プロクイーン決定戦 レポート

第20期プロクイーン決定戦最終日レポート

【栄えある20期目のプロクイーンに輝いたのは、日本プロ麻雀協会所属りんのなお!18期以来2年振り2度目の女王に返り咲く!!】

■最終日システム
▪️10回戦終了時、トータル5位は途中敗退。
▪️上位4名で11・12回戦を行い優勝者を決定。

 

 

■解説
和久津晶・齋藤豪
■実況
阿久津翔太

 

 

■立会人
ともたけ雅晴

■開始前成績
 

 

⌘9回戦(東城・古谷・蒼木・りんの、抜け番:瑠美)

 

 

10回戦目が抜け番となる東城。上位4人に入る為には大きなトップを取って、瑠美に出来るだけプレッシャーを与えたい所である。開局、親の東城の配牌は以下の形となっていた。

 

 

三色も見える好配牌。とにかくリーチで主導権を取りたい局面であったが、ここから思うようにテンパイしない。手牌が良過ぎると受け入れが少ないので仕方ない側面もあるが、形が決まっている以上あと1牌が入らないと始まらないのである。

そして、その合間を縫って先制リーチに辿り着いたのはりんのであった。

 

 

ドラ3裏2の跳満ツモ。もちろん追いかける全員に堪えるアガリであるが、後のない東城にとっては特に痛すぎるスタートになったのは間違いないだろう。

トータルトップのりんのが1人抜け出す中、何とか離されないようにと古谷が後を追う。

 

 

リーチをしていた蒼木より12,000のアガリ。
そして連荘を重ねてトップ目に立った古谷であったが、りんのがそれに待ったをかけた。

 

 

変則手の河になりそうであったが、リーチ宣言牌を二筒にする事でメンツ手という幻想も相手に抱かせる手組みを披露したりんの。見事な七対子で、この半荘も堅実にポイントを伸ばした。

一方で条件のある東城であったが、速くて打点のある山に8枚残っていたリーチもアガリには結びつかずここで敗退。

昨年度のプロクイーン決定戦では最後の最後まで優勝争いをし、今期はMリーガーとしても最前線で戦っている。その中で今期こそはと、結果にこだわりたいという思いが表情からも溢れ出る決定戦であった。来期またこの舞台に戻って来てくれる事に期待したい。

 

 

⌘10・11・12回戦(古谷・蒼木・りんの・瑠美)

 

 

先に東城が打ち終えている為、余程の事がない限り途中敗退の心配がない瑠美。それも相まってか積極的な姿勢に牌も応えた。

 

 

4巡目に1枚切れの二筒単騎でリーチに踏み切ると、親の古谷からの攻め返しに合う中での満貫ツモ。

それに続くように今度は蒼木のターン。

 

 

終盤に親リーチのみを掛けると一発と裏ドラを2枚乗せての4,000オール。このあと古谷にも中打点のアガリが生まれ、りんのを徐々にラスに押し付ける事に成功した。

しかし、一昨年の女王はそんな劣勢をも意図も簡単に押し返す。

 

 

ドラの自風の西が暗刻の勝負手をしっかりと物にし、一気にラスを抜け出した。他3者にとっては見えかけた背中がまた遠くに霞んでいく瞬間であり、点数以上に重くのしかかったのが画面越しからも伝わってくる。

 

 

そして、このポイントは更に見えない付加価値をもたらした。

 

 

接戦で迎えた10回戦南3局、瑠美がリーチをかけた場面。
解説席からは
『りんのさん以外から(当たり牌)出て欲しくないですね。』
というコメントがあったが言霊となってそれは現れた。

 

 

恐らく古谷もそこまで前に出たくはなかったとは思うが、跳満級の1シャンテンという手格好まで育ち、当たり牌である二万が押し出されていく。
しかし、瑠美はこの牌に対して手牌を倒す事はなかった。りんののラスを優先しツモアガリにかけた“勝負の見逃し”である。そして、この行方には思いがけない結果が待っていた。

