気味に私が東に手をかけると、四柳の手が開いた。

六万六万七万七万九索九索東南南西西白白  リーチ  ロン東  

その局の内川の手はこうだった。

四万五万三索四索五索六筒六筒六筒六筒七筒七筒八筒八筒

ここで最後の“れば”である。
もし内川のリーチ音があんなに大きくなければ… 
私の選択もまた違ったものになっていたかもしれない。  

結局この日は2.9Pのマイナスで乗り切った。
しかし映像を見れば見るほどこう思う。

勝負の世界というのは意外にも、たらればの積み重ねから成り立っているのかもしれないと。