北関東プロリーグ レポート/第1期 宇都宮リーグ 決勝観戦記
2012年12月04日
決勝戦1回戦(起家から、渡辺・黒木・谷口・中津)
面前でジックリと手を育む渡辺、黒木、谷口。対して中津は積極的に鳴きを入れて主導権を握りに行く。
今回のこの並び。中津の上家は過去連盟に所属していた谷口。お互いの持ち味のぶつかり合いが見どころか。
東1局、渡辺の500オールからスタート。
1本場、早速リーチ合戦が見ることができる。先制、渡辺。7巡目。
リーチ ドラ
開始早々リードするチャンスを得た渡辺は力が入る。
追い掛けるのは谷口。勝負する時は真っ直ぐ押す迫力がある。
リーチ
安目ではあるが、親のリーチをくじくカウンターパンチ。技と力を華麗に魅せる。
谷口が渡辺より3,900は4,200。
東2局は中津らしい速攻の400・700。東3局、
ツモ
ドラ
この手を開いたのは渡辺。
私の主観になってしまうが、この手、渡辺は普段はリーチをしているのではないか…と感じた。
たとえ空振ったとしても、強振が渡辺の武器だったはずだから。
決勝という舞台、どうしても確実にアガリたいという気持ちの表れか。
その選択、またはその選択が導いた結果はさほど気にすることではないと思う。
ただ、もし普段と同じ選択をしていなかったとした時に、仮に普段通りの打ち方ができていたのなら…と、脳裏によぎってしまう事。
リーチしていたら跳満だったナ…と。渡辺がそうでないことを祈っていた。
ともかくとして、トップ目に立ったことは事実。
東4局、中津のリーチに安牌が尽きた渡辺が飛び込む。打点は2,000点。渡辺は安堵の表情を浮かべていた。
ここまで毎局、点棒の出し入れがある渡辺。満貫をアガっても、なくなるときはすぐになくなる。
比較的失点が多いということは自覚しているだろう。それだけに東3局の話の続き、やはり攻撃に力を注ぐことが重要だと思う。攻撃は最大の防御なり。
渡辺がほんの一瞬、おそらく無意識にホッと息をついたことに私は気付いてしまった。
決勝の舞台、その重圧、緊張感、空気で伝わってくる。
東4局1本場、「俺もいるぞ、忘れるな」まるでそう言わんばかりに黒木は牌を倒す。
ツモ
ドラ
このアガリは実に黒木らしい。
派手さはないが、堅実な打ち回しは18歳のそれとは到底思えないほど。
内に秘める闘志とでも表現すればいいのだろうか。
辛いときにも辛い顔一つ見せず、見せるときには静かに確かな存在感を示してくる。
仮に身近な環境で麻雀のライバルだったとしたら最もコワイ存在になるのはこの手のタイプ。
勝気の強い麻雀を打つ私とは対照的で、実はこの日最も印象に残ったプレイヤーはこの黒木だった。
南2局、谷口が中津から2,000は2,600。
南3局、ヤミでピンフドラ1をテンパイしていた黒木が渡辺のテンパイ打牌を捕らえる。
南4局、渡辺も負けずに黒木を直撃。この3,900で逆転してトップで1回戦を終了した。
1回戦成績
渡辺+14.7P 黒木+6.2P 谷口▲5.5P 中津▲15.4P
1回戦は持ち味をなかなか出させてもらえなかった中津が終始苦しい展開を強いられた。
やはり谷口、経験を活かした守備力で中津を封じた感はあるが、なかなか攻めきれずに不本意なマイナスポイント。
大きなポイントを叩いた選手がいなかったことは幸いだったことだろう。
渡辺、一歩リードできたことで渡辺らしい麻雀を打てるといいのだが。
2回戦 (起家から、渡辺・中津・谷口・黒木)
東1局、1回戦では鬱憤が溜まっていたことであろう中津が反撃の狼煙をあげる。
リーチ ドラ
鳴いてテンパイを入れた渡辺がを掴んでしまい3,900の放銃。
