王位戦 決勝観戦記

第39期王位戦 決勝観戦記

第39期王位戦決勝観戦記:猿川真寿

2013年12.1。夏目坂スタジオで王位戦決勝が行われた。
今年から、準決勝よりニコニコ生放送で配信されることになった。
映像になった時、普段と同じよう打ちきれるかどうかが、大きなカギになるだろう。
そういう意味では、若手プロや一般の方たちには厳しい戦いになるだろうなと思っていた。

ここで抜け番システムについて説明しておこう。
準決勝の通過順に好きな抜け番を選ぶことが出来る。
5位通過者は失礼かもしれないが余り物ということになる。
私が知る限りでは、集中力の持続や疲労の関係もあり3回戦抜け番を選ぶ人が多いように感じる。
そのあとは4、2、1、5の順になることが多い。
5は他者が敗退ボーダーを合わせることができるので、少しだけ不利になる。
なので、今回の森下は珍しい選択をしたと言えるだろう。

それでは、見事決勝に残ったメンバーを通過順位順に紹介したい。

森下剛任
22期生 中部本部所属
今回がニコ生は初
抜け番は1回戦
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伊藤康宏さん(一般)
ロン2ではクラピカのハンドルネームでプレイしており、今年のインターネット選手権では、
決勝で、前原雄大、二階堂亜樹、安田麻里菜の強豪プロを倒し王者になった。
また、ロン2カップsummerでも決勝に残っている。
抜け番は4回戦
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穴澤義則さん(一般)
地方予選からの勝ち上がり。
本戦ではベストアマを獲得。
今回が王位戦初挑戦で、決勝まで勝ちあがりは大変素晴らしい事だと思う。
抜け番は3回戦
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杉浦勘介
20期生 東京本部所属
第9期 野口賞受賞
抜け番は2回戦
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手塚紗掬
28期生
第1期 女流雀王
抜け番は5回戦
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映像慣れという部分では、杉浦>手塚>伊藤>森下=穴澤という事になる。
ただ、その点が必ずしも良い方向にでるとは限らないので、実際のところはどういう出方をするのか、打ち手の性格の所為が大きいかも知れない。とはいえ、場慣れしている方が有利に思える。

ちなみに、私が出始めの頃は、相手の進行速度が分かりにくく、リズムが掴みづらくなった記憶がある。
一方、凡ミスは減ったというメリットもあった。

それにしても攻めっ気の強い面子が揃ったものだなと思う。
決勝まではトーナメントと違い、ボーダー戦なのでご覧の通りのような面々になりやすいのだと思う。
杉浦は最近、守備型から攻撃型にシフトチェンジをしたのが良かったのだろう。

決勝のシステムは5回戦を1回抜け番で1人4回戦を打ち、1人敗退者が決定。
その後残りの4人で2回戦打って優勝を決める。

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1回戦
(起家から、杉浦、手塚、穴澤、伊藤 抜け番・森下)

4者とも好配牌で前日の勢いを維持しているように思える。
親の杉浦の配牌は

一万八万三索三索四索五索六索五筒五筒東北白白中  ドラ一索

この手が9巡目にうまくまとまりリーチ。

三索三索四索四索五索五筒六筒七筒白白白中中  リーチ

高めをツモって4,000オールの好スタートを切った。
私は1局で何が決まるわけではないが、杉浦のこの日の出来は良さそうだなと感じた。
配牌の時点で、あわよくばホンイツぐらいに仕上げようと考えていたと思う。
このような手で悩むことは、白の処理の仕方である。
1枚目から鳴くのか、二鳴きにするのか、正解がないだけに誰でも悩むところだと思う。
ホンイツこそ崩れてしまったが、ツモが利いて悩みなくいける時は好調だと私は考える。
それ以降も、あとはとりあえず自然に進めてゆけばいいのである。

ただ、実際は頭では分かっているつもりでも、体が反応しなくなるのが決勝の舞台である。
これは経験したことのある人でしか分からない感覚ではある。
視聴者の皆さんもそのような点も考慮して温かい目で見て欲しいと願います。

