中部プロリーグ レポート

第32期中部プロリーグ 最終節レポート

Aリーグ:大橋幸正

第32期中部プロリーグいよいいよ最終節を迎えた。数週間前に行われた第45期王位戦決勝で見事に森下が優勝した。 同じ中部本部所属の身として、大変誇らしい気持ちであるし、私も負けてはいられないなという思いをより一層強く感じた。同じ様に感じた選手も多いのではないだろうか。森下のG1タイトル獲得は中部本部にとって、大変明るいニュースで、これからも中部本部からより多くの選手が活躍することを期待したい。

Aリーグの最終節は、決勝進出もさる事ながら、残留争いも熾烈を極めた。長期に渡るリーグ戦の最終節であるだけに、一打一打からリーグ戦にかける選手の思いがひしひしと伝わってくる。苦しい時間ではあるが、選手にとって、いつまでも続けば良いと思える至福の時間であると思う。そんな時間にも当然終わりがやって来るわけで、決勝進出者と残念ながら降級してしまう者が決定した。王位を獲得した森下が降級してしまうという事実から、いかに中部プロリーグのAリーグが難しいリーグかというのがわかるであろう。そんな困難なリーグから見事に決勝進出を勝ち取った4名の選手にインタビューをさせていただいたのでご紹介させて頂きたい。

4位通過:小野雅峻 三段(+78.4P) 29期生 決勝進出回数:3回目 優勝回数:1回

【今期を振り返っての感想】
前半のリードをキープしたまま、大きく崩れずに最終節を迎えられたことが良かったと思います。

【決勝戦への意気込み】
昨期に引き続き連続で決勝に残ることが出来ました。前回より良い内容、結果を残せるよう臨みたいと思います。

3位通過:林俊宏 四段(+156.7P) 19期生 決勝進出回数:初 優勝回数:無し

【今期を振り返っての感想】
運営の方々の精勤のおかげで最終節まで滞ること無く闘牌する事が出来ました。また観戦をしに来てくださいましたファンの方々や応援して下さった方々、会場のスタッフの方々に感謝致します。この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。
麻雀は、初節から最終節までずっと中間順位にいたので、どの対局も大変でした。上位とは離れているし、下位とは近いですしね。今回も夏休みの宿題みたいに最後に滑り込む感じでしたね。

【決勝戦への意気込み】
私が中部プロリーグに参戦したのは2015年。Cリーグからの出発でしたが4年の月日が経ちました。昨年は不慮の事故により休場を余儀なくし、1年間棒に振りましたが、リハビリを重ね、今また麻雀プロとして麻雀が打てる事に喜びを噛み締めています。
1年の遅れはありましたが目標通りのペースで決勝を迎える事が出来ました。後は、自分の信念を貫き通すだけです。

2位通過:清水哲也 二段(+185.6P) 28期生 決勝進出回数:2回目 優勝回数:無し

【今期を振り返っての感想】
前半で大きなアドバンテージがあったので後半は色々試しながら対局しました。試したことが決勝の舞台で活かせればと思います。

【決勝戦への意気込み】
配信対局が初めてですので普段通り打てるかが鍵になると思っています。

1位通過:三戸亮祐 六段(+277.2P) 11期生 決勝進出回数:16回目 優勝回数:4回

【今期を振り返っての感想】
年間を通じて、安定した対局が出来ました。森下・林・伊藤(鉄)・小野・寺戸といったプロリーグ組を始め、中部のAリーグ全体のレベルも上がっている中、好結果を残せたことは素直に嬉しいです。

【決勝戦への意気込み】
3年前に自ら改革した一年制のリーグ戦に優勝したいとの思いもありますが、そもそも前回の優勝から10年間遠ざかっていますので、ここはなんとしても優勝したいと思います。プロリーグもしばらく低迷期が続きましたが、ここ1年は好成績でピークの出来にあると思いますので良い対局を観てもらうことが出来ると思います。

全く違うプレイスタイルであるが、優勝したい思いが特に強い4者が揃った決勝戦。ハイレベルな見応えのある決勝を見せていただけるであろう。中部プロリーグ決勝戦は2020年1月24日(金)に連盟チャンネルにて生放送で配信される予定です。
最後に、私自身、来期はプロ入りして4年目で初のAリーグ挑戦となります。不安もありますが、それ以上に楽しみなのと戦える自信があります。来期の決勝の舞台に立てるようしっかりと準備して臨みたいと思います。半年間、レポートにお付き合い頂きありがとうございました。