東3局、谷口の親を徹底的に流しにかかるは中津、渡辺。
渡辺が中津より1,600。この時の谷口の配牌は、
ドラ
ジックリ手を育てれば6,000オールも見られそうなこの手を、他家に対応しながらも進めていく手順は流石の一言。
谷口は腰の重い麻雀を一貫して魅せる。
その豊富な経験が驚異だということを感覚でわかっているのか、他家同士が協力して潰しにくる。
東4局、
チー
ドラ
中津らしいと言えば中津らしい仕掛け…なのだが、ここまで整った素材を鳴いてしまうのはさすがに辛い。
テーマが黒木の親落とし。わからなくはないのだが。結果、黒木にテンパイが入り、リーチ。
リーチ
このリーチに中津はを掴み撤退。
黒木は、あとはのんびり山との勝負。ツモ筋にいたをツモり2,600オール。
仕掛けは飛躍的にスピードは上がるが、引換えに打点と守備力を失う。
今回のケースのように、反撃されて引きさがるのであれば、長い目で見てそもそも仕掛けを入れるべきではないと思っている。
仕掛けたことによりテンパイさせ、アガリを演出した時に生まれる負のエネルギーはなかなか払拭することができない。
無かったはずのアガリがそこに生まれてしまうのだから当たり前。
また、こういった説得力のない部分を周りの人間に見せることにもメリットはないように思う。
結果を残したとしても、周りが素直に結果を認めることが難しくなること、ここで見せる甘さが先々で隙に繋がること。
その場凌ぎはいつか綻びるのが定めなのであれば、失敗に繋がったとしても一貫性を示すことの方が遥かに価値がある。
失敗は省みれば修正ができるが、傷となれば痕が残るのは麻雀に限ったことではない。
東4局1本場、黒木の親を流しに掛かる中津、渡辺。
さきほどの谷口の親の時もそうだったが、この2人、意外と小心者なのかもしれない。
展開に左右され、動きが軽くなるのは焦っている証拠のように思える。
逆に黒木は、そんな状況でも安定感がある。場をよく見てその場にふさわしい打牌をする。
辛いときもグッとこらえ、最後まで諦めない忍耐力と、ダメだと決めたらスパッと手を引く潔さがある。
南2局1本場、
中津
リーチ ツモ
ドラ
2,600は2,700オール。
南3局3本場、谷口1,500は2,400を黒木から。
中津のリーチに親の谷口が押し放銃。2,600は3,800。
南4局、谷口が1,000・2,000。このアガリで黒木も30,000点を割る。
中津は1,000点払い、3ポイント儲けの嬉しい1人浮き。
2回戦成績
中津+22.1P 黒木▲1.6P 谷口▲4.2P 渡辺▲16.3P
2回戦終了時
中津+6.7P 黒木4.6P 渡辺▲1.6P 谷口▲9.7P
3回戦 (起家から、渡辺・中津・黒木・谷口)
東1局、中津の1,000・2,000。
東2局、中津
リーチ ツモ
ドラ
中津はこの手を即リーチ。迷うような仕草が一切ないというよりも、どちらかというと自信があるように。
これが実はとても重要だと思っている。人間だから、心が何らかの形で表に出てしまうもの。
それは発声の大きさやトーン、打牌の強さや早さ、表情、目線。
それを感じ取って打点や待ちの善し悪しの『読み』を入れているのだが、彼は思い切りがいいものだから読みが一切通用しない。
彼がその点を意識しているかは別としても、場況や独自の判断基準があるのかこの待ちに自信があってリーチをしているのだと見受けられるが、その精度が著しく高い。実際に、リーチを打った時点で山に3枚。
自信に満ち大胆に打つ様からは、よく研究しているのだろうなとも感じる。