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これは東2局の終局図。
伊藤さんの打ち方が冴えた1局だった。7巡目に高め追求でドラ受けを残して、六索七索タ―ツを外している。
これが上手くいき、手塚から5,200のアガリとなった。
リーチを躱されてしまった杉浦の待ちは、山に6枚残っており、もし伊藤さんがアガリ優先に手を進めていたらどうなっていたのだろうか?と個人的には興味がある所だ。

この後は流局がほぼなく、激しい攻め合いが続いた。
1回戦を制したのは穴澤さん。オーラスに親のリーチをうまく躱してトップへ。
捲くられた杉浦は加点できなかった事を、どう考えているのだろうと私は思った。

1回戦終了時
穴澤+15.9P  杉浦+11.4P  伊藤▲8.3P  手塚▲19.0P

2回戦
(起家から、手塚、伊藤、穴澤、森下 抜け番・杉浦)

1回戦を森下は控え室でずっと観戦していた。個々の調子を分析していたのだろうと見受ける。
森下とは、彼がプロ入りした当時から静岡リーグに出ていたこともあり面識はあった。
麻雀は思い切りが良い高打点型である。私の昔の麻雀によく似ていた。

攻める回数が多い分、展開が向かなくなると大いに苦しくなることも当然ある。
昨日の麻雀の調子が継続していれば、良い方向に進みそうだなと思っていた。
あとは、優勝というプレッシャーに打ち勝てるかどうか。これがなかなか難しい。
静岡リーグでも、決勝では持ち味が出しきれてなかった。
そのような事があるから、GⅠタイトルの優勝は厳しいとも感取した。

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東1局 終局図である。手塚には悪いが、この放銃は酷いと感じてしまう。
1回戦4着だったので、挽回したい気持ちはよく分かる。ましてや親番。
テンパイを維持したいのだろう。

しかし、それでもここはオリるべきだったと思う。
なぜならば、ホンイツ模様の森下が八筒のトイツ落としを入れている。
この時点で、ほぼホンイツかホンイツトイトイの二択であると考えられるからである。

普段からこの牌を切ってしまうとは思ってはいないが、挽回したいからこその粘りを見せて欲しかった。
一方、穴澤さんは13巡目にカン三索のテンパイが入るが、生牌の中が切れずに回っている。
穴澤さんは手数が多いが、無理はしない麻雀だった印象を準決勝の時に感じた。
スタイルの違いはあるが、負けていたとしても穴澤さんはきっと切らないなと思って観ていた。
開始前に「凄く緊張しています。」と言っていたが、麻雀のメンタルは相当強いと分析する。
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このあとも手塚は、東2局に伊藤さんに11,600を、南2局に森下に12,000を放銃。
早い仕掛けのテンパイと早いリーチだったので、放銃は仕方ないと思ったが、
ここで手塚の王位戦は終わったと言ってしまっても過言ではない。
もう冷静さは取り戻せないぐらい精神的にダメージを受けていると推察する。

この観戦記がHPに掲載される頃には、プロクイーンの優勝者が決まっているだろう。
今回は惨敗で幕を閉じてしまったが、決勝という舞台の良い経験になったと思う。
これを糧にして気負わずこれからも頑張って欲しい。

結果は、穴澤さんが南3局の親番で詰め寄り、3人が40,000点以上に一時なったが、
次局、伊藤さんから5,200をアガった森下が微差のトップを獲る。

2回戦成績
森下+25.7P  穴澤+18.6P  伊藤+3.4P  手塚▲47.7P

2回戦終了時
穴澤+34.5P  森下+25.7P  杉浦+11.4P  伊藤▲4.9P  手塚▲66.7P

3回戦
(起家から手塚、伊藤、森下、杉浦、抜け番、穴澤)

ここでトータル暫定1位の穴澤さんが抜け番となった。
直接対決は、差を一気に詰めるチャンスではあるが、その日の好調者と勝負するのにはリスクが相当高い。
追いかける立場の杉浦、伊藤さんは勢い的に番手につけたいところ。
特に伊藤さんは、まだトップとそこまで差はないが、次が抜け番だという点、森下がポイントを伸ばした時に、2人を躱さなければならない。よって、ここは浮きにまわらないと苦しくなると推測する。