 

 

Bリーグ:大橋幸正

第32期中部プロリーグはいよいよ最終節を迎えた。今期のBリーグはとにかく面白い。第4節を終えた時点での稀に見る昇級ボーダーの高さ、また、残留争いでも14位以下はポイント差があるが、10位岡本から13位大高坂までのポイント差が少なく、数字を見るだけでも白熱しているのが見てわかるであろう。現状1位の杉浦(勘)は、別日対局の為、既に最終節の対局は終えており、最終結果は当然知らされていないので、昇級を狙う杉村、山本(拓)、河合の3名にとっては、実質残り1枠と考えて対局に臨んだであろう。

1回戦目から3回戦目まで、各卓、非常に見ごたえのある気持ちのこもった対局が繰り広げられた。最終節の独特の緊張感は言葉で言い表すのが難しいものがあるが、とにかく、心地が良く面白い。中部プロリーグは観戦自由となっているので、今後、より多くの方に観戦していただけることを願う。

3回戦目が終了した時点での数字が発表された。1位杉浦(勘)+214.5P、2位山本(拓)+160.8P、3位河合+154.5P、4位杉村+152.2P・・・・・11位太田(峻)▲103.2P、12位日下▲115.3P、13位佐藤▲118.8P、14位大高坂▲119.3P、15位鈴木(涼)▲134.9P、16位富村▲175.9P ※1位2位が昇級、13位から16位が降級、別日で対局済みの杉浦(勘)と富村の数字は3回戦終了時の成績

最終4回戦を残し、昇級争いも残留争いも大接戦となった。昇級争いの河合は無念のラスとなり、惜しくも脱落。第1節から第5節まで見させていただいたが、最後まで河合の麻雀は充実しており、例年だと1位通過でおかしくない数字。来期も注目選手である。山本(拓)は最終戦トップを取ったが、惜しくも3位と昇級の切符を手にすることが出来なった。トータルスコア+174.3Pで昇級できないのは残酷であるが、昇級を勝ち取った2者との直接対決で相手に多く勝たせてしまったので、本人もある程度納得しているのではないかと思う。昇級を勝ち取ったのは実績十分の杉浦(勘)と杉村。さすがの一言に尽きる。来期のAリーグは、よりレベルの高いものになるであろう。

降級争いもまさに紙一重で、どの卓もオーラスまでわからない展開となった。勝負事である以上、勝者もいれば敗者もいるのは当然であるが、ここでプロ生活が終わるわけではない。結果を真摯に受け止め、今後の糧にしていただきたい。

最後になりますが、レポート担当者としてBリーグを観戦させていただき、中部プロリーグの中でBリーグが一番熱気溢れるリーグだと感じました。Aリーグから降級してきたプライドを持った選手、なんとしてもAリーグへ昇級したい選手、Cリーグから昇級して伸び盛りの力を試したい選手など、バラエティー豊かな熱い思いを持った選手が集まったリーグです。今後とも、見どころ満載なBリーグに注目していただけると幸いです。

 

 

Cリーグ:越川清一

Cリーグ最終節。前節昇級枠にいた安藤、杉浦がマイナスとなり上位陣の差がぐっと縮まった。展開次第では8位の青山まで昇級の可能性がある。観ている私にまでヒリヒリとした緊張感が伝わってくるなか1回戦が開始された。
私は3回戦まで前節までに紹介できなかった7名の選手の後ろで観戦した。その中で私が期待する3選手を紹介させていただく。1人目は静岡プロリーグ2度優勝の実績を持ち正確な手順で手役を絡めた高打点を随所で決めてくる菅野直。2人目がどこからでも仕掛けていき相手に対応させて主導権を握り小気味良くアガリを重ねていく山田まさとし。そして3人目は、今でこそ中部本部には10名の女流プロが在籍しているが私が連盟に入った時にいた唯1人の女流プロであった家田みゆき。「継続は力なり」家田にはこれからも頑張ってほしいと思う。

3回戦が終了し上位陣のポイントは以下の通りとなった。1位大滝+161.8P、2位杉浦+140.3P、3位安藤+109.5P、4位中谷+66.7P、5位田村+44.2P。実質上位3名の戦いといっていいだろう。3名は別卓のため見えない相手との戦いとなる。それぞれがポイントを確認し終え最終戦が始まった。

