プロクイーン決定戦 決勝観戦記

第14期プロクイーン決定戦二日目観戦記 紺野 真太郎

4回戦終了時トータルポイント
童瞳+55.0P 宮内+46.0P 西嶋+22.6P 和久津+19.8P 茅森▲143.4P

茅森まさかの大不調で終了した1日目。5回戦目の抜け番はその茅森。4者にとってはここで抜け出すことが戴冠への近道となるか。

 

 

100
 

5回戦 起家より 宮内 和久津 童瞳 西嶋

東1局、北家西嶋の配牌がいい。

一索三索三索五索七索九筒東東南西白発発  ドラ南

速いわけではないが迷わなくていい。ここに絶好のツモ六索で一気にホンイツへ。5巡目には積極的に発を1鳴き。
その発を鳴かした和久津も1シャンテン。

五万五万五万七万八万七索九索五筒六筒七筒七筒八筒九筒  ドラ南

高目に決まれば文句なしだが、決まらずも戦う構えか。
先にテンパイを入れたのは和久津。六万九万でリーチを打つ。

五万五万五万七万八万九索九索五筒六筒七筒七筒八筒九筒  リーチ  ドラ南

三色とはならなかったが、六万九万は悪い待ちではない。
和久津の一発目のツモはドラ表示牌の東。勿論ツモ切りだが、西嶋がポンしてドラを勝負してきた。
西嶋の待ちはカン八索。和久津の待ちの方が強いように思えたが、結果は西嶋のツモ。

 

100

 

和久津の選択は結果には繋がらなかった。また、三色に拘った場合には西嶋のツモアガった八索でテンパイとすることも出来たかもしれないが、ルールや状況を考えればナンセンスか・・

東2局、軽い配牌を手にした親の和久津。ここは仕掛けて2,000。連荘に成功する。

二万三万四万六索七索八索九筒九筒東東  ポン中中中  ロン九筒  ドラ五筒

この後和久津は3局連続リーチで畳みかけるが、アガリには至らず波に乗ることは出来ない。
和久津の親が流れた東3局、今度は宮内が先制リーチ。

三万三万六万七万二索三索四索五索六索七索五筒六筒七筒  リーチ  ドラ五筒

文句なしの勝負手。この時、親童瞳も三色の1シャンテン。和久津が放った現物の九万を仕掛け追いつく。

七索八索九索三筒三筒三筒四筒四筒八筒九筒  チー九万 左向き七万 上向き八万 上向き  ドラ五筒

待ちは厳しいが、一発も消せるとなれば必然のチーか。そして、このチーで宮内がツモるはずであった五万を食い下げた。

 

100

 

それでも枚数的にはまだ宮内有利。童瞳も四筒三筒と無スジを勝負し抵抗するが、宮内が安目ながらも八万をツモ。裏ドラも乗り3,000・6,000。ここまでの防戦一方だった劣勢を跳ね返した。

東4局和久津リーチ。流局、1人テンパイ。南1局1本場和久津リーチ。西嶋から2,600。自分が出した供託を回収。決して牌勢に恵まれているとは言えない和久津だが、じりじりと回復させ、いつの間にか2着目に浮上していた。

南2局の親番、ここも仕掛けて出た和久津。1,500だが、宮内から直撃し1,000点差にまで肉薄する。

 

100

 

安く見える上、四筒は通りそうな捨て牌。和久津にしてみれば四筒は余りそう、または山にいると考えられる牌。宮内が注文に嵌った形か。

続く1本場、ここで連荘するようであれば和久津は噴くであろう・・そう感じさせるポイントの局。和久津は真っ直ぐ進め1シャンテン。

五万六万六万七万八万五索六索六索六索七索五筒八筒九筒  ドラ五索

対する西家の西嶋、4巡目リーチ。

 

100

 

西嶋の打ち筋から考えると少し違和感が。悪い意味ではないが、345の三色を見てのテンパイ取らずや、もう一役を求めてのヤミテンとこれまではしてきたような気がしたからである。それだけこの親番を続けさせてはいけないと感じてのことだろうか。そして、この判断が現実に和久津を止めることとなる。

