北陸プロリーグ レポート

第15期北陸リーグ 決勝レポート

2017年2月25日
執筆: 浦田 豊人

2月12日(日)、小雪が降る肌寒い日のなか、第15期北陸リーグ決勝戦が「アルシアル雀ザイル(金沢市)」にて行われた。

半年間の予選を勝ち抜いた4人は下記の通り。

 

100

 

1位通過 藤本 鉄也(三段) +40P
2位通過 押川 憲一(一般) +20P
3位通過 浦田 豊人(七段) +10P
4位通過 小泉 陽平(一般) ±0P

決勝は上記の通り、予選上位順に40~10Pのアドバンテージが与えられる。

1位通過の藤本としては、このアドバンテージを活かすべく、1回戦でトップを取り、圧倒的優位の位置取りを目指すであろう。
他の3人は、そうならないように藤本包囲網を敷き、何処かで抜け出す計算を立てていくのか?
各自「優勝」にかける熱い思いがぶつかった闘いがスタートした。

 

1回戦

東2局 親の押川さんに面前で一色手のテンパイが入る。

一筒一筒三筒四筒四筒五筒五筒六筒七筒八筒南南南  ドラ東

ここはしっかりとヤミテンに構える。
流石一般参加ながら3期連続で決勝進出している押川さん。今日も落ち着いている模様。
そこへ藤本が順子4メンツ完成でのドラ東タンキリーチを敢行。
押川さんに東が廻ってくるが、ここは勝負で藤本にリーチドラ2の5,200を献上。
いきなり1回戦で突き放そうと目論む藤本の大胆なリーチ、振り込みはしたがヤミテンに構え、そしてしっかりと勝負に行く押川さん。
2人のこの日にかける思いが鮮明に分かる一局となった。

藤本がこの局を機に、ジリジリとアガリを重ねて、3人との差を広げていく。

東4局 親の小泉さんがリーチ。

二索三索四索五索六索七索八索九索二筒三筒四筒白白  リーチ  ドラ白

高目の一索をツモれば6,000オールの本手であったが、藤本がすぐに小泉からアガる。

北家・藤本

一万二万三万一索二索三索六索七索八索二筒三筒四筒四筒  ロン四筒

藤本にしてみれば安目の1,000点のアガリで、不本意に思えたかもしれないが、小泉さんの本手を潰した価千金のアガリ。
決勝終了後、小泉さんがこの局を分岐点に挙げていたが、確かにこの後、小泉さんには辛い展開が続いていく事となる。

そんな私も手がなかなか入らなかったが、南1局の親番で、痺れを切らして仕掛けていく。

南1局 東家 ・浦田

七万九万三索四索四索八索九索三筒三筒六筒七筒八筒九筒  ドラ三筒

9巡目、ここから七索をチーをして、下家の押川さんがピンズのホンイツ模様であったが、構わず打六筒。押川さんは、これを五筒七筒でチー。私、また六筒をツモ切ると

南家 押川さん

四筒五筒九筒九筒九筒西西発発発  チー六筒 左向き五筒 上向き七筒 上向き  ロン六筒

5,200の放銃。親番とはいえ、ここまで自分に風が吹いていない事、まだ1シャンテンであった事からも、ドラが三筒で明らかなホンイツに対してのドラ筋の連打は、やはり軽率である。
私もこの局を境に1回戦は全く闘える手牌が来なかった。

オーラス 親の小泉に再び本手のテンパイが入る。

五万五万六万六万七万五索六索七索四筒五筒六筒七筒七筒  ドラ五索

このままでも高目ツモで4,000オール。四筒七筒を持って来れば8,000オールまである大物手。
しかし藤本がドラ五索をしっかり勝負して、すぐに,1000点のアガリ。
東4局の因縁か?ここでも小泉より藤本のアガリ牌が先にあった。

藤本は自力で1人浮きのトップを決め、アドバンテージを含めて首位をしっかりと固め、優勝に向けて大きく前進した。

1回戦結果
藤本+37.3P 押川さん▲6.3P 小泉さん▲11.9P 浦田▲19.1P

トータル結果
藤本+77.3P 押川さん+13.7P 浦田▲9.1P 小泉さん▲11.9P

 

2回戦

藤本にとっては戦前描いていた理想的な展開。逆に他の3人にとっては最悪の展開となった1回戦。
2回戦も藤本がポイントを伸ばすようだと、後半戦を待たずして当確ランプが点灯してしまう。
早くも正念場を迎える3人。