大滝は3位の安藤とは52.3ポイント離れており大きなラスさえひかなければ安泰である。その大滝。南1局南家持ち点25,700、3つ仕掛けを入れた11巡目2軒リーチを受けるも力強くドラをツモりこれが優勝の決定打となった。

六筒六筒北北  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  ポン一索 上向き一索 上向き一索 上向き  ポン六索 上向き六索 上向き六索 上向き  ツモ六筒  ドラ六筒

残る1枠は安藤か杉浦か、隣り合う両卓に視線を注ぐ。杉浦の卓、東1局に中谷が2,600オールをアガった次局11巡目杉浦六九待ちのピンフをテンパイすると牌を横に曲げてリーチといく。「リ、リーチ?」私は思わず2度見した。ヤミテンに構えれば拾えそうな1,000点を絶対にオリない親に対して2,000点にするリーチ。しかもこの時残留に向け大きくポイントを伸ばす必要がある若松が仕掛けを入れている。安かろうはずがない。そんなことは言うまでもなくわかっているはずの杉浦がなぜ?この局は若松が3,000・6,000をツモアガるのだが、私は危うさを感じずにはいられなかった。

迎えた東3局南家。ここでもドラの八筒をツモれば1,300・2,600になるとはいえピンフリーチを敢行する。親の平野にオリの選択肢はない。そして中谷からリーチが入る。このめくりあいは中谷がドラの八筒を掴んで事なきを得たかに見えたがこれが親の頭ハネ。杉浦にとってはきつい展開になってしまう。この時隣の安藤の卓に目を向けると、親の安藤がフリテンリーチの2,600オールをツモアガリトップ目にたっていた。これはいよいよ分からなくなってきたと思いこの先の展開が楽しみになってきたのだが、この時Dリーグの最終戦が始まりDリーグ観戦のため一度席を外す。戻って来てみると杉浦の卓は終了しており杉浦が1人沈みのラスでトータル+112.6Pとなる。安藤の卓に目を向けるとオーラスになっていた。親の田村が意地を見せ60,000点近い点数となっている。安藤は素点を削られわずか1,300の浮き。沈めば杉浦の再逆転となるところだったが最後は全員ノーテンで終局となった。2人の差はわずか2.2ポイントであった。昇級した2人からコメントをもらった。

優勝 大滝聡「1、2節で+80Pとなり昇級を目指して意気込んだ第3節。3連続ラスとなり今までなら気持ちが切れていたが4回戦を1人浮きのトップを獲ることができ行けると感じた第4節で上位2人との直対で差を詰めることができたのが勝因だったと思います。自分の成長を感じることができた今期でした。来期はまずは降級しないようにコツコツとプラスを重ねていきたいと思います。」

2位 安藤大貴「十段戦で手応えを感じる戦いができその勢いのまま今期を迎え第1節から好調を持続でき、最終的にはギリギリの昇級でしたが尊敬する杉浦プロに勝つことができ喜びを感じています。来期のBリーグは強豪揃いですが負けないように頑張りたいと思います。」

そしてもう1人。私はどうしても聞きたいことがあり悔しくてたまらないであろう杉浦貴紀に敢えて質問させてもらった。
「最終戦東1局のピンフリーチはどういった意図で?」すると杉浦ははっきりとした口調で「優勝を狙いに行きました。」と答えてくれた。私は質問を続けた。「昇級するのに1位も2位も一緒なのでは?」「優勝を狙いに行ったんです。」2度目のこの言葉で私はようやく気づくことができた。

中部プロリーグを三度優勝している杉浦。杉浦が見ているのはBリーグの先Aリーグで優勝しふたたび輝く自身の姿なのだと。そのためにここで優勝を勝ち取れないでどうするんだと自分を鼓舞するリーチだったんだと。今回は結果を残せなかったがそんな杉浦と戦いたいと私はこの時強く思った。そしてそれはそんな先の話ではないはずである。

半年間お付き合いいただきありがとうございました。

 

 

Dリーグ:越川 清一

Dリーグの昇級枠は3つ。3位の鈴木(雄)のポイントが+71.9Pとなっており+6.2Pで11位の田中くらいまでは充分昇級の可能性がある。新人選手が多くいるDリーグ、それぞれがどういったテーマを持ってこの日に臨んだのだろう、各選手のポイントを確認しながら全選手の戦いを後ろで観戦する。

Dリーグには降級がない。そのため昇級に絡まない選手のなかに少し緊張感に欠ける者がいたことは残念に思えた。現状の成績なのは他の誰でもない自分の責任である。それをしっかりと認識して自らの課題を模索し次に繋げるために常に取り組む姿勢を忘れないで欲しい。

