北陸プロリーグ レポート

第5期北陸プロリーグ 第4節レポート

麻雀は大多数の者にとって遊戯であり、我々プロにとっては競技であり、また一部の者にとっては人生であろう。
ツモってくる牌に一喜一憂し、アガれば嬉しいし、放銃すれば悔しい。
懸ける思いの多寡こそあれど、そんな大勢を虜にする麻雀の魅力を多くの方に広めるのも我々に課せられたものだろう。
ただ己の満足の為だけに摸打するだけでなく、麻雀の魅力を発信して、競技そのものの社会的地位を向上させられれば。それこそがプロとしての役割なのではないだろうかと、私は考えている。

令和4年8月28日。北陸プロリーグ第4節。
上位陣の安定したスコアの伸ばし方は、まだ半分といえど決勝の椅子を幾つか埋めてしまったのではと感じさせるものがある。

全ての節でプラスを重ねる志多木、安城。そして今期も勝負所を逃さない麻雀で連覇を目指して突き進む里木。
今回は里木に話を伺ってみた。

「今節は配牌にも恵まれた感はあります」
今節50P超を叩いた彼の振り返った1局が下記。

1回戦東3局東家32,000持ち ドラ七万

東東東西西北北発発発五万九万五筒八筒

配牌である。
1巡で打たれた西北をポン
秒速で24,000のアガリをものにする。

九万東東東発発発 ポン西西西 ポン北北北 ロン九万

一撃でこの半荘の趨勢を決するアガリ。
だが、これで安心してこのトップを守りに入って守備的に打つ者もいるであろう中、里木の考えは「点棒の優位を活用して更なる加点に取り組む」というものだった。

終わってみれば89,500の大トップ。
半荘1回で、+71.5Pという圧巻のスコアを叩き出す。

「スコア的に決勝が見えてきたので、次節からは決勝を見据えた戦い方をしていきたいです」

勝負所を間違えないセンスと、柔軟かつ豪壮な攻撃力は間違いなく支部指折りの実力者。
彼の口から出る「連覇」というワードは決して絵空事ではない現実味を帯びている。

前期リーグ戦にて、里木と決勝で争った梅本。
勢い盛んな若武者も、今期は少し苦戦している。

「2年連続で決勝に出ているので次こそは優勝したいです。そのためにも、先ず決勝目指して全力で頑張ります。」

梅本は先日開催された若獅子戦でもベスト16に勝ち上がっており、支部の若手では一番勢いのある打ち手である。そんな彼も今期は思うようにスコアが伸ばせずもがいている。

その梅本の、苦戦を打開する一撃となったか、それが2回戦の親番

東2局東家 ドラ四万

四万四万七万七万八万六索六索六索北北 ポン東東東 ツモ四万

ドラを暗刻にしてのテンパイ。
六万九万は場に5枚。掴めば誰も止まらない状況だが、下家の浦田の3フーロに対して七万が相当危険度が高く、シャンポンに受ける。
結果、終局間際に僥倖の北ツモで、彼自身公式対局では初めてという8,000オールをものにする。

四万四万四万七万七万六索六索六索北北 ポン東東東 ツモ北

これで勢いに乗るかと思えた梅本だが、この半荘も1人浮きを決め損ねてしまい、さらに4回戦目に大きなラスを引いてしまい、当日の貯金を吐き出す形となってしまった。

「反省点も多いですが、まだ決勝に残るイメージを失わず戦います。」

悩み苦しみ足掻く日々。それでも若武者の目は前を見据えている。
本田や里木の、次を担う世代の筆頭だろう。彼の行く末が楽しみでならない。

今期デビューした新人が北陸支部には4人いるのだが、皆一様に苦戦を強いられている。その中で今回スポットを当てたいのが、一番苦しんでいる松井である。
リーグ内でも最下位争いに甘んじている彼だが、今節漸くプラスを持ち帰ることに成功し、順位を1つ上げている。