和久津、5巡目ツモ四筒、打九筒。リーチなど無い様である。そして次巡の二索ツモ切りで決着。1,300の点数以上に和久津にとって痛い親落ちとなった。

南3局は和久津を止めた西嶋が1,300・2,600。オーラスを前にトップ目に返り咲く。

一索一索二索三索四索北北  ポン八索 上向き八索 上向き八索 上向き  ポン発発発  ツモ一索  ドラ八筒

しかし、この半荘を制したのは宮内であった。5巡目に一気通貫確定のリーチ。リーチ棒が出たことにより、1,000・2,000でトップになる為リーチを打った和久津との戦いを制して5,200。トータルトップに立つと共に2周目の抜け番選択順1番手を得た。

5回戦終了
宮内+23.8P 西嶋+11.5P 和久津▲11.2P 童瞳▲24.1P

トータルポイント
宮内+69.8P 西嶋+34.1P 童瞳+30.9P 和久津+8.6P 茅森▲143.4P

トータルトップに立った宮内が選んだ抜け番は9回戦目。3日目の初戦だ。最終日のライバル達の動向を見つつ、残り3戦に臨める理想的な抜け番。以下、西嶋は8回戦、童瞳は6回戦、和久津は7回戦を選択。敗退者が決まる10回戦を茅森が押し付けられた格好となった。

 

6回戦 起家より 茅森 和久津 西嶋 宮内

序盤は穏やかな点数移動で迎えた東3局、和久津ノーミスで七対子テンパイ。1枚切れの東で即リーチ。

四万四万五万五万二索二索八筒八筒東北北中中  リーチ  ドラ北

この時1シャンテンであった親の西嶋。リーチ一発目のツモが無情にも東・・

 

100

 

親でもあり好形である程度打点も見える。ツモ切って放銃したとしても何もおかしくは無い。しかし、ここはスジの打三万とし一旦回避。次巡のツモ七万で打三万の続け切りで完全にオリてしまった。これは西嶋のファインプレイ。流局に持ち込んだ。

一方、躱された和久津。止められたとの感触は得ているだろうが、どこ吹く風で、次局キッチリと1,000・2,000でリーチ棒を回収した。

三万四万五万五万六万七万五索七索二筒二筒  ポン五筒 上向き五筒 上向き五筒 上向き  ツモ六索  ドラ五万

ここまでほとんどの局でリーチか仕掛けで参加している和久津。南1局、ここも参加料とばかりにリーチ棒を卓上に出した。

四万五万五索六索七索一筒一筒五筒六筒七筒東東東  リーチ  ドラ五筒

これだけ攻撃参加されては周りには和久津が好形か愚形か、高いのか安いのかの判断が難しくなる。結果、引き気味に打たざるを得なくなる。

リーチを受けての宮内。既に七対子でテンパイ。

三万三万四万二索二索四索四索四筒四筒北北発発

和久津の河には四万があり、躱したいところであったが、通って無い七筒を掴むと、七筒に受けかえた。そうすると、今度は14巡目に生牌の東だ。ギブアップでもおかしくない場面であったが、ここは東を打った。そうすると呼応するかの様に次巡のツモは七筒。またもや和久津のリーチは不発に終わった。

2日目に入っても調子が上向いてこない茅森。宮内のリーチを受けての追いかけリーチが渾身の手。

六万六万六万八万八万二索二索二索白白白中中  ドラ二筒

山にはまだ中がいる。しかし、茅森のツモが回ってくる前に西嶋のアガリで局が終わってしまう。

 

100

 

なかなか上昇のきっかけを掴めない・・

南3局親の西嶋テンパイ1番乗り。

三万四万三索四索一筒一筒四筒五筒五筒五筒六筒七筒八筒  ツモ五万  ドラ六万

リーチでも不思議はないが、ここは落ち着いて打一筒のテンパイ取らず。次巡ツモ五索。見ようによってはアガリ逃し。だが、西嶋にとってはこれが最初のテンパイ形と同様。ためらわずリーチ。九筒ツモであったが、裏ドラが1枚乗り2,600オール。

これで40,000点を超えトップ目前と思われたが、1本場、和久津が4巡目リーチで3,000・6,000。

三索三索六索七索八索二筒三筒三筒四筒四筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ二筒  ドラ六筒  裏北

更にオーラス親の宮内が3巡目リーチからの6,000オール。

二万二万三万四万五万五万六万七万六索七索八索三筒四筒  リーチ  ツモ五筒  ドラ三万  裏三筒

西嶋は3着まで転落。女流トップの強さを見せつけられる結果となった。

6回戦終了
和久津+26.6P 宮内+13.2P 西嶋▲8.0P 茅森▲31.8P

トータルポイント
宮内+83.0P 和久津+35.2P 童瞳+30.9P 西嶋+26.1P 茅森▲175.2P

 