東1局は、森下が手塚から8,000出アガリのスタート。
東2局は伊藤さんが2,600オール、1,000オールとアガリ、トップ目に立つ。
抜け番から戻ってきた杉浦は、2人の速度に付いて行けていないように見えた。

そして南1局に杉浦が捕まってしまう。
杉浦の手牌は7巡目に1シャンテンになり、次巡。

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ここでタンヤオに振り替わり、満貫級が狙える手になった。
ここは九万切りが普通だと思う。杉浦も九万切りを選んだ。
座っていないと分からないかもしれないが、私ならば中を先切りしたかもしれない。
と言うのは、森下、伊藤さんに比べて速度が負けていて、尚且つ2人の捨て牌が変則的だという点がある。
加えて九万は、森下の現物で伊藤さんにも通りそうなので、逆手順で踏み込んで行くも悪くないと感じる。
親の手塚が来た場合だけは怖いが、現状の敵は手塚以外なので考えないようにしても好ましいと思う。

気にかかる一方の森下の牌姿は

二万二万二万三万三万四万五万五万六万三筒西中中

鳴かれたかどうかは分からないが、ここで切ったらどうなっていただろうか?
この局の結果は、森下がこの後有効牌を引き入れ、ドラが重なった杉浦の中を捕えて8,000のアガリとなった。しかし、ここから杉浦は粘りを見せて、森下から8,000をアガリ返し、次局も2,000・4,000をアガリ。
オーラスは伊藤さんがアガリ、トップを獲った。

3回戦成績
伊藤+14.5P  森下+7.5P  杉浦+5.3P  手塚▲27.3P

3回戦終了時
穴澤+34.5P  森下+33.2P  杉浦+16.7P  伊藤+9.6P  手塚▲94.0P

4回戦
(起家から、杉浦、手塚、穴澤、森下、抜け番・伊藤)

伊藤さんがトップを獲ったことにより、上位陣は混戦になってしまった。
抜け番の伊藤さんとしては、上に抜けられるよりは、杉浦、手塚に頑張ってもらいたいところであろう。
この半荘になってようやく手塚がアガリ始めた。
手塚は、約10万点のトップを獲らない限り敗退となるので、現実的にはほぼ不可能な状態。
また、3者も手塚がアガる分には体制に影響ないので手塚とは戦わず。
手塚の有利な方向に進んでしまうだろう。

思い通りに手塚が加点して、東3局には55,000点までになった。
東4局に親の森下は手塚から1,500をアガると、次局4,000オールのアガリ。

六万六万九万九万四索四索四索二筒三筒四筒八筒八筒八筒  リーチ  ツモ六万  ドラ五筒

出アガリだと2,000か2,400しかなかったので、非常に大きいツモアガリとなった。
森下の好調加減が伺える1局だった。
このまま、森下が手塚も捲くるかと思ったが、穴澤さんが苦しいところから2,000.4,000をアガリ。

三筒四筒七筒八筒九筒発発中中中  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  ツモ二筒

穴澤さんは本当に良い意味でしぶとさを持っているなと思わされる局面がいくつもあった。
独特の感性が織り成す所業と言えると思う。
所業とは書いているが、褒め言葉として受け取って頂きたい。

局はこのまま進み、手塚のトップで終了となった。

4回戦成績
手塚+19.7P  森下+10.5P  穴澤▲7.2P  杉浦▲24.0P

4回戦終了時
森下+43.7P  穴澤+27.3P  伊藤+9.6P  杉浦▲7.3P  手塚▲74.3P

5回戦
(起家から穴澤、杉浦、伊藤、森下 抜け番、手塚)

この5回戦目で、1人敗退者が出てしまうのだが、ほぼ手塚で確定していると思われる。
事実上、この5回戦から同面子で3回勝負ということになる。

4回戦を終えてトータルがマイナスになってしまった杉浦が気になる。
点数的にというよりは、前回の4回戦、全く戦えていなかったことである。
手が入らなければ、いくら攻撃型といっても攻めることはできないのは致し方ないと思うのだが、攻める姿勢でこじ開けていくのが攻撃型で1番必要な部分だと思う。
このまま、普通に見ているだけでは優勝は厳しいだろうなと思った。