松井直大 富山県小矢部市出身の26歳
寡黙な風貌だが、自身を負けず嫌いの麻雀と評する、今期デビューのルーキーである。
今期は連敗が続き、悔しい気持ちと「応援してくださっている方々へ申し訳ない」という気持ちが大きかったという。
そんな彼が浮上のきっかけを掴んだ1局が下記である。

2回戦南3局南家 ドラ三筒

一万一万一万二万二万四万四万四万九万九万 チー六万七万八万 ツモ九万

メンチン1シャンテンからのチーテン。ツモリ三暗刻にて3,000・6,000の大きなアガリを手にする。
また、この半荘は前述の梅本が8,000オールを決めた半荘でもあり、このアガリは梅本の独走を止め、自身に2着を手繰り寄せる貴重なアガリであった。

「この2着で流れに乗れたのか、ようやく初のプラスで終わる事が出来ました。次節以降も応援してくれる方々の期待を裏切らない様一つでも順位を上げていきたいです。」

彼のみならず、今期苦戦の続く新人達だが、彼らの競技人生はまだ幕を上げたばかりである。今日の敗戦を、一摸一打を糧にして、大きく羽ばたいて欲しい。

最後に私事ではあるが、マイナスの続いていた私荒谷も今節漸くプラスを持ち帰る事が出来た。
今季好調の安城、岡田に挟まれながらも己の打撃の麻雀を見失わず、大勢を変ずる程では無いにせよ、微かな手ごたえを感じるプラスであった。

無論自身の成績は大事である。だが、先述の松井も然りだが、我々には応援してくれている方々がいる。その方たちに励みになる背中を見せたい。喜んでもらえるような麻雀が打ちたい。

それがこの麻雀という、人生をかけるに値する遊戯へのささやかな恩返しになればと私は日々牌を握っている。

次節第5節は9/25の開催です。
応援の程、宜しくお願い致します。

(文:荒谷誠)

順位 名前 合計 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節
1 志多木 健 166.0 35.0 81.0 21.8 28.2
2 安城 るい 150.0 37.4 13.1 64.5 35.0
3 里木 祐介 143.8 70.5 27.3 ▲ 5.8 51.8
4 南 和之 84.4 54.5 ▲ 43.7 52.5 21.1
5 浦田 豊人 63.4 ▲ 10.8 12.1 73.9 ▲ 11.8
6 岡田 拓也 60.7 ▲ 25.6 42.5 11.0 32.8
7 獅坂 祐一 44.4 58.8 ▲ 6.8 ▲ 27.9 20.3
8 文月 愛美 8.4 ▲ 40.6 67.5 7.6 ▲ 26.1
9 成田 理良 ▲ 9.8 22.7 1.7 ▲ 17.3 ▲ 16.9
10 梅本 翔 ▲ 10.0 ▲ 0.6 ▲ 11.8 7.2 ▲ 4.8
11 小林 和樹 ▲ 36.1 4.4 14.1 ▲ 19.7 ▲ 34.9
12 如月 靖之 ▲ 41.0 ▲ 38.2 0.2 5.5 ▲ 8.5
13 宮成 さく ▲ 57.9 ▲ 55.0 ▲ 28.2 41.9 ▲ 16.6
14 荒谷 誠 ▲ 67.7 ▲ 18.3 ▲ 56.0 ▲ 13.1 19.7
15 木戸 僚之 ▲ 79.2 ▲ 38.0 ▲ 29.6 ▲ 11.6 0.0
16 堂垂 正裕 ▲ 81.8 43.8 20.1 ▲ 58.2 ▲ 87.5
17 後藤 正博 ▲ 83.6 ▲ 36.0 ▲ 7.2 ▲ 66.2 25.8
18 松井 直大 ▲ 130.5 ▲ 34.4 ▲ 49.8 ▲ 49.3 3.0
19 藤本 鉄也 ▲ 131.5 ▲ 30.6 ▲ 51.5 ▲ 17.8 ▲ 31.6