プロクイーン決定戦 レポート

第15期プロクイーンベスト16C卓レポート 楠原 遊

プロクイーンベスト16のも折り返しとなった。A卓からは高田麻衣子・西嶋ゆかりが、B卓からは王政芳・山脇千文美が勝ち上がりを決めた。
この日行われたC卓。一体誰が次のステージに進むのか、最後まで目の離せない戦いとなった。

ルールは日本プロ麻雀連盟WRCルール、半荘4回戦で2名の勝ち上がり。
次にベスト8へ進出する選手は誰なのか、それでは今週の対局者を紹介していこう。
(敬称略)

 

 

100

和久津晶(ワクツアキラ) 第9・12期プロクイーン 前年度決勝進出
東京本部所属 23期生 五段 東京都出身
ロン2プロフィール

 

 

100

佐月麻理子(サツキマリコ) 第26期マスターズ優勝・第14期女流雀王
日本プロ麻雀協会所属 東京都出身

 

 

100

清水香織(シミズカオリ) 第27期王位・第2期プロクイーン・第5期女流桜花
北関東支部所属 13期生 五段 栃木県出身
ロン2プロフィール

 

 

100

黒沢咲(クロサワサキ) 第6・7期プロクイーン
東京本部所属 21期生 五段 東京都出身
ロン2プロフィール

 

いきなりの全員タイトル経験者卓。現マスターズの佐月に、女流プロ唯一の王位戴冠経験のある清水、鳳凰位戦現A1・A2リーガーの和久津に黒沢。
まるで決勝戦と見紛えるような豪華なメンツでのベスト16に、否が応でも期待が高まる。

 

1回戦(起家から和久津→佐月→黒沢→清水)

開局から手と手がぶつかる展開となった1回戦。
東1局は黒沢のメンホンリーチに8,000、そして東2局は和久津のドラドラに3,900を打ち込んだ清水。幸先の悪いスタートとなったか。

東3局、ここで先手を取ったのは北家・佐月

二万三万四万一索二索三索九索九索一筒三筒七筒八筒九筒  ドラ西

一手変わりにチャンタや三色も見える手だが、8巡目リーチの選択とした。
一万は場に2枚切れ、清水・和久津の河に一筒が早く、四筒は2枚、五筒は3枚河に落ちている。二筒はどこかにまとまっているか、山にいる可能性も高いと踏んでのリーチ。

そのリーチを受けた清水の手がこちら。

 

100

 

テンパイを取るとしたら、三万七万の選択だが、どちらも通っていない牌。現物には困らない手ではあったが、ここは高目の可能性を追って打三万の勝負。
そして次巡九万を引き入れもう一度勝負の五万切りリーチ。
先行の佐月が八万をツモ切ったばかり、河に2枚切れのカンチャン待ちだがそんなことは問題ではない。1回戦を戦う姿勢がしっかりと現れた、非常に清水らしい選択となった。
そして6巡後、佐月がツモ切る八万に裏ドラがのって8,000のアガリ。
攻めの姿勢が生んだ大きな得点となる。

南4局1本場

ここまで、なかなかアガリに結び付かなかった佐月がラス目となり、和久津・黒沢・清水3者のトップ争いとなったオーラス。
ここでも清水が魅せる。

三万三万三索四索五索六索七索四筒六筒七筒八筒西西  ツモ七筒  ドラ五筒

現状2着目、連荘したい親番だがここはじっくりと構え西を落としてゆく。
そして仕上がった形がこちら。

三万三万二索三索四索五索六索七索四筒五筒六筒七筒八筒

西を切って1シャンテンとらずとしてから10巡後。終盤ともいえる巡目だが、この手も力を込めリーチ。
ここに仕掛けを入れていた和久津が飛び込み12,000は12,300。

最終形へのしっかりとしたこだわりと、それを実現化する強い攻め。
そんな清水の力強さが表れた1回戦となった。

1回戦結果 清水+27.1P 黒沢+14.6P 和久津▲16.3P 佐月▲26.4P

 

2回戦(佐月→黒沢→清水→和久津)

