プロ雀士コラム

インターネット麻雀日本選手権2019観戦記 大和

2019年6月29日

厚い雲に覆われた夏目坂スタジオ。
もう6月も終わろうとしているのに梅雨が明ける気配は無い。
じめじめとした天気とは裏腹に対局会場は静かながらも熱気に包まれていた。

・決勝メンバー紹介

藤崎智


麻雀忍者。

鳳凰戦A1リーグ、獲得タイトル多数。
説明不要のプロ連盟トッププロ。
リアル麻雀が強いのは勿論のこと、インターネット麻雀選手権でも決勝に残っている。
前回は惜しくも優勝とはいかなかったが今回はどうか?

 

 

客野直


野比似の骨川。

鳳凰戦A2リーグ。
普段はタイトル戦の決勝などで採譜、運営を頑張っている。
ロン2のレーティングも2000を超えバトル鳳凰位の称号も得ている実力者。
雀風はネット仕込みで鳴きを多用する。

 

 

静岡葵倶楽部さん


その名の通り静岡から参戦。

厳しいロン2予選を勝ち上がりついに決勝まで辿り着いた。
普段から競技麻雀にも精通しており「静岡リーグ」にも参加しているためプロ相手でも堂々と戦う事ができるだろう。

 

 

じんべいさん(さん)


IDが「じんべいさん」なのでそのまま呼ばせて頂きます。

ネーミングの由来を聞くとスキューバダイビングが趣味でジンベイザメを見て感動した所からついたらしい。
関西から上京してきたらしいがプロ連盟のオープンタイトル戦にも多く出場しているためこちらも緊張や気負いなどは全く感じることは無い。

大庭三四郎プロのパソコンのセッティングも終わり決勝のゴングがついに鳴った。

 

 

1回戦
起家から藤崎、じんべいさん、客野、静岡葵倶楽部さん

東1局は藤崎、客野のリーチ合戦になるも流局。
同1本場、客野が仕掛ける。

 

 

ネット麻雀仕込みの遠くて安い仕掛け。
上手く対応させることが出来ればいいのだがここは静岡葵倶楽部さんが冷静にヤミテンを選択してタンヤオドラ2の5,200を客野から討ち取る。

その後は藤崎以外の3者で手がぶつかり合うが徐々に客野の点棒が削られていく展開。
好調なのはじんべいさん。どっしりと構え高打点のアガリを積み上げていく。

南2局

 

更なる加点を目指し先制リーチはじんべいさん。
そこに忍んでいたのは藤崎。
さらに追いかけるのは静岡葵倶楽部さん。
軍配は静岡葵倶楽部さんに上がる。しかも裏ドラ3枚で藤崎にとっては痛い放銃。

南3局

 

 

再び大物手で忍ぶ藤崎に更なる試練が。
静岡葵倶楽部さんがピンフリーチをすると同巡に追いかけリーチ。
勝ったのは静岡葵倶楽部さん。しかも裏ドラ2枚で満貫に。

2局で裏ドラ5枚の放銃。さすがに今日は藤崎の日ではないのか・・
対して静岡葵倶楽部さんはこのアガリで一気にトップ目に立つも、オーラスはじんべいさんのアガリでトップを譲る形となった。

1回戦結果
じんべいさん +29.5P
静岡葵倶楽部さん +19.0P
客野 ▲12.6P
藤崎 ▲35.9P

 

 

2回戦
起家からじんべいさん、客野、静岡葵倶楽部さん、藤崎

東1局

 

 

じんべいさんのテンパイ取らずからのリャンメンリーチに手牌が育ってしまった藤崎。
メンホンのテンパイでドラ勝負の構えにするとロンの声。
静岡葵倶楽部さんがじんべいさんの当たり牌を5枚使いきって8,000を討ち取る。
藤崎には試練が続く。

その後もじんべいさん、静岡葵倶楽部さんが場を引っ張っていきプロ2人は苦しい。

南1局

 

 

好調な静岡葵倶楽部さんがダブルリーチ。
しかしそこに割って入ったのは客野だった。
ドラでダブ南を暗刻にして追っかけリーチ。きっちりアガリきり裏ドラもついて4,000、8,000の倍満を引きアガリ一気にトップ争いへ。

しかし解説の瀬戸熊プロも言っていたがこの2人のユーザーさんは本当に強い。

オーラスの藤崎のねばりも空しく今度は静岡葵倶楽部さんがトップを奪取した。

2回戦結果
静岡葵倶楽部さん +31.6P
客野 +11.2P
じんべいさん ▲15.3P
藤崎 ▲27.5P

トータルポイント
静岡葵倶楽部さん +50.6P
じんべいさん +14.2P
客野 ▲1.4P
藤崎 ▲63.4P

 

 

