中部プロリーグ レポート

第32期中部プロリーグ 第7節レポート

Aリーグ:大橋幸正

近年、地方プロリーグ決勝が配信対局されるようになった様に、麻雀プロにとって、大きなチャンスの場が増えている。
直近では、第33期新人王戦で田村が決勝進出、第17期プロクイーンで日高がベスト16に進出し配信対局に出演したのが良い例で、ここ数年、中部本部所属の若手の活躍が著しい。
しかし、それでも世間をあっといわす程のインパクトは与えられていないのが現状である。

中部プロリーグ第7節が始まる前に、36期新人プロの紹介があった。実に9人ものフレッシュな若手が入り、ますます中部本部全体が盛り上がることに期待したい。その為には、若手の活躍はもちろんのこと、ベテランプロの活躍は必須であるので、ベテランプロには特に危機感を持って、精進して頂くことに期待する。

それでは、ベテラン、中堅、若手がバランスよく入り混じった熱気溢れるAリーグの模様をお伝えしていこう。
第7節の組み合わせは以下の通り。

1卓 清水・寺戸・加藤・森下
降級ラインにいる加藤、森下にとって、重要な一戦となった。残す所4節となり、特に降級ライン上にいる者にとっては1節の重みが大きいはずだ。
結果からお伝えすると、ノートップながら浮きの2着を3回とまとめた加藤が卓内トップの+25.9Pと降級圏内からの脱出に成功。
加藤の印象的な1局があった。最終戦オーラス、西家の加藤は32,200点持ちの2着目(トップと7,500点差)、11巡目に以下の牌姿のテンパイが入る。

三万四万四万八万八万二索二索三索三索二筒二筒六筒六筒  ドラ一万

加藤は強く三万単騎待ちでリーチとした。加藤の捨て牌には六万が切られていて筋の待ちにはなってはいるのだが、ドラが一万なのと加藤の河は変則手に見える捨て牌であった為、リーチを打って出アガリに期待できる待ちでは無い。もちろん、加藤も重々承知の上、リーチと踏み切っている。結果は親の寺戸に上手く捌かれはしたものの、この一戦にかける加藤の強い意志を感じた。

森下は4回戦目で手痛いラスとなってしまい、▲27.2Pとポイントを減らしてしまった。厳しい状況に追い込まれてしまったが、実力上位であるのは誰しもが認めるところ。奮起に期待したい。
第6節までで+205.7Pとダントツの首位をひた走る清水はこの日、マイナスしてはしまったものの、4回戦目でトップを取り、勝負強さをみせた。清水の持ち味は積極性であるが、受けも非常にしっかりした選手であるため、よっぽどのことが無い限り、決勝進出は安泰と見て良いだろう。

2卓 小野・掛水・林・斎藤
林の雀力の高さが際立った対局となった。林は4回戦目こそマイナスしたものの、+82.3Pと大きくプラスすることに成功。林は第6節で手痛いマイナスをしてしまったが、前回のレポートでも記載したように、非常に濃い内容の麻雀を打つ。基本はしっかりと高打点の手を組み、ぶつけるスタイル。守備意識も非常に強く、加えて引き出しも多い。

1回戦の東2局、林は親番で以下の牌姿でリーチ

三万四万五万五万六万三索四索五索三筒三筒三筒四筒五筒  ドラ一筒

掛水にもリーチが入っていたが、最終巡目で林がツモアガリ6,000オール。
掛水のリーチもドラ一筒北のシャンポンリーチと本手であった為、逆の結果であったのならば、またがらりと展開が変わっていたであろう。麻雀は紙一重の勝負だと認識できた一戦であった。
斎藤は4回戦目で起死回生の1人浮きのトップを取り、+29.4Pと踏ん張った。
対して、小野は終始苦しい展開で大きくポイントを減らしてしまい、まだ決勝進出圏内にはいるものの、安泰とみていた決勝進出も一転して危うい状況となってしまった。残り3節、どう戦うのか注目したい。

