女流プロリーグ(女流桜花) 決勝観戦記

第11期女流桜花決定戦 最終日観戦記 藤原 隆弘

いよいよ最終日を迎えた。最後の1週間を選手たちはどのような気持ちで過ごしたのだろうか。
最終日最初の半荘となる第9回戦はそれぞれの思いがぶつかりあった壮絶な一戦となったのである。

 

100

 

9回戦(起親から 仲田―松岡―魚谷―宮内)

東1局、西家・魚谷に好配牌4巡目でこの形。

一索一索三筒五筒六筒六筒六筒東東発発中中  ドラ七万

全て場に生牌だったのでホンイツトイトイや四暗刻まで狙える大チャンスと思ったのだが、魚谷は1枚目の四筒をチーして一索切りとした。
少しもったいないような気がした。鳴かないで進める場面を見たかった。

仲田も好配牌で魚谷のチーで宮内に流れた二筒をチーテンに取り、直ぐに二索ツモで2,000オール。

七万七万三索四索八索八索八索四筒五筒六筒  チー二筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き

魚谷の仕掛けに対応した機敏な動きで仲田が今日も好発進。
100

1本場では仲田が1シャンテンで切ったドラの北を魚谷がポンして789の三色。

七万八万九万三索三索七筒九筒  チー七索 上向き八索 上向き九索 上向き  ポン北北北

仲田もポンテンを取り両者テンパイで流局。

2本場は魚谷が9巡目リーチ。

一万二万三万二索三索六索七索八索六筒六筒中中中  リーチ  ドラ七索

四索をツモって2,000、3,900だ。

東2局、ここも魚谷10巡目に先制リーチ。

六万七万三索四索五索一筒二筒三筒七筒七筒発発発  リーチ  ドラ八万

ドラをツモったらまた2,000・3,900。今日の魚谷は最初から全力で攻める気迫満々だ。
しかしここは親の松岡にも手が入った。

四万五万五万六万六万七万八万八万五索五索七索三筒四筒五筒

こうなったところで、私はカン六索マチの方が少し良いと思えたのだが、松岡は七索切りとしてシャンポンで追いかけた。
魚谷のマチは他家に流れ純カラとなり、山には松岡のアガリ牌のみ。魚谷はピンチだ。
その魚谷が掴んだのは六索、辛くも難を逃れてラッキーと思ったのも束の間、魚谷の最後のツモは五索だった。
行く手を阻まれる12,000これは痛い、痛過ぎる。

松岡連荘の東2局1本場。
今度は私の出番だとばかりに、宮内が6巡目ツモリ三暗刻のリーチ。

一万一万一万七万八万九万三索三索四索四索二筒二筒二筒  リーチ  ドラ六筒

親の松岡が追いかける。

三万四万四万五万五万六万七万八万八索八索八索三筒三筒

マチの多さで松岡に軍配、安目だが即九万をツモる。
魚谷も宮内も、今日はエンジン全開で仲田を追わなければならないのだが、少しでも意地を見せたい松岡の頑張りが仲田にとって有利な展開となっている。

