女流プロリーグ(女流桜花) レポート

第11期女流桜花プレーオフA卓レポート 楠原 遊

11月9日、女流桜花のプレーオフA卓が行われた。

女流桜花は、一発裏ドラなしの日本プロ麻雀連盟Aルールによる女流リーグ戦。半荘4回×6節で昇降級が決まり、Aリーグのみ6節消化後に、上位8名による半荘4回のプレーオフが行われ、そこからポイント上位3名が、現女流桜花・宮内こずえの待つ決勝戦に駒を進めることが出来る。

第6節終了時の成績

1 仲田 +135.7P
2 魚谷 +130.0P
3 松岡 +106.8P
4 亜樹 +34.8P
5 斉藤 +33.2P
6 清水 +20.6P
7 武石 +5.8P
8 美波 +5.5P

規定により、A卓の対局が終了した後B卓の対局が行われるため、B卓の選手はA卓のポイントを踏まえて打つことができる。
今年は1位、2位、3位までが大きく抜けたポイントを持っている為、それ以外の選手は同卓する2位魚谷・3位松岡をまくるようなゲーム作りが必要になる。

本日の対局者は2位魚谷+130.0P、4位亜樹+34.8P、6位清水+20.6P、8位美波+5.5P。
暫定2位の魚谷は現在のポイント差を意識して、同卓者にまくられないことはもちろん、B卓の結果を踏まえることが出来ない以上、現在3位の松岡よりも下にいかないことを心がけて打つことになるだろう。
他の3名は、同卓の魚谷より上にいくか、少なくとも別卓の松岡が沈むことが出来ないところまでポイントを積み重ねる必要がある。

 

100

 

1回戦 清水 美波 魚谷 亜樹

東3局1本場、親の魚谷の手がいい。

一索一索三索五索六索六索七索八索八索九索東東北北  ドラ二索

ここから場に1枚切れの九索を残して打三索とする。
5巡後、残した九索を引き入れテンパイ。

一索一索六索六索七索八索八索九索九索東東北北

そこに決定戦進出には大きなポイントの必要な美波からリーチ。

三万三万五万六万七万二索三索四索四索五索七筒八筒九筒  リーチ

すぐに引いてきた生牌の白をツモ切って、美波から12,300のアガリ。
3者の思惑をよそに、魚谷がトップ目に立つ。
しかし、まだ4半荘の1回目。他の3人もこのままでは終われない。

東4局、南家の清水が

七索八索二筒三筒四筒六筒六筒南南南白白白  ドラ二万

この手をリーチしてしっかりツモり、2,000・4,000。トップ目に立つ。

南1局、ドラポンの美波、そこに攻める清水、うまくまわってテンパイを取った亜樹の3人に囲まれ魚谷の1人ノーテン。
普段の女流桜花の対局を見ていても、魚谷の1人ノーテンはとても珍しい。プレーオフにかける4人の立場と気持ちが、この局を作っていたように感じられた。

しかしその包囲網の間をするりと抜けて魚谷がアガリ続ける。

7,700は8,300、3,900、7,700は8,000

気が付けばトップ目に返り咲き、オーラスを迎える。

南4局 2本場、親の亜樹の先制リーチ

三万四万五万九万九万七索八索九索一筒三筒七筒八筒九筒  リーチ  ドラ五万

捨て牌が一万 上向き発白九索 上向き南

これを受けて魚谷の手が

五万五万六万六万六万三索三索四索六索七索八索九索四筒  ツモ五索

全4回戦のプレーオフ。トップ目で迎えたオーラス。
現物の九索を切るとタンヤオの1シャンテン、四筒を切ればシャンポンの役なしテンパイ。
ここでトップを取れば決定戦がかなり近づく大事な場面。
多くの打ち手が、親のリーチを意識して九索を外すことが多いのではないだろうか。

