中部プロリーグ レポート

第28期中部プロリーグ 決勝レポート

最強寒波により名古屋で4センチの積雪を観測した日、その雪を融かしてしまいそうな熱い闘牌が繰り広げられた。第28期中部プロリーグ決勝戦である。しかし勝負の世界、熱くなりすぎるのは禁物だ。最後まで冷静に自分のスタイルを貫いた者が勝利の扉を開くであろう。
決勝進出者を予選の成績とともに紹介していこう。

 

古川 孝次 (1期生/九段)
予選1位(+162.6P) 決勝7回目 過去3回優勝
トップ率:35% (7回/20半荘) その内2回1人浮きトップ
平均順位:2.00位
原点キープ率:70% (14回/20半荘)
ラス率:5% (1回/20半荘)
「優勝目指して頑張ります」

 

伊藤 鉄也 (22期生/四段)
予選2位(+117.2P) 決勝7回目 過去2回優勝
トップ率:45% (9回/20半荘) その内3回1人浮きトップ
平均順位:2.15位
原点キープ率:65% (13回/20半荘)
ラス率:25% (5回/20半荘)
「以前の決勝戦で古川プロに惨敗しているのでリベンジします」

 

日下 健司 (24期生/二段)
予選3位(+70.2P)  決勝5回目 過去2回優勝
トップ率:35% (7回/20半荘) その内3回1人浮きトップ
平均順位:2.40位
原点キープ率:50% (10回/20半荘)
ラス率:20% (4回/20半荘)
「久しぶりの決勝戦なので楽しもうと思います」

 

寺戸 孝志 (21期生/四段)
予選4位(+56.0P) 決勝4回目 過去1回優勝
トップ率:30% (6回/20半荘) その内1回1人浮きトップ
平均順位:2.40位
原点キープ率:60% (12回/20半荘)
ラス率:20% (4回/20半荘) その内1回1人沈みラス
「久しぶりの決勝戦、優勝目指して頑張ります」

以上の4名で決勝戦の熱い闘牌が繰り広げられる。

 

1回戦(起家から、伊藤・寺戸・古川・日下)

東1局、慎重にヤミテンを選択した日下のピンフ、イーペーコーの2,000点で静かに始まった。
東2局、伊藤30,000・寺戸28,000・古川30,000・日下32,000
親の寺戸に大物手が入る。ソーズを3連続引き入れ四索をポンし、その後二索を引き入れ8巡目で跳満のテンパイ。

二索二索四索五索五索六索七索八索八索八索  ポン四索 上向き四索 上向き四索 上向き  ドラ一筒

18,000点のスタートダッシュを決めることができるか。
それに対抗するのが伊藤。

一索二索三索六索七索九索九索一筒二筒三筒  チー三万 左向き一万 上向き二万 上向き

3色ドラ1のテンパイだが、九索を引くと六索を出してしまいそうだ。
日下は三索が浮いていたが切れずにまわって放銃を回避した。序盤の日下はロン牌をつかんではまわって放銃を回避するという場面が多く見られた。我慢の麻雀である。結果、流局し寺戸・伊藤のテンパイで寺戸はチャンス手をものにすることが出来なかった。

南1局、伊藤34,800・寺戸35,200・古川22,200・日下27,800
トップ争いの伊藤の親を落とすべく南家の寺戸が中ポンで積極的に動く。
しかし、伊藤も動いて役牌一気通貫ドラ2のテンパイ。

七索七索一筒二筒三筒四筒五筒南南南  チー九筒 左向き七筒 上向き八筒 上向き  ドラ七索

ここから、ドラの七索を暗刻⇒二筒五筒待ち⇒二万タンキ⇒地獄待ちの北タンキに変化し

七索七索七索三筒四筒五筒南南南北  チー九筒 左向き七筒 上向き八筒 上向き  ロン北

すぐに10巡目からリーチせずに役無しテンパイをしていた日下が北をつかみ12,000点を放銃する。
北で待った伊藤が良かったのか、つかんだ日下が悪かったのか、この日はこの2人の手がぶつかる事が多かった。

南2局、伊藤44,100・寺戸33,800・古川19,800・日下22,300
前局で伊藤の親を落とし反撃態勢の日下が8巡目にリーチ

三万四万五万七索七索三筒四筒六筒六筒七筒七筒八筒八筒  リーチ  ロン五筒  ドラ六索

一発でトップ目の伊藤が日下のロン牌の五筒を出し7,700点を放銃してしまう。
伊藤の手牌は日下の現物の八万待ちで一気通貫ドラ1のテンパイをしていたのだった。
結果1回戦は本手をなかなか成就できなかった古川が1人沈みのラスで苦しい立ち上がりとなった。

1回戦成績 伊藤+13.1P 寺戸+7.9P 日下+1.5P 古川▲22.5P

 

2回戦(起家から、日下・古川・伊藤・寺戸)

