プロリーグ(鳳凰戦)レポート

第32期A1リーグ第9節レポート 望月 雅継

数年間の大不調を経て、数年ぶりに鳳凰位決定戦進出が狙えるかもしれないポジションで戦えることとなった第9節。
狙えるというのは少し言い過ぎで、今節の結果如何では鳳凰位決定戦を狙う権利が発生するといった方が適切な表現なのかもしれない。

それくらい厳しい状況に置かれているという認識でこの日を迎えたのは確かだ。

ここまでのポイント状況は、

古川+128.0P
前原+107.8P
望月+29.0P
伊藤▲33.5P

開始前の決定戦ボーダーが前原の+107.8P。
先に対局を終えている藤崎が、今節ポイントを大きく伸ばして+91.2Pで最終節を迎える為、上位卓で最終節を戦うためには、古川、前原を沈めた上で、藤崎とのポイント差、62.2P差を捲らなければならないという厳しい勝負になるのだ。

しかし、こんな考え方もある。
他力にはなってしまうが、今節で上位卓に入らなくても、最終節までの残り半荘8回で上位3名に入ることを意識してポイントを伸ばすことに主眼を置くという考え方だ。
どちらにしても、残り2節半荘8回で100Pを叩き出さなければならないことは間違いなく、それ相当の覚悟でこの日の対局に臨んだことは間違いない。

A1リーグの組み合わせは開幕時に発表される。
開幕時にこのような状況下となることは想像出来なかったが、どちらにしても厳しい戦いになることは容易に想定出来た。

『鳳凰位決定戦に進出出来なければ、4位も10位も同じ』

A1リーグに昇級した時から、そう思ってリーグ戦に臨んできた私。
この組み合わせが発表された時から、この第9節で決定戦に進出できる可能性のある位置で戦うことを第一目標として、今期のリーグ戦を戦ってきたつもりだ。

ここまでの成績は、それが叶うギリギリのポイントとポジション。
1年間のリーグ戦でのパフォーマンスとアクションは、全て今節の為の布石だと考えて戦ってきたし、3者の戦いを全てチェックし、この戦いだけに備えた準備をしてきたつもりだった。

1回戦、僥倖な部分も多かったがそんな想いが凝縮された内容と結果となった。

苦しい展開で局は進行していったが、東4局、待望の初アガリは前原からの2,000。ピンフドラ1のヤミテン。
続いて迎えた南1局の親番でも、古川の先制リーチを受けての古川からの1,500。今回はピンフのヤミテン。

そして1つ目の岐路が訪れた。

南1局1本場、古川から8巡目リーチが放たれる。

二万三万四万六万七万八万三索四索五索五筒六筒白白  リーチ  ドラ白

このリーチを受けての9巡目の私。

一万一万二万三万一筒一筒二筒二筒三筒七筒八筒北北  ツモ九筒  打一万  ドラ白

ここもヤミテンに構える。
A1リーグに昇級したばかりの私なら、ここは無邪気にリーチを宣言していたかもしれない。
しかしこのヤミテンにはいくつもの理由があった。

1つ目はドラの所在。
トータルでも数字を持っている古川がリーチを打つくらいであるから、古川にドラが入っている可能性が極めて高いと考えるのが普通の思考。
ドラが入っていない場合は、それ以上にアガリに自信がある形であると考えられるだろう。役アリの好形ならヤミテンを選択するはずだからだ。

さらに重要なのは、この古川のリーチを受けての前原と伊藤の動向。
特に危険なのは伊藤の方で、リーチを受ける前にソウズのリャンメンターツを払っているからだ。

伊藤と前原の手を見極めた上で、自分の動向を決める。
この構え方が本日のテーマの1つ。

手数や仕掛けの多い古川と前原。そして伊藤はA1随一のヤミテン巧者。
どこの仕掛けが本物で、どのヤミテンが高いかは、普通に座っているだけではなかなか判別がつかないケースが多い。
そうなると、自分の手格好に理由をつけての押し引きとなってしまう。その構えでは、A1リーグではなかなか勝ち越せない。
相手の得意な土俵での勝負となることも不利だろうし、何より押し引きに丁半博打的な打牌を打つのは最も拙いと考えているのだ。