しかしここで魚谷の選択は無筋の四筒五万三索のシャンポンテンパイを取った。
まだ1回目。目先の放銃回避よりも大事なものが魚谷には見えている。

ここにトップまで11,300点差の清水からも打点十分なリーチ。

二万二万三万四万五万二索三索四索二筒三筒四筒五筒六筒  リーチ

ここに魚谷が引いてきたのが

五万五万六万六万六万三索三索四索五索六索七索八索九索  ツモ二索

流れるような所作で、九索を切ってリーチ。
もしも前巡九索を切っていたら、テンパイ打牌の四筒は清水のアタリ牌になっていた。

そして2巡後、

五万五万六万六万六万二索三索三索四索五索六索七索八索  ツモ四索  ドラ五万

見事にアガリをものにして、決定戦進出をより確実にした。

1回戦結果
魚谷+44.3P 清水+15.2P 亜樹▲9.0P 美波▲50.5P

トータル
魚谷+174.3P 清水+35.8P 亜樹+25.8P 美波▲45.0P

 

2回戦 魚谷 亜樹 美波 清水

東1局、清水からの5,200を皮切りに、亜樹が攻める。
亜樹・清水・美波。ポイント差のある戦いで、みないつもとは違う打ち方になることは当然だが、前がかりになっている3者に対し、魚谷は冷静に対応しているように見えた。

南2局、親の亜樹の手がいい。
9巡目、ドラの西もすでに切り飛ばしてこのテンパイ。

六万七万三索四索五索三筒三筒五筒六筒六筒七筒七筒八筒  ドラ西

このテンパイをヤミテンとする。場にマンズが高く、イーペーコーへの手変わりもある。
しかしこの同巡、魚谷の手が

七万八万九万一索二索三索七索八索九索九索七筒九筒九筒

ここに持ってきた四索をツモ切る。親の亜樹には通っていない牌だ。
もしリーチをかけていたら、この四索は止まっていたかもしれない。

次巡、魚谷

七万八万九万一索二索三索七索八索九索九索七筒九筒九筒  ツモ七索

カン八索の純チャンイーペーコーテンパイ。

亜樹も

六万七万三索四索五索三筒三筒五筒六筒六筒七筒七筒八筒  ツモ五筒

親のメンタンピンーペーコー。で大きな大きな勝負手に育て、リーチ!

清水にもテンパイが入って緊迫した場になるが、ここも魚谷に軍配が上がる。

七万八万九万一索二索三索七索七索八索九索九索九筒九筒  ツモ八索

ツモ・純チャン・イーペーコーで2,000・4,000。
南入したときはラス目だった魚谷が一気にトップ目に立ち、この半荘を決める大きなアガリとなった。

このまま魚谷は手をゆるめず、オーラスも自身の400・700で決着をつけ一人浮きの強すぎるトップ。

2回戦結果
魚谷+26.6P 亜樹▲1.5P 美波▲3.9P 清水▲15.2P

トータルポイント
魚谷+200.9P 亜樹+24.3P 清水+14.6P 美波▲54.4P

 

3回戦 魚谷 美波 亜樹 清水

現在の所持ポイントは以下の通り
※()内は消化ゲーム数

1 魚谷 +200.9P(2/4)
2 仲田 +135.7P(0/4)
3 松岡 +106.8P(0/4)
4 斉藤 +33.2P(0/4)
5 亜樹 +24.3P(2/4)
6 清水 +14.6P(2/4)
7 武石 +5.8P(0/4)
8 美波 ▲54.5(2/4)

魚谷の2連勝によって、3名の勝ち残りの条件はかなり厳しくなってしまった。
気づけばはるか彼方である200.9P。その遠い魚谷をまくるよりは、B卓の106.8Pの松岡のポイントを目指して戦い、翌週のB卓の結果を待つ方が現実的だ。魚谷を意識しすぎずに、おのおののポイントを伸ばすことを考えて打っていくことになるだろう。