そんな中私が注目したのは日高。第2節で日高に対し厳しいことを書いたがこの日は見違えた。戦う顔になっていた。所作もいい。来期以降期待させる内容だった。
3回戦が終了し上位陣のポイントを確認する。1位奥野+165.8P、2位伊藤+115.9P、3位石川+58.4P、4位鈴木(雄)+54.4P、5位田中+43.4P、6位鈴木(淳)+33.1P奥野と伊藤は当確。残りの1枠を4名で争う戦いとなった。
この戦いがし烈を極めた。まずは石川VS田中。石川が東1局に明石に12,000を放銃する。その石川東3局に高め三色のリーチを打つも田中が追いかけリーチ。一発で石川が田中に放銃しここで石川が脱落する。こうなってくると俄然田中に昇級の目が出てくる。次局ハイテイで2,000・4,000をツモり39,500まで素点をのばす。しかし南場で勢いを持続出来ずオーラス1,300の放銃で34,500点持ちながらも3着となりトータル+48.9で終了する。

終了と同時に残り1枠を争うもう1卓、鈴木(雄)と鈴木(淳)の卓に移動する。
鈴木(雄)VS鈴木(淳)の卓は南3局になっていた。2人の点棒状況はこうである。
北家鈴木(淳)36,200(+47.3)、南家鈴木(雄)29,100(+49.5)。
14巡目、親の加来よりリーチが入り1,300オールをツモアガる。これでトップが入れ替わり鈴木(淳)+42.0、鈴木(雄)+48.2となりこの瞬間田中に捲られてしまう。もちろん当人達は知るよしもないが鈴木(雄)は浮かなければ昇級はないと考えて戦っているはずである。しかし次局8巡目加来からリーチが入る。ここで打ったら致命傷、かといって親が残っているとはいえ、これ以上素点を削られるわけにもいかない。頭の中での葛藤が逡巡する打牌から痛いほど伝わってくる。

鈴木(雄)ここで前にでた。東を暗カンし丁寧に打ち回しながらカン3のチーを入れ1枚切れの白バックのテンパイをとる。これをアガリきり喉から手が出るほど欲しかった浮きに回ることができた。
しかしまだオーラスがある。親鈴木(雄)33,000(+58.4)、鈴木(淳)34,900(+41.0)鈴木(淳)の昇級の条件は3,900以上の直撃か1,600・3,200以上のツモアガリで鈴木(雄)を捲って別卓の結果待ち。鈴木(雄)としては素点を積み上げたい所。

11巡目鈴木(雄)1シャンテンも鈴木(淳)が八筒をポン14巡目六筒をチーする。鈴木(雄)危険牌を切りきれずオリに回り流局を願う。ツモられたら負け。鈴木(雄)にとって流局までどれ程長く感じられたのだろうか?そして1回1回のツモに鈴木(淳)はどれ程の想いをこめていたのだろうか?流局して開けられた鈴木(淳)の手はドラが暗刻の間六万待ちであった。

こうして最後の1枠が鈴木(雄)に決まりDリーグの昇級者が決定した。昇級した3者にコメントしてもらった。

優勝 奥野真語「1年目ですが昇級を目標におき達成することができてよかったです。日々公式ルールの稽古をしてきた成果を出すことができました。今日は3人の応援してくれる方が来てくれてその人達を惹き付けられるような麻雀を打っていきたいと思います。来期も昇級目指して頑張りたいと思います。」

2位 伊藤享祐「本来守備型なのですが2節までに大きく浮くことができたので勢いに乗ってそのまま昇級することができました。来期はまずはプラスを積み重ねていけるように頑張りたいと思います。」

3位 鈴木雄介「昇級できた要因として、我慢し続けて地道にテンパイ料を重ねていった結果大きく浮くことができた第4節が挙げられます。来期はCリーグでの戦いとなりますが目指すのはAリーグなのでこのまま駆け上がりたいと思います。」

この10年で麻雀界は大きく変わりました。私は年齢的に遅くに連盟に入ったにも関わらず、麻雀が好きと言う延長だけで何年も無為に過ごしてしまいました。そういった後悔から私は全節に渡って観て感じたことを思うままに書いてきました。これから強くなろうとする若手に敢えて厳しいことも書きました。

4月から始まるリーグ戦。私自身結果と内容で示す責任があります。