 

 

親のりんのがドラの八索3枚を武器にリーチで追いつくと、古谷からテンパイ打牌の七筒を捉えたのである。
瑠美の選択は決して責められるものではなく、むしろ勝つ為の最善の我慢だったかもしれない。それよりも、りんのが愚形ながら見事にリーチに行けた強さを讃えるしかないだろう。

このアガリが決め手となり、10回戦はりんのがプロクイーン奪還に向けて大きな逆転トップとなった。

11回戦開始前の全体のポイント状況は以下の通り。

 

 

展開も味方に、りんのは2番手の蒼木でさえ120P程の差を課していた。それでも逃げ切ろうという姿勢はなく、加点できる時は普段通り声を出していく。

 

 

ピンフの手をしっかりとリーチとすると、高めツモに裏も1枚加えての最高打点で3者を150P以上に突き離す。
もしかしたらセオリーはヤミテンで、見方によっては隙を与えてしまうと言われるかもしれない。しかし、その決め事は何も正しいとは限らなく、ヤミテンでツモる方が隙を作るとも言える。相手をリスペクトするからこそのリーチではないだろうか。

圧倒的に他者を寄せ付けない。麻雀に絶対はないが優勝者はりんのだと確信した人も多いのではないだろうか。
しかし、連盟所属の3人がそうはさせじと意地を見せる。
まずは蒼木が初日でも見せた風ならぬ台風をもう一度吹かせた。

 

 

東場の親でドラ1カンチャン七万待ちを一発でツモリ4.000オール。

 

 

連荘した次局、高めの発を手元に引き寄せ2局連続の4,000オールでりんのとの距離を縮めた。

 

 

『天衣無縫(てんいむほう)』
無邪気で飾り気のない様。自然でかつ美しく完成されていること。

この言葉を二つ名に持つ者。そう、それは『二階堂瑠美』の事である。
蒼木に続いて今度は瑠美が魅せた。りんのが親番の東4局、

 

 

『四暗刻』

正に瑠美が体現したい麻雀が花形の1つとなってここに成就した。

 

 

そうなると次の出番は古谷というのが自然の流れである。

 

 

この局も積極的にリーチで前に出ていたりんのから、値千金の12,000の一撃カウンターをお見舞いしたのだ。

これだけでは終わらない。

 

 

一周して蒼木がドラの二万を暗カンから、リーチ・ドラ7の倍満の出アガリを決める。放銃となったのはまたしてもりんのであった。

 

 

蒼木の台風は勢力を落とす事なく南3局には瑠美から親の12,000を上積みし、先程まであった150Pのりんのとの差は30Pを切っている。

ここまで極端な動きは普段の麻雀でもなかなか無い。ましてや今いる場所はタイトル戦の大事な決勝戦であるのだ。凡人なら急な環境の変化に耐えられず焦りや考えられないようなミスが出てもおかしくない。しかし、りんのはそれには該当しなかった。

 

 

一刻も早く蒼木の親を流すべく、捌きに使ってもおかしくない牌姿がやってきたが悠々と発をスルー。動揺して声が出なかったのだろうか。いや違う。着順アップを狙って打点を求めに行っているのだ。このような判断はこの決定戦の中で幾つも見せてきており、心情の揺れを感じさせなかった。

 

 

メンゼンで仕上げ自らの力で蒼木の親を流すと、

 

 

立て続けにアガリをものにし、11回戦は何と一気に2着まで浮上して終えたのである。

そうなると最終戦は18期の女王の貫禄とも言うべきなのか、

 

 

終始前に出る強気の麻雀を駆使して、節目の20期プロクイーンアンチェアを獲得した。

■最終結果

 

 

 
第20期プロクイーン
優勝:りんのなお
準優勝:蒼木翔子
3位:二階堂瑠美
4位:古谷知美
5位:東城りお

 

 

りんのなお
『来年までにもっと磨いてきます。ありがとうございました。』

(文:小林正和)