プロクイーン決定戦 決勝観戦記

第13期プロクイーン決定戦初日観戦記 白鳥 翔

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昨年の激闘から1年が過ぎ、今年もオンナ達の戦いの季節がやってきた。
「プロクイーン」
女流プロならば誰もが憧れるであろうその頂点に今年度輝くのは誰か。

ディフェンディングで待ち構えるのは、「超攻撃型アマゾネス」和久津晶。
昨年の戴冠は未だ僕の記憶に鮮明に残っている。
「天才すぎるオンナ雀士」茅森早香(最高位戦)が終始リードし、最終戦を迎えて40Pあった差をたった2局、親の跳満2連発でマクってみせた。

茅森も相当悔しい思いをしただろうが、二階堂瑠美も昨年同じ思いをした1人。
一昨年のプロクイーンでは和久津を下し優勝するも昨年の防衛戦では精彩を欠き無念の途中敗退。
(5人打ちの全12回戦、10回戦終了時トータルポイント最下位の者が敗退。残りの2回をポイント持ち越しで戦う。)

その2人が当然の様に今年も勝ち上がって決勝まできた。
茅森に至ってはベスト8で残り2局で跳満、満貫と必要な条件のところからマンガの様な字一色をアガって見事逆転での決勝進出。
やはりこの人には何かあるなと思わされる。

このベテラン3人に立ち向かうのは、童瞳、そして東北の大里奈美。
童瞳に関しては新人王の決勝経験などもあるが、大里は初の決勝進出。緊張するなという方が無理があるかもしれないが、とにかく今できる精一杯をぶつけてほしいと思った。
勝てば大金星。今後の麻雀人生が大きく変わる。それくらいこのタイトルの持つ意味は大きい。

まずは抜け番選択。抽選の結果、選択権は順番に大里→童瞳→二階堂→茅森→和久津。
大里は3回戦目の抜け番を選択、特にそこまで理由はなかったと言っていたが、続けて打ちすぎて集中力が切れるのを嫌がったか。(初日6回戦、2日目6回戦)

続いて童瞳は5回戦目、最後の抜け番を選択。
「気持ちが途切れない様に連続して打ちたかった。1戦目でもよかったけど様子見から入っている様で気持ちが負けるのが嫌だった」とのこと。

二階堂、茅森は共に第一希望は1回戦目だったようだが、選択権の順で瑠美が1回戦目、茅森が2回戦目を選択。
同じ理由で朝は「頭が働かないから」とのこと。特に瑠美は少しでも麻雀を見て入りたいと言っていた。

それに対して和久津の第一希望は5回戦目だった様だ。なぜ?と聞くと
「なるべく連続して打ちたいし、初戦は打ちたい」と、二階堂、茅森とは正反対の答えが返ってきた。
和久津は既に精神的な意味合いで戦う準備万端で会場入りしているということだろう。

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1回戦(起家から和久津→茅森→大里→童瞳)抜け番:瑠美

東1局は北家、童瞳の先制リーチに大里がタンピン三色の1シャンテンから2,600の放銃。
表情からは全員に緊張の色は見られなかったが、ベスト16、ベスト8ではスッと模打も繰り返していた大里だったが若干の手迷いが見られた。

東2局は和久津の真骨頂。

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開局アガッた童瞳の先制リーチに、親の茅森が追いかける。そこに一瞬の躊躇もなくピンフのみで2人に無筋の八筒を打ちつけ、ツモアガリ。
闘志剥き出しだ。

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和久津 晶

東4局

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和久津が満貫を童瞳から。
11巡目の一筒を打ったところで役なしドラ1のカン五筒のテンパイが入るが、浮き牌の三索のくっつきが強いとみてここはテンパイとらず。
ここが和久津の巧さだ。攻撃型とはガンガン攻めてリーチを打っていくイメージがある。
和久津が攻めすぎなくらい攻めて、時には暴牌と呼ばれるような牌を打ってそれでも勝ってきたのはこういう所の精度だ。
必死にドコならアガれるかを探し、その理想系となった時迷わずリーチといくのだ。

放銃してしまった童瞳。かなり攻めの姿勢が強いプレイヤーだと僕は認識している。
結果として放銃になってしまったが、気持ちで負けていないのは確かだ。
技術、経験においてはやはり、童瞳、大里よりも他3者が上というのが僕の正直な感想だが、この気持ちを保ち攻め続ける事ができればこの二人の優勝もありえるなと思う。