3回戦
起家からじんべいさん、客野、静岡葵倶楽部さん、藤崎

ここまではユーザーの2人が目立って調子が良い。
客野はまだポイント的にも焦ることはないが、藤崎に至ってはもう忍んでいる場合では無いだろう。

東3局1本場

 

 

後がない藤崎、打点が必要とあって待ちが狭くなるがカンチャンに受けると親の静岡葵倶楽部さんから親リーチ。
ここが正念場の藤崎、見事に八万をツモで2,000、4,000。トップ目に立つ。

しかし喜びもつかの間、じんべいさんが南1局に12,000をアガりトップに並びかける。
同1本場、藤崎はトータルトップの静岡葵倶楽部さんから満貫の直撃に成功。

オーラスはトップ目、藤崎と2着じんべいさんの差が700点の接戦となったが最後はじんべいさんがアガりきって本日2度目のトップ。

3回戦結果
じんべいさん +27.2P
藤崎 +15.6P
静岡葵倶楽部さん ▲11.4P
客野 ▲31.4P

トータルポイント
じんべいさん +41.4P
静岡葵倶楽部さん +39.2P
客野 ▲32.8P
藤崎 ▲47.8P

 

 

4回戦
起家から静岡葵倶楽部さん、客野、藤崎、じんべいさん

完全にポイントは上下に分かれてプロ2人は厳しくなってきた。
上2人も優勝目指して更にポイント加点を狙ってくるだろうしゆったりと手を作っている時間も無いだろう。
そんな中どのような戦いを見せてくれるのか注目したい。

東3局3本場

 

 

客野が遠い仕掛けでホンイツへ向かう。
すると藤崎の手に好牌が流れ込み、たった今通ったばかりの四索でじんべいさんから満貫を討ち取る。これでポイント的には面白くなってきた。

南2局1本場

 

 

ここまでプロ2人がワンツーで並びを作り、展開としても理想通りに進んでいったが今年のユーザーさんはやはり一味違う。
じんべいさんのリーチに一発で飛び込んだのは客野。
裏ドラもついて16,000の大花火となる。
2巡目の八筒が怪しく光るも追いかける客野としては致し方無いのか。

オーラスは勢いを取り戻したじんべいさんがトップに激しく迫るも藤崎がなんとか逃げ切りに成功した。

4回戦結果
藤崎 +25.7P
じんべいさん +6.0P
客野 ▲8.5P
静岡葵倶楽部さん ▲23.2P

トータルポイント
じんべいさん +47.4P
静岡葵倶楽部さん +16.0P
藤崎 ▲22.1P
客野 ▲41.3P

 

 

5回戦
起家からじんべいさん、客野、静岡葵倶楽部さん、藤崎

いよいよ最終戦。
現実的にはじんべいさんと静岡葵倶楽部さんの一騎打ちになりそうだ。
藤崎、客野も可能性はゼロではないがトータルトップまでの道のりは険しい。

東2局1本場

 

 

静岡葵倶楽部さん、値千金のアガリをものにする。
トータルトップのじんべいさんからの6,400は6,700の直撃。

しかし失点直後、じんべいさんもドラ単騎をツモ。
2,000・4,000を静岡葵倶楽部さんに親被りさせて再逆転する。

トップ争いが熾烈なためかなり早い展開で局も進んでいく。
こうなると藤崎、客野の出番はもう無くなっていた。

南1局2本場

 

 

親番で突き放しにかかるじんべいさん。
ドラの東を切ってのメンピンリーチ。これをツモり裏ドラも乗って4,000は4,200オール。
決め手には十分なアガリとなった。

5回戦結果
じんべいさん +31.5P
藤崎 +9.7P
静岡葵倶楽部さん ▲5.3P
客野 ▲35.8P

最終結果
優勝 じんべいさん +78.9P
2位 静岡葵倶楽部さん +10.7P
3位 藤崎 ▲12.4P
4位 客野 ▲77.1P

 

 

対局を終えたじんべいさんの表情は何か一仕事終えたかのようなホッとした表情だった。
「自分から仕掛けるとあまり良い事が無いんですよ」
と笑いながら話してくれたがその気持ちは私も良く解かります。
終始、局面をリードして藤崎、客野の連盟が誇るプロ相手にも全くひけを取らず自分の麻雀を打ち抜いた事は本当にすごい事だと思う。

また静岡葵倶楽部さんも堂々とした打ちまわしで、優勝まであと一歩のところまで近づいた。これからも頑張ってもらいたい。

「麻雀は勝ったり、負けたり」
故小島武夫プロの名言だが、プロ2人も厳しい戦いの中さすがプロという打ちまわしで対局してくれた。素晴らしい敗者がいてこその素晴らしい決勝の舞台になったと思う。

しばらくユーザーさんの優勝が続いているインターネット麻雀選手権。
この流れを止める事はできるのか?
来年も注目したいところである。

じんべいさん本当におめでとうございます!