東3局1本場、親の亜樹が3巡目にダブ東を仕掛ける

二万二万一索三索五索六索六索北北北  ポン東東東  ドラ三筒

残り4回しかまわってこない親番。なんとしてもアガリに向かいたい局面だ。
それを受けて3巡後、北家の美波の手が進む

六万七万七万八万四索六索七索七索九索六筒六筒中中  ツモ八筒

678の三色を見て四索を外したいが、親の亜樹の河にはソーズが高い。
ここで美波が選択したのは八筒のツモ切り。

次巡以降ツモ七万、打八万、ツモ八索で打六万

七万七万七万四索六索七索七索八索九索六筒六筒中中

親の亜樹に対し簡単には四索を放さない。それ以降も七索五索と引いてこのテンパイ。

七万七万七万四索五索六索七索七索七索六筒六筒中中

ツモり三暗刻に仕上げてリーチ。
ダブ東ポンからほとんど手が進まなかった亜樹がすぐに中を掴んで3,200は3,500。
丁寧な打ちまわしで、打点以上のアガリとなった。

その後も美波がリーチをかけてツモアガる展開が続き、ここは美波の半荘となる。

3回戦結果
美波+44.7P 魚谷+9.0P 亜樹▲16.6P 清水▲37.1P

トータルポイント
魚谷+209.9P 亜樹+7.7P 美波▲4.2P 清水▲22.5P

 

4回戦 魚谷 亜樹 美波 清水

昨年の女流桜花プレーオフに8人中8位で臨んだ魚谷。
ブログではこのような意気込みを記していた。

 

100

 

実際の1回戦結果は▲13.8の3着。全体で3位の和泉とは85.8P、6位の平岡とは79Pの差が付いた苦しい状況に落とされてしまった。

しかしそこからの魚谷は強かった。2回戦、3回戦と果敢に攻め、4回戦の親番でも6万点近くまで持ち点を増やし、厳しいものではあるが最終半荘のオーラスまで条件を残した。
当時、まだ連盟に入って1年目、女流桜花Cリーグを残留した私もリアルタイムでその放送を見ていた。
見ている人に、「魚谷ならやってくれそう・・・」と思わせる力が彼女にはあった。それはブログの、「最後まで一生懸命」な姿勢にあるのだと思う。

諦めない人は、最後まで気を抜かない。

他者に圧倒的なポイント差をつけた最終戦でも油断することはなかった。

東3局、親番を維持したい亜樹が仕掛けてこの形

五万五万七万八万九万二索三索四索六筒七筒  ポン白白白  ドラ一万

対して魚谷はドラが暗刻の形

一万一万一万三万四万五万六万七万五索五索七筒八筒八筒

二万五万八万六筒九筒を引いたときに、魚谷が八筒を切るかは定かではないが、引いてきたのは八筒
亜樹の現物の七筒を切ってリーチに踏み切った。

一万一万一万三万四万五万六万七万五索五索八筒八筒八筒  リーチ

結果は後からテンパイした清水と亜樹との3人テンパイ。
開かれた手を見て、3人は何を思ったか。

南3局、親の美波がホンイツの7巡目リーチ。

二筒三筒四筒七筒八筒九筒西西北北北発発  リーチ  ドラ七万

ここにまたしてもドラ3の魚谷も役ありのテンパイ。

四万五万五万六万六万七万七万七万四筒五筒七筒八筒九筒

ここから、魚谷が無筋を押してゆく。
1対1の勝負になり、結果は美波への12,000放銃。

しかし、開けられた親の本手よりも、その場で存在感を示したのは魚谷の方だった。

南4局1本場

二万三万四万五万六万一索二索三索五索六索七索九索九索  ツモ七万  ドラ西

この日幾度となく見た、魚谷の最速手順でのツモアガリで今日の全ての半荘が終了した。

4回戦結果
美波+30.4P 清水+4.9P 魚谷▲13.3P 亜樹▲22.0P

トータルポイント
※()内は消化ゲーム数

1 魚谷 +196.6P(4/4)
2 仲田 +135.7P(0/4)
3 松岡 +106.8P(0/4)
4 斉藤 +33.2P(0/4)
5 美波 +26.2(4/4)
6 武石 +5.8P(0/4)
7 亜樹 ▲14.3P(4/4)
8 清水 ▲17.6P(4/4)

魚谷が去年の雪辱を果たし、1年ぶりの決定戦進出を決めた。残る進出者はB卓の結果待ちとなる。
今年はいったい誰が、女流桜花への挑戦権を手にするのか、目が離せない。