ここまで、テンパイはよく入るもののアガリが1人まだない佐月。1回戦4着だったこともあり、この半荘ではポイントを挽回していきたいところ。

東3局1本場8巡目、そんな佐月に再びテンパイが入る。

一索二索三索四索五索六索六索七索八索五筒六筒発発  ドラ八筒

発は生牌。九索は1枚切れ。場には比較的ソーズが安い。
ここまで躊躇なくカンチャンをリーチしていた佐月がこのリャンメンテンパイをヤミテンとする。もちろん手変わりも多い手だが、1回戦の各者の立ち廻りを見ての作戦変更ともとれる。
そしてすぐに四筒をツモ。初アガリは300・500。
普段から様々な公式戦に参加し、多様な打ち手と対局する機会の多い佐月。ルールやメンツへの順応力の高い、彼女らしい1局となった。

南3局2本場

東3局以降、二の矢となるアガリがないものの、テンパイ料で原点までわずかの西家・佐月からついに本手となるリーチ。

二万三万四万五万六万七万三索四索五索五索六索四筒四筒  リーチ  ドラ三筒

その宣言牌をポンしで勝負に出たのは南家・和久津。

三索五索七索七索六筒六筒六筒九筒九筒九筒  ポン三筒 上向き三筒 上向き三筒 上向き

決死の覚悟のように見える仕掛け。役なしテンパイだがここからトイトイやタンヤオを見たか。そしてすぐに佐月のアガリ牌である四索を食い取り九筒を落としてゆく。

そして親の清水もテンパイ。

二万三万四万六万七万八万四索五索六索七索八索七筒七筒

南家・黒沢もチーテンを入れる。

二索二索二索三索三索四筒四筒五筒五筒五筒  チー三万 左向き二万 上向き四万 上向き

佐月がリーチをかけてから5巡、全員の熱が感じられる局となった。
勝負の行方に注目が集まったが、ここで手を開いたのは佐月。清水がツモ切った四索にロンの声、裏ドラを1枚乗せ8,000は8,600のアガリに供託2本の大きな大きな収穫を得た。
1回戦ラスだった佐月がトップだった清水から直撃したことにより戦いが面白くなったが、オーラスは清水が2着をもぎとり一息つく結果となった。

2回戦結果 佐月+23.7P 清水+5.7P 和久津▲6.0P 黒沢▲23.4P

トータル 清水+32.8P 佐月▲2.7P 黒沢▲8.8P 和久津▲22.3P

 

3回戦(清水→佐月→黒沢→和久津)

この日の対局も折り返しを迎えた。
1人プラスの清水に、それを追う小さなマイナスの佐月・黒沢、そして少し離れてしまったが、その攻撃力で一気に駆け上がる展開も今まで何度となく見せてきた和久津。
1、2回戦のように手がぶつかりあう展開となるのか、それともにらみ合いが続く重い展開となるのか、片時も目が離せない。

大きな点数移動もなく迎えた南2局3巡目。東家の佐月が仕掛ける。

1枚目の一筒をポンして打六索、4シャンテンの形。どうにもアガリには時間がかかりそうな形だが、果敢に鳴いてゆく。ラス目、南場の落とせない親番、そうだとしてどれだけの打ち手がここで声を出せるだろうか。
そこに立ち向かっていくのは北家の清水。3巡目、1シャンテンとなった和久津から打ちだされたドラの東をポン。

二万二万二万四万六万五索六筒発発発  ポン東東東

そしてその直後、仕掛けが3つになった佐月の手牌。

二筒七筒南北  ポン西西西  チー三筒 左向き二筒 上向き四筒 上向き  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き

3フーローの2シャンテン。放送対局ではなかなか見ることのできないアグレッシブな仕掛けとなる。それだけ佐月がこの局に賭けている思いを感じることができる。
そこに西家の和久津が追い越してリーチ。

五万六万七万一索二索三索四索五索六索八索八索七筒八筒  リーチ

そのリーチを受け南家の黒沢。

678の三色の1シャンテンではあるが、親の3フーロー、子のリーチ・ドラポンに挟まれ手の内には生牌の中。まっすぐ打ちづらい状況かのように思われたがここで選択したのは無筋の五万
黒沢とて、一歩も退かない構えということだ。

8巡目にしてまばたきさえためらわれる様な、激しい展開となったが、ここで手を開けたのは前巡にテンパイを入れていた佐月。

五筒六筒七筒南  ポン西西西  チー三筒 左向き二筒 上向き四筒 上向き  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  ツモ南