それを見極める為の策。
それは今節に限り序盤はヤミテンを多用し、局面を見極めてからギリギリで押し引きや打牌を判断するということだったのだ。

事実、伊藤は10巡目、ドラの白を打ち出す。

三筒四筒五筒六筒九筒九筒南南南白発発発  ツモ四筒  打白 

ドラを打つのに相応しい跳満のヤミテン。
古川のリーチも正しいし、伊藤の押しももちろん正着。

それに比べて私の手は?
手だけなら十分勝負手だと考えても良さそうだ。しかも2連続のアガリで迎えた連荘中の勝負手だけに、リーチをしても自然だろう。

しかし、私がリーチといった場合の伊藤のアクションは恐らく違っていただろう。
2件リーチにドラを勝負するか?
私なら勝負するだろう。前原でも勝負しそうだし、瀬戸熊でも勝負するかも知れない。

だが、伊藤の打ち筋や置かれているポジションを考えたなら、ここは引く可能性も十分に考えられる。
藤崎でも引くだろうし、藤原なら絶対に勝負しない。

私のアクションで他家のアクションが変わることを嫌ったというのが正直なところ。
この勝負の行く末を見守ろうじゃないか。これ位の気持ちで局面を見つめていた。

結果は僥倖の伊藤→望月への7,700。
私が押したら伊藤は引くだろうし、そうしたら古川が勝っていた勝負かも知れない。

とにかく、局面を見極めることに一番の主眼を置いてこの日の序盤は戦っていた。
役無しシャンポンをヤミテンにしていたのも、片アガリのイーペーコーをヤミテンにして、アガれない方を先に打たれたのも全て承知の上。
それくらい、慎重に局面を見極めたかったのだ。

だから1回戦オーラス、

二索二索二索五索六索七索七索八索中中  ポン南南南  ドラ中

この跳満を引けたのはここまでの戦い方のご褒美だと思っていたし、ここからは大きく加点出来ると踏んで、2回戦以降に挑んだつもりだった。
しかし、そんなに簡単にいかないのがA1リーグ。

2回戦は我慢の展開で3着に終わると、勝負を賭けた3回戦、2,600オールスタートも、前原への12,000放銃で勝負あり。
この放銃は瀬戸熊プロが書いてくれた上級講座をご覧いただくことにして、

この放銃も、ソウズのホンイツが見えている所での勝負だっただけにダメージは残った。
常識的に考えると、役無しドラ無しでトップ目とはいえ、親の前原に勝負を挑む場面ではなかったと対局後反省した。

だが、対局中の思考は違ったのだ。

「前原さんに勝負出来るのは自分しかいない。」
「自分が引いた後に前原さんにアガリをつけられると取り返しがつかなくなる。」

どちらも素直な気持ちだし、鳳凰位決定戦を見据えた上で選んだアクションであるから後悔はしていない。
受けに受けた局面だったが、テンパイがついた一瞬だけは勝負しようと、局面判断よりも自己都合の気持ちが勝ってしまっただけに、もし時間を戻すことが出来るのならこの後の展開を見てみたいという気持ちになっているのも事実だ。

しかし、たった1回の親番の連荘で、丁寧に築き上げたものがいとも簡単に崩れ去ってしまうというA1リーグの恐ろしさを肌で感じた1日となった。

A1リーグは1年間のトータルスコアで勝敗を決める戦いだ。
毎回毎回、細かいミスで取りこぼしたポイントが多くある今期の私に、最終節良い風が吹くとは到底考えられない。
それでも、諦めの悪いのが私の取柄。ここまで苦しいながらもプラスでまとめることが出来ている事も事実だし、最終節は第9節とは打って変わって思い切り良く腕を振ってこようと思っている。
最後まで鳳凰位決定戦進出を目指して、一打一打に思いを込めた戦いを見せたいものだ。