南1局、日下26,400・古川31,200・伊藤36,300・寺戸26,100
親の日下が五万八万待ちピンフリーチするも、すかさず古川がリーチ宣言牌の四筒をチーし、1回戦のマイナス分を取り戻すべく親と勝負する。途中ツモり三暗刻の選択もあったがリャンメンに受けて正解だったようだ。

三万三万五万五万五万四索四索四索六索七索  チー四筒 左向き五筒 上向き六筒 上向き  ツモ五索  ドラ五万

古川はタンヤオドラ3の2,000・3,900をアガリ加点していく。
もし三万六索のシャンポンに受けていたら他で使われていて純カラであった。麻雀というのは選択の連続である。正しい選択をして良いアガリを導き出すのが麻雀の魅力である。

南2局2本場、日下20,700・古川43,900・伊藤32,800・寺戸22,600
寺戸が雀頭を中張牌に替えタンヤオをつけ、三筒四筒をくっつけて11巡目リーチ。あっさり3巡後に高めの五筒を引き寄せた。

三万四万五万三索四索五索七索七索三筒四筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ五筒  ドラ九索

寺戸が会心の跳満をアガリ、親の古川の勢いを止めた。

南3局、日下17,500・古川37,700・伊藤29,600・寺戸35,200

一索一索一索二索三索四索七索八索南南  ポン北北北  ロン九索  ドラ八索

親の伊藤が日下から7,700点をアガリ、日下に1人沈みのラスを押し付けた。

2回戦成績
古川+15.0P 伊藤+9.6P 寺戸+7.2P 日下▲31.8P

2回戦終了時
伊藤+22.7P 寺戸+15.1P 古川▲7.5P 日下▲30.3P

 

3回戦(起家から、古川・日下・伊藤・寺戸)

東3局1本場 供託1 古川28,000・日下35,200・伊藤23,800・寺戸32,000
古川が早々に一筒をポンし手を作っていく。
しかし寺戸がテンパイし6巡目リーチ

三万四万五万六万六万七万七万八万八万三索三索七索八索  リーチ  ドラ発

古川が11巡目

九万九万九索九索南南南北北発  ポン一筒 上向き一筒 上向き一筒 上向き  ツモ九万

テンパイとなる九万を引く。しかしドラの発を切りきれずに北をおとす。3巡後に痛恨の北を引いてきて跳満のアガリを逃してしまった。結果流局し、最後に親番維持の七対子の発待ちテンパイを入れた伊藤とリーチの寺戸がテンパイとなった。

東3局2本場 供託2 古川26,500・日下33,700・伊藤25,300・寺戸32,500
トータルトップを競っている伊藤の親番で寺戸がリーチして満貫をツモる。

一万一万一万三万四万四万五万六万六索六索六索四筒四筒  リーチ  ツモ二万  ドラ四万

リーチ時に山にアガリ牌は2枚。五万は他に流れ最後の牌を掘り当てた。アガリが欲しいところでアガリを拾える、寺戸は依然好調をキープしている。

南1局、古川23,800・日下35,200・伊藤16,400・寺戸44,600
3回戦にトップを取らないと後がない日下が7巡目にリーチ、リーチ後発を持ってきて暗カン。
それに対抗するのは伊藤、9巡目に追っかけリーチをかける。

二筒三筒四筒五筒五筒五筒七筒八筒九筒東東白白  リーチ  ドラ東

ツモで倍満の勝負手リーチである。3回戦ラス目の伊藤はぜひアガリたいところ。
伊藤の待ち牌はドラの東が寺戸と持ち持ちで白が古川のところに1枚、山に白が1枚、対する日下の待ち牌の七索は山に2枚。

三万四万五万六索八索七筒八筒八筒八筒九筒  暗カン牌の背発発牌の背  リーチ  ツモ七索

日下は手元に七索を引き込み2,000・3,900のアガリをものにし3回戦トップを引き寄せた。
アガリのなかった伊藤は痛恨のラスで一歩後退した。

3回戦成績
日下+24.6P 寺戸+11.5P 古川▲11.0P 伊藤▲26.1P 供託+1.0P

3回戦終了時
寺戸+26.6P 伊藤▲3.4P 日下▲5.7P 古川▲18.5P 供託+1.0P

 

4回戦(起家から、古川・伊藤・寺戸・日下)

東1局、好調で安定感のある寺戸がここでもアガリきる。

三筒五筒五筒五筒五筒六筒六筒  ポン七筒 上向き七筒 上向き七筒 上向き  チー三筒 左向き一筒 上向き二筒 上向き  ツモ四筒  ドラ五万

この寺戸を止める者はいるのだろうか。防御力が高く点棒を持った寺戸はなかなか吐き出さない。

南2局 古川26,800・伊藤26,000・寺戸37,000・日下30,200
日下が9巡目にリーチ。4巡後に高目のドラの三索をツモり寺戸に待ったをかける。

二万二万四万五万六万四索五索五索六索七索六筒七筒八筒  リーチ  ツモ三索  ドラ三索

南3局 古川24,800・伊藤22,000・寺戸35,000・日下38,200
寺戸の親を落としたい日下だが四筒をチーテンとらずにスルー。自力で引いてきて11巡目にリーチ。