配牌を開けた各者の手を見た誰がこの結果を予想しただろうか。
3回戦にして新しい引き出しを開けて見せた佐月が、トップ目に立つ。

南4局
ここまでの点数は清水32,600 佐月30,500 黒沢30,700 和久津26,200
これだけ各者が攻める展開が続いているにも関わらず持ち点は平たく、誰がトップを取るのか全く予想のつかないオーラスとなった。

親番・和久津の手

八万を引いて1シャンテンとなった手。ここから打五筒
黒沢の仕掛けもあり、猶予の無い親番になるかもしれないが、ここはしっかりと手役を見つつ、アガリに向かう選択をした。そして九万八筒とツモって8巡目七索切りリーチ。

二万三万四万七万八万九万六索七索八索九索七筒八筒九筒  ドラ九万

この時点では山に六索が3枚、九索が2枚。
見事な手順を見せた和久津、3者も粘るがここは1人テンパイで流局。
オーラス1本場はアガリトップとなった黒沢が和久津から1,000は1,300をアガリ

3回戦結果 黒沢+17.0P 清水+6.6P 佐月▲5.5P 和久津▲18.1P

トータル 清水+39.4P 黒沢+8.2P 佐月▲8.2P 和久津▲40.4P 

 

最終戦(黒沢→佐月→清水→和久津)

さて、今までのA卓B卓とはうってかわり早い展開でむかえた最終戦。
ここまで順調にポイントを積み重ね先頭を走る清水に、3回戦のトップでトータルをプラスにした黒沢、それを16.4P差で追う佐月に、最後尾から一気に駆け上がりたい和久津。

おのおのの思惑を余所に、最終戦が今はじまった。

東3局4本場、各者大きなアガリもなくむかえた清水の親番。
先手を取ったのは西家・黒沢。

二万三万四万六万七万八万五索七索二筒二筒四筒四筒四筒  リーチ  ドラ白

ドラの白もそうそうに切り飛ばし10巡目リーチ。現在微差のラス目、トータルポイントでは佐月にまくられている状態からの攻めのリーチ。
それを受け和久津の手牌がこちら。

 

100

 

現物の七万を切れば、アタリ牌を使いきった三索六索待ち。
しかしここで和久津が選んだのは四万。メンタンピン、のほどほどの打点ではこのポイント差を覆すことができないと踏んだか、六万が2枚切れではあるが、567の三色でさらなる高めを目指してゆく。

ポイントゆえの苦しい打牌にも見えるが、和久津はごく自然に、いつもこんな選択を繰り返している気がする。そして決めた時に、一気に駆け上がる。
この局は実らず流局となったが、まだ親は2回残っている。アマゾネスはまだ、諦めていない。

南1局
ここまで3ゲームと東場、佐月にはなかなか大きなアガリがなかった。
満貫以上は2回戦のオーラスに清水からアガった8,600のみ。それ以外では1ハン、2ハンのアガリとテンパイ料でここまで戦ってきた。
その佐月についに大きなチャンスが訪れる。

六万七万一索一索二索二索三索三索二筒二筒三筒四筒五筒  ドラ五万

ライバル黒沢の親番、現状トップ目。この手をかわし手ではなく、決まり手としてしっかりとリーチしてゆく。
そしてほどなくしてツモったのはドラの五万。裏ドラは四索
この日はじめて本手をツモでアガリきった佐月。ここまで仕掛けやテンパイ取りで魅せてくれた佐月だったが、また新しい攻めを見せてくれた。

このまま清水と佐月のペースで進むゲーム。オーラス和久津の親番、ねばる和久津に、満貫直撃・跳満ツモ条件を満たす手作りをした黒沢だったが、最後も手を開けたのは佐月。

一万一万五万六万七万七万八万九万一索二索三索六索七索  ツモ八索  ドラ二筒

最終戦結果 佐月+32.9P 清水+2.5P 和久津▲12.1P 黒沢▲23.3P

トータル 清水+41.9P 佐月+27.7P 黒沢▲15.1P 和久津▲52.5P(供託1)

勝ち上がり 清水 佐月

こうして、C卓の勝ち上がり者2名が決まった。
あっという間に終わってしまった気がしたのは展開や打牌の早さだけではない。
激しく、そして繊細な彼女たちの闘牌に引きこまれた視聴者の方々も多いだろう。
勝ち上がった清水・佐月にはベスト8の戦いが待っている。

そしてプロクイーンベスト16もD卓を残すのみとなった。
果たして、決勝に進み女王・宮内こずえに挑戦できるのは誰になるのか。