童瞳の攻めが決まったのが南2局。
和久津から8,000をアガると南3局には茅森のリーチに勝負して1,000・2,000。
これでトップ目にたった南4局の親番。

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茅森のリーチを受けてドラトイツでポンせずに撤退。実際二筒は茅森に当たるのだが、童瞳のフォームならここは着順落ち(順位点はトップから+15P、+5P、▲5P、▲15P)など意識せずポンして真っ向勝負かと思ったが。
結果は終盤にテンパイをいれた和久津が茅森に放銃。裏は乗らずで童瞳のトップで終わったが、どうもしっくりこないなというのが感想だ。

1回戦終了時
童瞳+19.2P 茅森+7.9P 和久津▲6.1P 大里▲21.0P

 

2回戦(起家から童瞳→大里→瑠美→和久津)抜け番:茅森

東1局、1回戦目ラスだった大里が5巡目にピンフドラ2の一索四索待ちリーチ。
1回戦目は後手にまわされてしまう展開が続き大里の持ち味が全くでていなかった。
ベスト16やベスト8の戦いを見て大里の持ち味とは、ゲーム回しや守備力にあると思った。
その分踏み込みが他の選手に比べて浅いので、先手をとれないときつい展開になりがちだろう。
リーチ時点で山に6枚生き。ここから大里の反撃開始。

しかし「ツモ」と、発声したのは瑠美だった。
回りながらのテンパイでフリテンのピンフツモ。大里は何を思っただろう。

次局の親番、ドラ2の配牌もまとまらず親が流れ、迎えた東3局1本場2枚目の北を仕掛けて1シャンテン。
ここはなんとか1回アガっておこう。
そんな気持ちをよそに和久津からものすごい形相でリーチが入る。

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リーチをかけない理由ならたくさんある。役アリで安目5,200。ツモで満貫。一万四万引きの手変わりだってある。
もしかしたら和久津は1回戦目の大里の守備的な打ち回しから、この局大里に撤退して欲しかった、という理由もあるかもしれない。
和久津、一発で二万を引きアガリ、3,000・6,000。跳満のツモアガリでこの局を終えた。
この局を境にアガリを重ねた和久津がトップ。2着には相手の大物手を潰すようにアガリを拾っていった童瞳。

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南4局に瑠美との競りのこの局面、ここを打三筒として力強く四索を引きアガるのだがこう打つのであればやはり1回戦も最後の親で攻めるのが童瞳の型なのかなと思う。
そして2連続ラスとなってしまった大里。踏み止まるためにもここでの抜け番は助かったかもしれない。

2回戦成績
和久津+41.5P 童瞳+7.6P 瑠美▲14.4P 大里▲34.7P

2回戦終了時
和久津+35.4P 童瞳+26.8P 茅森+7.9P 瑠美▲14.4P 大里▲55.7P

 

3回戦(起家から童瞳→茅森→瑠美→和久津)抜け番:大里

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二階堂 瑠美

開局、瑠美のダブリーツモの1,300・2,600からの幕開け。
ここからはかなりの打撃戦が続き和久津のリーチに茅森がまっすぐ打ち抜き5,200放銃。
続く東3局は、瑠美の親リーチに対し和久津が真っ向勝負で7,700放銃。そして同1本場。

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ドラを重ねるとノータイムでリーチ宣言。そして一発ツモの3,000・6,000。
ここにきてようやく天才の一撃が実った。我慢する局、捌く局、そしてきた本手の局。
実際に対戦してみると分かるが茅森は全ての判断が速い。
そして悉く間違えないなというのが印象だ。

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茅森 早香

この後、再度親番で6,000オールをツモった茅森がトップ、他3者の攻撃の嵐にも耐え一度満貫のツモアガリをものにした童瞳が2着となった。

3回戦成績
茅森+46.3P 童瞳+0.5P 和久津▲15.9P 瑠美▲30.9P

3回戦終了時
茅森+54.2P 童瞳+27.3P 和久津+19.5P 瑠美▲45.3P 大里▲55.7P

 

