北陸プロリーグ レポート

第12期北陸リーグ準決勝~決勝レポート

平成27年7月12日、第12期目となる「北陸最強を決める戦い」北陸リーグの準決勝~決勝戦がバイパスレジャーランド藤江店にて開催された。
北陸リーグは、通過者8名の上位3位までに対してそれぞれ30P、20P、10Pがアドバンテージとして付与され、準決勝3回戦の対局。
上位の4名までがポイントを持ち越して決勝を2回戦行うという仕組み。
8名が残れる為、最終節も消化試合となる者が少なく、また上位陣もアドバンテージは喉から手が出るほど欲するところ。
最終節の最終局まで緊張感を無くさず多くの者がヒリつく戦いが出来たのではないだろうか。

そして準決勝を終えて、決勝進出となったのは以下の4名。
久々湊(くぐみなと)さん(66.1P)、栗野さん(51.2P)、北川さん(34.6P)、濱平(18.7P)
奇しくもリーグ戦の1位~4位がそのまま決勝進出となっており、アドバンテージを十全に用いた立ち回りと、期を通しての状態の良さが際立つ結果となった。

唯一プロで決勝に残った濱平は連勝が必要か。
またしても準決勝にて辛酸を嘗めた私の分まで頑張ってほしいと個人的ながら心の中で応援していた。

リーグ戦の経験は浅いが圧巻の成績で決勝の椅子に座った久々湊さん、栗野さん。
北陸リーグの古参で実力十分の北川さん。点差は縦長ながらも誰が勝ってもおかしくない今期の決勝戦。
各人が他者との点数条件を確認し、静かに勝負は始められた。

1回戦 起家 栗野さん-濱平-北川さん-久々湊さん

先制打は濱平

東1局
三万三万一筒二筒三筒三筒四筒五筒六筒八筒  ポン中中中  ツモ七筒  ドラ三万

全員が平たい配牌ながらも選択のミス無く最短で1,000・2,000をものにし、

東2局
三万四万南南  ポン五万 上向き五万 上向き五万 上向き  ポン七万 上向き七万 上向き七万 上向き  ポン白白白  ロン五万  ドラ九索

久々湊さんから5,800。行くしか無い自身の状況を踏まえ、最短かつ打点のあるアガリを連取する。

濱平は富山在住のプロ。現在は鳳凰位戦と北陸リーグを兼任しているが、プロのデビューとしては、実は私と同じ中部プロリーグ。
近年、王位の森下やマスターズの樋口を排出している、地方のリーグでも一目置かれるハイレベルな環境にて私と同時期にプロの門を叩いている。
上記の2名のタイトルホルダーとも、リーグ戦にて鎬を削った間柄である。
ここ暫く一般の方が優勝を続けている北陸リーグ。不甲斐ない他のプロの思いを背負って嗅覚鋭くアガリを拾っていく。

そんな濱平に独走を許さないのは北川さん。

東3局
七万七万七万八万八万六索七索八索三筒四筒中中中  リーチ  ツモ五筒  ドラ四索

残り2枚しか残っていなかった二筒五筒を力強く引き上がり2,600オール
次局濱平の2,600を挟んでからの東4局

東4局

二万三万四万八万八万一索二索三索四索五索六索中中  リーチ ロン中  ドラ八万

押してきた栗野さんからの満貫直撃。
東場は濱平と北川さんのアガリの応酬にて、決勝の場は一気に大混戦の様相を呈してきた。

南場に入り、勝負所と感じたか、本手を躊躇わず横に曲げる濱平。

南1局

五万六万七万八万八万三索四索五索五索六索五筒六筒七筒  リーチ  ドラ二筒

高めツモでトータルでも肉薄できるこのリーチ。
立ちはだかるのはここまでアガリの無い栗野さん

一万二万三万一索二索三索二筒三筒三筒四筒四筒発発  リーチ

打点こそあるものの、完成形に辿りつけなかった感のある最終形。
両者のめくり合いは栗野さんが四索を掴み安目ながらも3,900の打ち込みにて決着した。

栗野さんは全節を通して抜群の安定感と攻撃力で1節から首位を独走。
本人は自身を「手数の麻雀」と評していたが、本質は押し引きの卓抜さにあると私は感じている。
しかしながら、この決勝という舞台。盤石かと思えたその押し引きが僅かに狂いを生みだしており、結果から言うと彼はポイントを大きく減らして敗者となってしまう。
来期は是非今期見ることの出来なかった「逆境での強さ」を全員に見せつけて欲しい。

続く南2局は北川さんの1,000・2,000。安目引きながらも、この半荘トップに立つ。
北川さんは「柔能く剛を制す」ベテランらしい捌きの上手さと、簡単にはオリない粘り腰で素点を上げていく試合巧者。
決勝は打って変わってリーチ多用の攻撃的麻雀で他者と真っ向から渡り合った。