五万六万八万八万二索三索四索六索七索八索四筒五筒六筒  リーチ  ドラ四万

リーチに対して伊藤は13巡目にテンパイし二万が河に3枚、自分で1枚使用している事からヤミテンを選択した。日下が最後の五万をつかんでしまい伊藤に7,700を放銃する。

二万三万三万四万四万七万七万四索五索六索二筒三筒四筒  ロン五万

南4局 古川24,800・伊藤30,700・寺戸35,000・日下29,500
親の日下が親番維持の為、積極的に中を1鳴き、古川も発を1鳴きしチーもいれて伊藤から1,000をアガった。

六万七万八万四筒五筒東東  チー六索 左向き四索 上向き五索 上向き  ポン発発発  ロン三筒  ドラ五万

結果トータルトップの寺戸が1人浮きトップとなり寺戸にポイントが加算された。
私の所感ではここで古川には優勝を目指すならば、原点まで5,200なので発を1鳴きせずにもっとじっくり手を作って欲しかった。

4回戦成績
寺戸+17.0P 伊藤▲1.3P 日下▲3.5P 古川▲12.2P

4回戦終了時
寺戸+43.6P 伊藤▲4.7P 日下▲9.2P 古川▲30.7P 供託+1.0P

あと5回戦を残すのみとなった。寺戸はすべて原点をキープしている分トータルトップとなった。寺戸との差は伊藤48.3P、日下52.8P、古川74.3Pと開いたが、まだ十分逆転のチャンスはある。

 

5回戦(起家から、伊藤・日下・古川・寺戸)

東場・南場と小場で局が進んで行き南3局を迎えた。
南3局 伊藤33,500・日下16,900・古川45,900・寺戸23,700
伊藤が逆転に向けてピンフ高目三色ドラ2リーチ。

四万五万九万九万三索四索五索三筒四筒五筒五筒六筒七筒  リーチ  ロン三万  ドラ九万

親落ちするわけにはいかない古川から高目になる三万が打牌され、伊藤は最終局に望みを繋げる12,000をアガった。

南4局 伊藤45,500・日下16,900・古川33,900・寺戸23,700
ここで優勝条件確認をしよう。条件を満たして逆転した時の感動もまた麻雀の魅力である。
寺戸は親なので流局で伏せれば優勝。
伊藤の条件は5回戦始まる前の寺戸との差が48.3Pあったが5回戦は順位点込みで33.8P縮めている。寺戸からは7,700以上直撃、跳満ツモ条件、他者からは倍満条件となる。
日下の条件は、寺戸から役満直撃もしくは役満ツモ条件、他者からはダブル役満条件となる。
古川はダブル役満アガリ条件となっている。

最終局が始まった。
一番条件が現実的な伊藤の配牌は

五万七万八万九万一索三索五索六索二筒七筒八筒西北  ドラ中

跳満ツモにかけるならチャンタ三色狙いか。
しかしテンパイを入れる事すら叶わず、伊藤の最後の打牌が終わると全員の手が伏せられ拍手が鳴り響いた。
28期中部プロリーグの優勝者が決定した瞬間だった。寺戸は安堵の表情を見せた。
おめでとうございます!

5回戦成績
伊藤+23.5P 古川+7.9P 寺戸▲10.3P 日下▲21.1P

5回戦終了時
寺戸+33.3P 伊藤+18.8P 古川▲22.8P 日下▲30.3P 供託+1.0P

最後に寺戸から優勝者のコメントを頂いた。
「2回目の中部プロリーグの優勝嬉しいです。致命的な放銃が無かったのが良かったです。これからも良い麻雀が打てるよう様に精進します。」

今回決勝レポートを書くにあたり自分の中で麻雀に対して熱くなるものがありました。自分も良い麻雀が打てる様、放銃して熱くなり過ぎない様に頑張ります。
拙い文章でしたが最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。
私なりに決勝戦のデータを調べましたので参考にしてください。やはり寺戸の平均放銃点が低い!

決勝戦全57局 寺戸 孝志 伊藤 鉄也 古川 孝次 日下 健司
リーチ率 8.77%(5回) 8.77%(5回) 14.04%(8回) 15.79%(9回)
副露率 22.81%(13回) 26.32%(15回) 42.11%(24回) 7.02%(4回)
和了率 17.54%(10回) 17.54%(10回) 19.30%(11回) 22.81%(13回)
平均和了点 4,120 5,310 2,873 4,000
放銃率 10.53%(6回) 8.77%(5回) 10.53%(6回) 19.30%(11回)
平均放銃点 1,950 3,760 3,833 4,018

100

前列左より:寺戸 孝志、木村本部長
後列左より:伊藤 鉄也、古川 孝次、日下 健司