4回戦(起家から大里→童瞳→瑠美→茅森)抜け番:和久津

2ラスで後がない・・・とまでは言わないが、ここもラスだと優勝からはかなり遠ざかってしまう。
その大里開局親番で、茅森から6巡目リーチが入る。

一万二万三万四万六万七万八万九万四索四索四索五索六索  リーチ  ドラ八索

自身の手牌は三色も見えるが2シャンテン。勝負にはまだ早い、と全てを諦めない為にこの局も受けに回った。
無駄な失点はせずに我慢していると南場の親番で遂に手が入り、茅森とのめくりあいに勝ち12,000のアガリ。
このリードを守りきり大里らしいトップの獲り方でマイナスを返済。

南4局、瑠美も跳満テンパイをいれるが、ラス親でラス目の茅森がテンパイを取りにいき、童瞳のヤミテンに放銃。
またも童瞳が2着と連帯を外さない。この半荘押し引きも素晴らしかったと思う。

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童瞳

4回戦成績
大里+28.5P 童瞳+12.1P 瑠美▲7.7P 茅森▲32.9P

4回戦終了時
童瞳+39.4P 茅森+21.3P 和久津+19.5P 大里▲27.2P 瑠美▲53.0P

 

5回戦(起家から大里→瑠美→茅森→和久津)抜け番:童瞳

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大里 奈美

東2局、北家の大里1枚目の北を仕掛けたのがこの形だ。

二万三万六万二索三索四索六索七筒七筒八筒  ポン北北北  ドラ七万

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1枚目をあの形から仕掛けた直後に、安全牌候補の1枚切れの中もツモ切っている。
ということは、ここは大里にとってアガリ切るという意志の表れではなかったか。
北をポンした時の打牌は三筒で高打点も見込めそうな手牌ではあったし、多数の人が鳴かなそうだが別に鳴くのは構わないと思う。
しかし、ここで打七筒としてしまうのは中途半端に映る。まっすぐ九万を打ち抜くか、それでもオリたいならば二万を選択すべきだ。
観戦していてここに大里の精神的なブレを感じずにはいられなかった。

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東4局、ここから親のリーチ宣言牌の三索をポン。ドラ2とはいえ今までの大里からは考えられない仕掛けだ。精神がブレているのか、覚悟を決めたのか。
或いは、これからの戦いに向けて自らを鼓舞する仕掛けだったか。ここは押し切って大里が1,000・2,000をアガった。

この半荘のトップは瑠美。南場での親リーチに3発無筋を押して立ち向かってきたアマゾネスから12,000をアガると、そのままうまく局を回していった。
2着には苦しいながらもやはり安定感抜群の茅森。

5回戦成績
瑠美+36.6P 茅森+7.7P 大里▲7.8P 和久津▲36.5P

5回戦終了時
童瞳+39.4P 茅森+29.0P 瑠美▲16.4P 和久津▲17.0P 大里▲35.0P

5回戦が終わって何と全員が均等に1回ずつトップを取るという結果になった。
6回戦から10回戦までの抜け番選択は、5回戦終了時の成績上位者から
決定権が与えられる。
童瞳→9回戦、茅森→7回戦、瑠美→8回戦、和久津→6回戦、大里10回戦、という抜け番選択となった。

 

6回戦(起家から大里→瑠美→童瞳→茅森)抜け番:和久津

東3局、瑠美の親リーチにツモ切り追っかけリーチといった大里。瑠美から一発で捕らえ、開けられた手牌は、

五索六索七索七索八索八索八索九索九索九索南南南  ドラ八万  裏四万

この12,000。前回トップでこのまま連勝して初日を終えたい瑠美だったが苦しい時間が続く。
しかし、この半荘のトップは大里ではなかった。

茅森が東場の親番でテンパイ連荘すると、5巡目にこのリーチ。

三万三万三万七索八索八索八索八索九索六筒六筒白白  リーチ  ドラ白

リーチ時点で山に1枚しかいなかった高目の白を最終ツモで引き当て8,000オール。
この1撃でトップ目に立つと、この後大きな加点こそならなかったもののの、何も起きることなくトップで終了。
トータルを60P台に乗せて初日を終えた。

6回戦成績
茅森+36.9P 大里+6.4P 童瞳▲8.6P 瑠美▲36.7P 

6回戦終了時
茅森+65.9P 童瞳+30.8P 和久津▲17.0P 大里▲28.6P 瑠美▲53.1P