3卓 三戸・朝岡・都築・堤
この中で圧倒的なキャリア、実績を持つ三戸が、牌勢はそこまで恵まれてはいなかったが、丁寧に打ちまわし、3回トップの1人浮きの+47.9Pとポイントを上乗せし、トータル2位まで浮上した。
4者とも、本手では無く、捌き手を入れる場面も多かったが、そこでの細かな勝負はキャリアの差が出てしまった様に見受けられた。
自分より格上の者に挑む時は、同じ土俵で戦っていては、不利になるのが明白に出た卓であったように思う。
今節の結果を受け、降級圏内にいる都築、堤が残り3節、どういった戦略を練ってくるのか楽しみである。

4卓 伊藤(鉄)・土岐・長谷川・村瀬
オールラウンダーの伊藤(鉄)、とにかく我慢強い土岐、仕掛けなどを多用し、相手との間合いを図ることに長けた長谷川、多少強引ではあるが切れ味鋭い攻めが持ち味の村瀬の一戦。
1~3回戦まで我慢する局面が多かったが、展開に恵まれ、プラスを保っていた土岐が4回戦目に大きなトップを取り、+38.9Pの卓内トップ。決勝進出圏内の4位に浮上した。
土岐はしっかり手を組み、辛抱強く打つのが持ち味だが、展開が悪い時にたまに乱れてしまうことがあるのが気がかり。土岐自身、2年連続決勝進出したい気持ちが強いであろう。残り3節、しっかりと腰を据えて自分らしい麻雀を打ち切っていただきたい。

長谷川は4回戦目で大きなラスを引いてしまい、+19.5Pのプラスとなってしまったが、持ち味の麻雀をしっかりと打ち切れていたようにみえた。まだまだ降級がみえるポジションではあるが、試合巧者な長谷川は残り3節、しっかりとまとめてくれるであろう。

対して、伊藤(鉄)は牌勢が悪かった為、いつもと打ち方を変えて、状況を打破しようと試みたが、上手くいかず▲45.2Pと9位に後退。伊藤(鉄)ほどの打ち手でも悪い時はどうにもならない時がある。麻雀は難しい。

いよいよAリーグは残す所3節となり、大詰めの段階に入ろうとしている。今節の結果を受け、決勝進出を狙う者と残留を目指す者がくっきりと分かれるポイント状況となった。
結果は当然大事ではあるが、とにかくAリーグにいる者は、中部プロリーグの最高峰にいるということを自覚して、しっかりとプロらしい麻雀を打っていただくことに期待したい。

 

 

Bリーグ:大橋幸正

9月に入っても、連日、激しい暑さが続く中、中部プロリーグ後期Bリーグ第2節が開催された。中部プロリーグは現在、A、B、C、Dの4つのリーグで構成されており、一番上のリーグがAリーグでBリーグは2番目のリーグにあたる。中部本部所属のプロでAリーグに昇級したことが無いプロは多く、Bリーグで何年も足踏みしているプロもいる。16名中2名のみしか昇級者が出ないというのが、いかにハードルが高いかが見て取れる。
第1節を終えた段階で、1位と16位の差が96.9P差と100P以内の差に収まっている。これは平均よりも小さな開きで、第2節が始まる前、今期は大混戦になると予想していた。
ところが第2節が終わった段階で2名の選手が頭一つ抜け出した形となった。
1名は第1節を終えた時点で首位スタートとなった河合。この日、+63.9Pと大きくポイントを伸ばし、ただ1人100Pを超える首位となった。

もう1名は杉浦(勘)。鳳凰位戦では前期でA2リーグへの昇級を決め、今期の十段戦は見事に決勝進出を果たしている。
今期、連盟全体で一番好調なプロと言っても過言は無いのではないか。
この日、+111.7Pとその力を見せつけ、トータルポイントを一気に+98.2Pまで伸ばした。

2位杉浦(勘)と3位岡本の差は36.7Pと、まだまだ、数字上だけではどう転ぶかはわからない。しかし、河合、杉浦(勘)の麻雀の充実ぶりは、数字以上に3位以下を大きく突き離しているようにみえる。