2本場

ここも松岡が仕掛け、ダブ東トイトイの親満テンパイ、ツモなら6,000オールだ。

四索四索七索七索七索二筒二筒二筒六筒六筒  ポン東東東

宮内が追いつき9巡目リーチ。

三万四万五万七万七万三索四索五索三筒四筒五筒六筒八筒  リーチ

マチは苦しいがそんなことは言ってられない。手が入ったときは引けないのだ。
魚谷も同じで12巡目に追いかける。

三万三万四万四万五万五万六万六万七万八万九万白白  リーチ

この局は、仲田が6巡目にチーテン1番乗りしていた。

一万二万三万九万九万七筒八筒九筒白白  チー一索 上向き二索 上向き三索 上向き

ここは仲田が軽く捌くと思ったのだが全員に手が入り、最後方から来た魚谷が六万をツモって3,000・6,000で再びトップ目に立つ。
100

東3局の魚谷が10巡目リーチ。

三万四万五万五万六万六万七万七万八万三索三索七筒九筒  ドラ六万

序盤の場況から、ピンズの上が良さそうに見えるので面子選択で残したカン八筒マチ。
松岡が追いかけた。

七万八万九万四索五索六索九索九索四筒五筒五筒六筒六筒

ここは魚谷の読み通り、山に2枚生きの八筒を松岡が掴んで7,700。

1本場は、魚谷がソーズホンイツで仕掛ける。

一索二索三索五索七索七索八索九索北北  チー七索 上向き八索 上向き九索 上向き  ドラ九万

今回は打点もマチも良くないが連荘のための手段、次の本手への繋ぎだ。
南家の宮内がこれに対応してピンズに寄せる。

四筒五筒六筒七筒八筒北北  ポン白白白  ポン南南南

打点もマチも勝る宮内が、三筒ツモで2,000・3,900。

東4局

北家・魚谷が2フーロしてタンヤオトイトイ高目跳満のテンパイ。

二万二万三万三万三万五筒五筒  ポン六万 上向き六万 上向き六万 上向き  ポン五索 上向き五索 上向き五索 上向き

親の宮内にもメンホンのヤミテンが入る。

三索三索三索七索八索九索南南北北北中中

中は生牌でトイトイの魚谷がいるから出にくいが、1枚切れの南を狙いヤミテンを続ける。
ヤミでもツモれば6,000オール。安目出アガリでも9,600あるから、リーチしないで損になるのは中ツモアガリのときに8,000オールにならないところだけ。なので宮内は慎重にヤミテン続行。
松岡がリーチときても追いかけず、魚谷も宮内も一歩も引かず、松岡が南を掴んで宮内9,600のアガリ。
100

1本場は松岡が9巡目にメンホン七対子リーチ。

一万一万二万二万五万五万七万七万八万東東中中  リーチ  ドラ中

松岡の優勝はかなり厳しいが、少しでも意地を見せ最後までプロらしく戦わねばならない辛い立場。
安アガリで局を進めることもできず、できるだけ高い手を作りなるべくならヤミテンも避けたいところだ。
出アガリ倍満リーチだが実は純カラ。親の宮内今日は松岡のリーチに怯んで親を落とすわけにはいかない。

六万八万一索二索三索四索五索六索三筒三筒六筒七筒八筒

マチが変われば八万が出る形、宮内は覚悟を決め危険を承知で追いかける。
仕掛けて手詰まりとなった魚谷が七万でオリ打ち、宮内危機回避で親番キープだ。

2本場は宮内11巡目リーチ。

四万五万八万八万五索六索六索七索七索八索七筒八筒九筒  リーチ  ドラ八筒

ツモれなかったが1人テンパイで遂にこの半荘のトップ目に立つ。
3本場、もう宮内の親はやらせないと魚谷が捌きに行く。

三万三万七万八万三索四索五索三筒四筒五筒  ポン北北北  ドラ九万

ところが終盤、仲田も一気に追いつき、

九万九万二索三索四索五索六索  ポン東東東  ポン南南南

魚谷が七索をツモ切って7,700。ここまで3人の猛攻に耐えていた仲田がひとアガリで浮きの2着になり、ほぼ全局に参戦した魚谷は3着目まで落ちた。
追う魚谷には手痛過ぎ、逃げる仲田にはかなり手応えのあるアガリ。やはりこのまま仲田の逃げ切りで終わるのかなと思えたが、放銃した魚谷は顔色一つ変えず点棒を払い、姿勢も崩れない。
私なんかだともう心が折れそうになるけど凄い鉄メンタルである。
長い東場が終わり3者の持点は、宮内42,100 仲田35,600 魚谷31,300。

南入した仲田の親で、魚谷3,000・6,000をツモアガる。

六万七万八万一索一索八索八索八索二筒二筒発発発  ツモ一索  ドラ一索

なんという生命力か執念か、素晴らしい凄すぎる!

南2局は魚谷がリーチツモ。南3局は再び勢いを盛り返して迎えた魚谷の親。
怖い怖い親番なのは充分承知の仲田が、ヤミテンのピンフツモで連荘させない。

オーラスは宮内の親。トップ目の魚谷が3巡目リーチ。

三万四万九万九万一索二索三索四索五索六索中中中  リーチ  ドラ七索

少しでも点差を詰めるためヤミにせず1,000・2,000をツモリに行く。仲田の持点は31,600、もし仲田から出たときに2,600なら沈むからだ。
もちろんそれも承知の仲田はオリる。連荘したい宮内も魚谷のリーチが早すぎて追いつかない。
魚谷に8巡目に望外の中が来た。勿論、暗カンこれでツモれば2,000・3,900となり仲田が配源を割るのだ。
魚谷キッチリと二万をツモって大打撃戦の半荘を締め括った。