東3局 2巡目 北家・浦田

三万三万三万五万五万七万九万九万二索四索六筒六筒発  ドラ九筒

ここから親の押川さんの九万を仕掛けていく。本来ならばここから仕掛けはしない。手牌的にも遠く、ドラも無いし、何より北家だ。
しかし、逆風を感じている今、この短期戦では強引にツキを引っ張ってくる必要があると判断。
狙いはホンイツだったが、すぐに押川さんより六筒が出て、これも反応し、ポン。
ドラの九筒も顔を見せておらず、3者は苦し紛れの強引な仕掛けとは断定出来ずに慎重に捨て牌を選んでいく。
私の思惑通りの展開となり、終盤テンパイが入る。

三万三万三万五万五万白白  ポン九万 上向き九万 上向き九万 上向き  ポン六筒 上向き六筒 上向き六筒 上向き  ドラ九筒

このまま流局と思われたハイテイに五万がいて、1,300・2,600をアガる。
本日初、私に風が吹き始めた瞬間。そのまま私の1人浮きの状態で場は進む。

南3局 今局も私の手は良い。

二万三万七万八万一索二索三索八索九索九索中中中  ドラ発

親の押川さんが八万九万とペンチャンを外してくる。その八万を西家の藤本がポンを入れる。すると私に四万が来てテンパイ。

二万三万四万七万八万一索二索三索九索九索中中中

安目が入り不本意ではある。待ちの九万は今、押川さんが切ったばっかりで3枚切れではあるが、ワンチャンスでもあり、すぐにアガれそう。
そう思っていたところに押川さんより親リーチがかかった。私の一発目のツモが七筒
押川さんの捨て牌は平凡なピンフ模様で、ピンズは1枚も切られていない。アタマの九索は現物で、同巡に小泉さんも切っており、4人に対しても完全安全牌。
強気に勝負するか?それとも九索で回るか?ツモって来た感性は「切れっ!」

そのままツモ切ろうとした。しかしその瞬間、「待てよ。」手が止まった…。
まだドラの発は見えておらず、もしかしたらドラトイツのリャンメンリーチかもしれない。
ここはトップ目なので丁寧に行くべきでは?
幸いアタマの九索で回れるし。入り目も四万で弱いし、待ちもワンチャンスとはいえ、薄そうだし…。
長考する私…。

そして理が感性を押さえ込み、私はいつの間にか九索のトイツ落としをしていた。
その判断を嘲笑うかのかのように、押川さんが4枚目の九万をツモ切る。
「しまった―っ!!」
そして押川さんがツモアガる。

四万五万七索七索一筒二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  ツモ三万

一通出来上がりの4,000オールだ。
七筒は通っていた。私はいったい何をやっているのだろう!?
折角強引にやっと流れを引き寄せ始めたというのに、こんな七筒1つ切れないで、てっぺんを取れるとでも思っているのだろうか!?

そしてここから押川さんに怒涛の5連荘を許してしまい、持ち点は一気に6万点オーバーで大トップを取る。
藤本に肉薄し、対抗馬として名乗りを上げた。

無論、この連荘の責任は私にある。弱気な私は1人浮きはおろか、トップも転落し、この後の後半戦も私に二度と風が吹く事はなかった。
事実上の私の敗因となる一打。たった1枚の七筒を切れなかっただけで、私の半年間目指して来た「優勝」の二文字が泡となって消えてしまった。
一打がその局を、その半荘を、そして優勝を決めてしまう。
それが麻雀というものなのであろう…。

2回戦結果
押川さん+38.3P 浦田+11.2P 藤本▲12.3P 小泉さん▲37.2P

トータル結果
藤本+65.0P 押川さん+52.0P 浦田+2.1P 小泉さん▲49.1P

 

3回戦

1回戦で1人浮きのトップを取り、優勝のカウントダウンかと思われた藤本だが、押川さんの猛追にあい、一気に2人の一騎打ちの様相を呈して来た。
浦田と小泉さんはかなり厳しくなってきたが、とりあえず大きなトップを取り、天命を待つ。

3回戦も1・2回戦同様、藤本と押川さんのペースで進む。
だから、こういう回数の限られた麻雀は序盤戦が大事なのである。
ツキを練り固められた側と、そうでない者の差が、このあたりから鮮明に表れてくる。

東場で全然手が入らなかった私に、南1局にチャンス手が来る。

南1局 ダブ南をポン、七索をチーして1シャンテン。

一索白白白発発中  ポン南南南  チー七索 左向き五索 上向き六索 上向き  ドラ一索

リャンメンを鳴いてまだ1シャンテンというところが、いかにも態勢の無さを感じるが、もう格好を構っている場合ではない。
しかし、ここからなかなかテンパイにならない。
そうしているうち、親の押川さんが六索中と強烈に押してきた。
アタれば跳満まで見えている私の仕掛けにである。ホンイツだろうが、三元役だろうが、勝負する時は勝負する。決してサボらない。保留にしない。
こういうところが押川さんの強さたる所以であろう。