7回戦 起家から 西嶋 茅森 童瞳 宮内

初日に比べれば断然、落ち着き、らしく打てている西嶋。ここも気負うことなくリーチ。

二万三万四万四万五万六万二索三索四索四索五索四筒四筒  リーチ  ドラ八筒

役無しカン五万のテンパイを入れていた童瞳。西嶋の現物の七筒をチーし打一筒。メンツをスライドさせ役有りに移行。

四万六万八万八万八万五索五索二筒三筒四筒  チー七筒 左向き五筒 上向き六筒 上向き

カン五万から二万五万に変化し捌きに行っていたが三索が捕まり5,800の放銃。どうにも気合が空回り・・深い踏み込みはリスクが伴うのは覚悟の上であろうが、一歩引く柔らかさを覚えれば更に成長するであろう。

少し飛んで東4局、この7回戦ここまでは苦戦の宮内。親番を迎えてもこの苦しい配牌。

二万四万一索二索四索五索一筒六筒東南西北発中  ドラ二筒

あと1牌あれば九種九牌で流せたが、これではそうはいかない。それがどこでどうなったのかこうなるので麻雀は面白いし、恐ろしい。

 

100

 

攻守のメリハリが効いている宮内。こういう手が入るのも我慢があってのことだろうか。

南1局10巡目、茅森リーチ。

四万五万六万二索三索四索七索七索七索六筒六筒南南  リーチ  ドラ九筒

茅森が相手なら勝負になると踏んだか童瞳が追いかけた。

三万三万三万五万六万二索三索四索一筒二筒三筒中中

2件リーチに挟まれた親の西嶋。安全に進めるならば北のトイツ落としか・・

 

100

 

だが、ここを勝負所と見たか、西嶋はカン八筒で3本目のリーチ棒を卓に置いた。決着はあっけなく着いた。童瞳のツモは八筒であった。リーチ一発ドラ1で7,700。更には南3局にこの4,000・8,000。宮内を逆転し、反対に大きく突き放す。

 

100

 

それでも簡単にトップを取らせてくれないのが現女流桜花の宮内。テンパイ連荘の後の1本場、この3,900で差を詰める。

二万三万三万四万五万五筒六筒七筒南南南西西  リーチ  ロン一万  ドラ八索  裏東

南4局2本場2巡目、西嶋が以下の形から動く。

六万七万六索七索八索二筒五筒五筒東南白発発  ドラ五索

オーラストップ目であることを考えれば普通なのかもしれないが、どうもそうは思えない。どこか焦りを感じてしまう。この手では周りからの反撃を受けた時に回ることが難しいからである。結果、下家の茅森に好牌が流れ込みリーチを受けることになる。

三万四万五万六万七万八万八万二索三索四索五索六索七索  リーチ

茅森からしても、この手をアガることが出来ればラス抜けが叶う。それよりも喉から手が出る程欲しいであろう浮上のきっかけになりえる。

西嶋はカン三筒テンパイ。茅森の捨て牌に六筒がある程度で、アガリには少し厳しい形。詰め寄られたとはいえ、宮内とはまだ7,200点リードしている。本当に苦しいのは宮内の方の筈だ。そこを冷静に考えられれば回避することが出来たかもしれない。しかし、西嶋は引いてきた二万を河に放ってしまった。

麻雀とは良く出来たゲームであると聞くが、このような場面を見ると本当にそう思う。焦りから生まれた、ほんの少しの逃げの気持ち。楽になりたいが故の無謀。結果は正直である。

西嶋にとっての救いは次の8回戦は抜け番で今日はもう打たないことか。最終日に向けて切り替える時間を得ることは大きいであろう。

7回戦終了
宮内+26.1P 西嶋+40.8P 茅森▲13.2P 童瞳▲27.6P

トータルポイント
宮内+109.1P 西嶋+40.8P 和久津+35.2P 童瞳+3.3P 茅森▲188.4P

 

8回戦 起家から 茅森 宮内 和久津 童瞳

7回戦オーラスで満貫をアガリ3着となった茅森。トータルポイントからも苦しい立場に変わりはないが、それでも潰され続けたリーチが成就したのはホッとしたであろうか。
10回戦が抜け番となる為、あと半荘2回で最低1名は捕まえないといけない茅森。この8回戦は東1局からエンジン全開となった。