 

100

 

9回戦成績
魚谷+30.6P 宮内+7.8P 仲田▲4.4P 松岡▲34.0P

12,000に9,600に、3,000・6,000が2回、2,000・3,900が3回、7,700が2回、東場だけで12局全16局の殴り合い。
Aルールでこれだけの高打点が飛び交う半荘は滅多に見られない。4者の意地と気迫がぶつかり合った見ごたえありすぎる打撃戦。まさに、今期の女流ベストバウトと言える半荘を制した魚谷が仲田追撃への狼煙を上げた。

トータル成績
仲田+90.4P 魚谷+62.5P 宮内+28.1P 松岡▲149.0P

 

10回戦(起親から 魚谷―宮内―松岡―仲田)

仲田と魚谷の差が約28Pに縮まり、半荘1回で容易に変わる差となった。残り3半荘、宮内はもう1ゲームも落とせない。
東1局は魚谷が親で1人テンパイ。1本場で10巡目リーチ。

五万六万九万九万九万一索二索三索六筒六筒六筒発発  ドラ発

これをツモれば仲田を抜いてトータルトップに立つ、もうそこまで追い上げたのだ。
しかしここはまだ諦めてない宮内が魚谷の現物マチのピンフでダマ押し、押し勝って魚谷からロン。

東2局(ドラ南)の宮内の親は6巡目に七対子テンパイの仲田が、ドラの南単騎にかえてリーチとした。
ヤミにするかと思っていたが、押さえ込みと跳満ツモで決めに行く方を選んだ。山に1枚残っていたが流局し宮内の親は落ちた。

局は進んで東4局仲田の親。松岡が10巡目リーチ。

三万四万六万六万六万五索六索七索六筒七筒八筒九筒九筒  リーチ  ドラ九筒

どうしてもトップを取っておきたい宮内が追いかける。

二万三万四万三索四索二筒三筒四筒六筒六筒六筒白白

松岡が五万をツモり宮内残念。

南1局でも僅か4巡で1,300・2,600をツモった松岡が大きくリードする。
南2局(ドラ四索)親の宮内は仲田と魚谷が沈んでいるこの半荘、最低でも浮き2着は取りたい。
南の一鳴きでドラの四索を重ね、親満の1シャンテンとするも、ここから最後までテンパイせず、東場の親と同様無念のノーテン親落ちとなった。

南3局は仲田が7巡目にリーチ。

三万四万一索一索三索四索五索一筒二筒三筒六筒七筒八筒  リーチ  ドラ四索

親の松岡が1シャテンでまっ直ぐ押して放銃。
仲田がこのアガリでプラスの2着に浮上した

オーラスは仲田の親(ドラ四万
魚谷は仲田だけは捲って終わりたい。宮内は2人を捲る必要があり満貫ツモ狙いで強引にピンズに向かう。
しかしこの半荘は松岡の半荘だ。ドラ暗刻のリーチを一発でツモ、1人浮きのトップにした。

 

100

 

10回戦成績
松岡+34.2P仲田▲4.1P魚谷▲10.8P宮内▲19.3P

トータル成績
仲田+86.3P魚谷+51.7P宮内+8.8P松岡▲148.8P

親っカブリで仲田もマイナスしたのは魚谷には救いだったが、宮内はここでのラスは痛すぎた。防衛のためには残り2半荘、特大の連勝を決めるしかない。

 

11回戦(起親から 松岡―仲田―宮内―魚谷)

東1局は北家・魚谷が軽く捌きを入れる。

四万五万五万五万七索七索七索  チー五筒 上向き六筒 上向き七筒 上向き  ポン発発発  ドラ三筒

12巡目に西家宮内がドラ暗刻のハネツモリーチ

七万七万三索三索三索一筒一筒三筒三筒三筒五筒六筒七筒  リーチ

しかし四万を掴み無念。
東2局、親の仲田が遠い仕掛けを入れ2フーロでまだ1シャンテン。

六索七索東東発発中  ポン二万 上向き二万 上向き二万 上向き  チー七万 上向き八万 上向き九万 上向き  ドラ六索

ドラの六索を引いたのでホンイツにはならなかったが、ダブ東が鳴ければ打点が高くなるし他家への牽制力は充分だ。
宮内が東発を1枚ずつ掴まされたが、ギリギリまで絞り切り先にテンパイを入れ東単騎でリーチ。