東1局、伊藤さんから10巡目にリーチが入ると、親の穴澤さんにも12巡目にテンパイが入る。

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ここは現物の一万を切った好形になったら勝負かな?と思った。
しかし、次巡は二万をリリース、その後三万を打って1面子おとした後に比較的通りそうな牌を選び、森下の1人ノーテンで終局した。私は素直に関心してしまった。

正解、不正解はない局面だと感じるが、親番だという事を考慮するとなかなかできないものである。
ましてや、決勝の舞台ということも考えると余計にである。

次局は、穴澤さんがリーチを打つが森下と杉浦もしぶとくテンパイした。
3本場、この局が私の中では1つの分岐点だったように思える。
6巡目に杉浦がポンテンをとる。

五索五索六索六索七索七索四筒五筒西西  ポン東東東  ドラ四筒

10巡目に出た森下の七万を穴澤さんがポン。
供託も3本有り、この局面も賛否両論あるところだが、結果から述べてしまうと、穴澤さんが杉浦に放銃という形で終局となった。

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どちらにしても杉浦の待ちは6枚生きで、アガリは堅かったとは思うが、最終戦に向けての態勢作りとして見てしまうと、我慢していた2人だけにこの後の命運が分かれた1局になりそうだなと思った。
これで杉浦が生き返り、親でこそ加点出来なかったが東3局では穴澤さんから7,700の出アガリでトップ目に立った。

二万三万四万五万六万七万八万九万三索三索二筒三筒四筒  ロン一万  ドラ七筒

この後は四者の凌ぎあいが続き、杉浦が1人浮きの初トップを奪取。

5回戦成績
杉浦+22.3P  森下▲1.1P  伊藤▲7.5P  穴澤▲14.7P

5回戦終了時
森下+42.6P  杉浦15.0P  穴澤+12.6P  伊藤+2.1P  手塚▲74.3P(途中敗退)

6回戦
(起家から、伊藤、森下、穴澤、杉浦)

暫定4位の伊藤さんとトップの森下のポイント差が約40P。
伊藤さんが森下を沈めて60,000点程のトップを獲れば、一気に首位まで抜ける状況なので、かなりの接戦だと言えるだろう。
そしてこの半荘は、最後まで誰がトップをとるのか分からないぐらいめまぐるしく点棒が動いた。

まず、東2局

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11巡目に三色ドラ1をテンパイしていた杉浦が、九万をもってきて追いかけリーチ。
ハイテイも付いて、3,000・6,000のアガリになった。
森下がリーチを打っていなかったら、自分からみて八万のワンチャンスとはいえ、良くない待ちなのでヤミテンだった可能性もあるだろう。5回戦から展開も向いてきた気がした。

このまま、杉浦が一気に走るのかなと思ったが、東3局に伊藤さんが1,300・2,600をツモると、次局、杉浦からタンヤオドラ3の8,000の出アガリでトップ目に立つ。
その後は、森下と穴澤さんがテンパイ料で加点をしていき、徐々に平たくなっていく。

南2局2本場

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この局が杉浦の敗因になってしまったのだと私は思う。
7巡目に九筒を引きいれて1シャンテンになる。

一万一万二万四万六万七万八万六索四筒四筒五筒七筒八筒  ツモ九筒  ドラ六万

手順としては四筒切りは良い。しかし、この局のテーマは親落としである。
このまま森下にラスを押しつけた方が適切である。

下家の伊藤さんが二索をポンから仕掛けている。タンヤオドラドラ等も考えられなくもない。
だが、五筒七筒三筒の手出しからホンイツやトイトイが濃厚のような気がする。
なので2人でプレッシャーをかけて戦うほうが有利に感じる。

よってここは打六索
難しいところだが六索切りのほうがテンパイ速度は早くなる。
私ならそう構えてテンパイ即リーで勝負したいと考える。

仮に、伊藤さんに放銃になってしまったとしても森下にアガられるよりはまだ良いと思えるからである。
杉浦は9巡目に六筒を引き入れヤミテンを選択。そして、ドラをもってきてリーチ。