麻雀に対する捉え方、また連盟公式ルールに対する捉え方も人それぞれ違うであろう。巷で良く聞く言葉は、デジタル、オカルト、効率、局収支、期待値などで、論議も交わされている。正直、何が正しいかはおそらくは解明されることは無いであろう。ただ、1つ、私が思うのは、いわゆる点と線の話で、点でしか麻雀を捉えられない者には長い目で見た時に、決して勝ち組にはなれないのではないかと思う。点で見るというのは、1つの例を出すと、その局だけの損得に囚われすぎることなどがある。例えば、ドラも無く役無しで、リャンメンテンパイが入ったとする。リャンメンテンパイ=リーチというのが現代麻雀の主流ではあるが、連盟公式ルールは決してそうではない。時と場合によって使い分ける必要があるのだが、その局のみ制することを考えるならば、連盟公式ルールだろうとリーチをした方が優位な時は多いはずだ。しかし、麻雀は一局を制する=勝ちとなるわけではない。少し、わかりづらい話ではあるが、その場凌ぎばかりをしていても、最終的には勝てないということである。

そういった部分の差で、河合、杉浦(勘)と3位以下の者とで、大きな差があるように感じた。
河合は、中途半端な手組は決してせず、点だけで見れば、守って良い場面でもぶれること無く、大胆な勝負がけをすることが多く、同卓者にとっては、脅威でしか無いであろう。
杉浦(勘)は長年、第一線で戦ってきて、今でも尚、試行錯誤を繰り返し、進化している。一見、点で見ているように見える場面でも、深い所では常に線で考えているであろう。

3位以下の選手はこのレポートを見て、決して良い気にはならないであろう。私自身もこのまま2名が走ってしまう展開よりもそれに待ったをかける存在が現れることに期待したいので、3位以下の選手がどういった戦いをしてくれるのか、注目して見ていこうと思う。

 

 

Cリーグ:越川清一

いまだ残暑の厳しい中、中部プロリーグ第2節が行われました。
今回ご紹介する1人目の選手は17期青山大。「鬼軍曹」の異名を持つ青山、長年運営に深く携わり中部本部を土台から支えている。
私もいろいろお世話になってきたが、青山なくして中部本部は語れない。それだけの存在である。
そんな青山に今期の意気込みを聞くと「前期降級して思ったのは、選手個々のレベルが上がっているということです。もちろん昇級目指して頑張りますが、全体のレベルが上がっていることは嬉しく思います。」続けてこう話してくれた。「昔は2、3年で辞めていく選手が多かった。そういったこともあって地方のプロが長く活動できる環境を作りたかった。今中部本部は約70人の選手が所属する大所帯となりました。これは嬉しいことですね。」

今後のプロ活動について聞くと、「九州本部の浜上文吾プロのように、地方プロの活動を支援しながら選手としても頑張っていきたいです。」と話してくれた。
私が青山に対して常々思うのは、青山はリーグ戦の対局中、各卓で起こるトラブルの対応やポイントの集計など少なからず周りに神経を使っている。私のように常に万全の状態で対局に臨めていれば、おそらく今もAリーグで戦っているはずである。対局に集中できる環境を作ってくれている青山をはじめ、運営の人達のことを若手の人達は忘れないでほしい。

1回戦青山の戦いを後ろで観戦する。
受けるところはしっかりと受け、本手はしっかりとものにする力強さがあった。トータルもプラスになりここから上位進出を狙う。

2人目は33期田村良介。先日の新人王戦決勝(3位)は記憶に新しい所である。決勝で戦う田村を見て映像対局が初めてとは思えない落ち着きぶりでしっかり戦えていると感心させられた。本人に聞いても「悔しいですが自分らしく戦うことはできました。」と話してくれた。展開に恵まれなかったこともあったが、優勝した松本プロが一枚上手だったと思う。この経験を次に活かして欲しい。