二索三索四索五索六索七索三筒三筒三筒七筒八筒九筒東  リーチ

受けながらも粘って攻め返す宮内、必死に逆転の糸口を求める。仲田も発ポンでテンパイ。
ここに松岡が追いついた。

三万四万四万五万五万九万九万五索五索六索六索八索白白

ドラ2七対子だからアガリたい気持ちは解るが、2人に対してかなり危険な八索(宮内の入り目)を切り仲田のアガリ。松岡には我慢して欲しかった。

次局、連荘の仲田が12巡目リーチ。

六万六万七万七万八万二索二索一筒二筒三筒五筒六筒七筒  ドラ南

既にマチは八万が1枚だけしか残ってなかったのだが、一発目に引き当てて2,600オール。1人浮きとなり現時点で魚谷との差を約60Pと大きく広げた。

2本場(ドラ一索)は宮内が鋭い攻撃を見せた。七対子に照準を定めノーミスでテンパイし狙いの北単騎でリーチ。タンピンの1シャンテンで北を抱えていた仲田を狙い撃ちのような直撃。
3,200の2本場で3,800点。点数的には大した痛手ではなかったろうが、この一撃で仲田に向いていた流れが少し揺らいだようだ。

東3局、親の宮内に好手が入るが、牌の来る順番が悪くてこうなる。

六万七万三索四索五索七索八索九索三筒四筒五筒五筒六筒七筒  ドラ七索

ここから九索切りとすれば七索が来て大正解となったのだが、宮内は普通に六万切りとして仮テンを取る。次に四筒を引きフリテンだが四筒七筒マチに変わると次に七索を引く

三索四索五索七索七索八索九索三筒四筒四筒五筒五筒六筒七筒

まさかこんな七索単騎にはできずにツモ切ると、仲田がこのドラをポンして1シャンテン。
この鳴きで宮内に西が来ると、宮内は即座に西単騎に変えてリーチと行った。西は仲田が1枚切っている。
この西を仲田が即掴んで宮内2局連続で仲田を狙い撃ちだ。
オカルト的かもしれないが、私はこの連続字牌単騎での直撃が、オーラスの仲田の失着に繋がったのではないかと思う。

1本場で喰いタンの1,500をアガった宮内はついにこの半荘のトップ目に立つと、続く2本場で大チャンス! 僅か5巡でこのテンパイ。

六筒七筒七筒七筒八筒八筒八筒  ポン南南南  ポン中中中  ドラ北

この手がアガれると大逆転が現実味を帯びてくる。
宮内もこの局は行けると思ったに違いないが、無情にも魚谷にヤミテンのピンフで躱されてしまった。

東4局(ドラ五筒)親の魚谷面前のカン八索マチテンパイから好判断で作り変え、ダブ東をポンして宮内から2.900のアガリ、今度は魚谷がトップ目に立つ。

南場は小さな動きで進んだオーラス。
100

 

3者の持ち点は魚谷36,300 仲田33,800 宮内29,800。
宮内はこのまま終われば、防衛するためには絶望的な点差で最終半荘を迎えることになるので、絶対にトップを取る必要がある。
魚谷に迫られている仲田は、できれば魚谷を捲ってトップをとり最終戦を楽な点差で迎えたい。
まずは宮内にドラ2枚の好配牌で2巡目に選択ミス。

四万五万五万八万八万二索三索五索八索九索三筒七筒七筒八筒

宮内はここで八索切りとしたのだが、次のつもが七索でモロに裏目。この時五万五索三筒とかを切れば誰が打っても5巡目に三万六万マチのリーチがかかり、誰も抵抗しなければツモアガる。
こも後、長引いたが仲田の動きもあったり、先切りしていた五万を残したのも良く、また五万を引き戻して13巡目にリーチ。

五万五万五万八万八万一索二索三索五索七索六筒七筒八筒  リーチ

2,600点以上のアガリが欲しい仲田は、この形から八筒チーとした。

三万六万七万八万六索七索八索二筒三筒六筒六筒七筒七筒

八筒チーで喰い下げたのは四筒。鳴かなければ面前で2,600のテンパイが入りアガリがあったように思う。
喰いタン三色ドラ1で3,900だから、八筒だけはチーの気持ちは解るが少し焦ったかもしれない。
それでも仲田は八筒を引いてテンパイしたが、宮内のリーチもかかり危険牌も引かずハイテイで引いたのは六索
宮内は満貫級のリーチの筈だから、放銃できないのは仲田も魚谷も同じ。親の魚谷がオリているのは誰の目にも解った。仲田がテンパイを維持すればノーテン罰符でトップになれる。

