プロリーグ(鳳凰戦)レポート

第32期A1リーグ第5節レポート 荒 正義

1回戦は伊藤優孝の親で始まった(順に荒・望月・仁平)。
伊藤と私は、この道に入って40年の付き合いがあるから気心が知れている。

私「あと10年は頑張らないと―」
伊藤「オレは、そんなに無理だよ…」
私「じゃあ、7年だ―」

これは、対局前の2人だけの会話である。伊藤は私より3才上だった。冗談とも本音とも取れる言葉に、2人は笑った。
そして、東1局に伊藤がいきなりこれである。

一万一万二万三万四万八万八万五索六索七索七筒八筒九筒  リーチ  ツモ八万  ドラ八万

9巡目の駄作リーチながら、一発ツモの3,900点オールだ。
一発役はないが、こんなシャンポンをツモるなんて高校生の引きの強さだ。

(なんの、それなら10年はいける…)
と私は、伊藤の横顔をそっと見ていた。

私は4節まで130P近い沈みで、12人中11位の降級ポジションにいる。でも大丈夫、落ちる気などまるでなかった。
親を迎えた。
(そろそろ出かけるか―)
と思ったら、途端に仁平のアガリが飛び出した。

五万六万七万二索三索五索五索五索六索七索三筒四筒五筒  ツモ四索  ドラ五索

見た目はタンピンツモだが、ドラが五索なのである。これで跳満の親のかぶりとなり、6,000点をもぎ取られた。どうも雲行きが怪しいのだ。

東3局は望月の親番で、彼から10巡目にリーチがかかる。そして一発目のツモを引き寄せた。それが高めの一索である。

一万二万三万七万八万九万二索三索一筒二筒三筒東東  リーチ  ツモ一索

リーチツモ・チャンタ三色で親の跳満の6,000点オールだ。

(そういう手は四索をツモリなさい…)と思ったが、もう後の祭りである。
私はこの日に備え、禁酒。さらに有酸素運動をし、半荘を同じルールで40回こなしていた。

相手は前原雄大・佐々木寿人・滝沢和典・中村毅とそうそうたるメンバーである。これが鍛錬である。
なのに、これでは雨も降っていないのにいきなり雷にあたったようなものである。
これで覚悟は決まった。この半荘は全ツッパではない。先手を取られたときは、全オリである。
この半荘を捨て、頭を低くし失点を最小限に食い止めるのだ。

この「運」と「流れ」なら、今日1日で軽く▲50Pを超えるだろう。それでは最下位に転落し、降級の一番手候補だ。
ここで焦って足掻けば、もっと沈む可能性がある。それだけは、何としても避けなければならないのだ。
だから、この半荘は全オリである。そしてこの日の私の成績は、次の通り。

1回戦…▲31.1P
2回戦…▲5.6P
3回戦…+5.6P
4回戦…+28.8P
(合計▲2.9P)

私は、出だしが不調だったわりにはよく持ちこたえた。
あの覚悟が、功を奏したのかもしれない。
そして4戦目にトップが拾えたのも大きかった。

そしてこの日、4人の成績はこうだった。
伊藤+8.1P
荒▲2.9P
望月+42.9P
仁平▲48.1P

望月が大きく浮き、それを仁平がかぶった格好である。
残念ながら律儀な仁平は、これでマイナス90Pである。陥落水域のともたけと私の輪に加わった。

もちろん、まだ半分の道のりである。これからどうなるかは誰にもわからない。
しかし、人生も麻雀も歩む仲間は多い方が心強いのだ。私たちはいつも歓迎である。
来る者は拒まず、去る者は…引き止めるのだ!