特別昇級リーグ 決勝観戦記

特別昇級リーグ 決勝観戦記/第13期特別昇級リーグ 決勝レポート

『鳳凰位』
連盟員であれば、誰もがその頂点を志す。
そして何よりもその位を志し、焦がれている。
しかし、プロ連盟の新人が、鳳凰位に着くまでに正規昇級をずっと繰り返したとしても、最短で5年半の時間がかかってしまう。
そこで、有能な若手新人プロに、チャンスを与える機会として設けられたのが、この特別昇級リーグである。
1年目の新人が、特別昇級リーグで優勝すれば、最短3年半で鳳凰位となる事が出来る。
権利があるにも関わらず、特別昇級リーグに出ていない新人プロは是非参加して欲しい。
チャンスを手に入れるため、というのももちろんそうであるが、特別昇級リーグに出てくるプロは強い打ち手が多い。
今回の特別昇級リーグで言えば、十段位・王位・新人王・女流桜花と過去にタイトルを獲得しているプロも多数参加している。
ここでチャンスを掴む事が出来なかったとしても、この長丁場の対局を戦い抜く事は必ず自分の糧となるだろう。
第13期特別昇級リーグの決勝戦に残ったのは以下の4名。
堀内 正人(+220.7P、C1)
大木 亮典(+192.8P、C3)
羽山 真生(+167.8P、C1)
福光 聖雄(+113.8P、C3)
若手プロの中でも周囲が認める強さを持つ4人が決勝戦に残った。
しかし、この中でリーグ戦の成績をプラスにして、特別昇級権利があるのは羽山だけである。
少し寂しい気もするが、これから始まる実力者同士の白熱した戦いに、私自身も胸を躍らせた。

1回戦(起家から、大木・羽山・堀内・福光)

東3局、前日の準決勝で+110Pを叩き、一気に首位に躍り出た、堀内のミラクル3,900オールが炸裂する。
四万六万六万六万七万七万八万八万一索一索六筒六筒六筒  リーチ ツモ五万  ドラ五万
七万が2枚切れとは言え、このリーチを打てる人がどれだけ居るだろうか?
一手代わり四暗刻、もしくは三万引きの両面変化を待ちたい形である。
役ありの愚形ドラ待ちリーチを、いつもと変わらない様子で堀内は打つ。
どんな局面であろうと一寸のブレも生じない。
これが堀内の強さであり、この3,900オールを生んだのだ。
南3局、10巡目、
四万五万三索四索八索八索二筒四筒五筒五筒七筒七筒西  ドラ五筒
親番の堀内はここから二索をチー。
堀内らしい仕掛けではあるが、突き抜けたトップ目である。もう少し腰を据えても良かったか。
五索はすぐに喰い流され、その後も仕掛けてテンパイを入れるが、
四筒五筒五筒七筒七筒  チー三万四万五万  ポン八索八索八索  チー二索三索四索
テンパイ打牌の四筒が大木に捕まる。
五万五万五万四索四索三筒五筒五筒六筒七筒白白白
これが堀内にとっては手痛い6,400放銃となる。
東場は全く手にならず、我慢を重ねた大木の初アガリであった。
そして、オーラスも大木がアガリ切って、突き抜けていた堀内を大木が捲りトップ。
羽山以外の3人浮きで1回戦を終えた。
唯一特別昇級の権利がある羽山にとっては、苦しいスタートとなった。

2回戦(起家から、羽山・大木・福光・堀内)

途中まで圧勝ムードであった堀内を止めた大木か、冷静な打牌を繰り返す堀内か…という雰囲気で迎えた2回戦。事態は思わぬ方向へと流れる。
南2局、事件は福光の親番で起きる。
羽山のリーチを受けながらも、何とか押し切り福光が親番を維持する。
その粘りが生きたか、次局で7巡目に6,000オール。更には4,000オール。
それまでの加点もあり、福光が90,900点のトップ目に立つ。
その後は、沈み終了も致し方なしと、堀内と大木が局を軽く流して終了した。
この状況下であっても、当たり前の手組で軽くアガリに行く2人は間違いなく強者である。
何とか浮こうと、もがけばもがくほど、波に乗った福光に楽をさせてしまい、差をつけられてしまう事を分かっているのだ。
この特大トップで、ほぼ優勝はないだろうとされていた、4位の福光が一気に大木を捲り全体2位に上がった。

3回戦(起家から、堀内・大木・羽山・福光)

堀内と福光が大きなアガリを重ね、オーラスは2人のアガリ勝負となった。
堂々と役牌バックで仕掛けて行く堀内を横目にしても、福光は焦らず我慢を重ねて面前でリーチをぶつけに行く。
この2人の勝負の軍配は福光に上がる。
親番で3,900・7,700とアガリ福光がトップで終了した。

4回戦(起家から、福光・大木・羽山・堀内)

プロ連盟のタイトル戦規定に乗っ取り、この並び順で最終戦がスタートした。
首位を走る堀内と2位の福光は18P差。
福光が堀内を捲るためには、浮き沈みプラスαくらいの差をつけなくてはならない。
しかし、現実的に無理な数字ではない。
開局から羽山が3,000・6,000、2,000・4,000とアガリを連発する。
これが最初の半荘であれば…と本人も強く思ったに違いない。
羽山は上位争いをする2人との差が200P近い。
羽山と大木も最後まで諦めないで戦い切るが、優勝までの果てしない道のりを乗り越える事は出来なかった。
その後も、堀内らしい仕掛け・堀内らしいリーチで局を回し、最後も自らの手でアガリを決めて自分の力で優勝を勝ち取った。
しかし、優勝を決めた堀内に喜びの表情は見られない。
「リーグ戦の反省しかありません。今日優勝した事で、次回の特別昇級リーグの出場権が頂けたので、次回こそは頑張ろうと思います。」
この堀内の常に真摯な姿勢が強さの秘訣なのだろう。
私もまた同じ舞台で戦えるように、日々頑張らなくては、と強く思わされた。
2期連続で、優勝者が特別昇級の権利なしという、居た堪れない結果で終わってしまったが、堀内のブレない強さを目の当たりにした見応えのある決勝戦となった。
福光の追い上げも素晴らしかったが、それを受けても丁寧に自分の麻雀を貫き通す堀内。
今回は残念な結果とはなったが、これからも堀内は結果を積み重ねて行く事だろう。
そして、決勝戦に残った4者が皆素晴らしい打ち手である事には間違いない。
4者全員のこれからの活躍を心から願っている。