9巡目にリーチ。その手牌は

四万四万四万五万五万二索二索二索東東東西西  リーチ  ドラ四万

ダブ東ドラ3のツモリ四暗刻。出アガリでも24,000からの大物手だ。対抗したのは童瞳。12巡目にこちらもツモリ四暗刻テンパイ。

三万六万九万九万九万一索一索六索六索六索七筒七筒七筒  ツモ六万

しかし、こちらは直前に六万が立て続けに切られ、一索も2枚切られていることから空テン。六万をツモ切りし、当然のテンパイ取らず。だが、この空テン、テンパイ取らずが功を奏す。この六万に茅森の当り牌五万がくっつきテンパイ復活。そして、仕掛けて捌きに出ていた和久津から七万で3,200のアガリ。茅森の手が開かれることは無かった。もし六万か1が1枚でも残っていたらポイント差を考え四暗刻に向かっていたであろう。そうすると五万を勝負する形となり茅森のアガリとなっていた可能性が強い。24,000の直撃と順位点で80ポイント弱を一気に詰められていたとこであった。

親の大物手を潰された茅森。東2局配牌。

一万二万三万四万五万六万一索三索二筒五筒六筒九筒九筒  ドラ北

ダブリーチャンス。ここまでの7戦が嘘の様に手が入りだした。第1ツモは一筒。打五筒で三色へ。

7巡目、和久津リーチ。七対子八万単騎。

七万七万八万七索七索八索八索七筒七筒八筒八筒白白

同巡茅森追いつく。狙い通りの三色リーチ。

一万二万三万四万五万六万一索三索一筒二筒三筒九筒九筒  リーチ

ここまで何度も競り負けてきた茅森であったが、ここは和久津に競り勝った。裏ドラも1枚乗り8,000。風向きが完全に変わった。

東3局。今度は宮内がリーチ。

四万五万五万五万七万八万九万四索五索六索三筒四筒五筒  リーチ  ドラ発

茅森は1シャンテン。

六万七万八万七索八索二筒三筒四筒四筒六筒七筒八筒発

宮内、この3面張が出ないし、ツモれない。そうしているうちに茅森、ドラの発を重ねて追いかけリーチ。もうこの時には嫌な予感しかしなかったであろう宮内。一発で九索を掴み8,000の放銃となった。

東4局1本場、またもや茅森のリーチ。そして、またもやの勝負手。

二万三万四万五万六万七万五索六索六索六索七索六筒七筒  ドラ七万

宮内にも小三元が入っていたが、ツモ切ったのは茅森。高目五筒で3,000・6,000。

何が起こったのだろうか。今まで全く勝てる気がしなかった茅森が、今は誰にも負ける気がしない。

南3局茅森またも三色リーチ。

三万四万五万六万七万三索四索五索二筒二筒三筒四筒五筒  リーチ  ドラ九万

ただ、この時は宮内にも大物手が入っていた。

一筒二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒白白発発

終了後、この時の選択を宮内は悔やんでいた。確かにポイント差や結果から考えればオリる方が得かもしれない。
人によっては行く必要がないと言うかもしれない。だが、ベスト8、決定戦と戦ってきた中でこの様な手をしっかり打ち切れるからこそトータルトップに立っているように思えた。

 

100

 

8回戦終了
茅森+46.7P 和久津▲2.9P 童瞳▲16.4P 宮内▲27.4P

トータルポイント
宮内+81.7P 西嶋+40.8P 和久津+32.3P 童瞳▲13.1P 茅森▲141.7P

10回戦が抜け番となる茅森は次の9回戦で+100Pくらいは最低でも欲しいところ。奇跡に近いと言うより奇跡そのものだが、過去に例がない訳ではない。
前年覇者童瞳は強気の攻めが少し裏目に出ている感じ。
決して好調とは言えない和久津だが、それでもこの位置につけているのはさすがとしか言えず、西嶋の戦いぶりは健闘の域を越えており、半荘を重ねるごとに成長している様。
初の女流2冠を目指す宮内は現女流桜花として恥ずかしくない堂々の麻雀を見せている。

泣いても笑っても残すは半荘4回。プロクイーンの座に就くのは誰であろうか。