この手に限ったことではないが、この決勝戦で何が何でも勝つ!という意志の強さが最も感じ取れるのも中津のように思う。
東2局1本場、わずか3巡で、
ポン
ポン
ポン
ドラ
このテンパイを入れるは西家・谷口。しかし中津もテンパイ、力強くリーチと宣言。だが宣言牌はだった。
東3局、やはり中津は勝利に対する執念が強い。先の放銃などまったくダメージがないようだ、ここもリーチ。
しかし黒木が700オール。
東3局2本場、1、2回戦で我慢し続けてきた谷口が、
リーチ ドラ
ツモれば一気にトータルトップに躍り出るところ。
黒木もダブ東ドラ1のテンパイを入れるが、中を掴んでしまい止まらない。
東4局、
ツモ
ドラ
これをリーチするのは流れに乗った感のある東家・谷口。
宣言牌のをカン!!と発声する渡辺。ヤミでカン
待ちだった。
大明槓でアガリに結びつくはずのを自ら食い流してしまい、更に谷口に2,000オールをツモらせてしまう。
東4局1本場、黒木が、
と仕掛け中津から2,000をアガる。
このアガリは一見、谷口の親を流した意味のあるアガリに見える。が、しかし谷口は1人浮きで大きくトップを走っているのだ。
軽いアガリで谷口の親を流すことが、谷口を楽にさせるということも知って欲しい。
実際にホンイツの目を残しドッシリと手組みをしていれば、2,000・3,900にたどり着いている。
そうそうにターツを決め、河に1メンツ置いてしまった。
この場面で谷口が連チャンすることに焦ったのだろうか。これまで腰の重い麻雀を見せていただけに少し悔やまれる。
南1局、あくまでも目指すは優勝のみ!中津は積極的にリーチ。ツモって1,300・2,600。
南2局、ここも黒木が鳴いて1,000アガリ。
南3局、中津、ガムシャラに追い掛けたい場面で好材料。
ドラ
しかし、ここからをポンしてしまう。これは大抵失敗する仕掛け。
まずドラのは鳴けるはずがないし、
なら鳴けるかなと思っているのであれば感覚を改めた方がいい。
うまくまとまれば倍満まであるような手を満貫までの手にしては涙が出てしまう。
跳満の手は跳満、倍満の手は倍満でアガって欲しい。特急列車にも利用要項がある。
を谷口がポン。サッと流されてしまった。利用要項をしっかりと守る谷口に乗車権が渡ったようだ。
南4局は中津の仕掛けで400・700。
3回戦成績
谷口+24.1P 中津+5.9P 黒木▲11.8P 渡辺▲18.2P
3回戦終了時
谷口+14.4P 中津+12.6P 黒木▲7.2P 渡辺▲19.8P
4回戦 (起家から、中津・黒木・谷口・渡辺)
東1局、早速東家中津が仕掛ける。をポン、打
。
しかし中津の手は半ば無理鳴きに近い、カンチャンペンチャン3つ残しのチャンタ。
谷口もドラの、続いて
とポンし、中津以上に恐い存在になった。
しかし渡辺が屈することなくリーチし700,1,300をツモ。
東2局、中津のリーチに谷口が2,000点放銃。
東3局、黒木が4巡目に、
ドラ
この牌姿になり絶好のチャンス。
しかしすぐに親の渡辺からリーチが入る。
リーチ
しかしアガったのはこの2人ではなかった。
1シャンテンの黒木から仕掛け、谷口も参戦。
ジュンチャン三色を中津からアガる。
東4局、黒木が7巡目にリーチ。
ドラ
渡辺が追い掛ける。
2件リーチに谷口はしっかりとオリる。
中津は丁寧に危険牌を処理しながら廻りに廻ってテンパイ。
中津のハイテイは3人が待ち望んだだった。
目先のアガリを拾いに行った感のある黒木、渡辺。
黒木は、
と引けば、渡辺は
、
と引いていたのだから、神様が2人を見捨てていたわけではないように思えた。