田村に雀風を聞くと攻撃型とのこと。ライバルは中部本部同期の大橋と答えてくれた。3回戦の田村の戦いを後ろで観戦する。

1回戦2回戦を浮きの2着3着でむかえた3回戦東1局南家配牌

一万二万七万六索六索八索八索九索五筒東東南南  ドラ四筒

ここから親の第一打の八索を鳴く。同巡下家から切られた東六索を鳴き北家が1枚もツモらずにこの形となる。

一万九索南南  ポン六索 上向き六索 上向き六索 上向き  ポン東東東  ポン八索 上向き八索 上向き八索 上向き

あくまで私の見解だが12,000まで見えるとはいえ1、2回戦をプラスでまとめた3回戦東1局にする仕掛けではないように思う。こういった鳴きは自分の態勢が悪いときに私もやることがあるが、態勢か悪くなければこの手はメンホン、七対子をみてメンゼンで進めたい。鳴くのはどれか自力で暗刻にしたときである。
結果は、7巡目に北家よりリーチが入りテンパイすることなく3,900の放銃となる。
結果論といわれればそれまでだが、麻雀は結果がすべてと私は思う。たかが1局だが田村には今一度この局を思い返して欲しい。

全体の順位を見ると安藤が頭一つ抜け出した。
1回戦青山の対面に座る安藤を見てその無駄のない所作にこの結果が決して偶然ではないと思わせる力強さを感じた。
安藤を誰が止めるのか、次節がたのしみである。

 

 

Dリーグ:越川清一

Dリーグのレポートを担当します越川です。よろしくお願いします。
新たに9名の新人を加え総勢21名となったDリーグ第2節。私が注目する選手を毎節2名ずつ紹介していきたいと思います。

まず1人目は23期鈴木(雄)。鳳凰戦C2リーグに所属しており、過去にただ1人中部プロリーグを連覇している。自身の雀風を聞くと「鳴きを多用しますがかわし手はあまり使いません。手役をみて鳴きながら打点を高くしていくことを心掛けて打っています。」と答えてくれた。そんな鈴木(雄)の尊敬するプロは同じ中部本部の古川孝次。なるほどである。

プロとしての目標を聞くと「鳳凰位です。」とノータイムで答えてくれた。その口調から強い意思を感じることができた。
そんな鈴木(雄)だからこそDリーグにいるという現状に、自身の不甲斐なさを感じているのではないかと思う。
実力は抜きん出ている。それを結果として示せるか、鈴木(雄)の戦いを後ろで観戦する。

3回戦まで、新人2人相手に3連勝しむかえた4回戦。受けに回る局が多く、本手はアガれず放銃になる苦しい展開だったが、要所での丁寧な打ち回しで、沈みながらも2着にまとめ+49.3Pでこの日を終えた。
苦しい局面でどれだけ踏ん張れるかが雀力に直結する。象徴的な一局があった。

南3局1本場 西家 持ち点22,000 1巡目

一万二万三万三万六万六万七万一索六索七索八索二筒二筒三筒  ドラ九万

第一打二筒

10巡目
一万二万三万六万六万一索二索六索七索八索一筒二筒三筒

ここから、親のピンズのホンイツ仕掛けにピンズを引いて回り、

18巡目
一万二万三万六索七索八索一筒二筒三筒五筒六筒七筒八筒

1人テンパイで流局。
鈴木(雄)らしいこの一局をみて、今期間違いなく昇級争いに絡んでくると確信した。

2人目は34期日高志穂。
昨年の新人王戦で優勝し、その後の王位戦でベスト16まで勝ち残り、今年のプロクイーンでもベスト16まで勝ち進む。
着実に結果を残してきている中部本部期待の女流プロである。

麻雀のスタイルは攻撃型で、目標とするプロは女流桜花三連覇中の仲田加南プロですと答えてくれた。そんな日高の戦いを後ろで観戦する。

これだけの結果を残してきている日高の麻雀を私は楽しみにしていたのだが、2日前のプロクイーンの敗退を引きずっているのかこの日は精彩を欠いた。
十段戦で同卓したときに見せた力強さは影を潜め、安易な鳴きが傷口を更に広げる悪循環でこの日は▲31.9Pと昇級争いから一歩後退した。

私が一番残念に思ったのが、観ていて戦う意志を感じることができなかったことである。変にかわしにいこうとして長所である攻めの気持ちが消えていた。
周りの期待が大きいだけにあえて厳しいことを書いたが、結果、内容、所作、日高に求めるものは多い。次節までにしっかりと準備してきてほしい。
まだ第2節とはいえ、3位までを新人選手が独占するのはやはり寂しい。先輩連盟員の奮起を期待したい。