六万六万七万八万六索六索七索八索六筒七筒八筒  チー八筒 左向き六筒 上向き七筒 上向き

四万切りリーチで六万はシャンポンマチがあるかもしれないが、先に五万切りしててそれは無いだろう、四万が4枚見えで九万も通ってるから、両面マチも無いので切るなら六万の方が良かったのではないか?
六索は自分から見て4枚目、しかもアガリ損ねとなった牌だ。あるならカン六索マチだが現物を抜いてオリる選択もある。
みなさんならどうしますか?

仲田は少考してから六索をツモ切り、ホーテイのおまけ付きで満貫放銃、宮内がトップになり、仲田はマイナスの3着に陥落、魚谷との点差が大きく縮まった。
初日からここまで、ほぼ思惑通りに試合運びを続けてきた仲田が、ここで初めて痛恨のミスをしてしまった。
魚谷と宮内の躓いても転んでも追撃を諦めない気迫が徐々に仲田にプレッシャーをかけ、エラーを誘ったのであろう。

11回戦成績
宮内+15.8P魚谷+10.3P仲田▲8.2P松岡▲17.9P

トータル成績
仲田+78.1P魚谷+62.0P宮内+24.6P松岡▲166.7P

仕方なくオリたら、望外の仲田の放銃で僅かに16.1P差となった魚谷に逆転優勝が見えてきた。
とりあえず最低条件のトップを取り、首の皮一枚残した宮内は特大のトップを取るしかない。
さあ最後の半荘に入る。

 

12回戦(規定により起親から魚谷―宮内―松岡―仲田で始まる)

東1局は魚谷と宮内のテンパイで連荘。
2本場は仲田が魚谷から1.300をアガリ仲田第一関門クリア。

東2局(ドラ九万)は魚谷が仕掛けるも親の宮内7巡目リーチ

三万三万四万四万五万五万七筒七筒七筒八筒八筒東東  リーチ

安目の八筒しか残ってなかったが即ツモで2,600オール。

奇跡へ向けて前進する宮内、連荘の1本場
100

 

宮内は2巡目で1シャンテン。

五万五万一索二索三索七索四筒五筒六筒発発中中

ポンテンも利くし面前テンパイならリーチだ。
これに対して魚谷が5巡目に白をイチ鳴きで仕掛ける

一索二索三索四索八索四筒五筒西北北  ポン白白白

少し遠いようだが、魚谷の狙いはソーズのホンイツだった。
これに対して、食い下がったドラ五索を手に残した宮内。七索を切っているのでフリテンの1シャンテン。
西家の仲田の手牌はこうだった。

七万九万五索六索七索一筒二筒三筒四筒五筒七筒八筒九筒北

ここで生牌の北を切り魚谷にポンされたが、当面の敵に対して少し甘くはないか?もしポンされたらホンイツでもトイトイでも満貫だ。
マンズが六万七万で超充分形とか、好形のテンパイでの打牌なら良いと思うが、ここは九万切りとして堪えるべきかと思う。
北をポンした魚谷は九索を暗刻にして八索九索マチの満貫テンパイ。
仲田にもテンパイが入る。

七万七万五索六索七索一筒二筒三筒四筒五筒七筒八筒九筒

フリテンを入れた宮内もリーチ。

一索二索三索五索六索七索五筒六筒七筒発発中中  リーチ

しかし宮内が八索を掴んで魚谷のアガリ。
魚谷がついにこの決勝戦、ここで初めてトータルで首位に立ったのである。
仲田が少し甘かったと記したが、もしも仲田が北を1巡でも絞った場合、宮内のツモは中七索となり、フリテンリーチなら4,000オール。ヤミでも2,600オールのアガリだ。
すると三つ巴の混戦となり、宮内の連覇があったかも知れないのだ。今回の決定戦で、このような展開のアヤみたいな部分では、宮内が一番損をさせられているように思う。

 

100

 