ただ、自分の苦しさ故に楽をしてしまった結果、神様は試練を与えたのかもしれない。
逆に中津は、いくらでも仕掛けて簡単にアガれそうでも仕掛けずに我慢することを貫いた。
ハイテイツモはオマケのプレゼント、神様は中津に味方した。
南1局、ここでも神様は中津を後押しする。
谷口の一打めのをチーするアグレッシブな仕掛け。
更に中をポン、をポンでテンパイ。
チャンタにしか見えない河で、牌姿がこうだ。
ポン
ポン
チー
ドラ
は既に2枚切れ。谷口の手に1枚。残り1枚が山に眠る。
それが不思議かな、七対子ドラドラの1シャンテンの黒木の元へ。
先にを切っていた黒木は1シャンテン維持のため、ツモ切り。痛い痛い5,800の放銃。
南1局1本場、5,800を打ってしまった黒木、なんとしてでも取り返したい気持ちのこもったリーチを打つ。
リーチ ドラ
しかしこの場面ではよほどの手が入らない限りは周りは対応するだけ。
オリる者、廻る者、それぞれが黒木の「テンパイしましたよ」の合図にしっかり応える。
黒木は山との勝負。自分のツモ筋には残念ながらいなかった。
南2局2本場、
ツモ
ドラ
今度こそアガリたい黒木のリーチ。これに谷口が追いつきリーチと発声。
しかし宣言牌が黒木の当たりのだった。
このあたりが麻雀の難しいところだと思った。
谷口は半端な手では親のリーチにぶつけたりはしない。しかし先制が入っている以上、自由に打牌はできない。しかし点をかき集めなければ優勝は遠いまま。
今、手が届きそうなアガリを拾いに行くか、それとも今後入るかどうかもわからない手が入ってくれると信じ待つのか。
安全な道を行くか、険しい道を行くか、どの道を選ぼうが目的地に繋がっているかどうかは一歩踏み出してからでないとわからない。
蓋を開けなければ結果は見られない、やり直しもきかない。巻き戻すことのできない時間の旅、一度切りの人生もまた同じだろう。
だからこそ、だからこそ強く訴えたい。
たとえ失敗したとしても、最低な結果を招いたとしても、後悔のない選択をしなくてはならない。前を歩いて進んで行くには。
谷口は一切乱れずに優しく点を支払った。覚悟の選択に、感動すらした。
幸いまだ傷は浅い、崖から落ちたわけではない。倒れても倒れても立ち上がる、男の目をしていた。
南2局3本場、その谷口に早くもチャンスが訪れる。ヤミテンを選択。
ドラ
すると同巡に中津がリーチ。
リーチ
中津はここまで来ると一切攻めの姿勢を崩さない。中津は中津の腹のくくり方がある。
16巡で渡辺も追い付きリーチ、望みを繋げるか。
リーチ
しかし誰にもアガリが巡ることはなかった、黒木の1人ノーテン。
南3局4本場、
ドラ
リーチの発声は親の渡辺。
しかしテンパイしていた黒木に放銃。
チー
チー
ポン
ロン
中津はこのアガリを見ても落ち着いている。
南4局、配牌が絶望的な谷口。
何としてでも次に繋げたい、その執念叶って最後の最後にテンパイする。
谷口、渡辺、黒木のテンパイ。
南4局1本場、またしても谷口の配牌は悪い。3ターツと1雀頭、4シャンテン。
ドラ
リーチをしたのは黒木。黒木の条件は役満もしくは三倍満直撃条件。
現実的にかなり難しいことは確かだった。そうなれば怖いのは親の谷口の連チャンだけ。
それを把握している中津が黒木の当たりを放銃する。
こうして第1期宇都宮リーグの優勝者が決まった。
4回戦成績
黒木+19.6P 中津+9.0P 渡辺▲11.4P 谷口▲17.2P
4回戦終了
中津+21.6P 黒木12.4P 谷口▲2.8P 渡辺▲31.2P
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