そして南3局。ここまで静かだった久々湊さんが目を覚ます。

南3局

三万三万四索五索五索六索七索二筒二筒二筒南南南  ツモ三索  ドラ五筒

先に3,900テンパイを入れていた四筒七筒の北川さんに追いつき、1,300・2,600でじわり差を詰める。

そして、振り返れば事実上の決着となったオーラス。
北川さんはアガリトップ。濱平も40,000越えの2着ながらも、次戦の為には2,000以上のアガリで北川さんを制してトップに立ちたい。

中をポンして逃げ切りを図る北川さん。しかし最初のテンパイは濱平に。

南4局

六万七万八万二索三索三索四索五索五索五索四筒五筒六筒  ドラ九索

好形だが一索がフリテンであり、三索四索のツモ条件。引いてくる牌によってフリテン解消、もしくはサクッと引きアガリたいところ。
しかし、勝負を決めるアガリをものにしたのは久々湊さんだった。

一万一万一索一索一索九索九索七筒七筒七筒  ポン西西西  ツモ一万

たった1局で2者を豪快に抜き去る6,000オール。
大いに派手なアガリなのだが実は単純ではなく、七対ドラ2の1シャンテンで濱平の打一索を吹かしており、北川さんの仕掛けでラス牌の七筒一索を引き入れての万全からの西ポンである。
北川さんの鳴きの有無、濱平の1に対するポンの有無など、たらればを言えばきりがないが、勝利の女神が選んだのは久々湊さんの渾身の一撃だった。

これで逆に北川さんと濱平は満貫条件に。続く1本場、濱平がメンホンの1シャンテンまで行くも、久々湊さんがリーチ七対子をホウテイで栗野さんからアガって勝負あり。
総合2着の栗野さんを箱下に落とし、2回戦を待たずして勝負を決める大トップをものにした。

1回戦スコア
久々湊さん(+32.1P)、北川さん(+9.1P)、濱平(+5.0P)、栗野さん(▲46.2P)

総合スコア
久々湊さん(+98.2P)、北川さん(+43.7P)、濱平(+23.7P)、栗野さん(+5.0P)

2回戦 起家 北川さん-濱平-栗野さん-久々湊さん

東1局に濱平が意地の満貫を久々湊さんから直取りするも、見せ場はここまで。最後は久々湊さんが静かに手を伏せ、第12期の北陸リーグの王者が決定した。

久々湊さんは一言で表すなら「剛腕」準決勝で私も2回対戦したのだが、それぞれ国士無双、メンチン親倍をツモられ、力及ばず敗退している。
ブンブンと行く麻雀というわけでもなく、先述の1吹かしであったり、小技で捌く上手さも持ち合わせているのだが、それが霞むほどの豪快なアガリをここぞで決めてくる強さがあった。

「新参者が失礼しました」と照れくさそうに優勝後に話してくれた控えめな口調とのアンバランスが持ち味なのだろうか。
「勝ち負けも大事ですが、プロを交えて麻雀を打つ楽しみを大切にしたい。来期もよろしくお願いします」

競技に臨む姿勢以前の、麻雀を愛する心が何よりの勝因だったのかもしれない。
久々湊さん、本当におめでとうございます。
惜しくも届かなかった北川さん、栗野さんも、来期また決勝の舞台で雪辱を、であろうか。

決勝に残るも・・の濱平。決勝に残れなかった私と本田を含むプロの面々は再度の猛省を。
一般参加の方が強い。ならばこそ一層プロは強さを求められる。プロにとって、タイトル戦は優勝以外認められはしない。来期の奮闘を願います。

最後になりますが、半年間ではありますが、拙いレポートにお付き合い戴き有難うございました。
またいつかお目にかかる事があらば、宜しくお願い致します。

決勝

順位 名前 持越点 1回戦 2回戦 3回戦 4回戦 合計
1 久々湊 康雄 66.1 32.1 1.8 100.0
2 北川 光 34.6 9.1 11.9 55.6
3 栗野 健翔 51.2 ▲ 46.2 6.5 11.5
4 濱平 光朗 18.7 5.0 ▲ 20.2 3.5

準決勝

順位 名前 持越点 1回戦 2回戦 3回戦 合計
1 久々湊 康雄 10 42.9 40.9 ▲ 27.7 66.1
2 栗野 健翔 30 ▲ 2.9 ▲ 9.1 33.2 51.2
3 北川 光 20 ▲ 9.0 ▲ 16.3 39.9 34.6
4 濱平 光朗 29.0 7.3 ▲ 17.6 18.7
5 本田 朋広 ▲ 10.5 24.5 ▲ 16.3 ▲ 2.3
6 荒谷 誠 11.1 ▲ 28.9 10.3 ▲ 7.5
7 久保 智央 ▲ 45.0 4.3 4.1 ▲ 36.6
8 西田 有佑 ▲ 15.6 ▲ 22.7 ▲ 25.9 ▲ 64.2