東3局は魚谷1人テンパイで、東4局は仲田の親。首位に立った魚谷が10巡目テンパイ。

三万四万五万三索四索五索一筒一筒四筒五筒七筒八筒九筒  ドラ九索

高目の三筒は生牌で六筒が3枚切れていて、仲田の現物なだけにヤミテンにすると思ったが魚谷は即リーチとした。
確かにここで満貫をツモればかなり引き離すことができるが、私はヤミテンにすると思ったので後で魚谷に聞いたら「三筒が山に数枚残っていると思ったから決めに行きました。」とのことだった。
実は1枚残りで、まだまだ諦めてない宮内が追いかけリーチ。

一万二万四万四万五万六万七万一索二索三索一筒二筒三筒  リーチ

この三万も山に1枚残り、宮内のアガリになれば宮内にもまた逆転の可能性が復活してくるのだが流局した。

南入して魚谷最後の親番。
北家の仲田が6巡目にドラを重ねて1シャンテンとしたが、宮内が9巡目にテンパイ1番乗り。

三万四万五万六万七万八万三索三索五索六索四筒五筒六筒  ドラ東

三色に変わればリーチして跳満ツモ狙いというつもりでヤミにしたら、魚谷から四索が出てやむなくロン2,000。
さあ南2局は宮内最後の親番だ。まずはドラの発を重ねてリーチ。

一万二万三万五万六万二索三索四索五索六索七索発発  リーチ

山に2枚残りだったが流局。
連荘の1本場はリーチツモで1,000オール。
2本場は宮内と魚谷の2人テンパイで流局と、親番を死守するものの決め手のアガリはまだ出ない。
3本場で西家仲田から5巡目にリーチ。

一万二万三万四万五万六万二筒二筒三筒四筒五筒西西  リーチ  ドラ白

魚谷に抜かれた仲田としては、逆転のチャレンジをしなければならない。
この親を落とせば逆転が困難になる宮内、ここはリーチに構わず自分本意に打って良い場面なのだが、思うように手が伸びずノーテンで親を落としてしまった。
宮内は残り2局で跳満ツモ2回が必要と、ついに瀬戸際まで追い込まれた。

南3局4本場、最低でも満貫はツモっておきたい宮内が、何とか手を作り12巡目リーチ。

三万四万五万三索三索六索八索三筒四筒五筒中中中  リーチ  ドラ六索

これも流局で遂にオーラス。
流局が続いて回ってきたため、オーラスは5本場で供託リーチ棒が2本。親の仲田が3巡目に中のポンテン。

二万二万二万六万七万五筒五筒七筒八筒九筒  ポン中中中  ドラ一筒

直ぐにツモって500と5本場で1,000オールプラスリーチ棒2本は、大きなアガリとなりトータルで魚谷を僅かに1.6P逆転した。

6本場が優勝者を決めた最後の山場となった。
100

 

逆転されたとはいえ、魚谷は1,000点アガるだけで優勝。親の仲田がトップに立ったので宮内も倍満ツモで2人を捲って優勝という条件になった。
勿論、仲田も魚谷とのノーテン罰符だけで再逆転されるから、魚谷がテンパイなら流局しても手を伏せられない。
まず仲田が4巡目に南西白の3種の生牌から、オタ風の西では無く白から切り出し、これを魚谷がポン。ここから局面が大きく動き出す。
アガれば良い魚谷としては、カンチャンとペンチャンの役無し1シャテンだから白ポンは必然。

六万八万六索七索八索四筒五筒六筒八筒九筒  ポン白白白  ドラ七筒

次に四万を引いて九筒を切ったのも間違いでは無いと思うし、むしろ正着と思う。魚谷の仕掛けのあと、仲田にも好牌が入って手が進み、宮内の手にもソーズと字牌がなだれ込んだ。
仲田には、ドラの七筒が中ブクレの形で浮いていたが、魚谷が九筒八筒と落としてきたので1シャンテンで処理した。
1,000点アガれば優勝の人が、面子選択でドラマチのペン七筒受けを残す訳がないし、あるとすれば八筒九筒から六筒を引いて、さらに五筒を引いたときだけだから仲田は安全牌の三万を残して先に七筒を切った。
仲田は次巡、四筒引きでテンパイし、魚谷も同巡、四万を引きカン七万マチテンパイ。

仲田
二万三万四万五万五万四索五索二筒三筒四筒六筒七筒八筒

魚谷
四万四万六万八万六索七索八索四筒五筒六筒  ポン白白白

タラレバの話だが、魚谷が四万を引いたときの形から八万を切っていれば、仲田もテンパイしてから七筒を切るだろう。すると魚谷もチーテンの四万単騎で宮内に四万が喰い下がる。
そのときの宮内の手牌は、