リーチを打つなら、カン三万でのほうがドラから遠い分、待ちの選択としては良い。
カン五万にするなら、捨て牌から五万が良いという理由が1つもないと思うのでヤミテンにしたい。
この局の結末は、全体牌譜の通りである。予想以上にひどい結果となってしまった。

オーラスは

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森下がフリテンなのでシャンポンに受けた瞬間、穴澤さんのテンパイ打牌でアガリとなった。
展開がまた、森下の方に向いてきたなと感じた。

6回戦成績
伊藤+11.6P  森下+4.4P  杉浦+1.1P  穴澤▲17.1P

6回戦終了時
森下+47.0P  杉浦+16.1P  伊藤+13.7P  穴澤▲4.5P

7回戦
(起家から、杉浦、伊藤、穴澤、森下)

連盟規定により、ラス親はトータルトップ目の森下になる。
基本的に私の場合だが、追いかける立場の時はトップ3着条件と、トップ2着条件を考えるようにしている。

例えば、杉浦のケースなら、トップ3着条件は順位点が12詰まるので、19,000点差つければ優勝となる。
トップ2着条件は27,000点差つければ勝ち。

今回は、森下が1人抜けているだけなので、穴澤さんの条件も比較的簡単な方である。
1位と2位が抜けていて、もう少し点数差がある場合は2人躱さなければならないので、
並びも必要になってしまうので複雑になる。

東1局に、杉浦が伊藤さんから5,800、1本場では12,000を穴澤さんからアガって森下との差を1,000点まで詰める。

2本場は

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杉浦が穴澤さんに3,900の放銃。この放銃を皆さんならどう見るだろうか?
もったいないと感じる人が多いと思う。私もそう感じた。

しかし、杉浦の気持ちも良く分かる。
杉浦としては態勢が上がってきたから、より自然にまっすぐと打とうと思ったのだ。
守備型から攻撃型に変更した杉浦。
シフトチェンジしたからこそ、ここまで登りつめてきたのだと感じ取っている。

ただ、態勢攻撃型としては当たり前ながら未熟だと思う。
場数が足りないから致し方ない部分だと見做している。
麻雀は瞬間の勝負の時に勝敗を決めるのは、比較的にスタイルの完成度で決着が付いてしまう事が多いように覚える。お互いに完成度が高い場合には、技術で決着が付く。
私はこう考えている。

東2局 1本場

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森下が穴澤さんに8,000の放銃。この放銃は、先ほどの杉浦の放銃とは意味合いが大分違う。
森下はプロ入りした当時から知っているが、スタイルは変わっていなかったと記憶している。
精度をあげて頑張っているのだと思う。

この局、森下も穴澤さんがホンイツだということにも当然気づいていたはず。

ならば何故か?悪く言うと楽をしたかったかも知れない。
決勝というものは独特の苦しさがある。これは経験した者でしか分からないものだと回顧する。

優勝が見えた時に半端でないプレッシャーが圧し掛かってくる。
相手ではなく、その見えない圧力に屈したのだと思う。
能力ではなく慣れなので、ある程度登り詰めれば形は色々でも誰もが経験することだと考える。

そのあとは、森下がアガると杉浦がアガリを繰り返し迎えたオーラス。
杉浦が38,300、森下が27,000持ち。
杉浦は現状7.6ポイント負けているので、森下が親なので1,300・2,600条件もしくは7,700の出アガリ条件。

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結果は、伊藤さんが穴澤さんから5,200のアガリで幕を閉じ森下が第39期王位になった。
えっ?と思った視聴者の方も大勢いると思う。これも麻雀である。

私が考えるに、伊藤さんは最後までこの決勝を自分らしく楽しみたかったのだと。
この決勝を期に、伊藤さんは今までよりさらに麻雀を好きになっただろう。
杉浦も対局後にオーラスについての不満など1つも漏らしてはいない。

勝った森下も祝勝会の場では、「最終半荘、フラフラになってしまってよく分かりませんでした。」
と語っていた。

タイトルを1つしか獲っていない私がいうのも失礼かも知れないが、
「森下おめでとう。ここからがスタートだから。」

これは祝勝会の時に、私が森下に投げかけた言葉。
負けても反省、勝っても反省である。
森下の今後が楽しみでしょうがない私がいる。
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