そして終局間際、私はテンパイした為、一索を勝負すると、押川さんが手を開く。

六万六万七万七万一索二索二索三索三索四索四索七筒七筒  ロン一索

七対子ドラ2の9,600放銃。
同じ勝負牌でも、押川さんと私のそれとでは、あまりにも質が違い過ぎた。

押川さんはこのアガリが効いて、3回戦もトップ。藤本もかろうじて浮きを確保したが、ついに押川さんが逆転し、首位に立つ。

3回戦結果
押川さん+33.6P 藤本+4.7P 浦田▲8.4P 小泉さん▲29.9P

トータル結果
押川さん+85.6P 藤本+69.7P 浦田▲6.3P 小泉さん▲79.0P

 

最終4回戦

1回戦終了時に60P以上離していた藤本であったが、逆に追いかけるカタチとなってしまった。その差は15.9P。
浦田と小泉さんが大人しくなる展開を予想すれば、押川さん浮き2着で12Pの点差が必要となろうか?
大接戦になった運命の最終戦…。

東3局 ドラ二筒をトイツにして私がリーチ、呼応して小泉さんもメンピンドラ1高目イーペイコウの追いかけリーチを放つ。
両者共に満貫手であるが、やはり本日の主役ではない。
2人のリーチを掻い潜ってアガったのは藤本。

一索一索一索西西発発  加カン七索 上向き七索 上向き七索 上向き七索 上向き  暗カン牌の背八筒 下向き八筒 下向き牌の背  ロン西  ドラ二筒

浦田より討ち取り、大きな大きな7,700のアガリ。
この時点で押川さんと藤本はほぼ並びとなる。

南1局 親の藤本

一索二索三索四筒五筒南南南中中  ポン五索 上向き五索 上向き五索 上向き  ドラ九索

ソウズのホンイツにも見え、藤本の捨て牌の序盤に四筒が1枚切られており、点数こそ安いが、アガリは簡単に拾えそう。
そんな中、押川さんにテンパイが入る。

二万二万四万五万六万三筒五筒六筒六筒六筒発発発  ドラ九索

現時点でほぼ原点の押川さん。沈みたくもなく、何とかこの親を落としたいが、待ちも悪く、藤本には打ちにくい牌も多い。放銃すれば親満もありえそうなので、この局が決定機になってしまうかも…。
しかし、押川さんは腹を括ってここも強烈に押していく。
生牌の中東、ついにはドラの九索まで切っていく。
凄い!これが覚悟した人間の勝負というものだろうか。

結末は藤本から四筒がツモ切られ、押川さんの執念が実る。
正に決定機となる1局となった。

オーラス 押川さんがトップ目のため、1局勝負。
藤本が押川さんを逆転する条件は、満貫直撃か跳満ツモ。
(ちなみに浦田・小泉さんからだと三倍満アガリ。)
決して不可能な条件ではないが、果たしてどちらに女神は舞い降りるのか?

2巡目、小泉さんが七万を切ると「ロン」の声。

三万三万六万七万八万八万九万二筒三筒四筒白白白

なんと押川さんがドラ暗刻の親満をアガリ。
これにて藤本もほぼ条件が無くなり、次局で終了。
押川さんの優勝が決定した。

4回戦結果
押川さん+28.0P 藤本+9.0 浦田▲13.9P 小泉さん▲23.1P

トータル結果
優勝 押川さん+113.6P
2位 藤本+78.7P
3位 浦田▲20.2P
4位 小泉さん▲102.1P

100

優勝された押川さん、おめでとうございます。
第13期に初優勝を果たされてから、3期連続の決勝進出で、今期も予選で只一人全節プラスと抜群の安定感を誇り、2度目の栄冠となりました。

局後のインタビューで、
「局面局面で、何度も回ろうかと思った場面がありましたが、サボってはいけない、楽してはいけない、と自分に言い聞かせて、勝負しました。」
というコメントが示すとおり、腹を括った、覚悟の一打が非常に鋭く、同卓していてただただ唸るしかありませんでした。

そして、半年前に皆の前で優勝宣言して挑んだ私…。
結果は良いところなく完敗。

さて、次回からどうしようか?悔しい日々が幾ばくか過ぎ、出た結論は…。
「よし、また次回優勝宣言だ!」
狼少年と言われないように頑張ります…。