二索二索三索五索六索七索西北北発発中中

こうだったから、倍満ツモ条件に突き進む宮内が、四万をツモ切れば魚谷の優勝だったのだ。
仲田が1シャンテンで七筒を切ったとしても、仲田から四筒を喰い取るから魚谷が有利だった。
実戦では、仲田と魚谷にテンパイが入った同巡、宮内が1シャンテンとなる。

二索二索三索五索六索七索西北北発発発中中

倍満ツモで優勝という条件があるだけに、ここで宮内はツモリ三暗刻に決めて三索に手をかけたのだ。
テンパイまで持っていると、仲田に対して危ないから切るなら今でしょと切ったのがピンポイントで今テンにストライク。
仲田は大きな大きな5,800プラス本場の1,800のアガリ。

宮内は両面受けを嫌ったのだが、三暗刻の2ハンが無くてもハイテイが回るので、リーチツモ二役メンホンハイテイで倍満という可能性もあるから、三索を1巡先に処理しなかったのならギリギリまで切らない選択枝はあった。
この時点で仲田のマチは3枚、魚谷のマチは1枚、宮内の必要な牌はかなり生きていたので結果はどうなっていたか解らない。
いずれにしてもこの局は、色々な選択で大きく結果が変わる要素があるので、皆さんも牌譜を検証してみて頂きたい。

さあ、仲田が優勝へ大きく近づいたが、次局は魚谷もまだ1,300・2,600のツモアガリで逆転する。
しかし、魚谷が条件に合うテンパイを入れられないまま終局となり、仲田の7年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた。

初日の2回戦で首位に立ち、一度もラスを引かず、大きくマイナスした半荘も無く、安定感抜群の内容でずっと首位を守り続けてきた仲田。
最終戦で一度は魚谷に逆転されたが、土壇場で差し返す二枚腰も見せての辛勝は喜びもひとしおだろう。
この激戦を盛り上げ素晴らしい闘いにしてくれたのは、何度躓いても打たれても最後まで逆転を諦めず仲田を追い込んだ魚谷と宮内の粘りだ。
特に魚谷は最終戦で、一度は仲田を抜いていただけにオーラスは本当に紙一重、どちらが優勝していても不思議ではなかったと思う。
予想外の惨敗で苦い初舞台となった松岡、他3人との現状での実力差が露呈し多くの課題が残ったが、女流のAリーグを勝ち抜いて決定戦に残った事には自信を持つべきで、まだ若いしキャリアも浅いのだから、決勝に残った者にしか体験できない貴重な経験を生かして、この次に決勝に残った時には優勝争いが出来るようスキルアップして欲しい。

超攻撃型、悪く言えば何でも要らない牌を切って前に出るだけ、アタリ牌を掴まないだけ、というイメージで勝っていた7年前から、真逆に近い守備型麻雀を取り入れる大改造に取り組み遂に女流桜花に返り咲いた仲田。

「いろんなパターンを沢山シミュレーションしていたので何があっても動揺せずに打てたこと、ほぼ思い描いていた通りの展開で回せたことが主な勝因だと思います。唯一11回戦オーラスにホーテイで宮内さんに満貫を打ったのが覚悟の無い想定外の放銃で、優勝できなかったら大きな敗因になるところでした。映像対局主流の時代になってから活躍できずにいましたが、ようやく勝てました。こらからは第一線で活躍を続けられるように頑張っていきたいと思いますので、今後共応援よろしくお願いします。ありがとうございました。」

映像対局が頻繁に流されるようになった効果も大きいと思うが、女流プロの人数も増えてきてその麻雀レベルも上がってきている。
仲田や魚谷や宮内だけでなく、女流のタイトルや人気に甘んじることなく、Aクラスの男子プロと闘っても勝てる実力をつけたいと本気で望み、考え、努力している女流プロは少なくない。

創世記のプロクイーンや女流桜花の決勝戦に比べ、闘牌の内容がレベルアップしてきていると思うし、今期のプロリーグで、和久津が女流プロとしては21年ぶり2人目のA1リーガーとなったのもその証であろう。
女流プロが鳳凰位や十段位の決定戦を闘う姿を観る日もそんなに遠くない。

 

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