鳳凰の部屋

「反撃!」 前田 直哉

10戦目が終わり初日から首位を走っていたが、ついに藤崎プロにその座を奪われた。
大三元…あまりにも大きなアガリであったが、まだ6回戦あったので焦りは無かった。
もちろん楽に勝たせてくれるメンツではないが、逆にその中で戦えている現実に喜びを感じていた。
今日は残り2戦、ここはなんとしても食らいついていこう!

10回戦終了時
藤崎智+83.2P 前田直哉+58.9P 瀬戸熊直樹▲51.9P 勝又健志▲90.2P

11回戦(起家から瀬戸熊、藤崎、前田、勝又)

東2局の私に好配牌が来て、3巡目にはこのような形になった。

三万四万二索三索三索四索五索六索六索七索九索九索七筒  ドラ五筒

もちろん1番の狙いはチンイツである。ここで上家の藤崎プロから五索が切られるが、ここは鳴かずにスルー。
ここまでのツモが良かったのでまだ鳴きたくはなかった。

そして次巡の八索もまだスルー…本音を言えば鳴いて手を進めたいところではあるが、上家の藤崎プロが萬子気配とはいえ1つ仕掛けたらもう鳴かせてくれそうもない。
しかし、さすがに次巡切られた九索にはすかさず反応した。これで対応してくるかと思ったが、次巡も四索を切ってきて真っ向勝負の態勢である。

二索にも五索にも八索にも反応しなかった私の仕掛けが遅いと感じたのだろうか?それともここが勝負所と思ったのだろうか?知るのは本人のみである。
私はこの四索も鳴き、次巡八索を引いてテンパイを入れ、13巡目に三索をツモって2,000・4,000の大きなアガリをものにした。

三索四索五索六索六索七索八索  チー四索 左向き二索 上向き三索 上向き  ポン九索 上向き九索 上向き九索 上向き  ツモ三索  ドラ五筒

そして気持ちよく迎えた親番の東3局、安めではあるものの2,600オールをツモり、持ち点を45,000まで伸ばすことに成功した。
東場はそのまま進み、南1局の瀬戸熊プロの親番となる。
ちなみにこの時の瀬戸熊プロの配牌がこうだ。

二万七万一索七索九索一筒二筒四筒六筒九筒九筒東白中  ドラ二筒

はっきり言ってあまりにも酷い!アガれるイメージすら湧いてこない。
しかしこの手を見事な手順で仕上げてリーチし、これをすぐに引きアガる!

六万七万九索九索二筒二筒二筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  ツモ八万  ドラ二筒

1本場は流局し迎えた南1局2本場、8巡目に私の手がこうなった♪

四万五万六万八万八万四索六索四筒四筒五筒五筒六筒六筒  ドラ六索

ツモれば跳満である!ドラ表示牌なだけにそう簡単には出てきそうにないだろう…そのまま巡目は過ぎ、16巡目に藤崎プロがチー。
その鳴きで私の喉から手が出るほど欲しかった五索が下家に流れた…。もちろんこれは後からわかったことではあるが、おーい!何てことするのですかー!!という気持ちである。
忍者ってそれすらわかってしまう種族なのか?それとも喉から本当に手が出てしまっていたか?(笑)

結局この局は流局し、瀬戸熊プロが連荘して迎えた5本場でまた私に配牌ドラ暗刻のチャンス手が入る。
そして8巡目に選択を迫られる。

三万三万四万一索一索一索四索五索六索二筒二筒三筒九筒九筒  ドラ一索

三万を切るか二筒を切るかの選択だが、場の状況はピンズが物凄く良く見える。
ここは三万を切ってピンズの受け入れを広くしてテンパイだけは逃さない構えにした。
この選択が功を奏し10巡目に二筒引いてリーチ!そして2巡後に二万を持ってきて2,000・4,000の5本場のアガリとなった。
南3局には勝又プロが2,000・4,000をツモるが結局なんとかこの半荘をトップで終えることが出来た。

11回戦成績
前田直哉+25.2P 勝又健志+5.4P 瀬戸熊直樹▲4.6P 藤崎智▲26.0P

11回戦終了時
前田直哉84.1P 藤崎智+57.2P 瀬戸熊直樹▲56.5P 勝又健志▲84.8P

これでまたなんとか首位に立つことが出来たがそんなことはまだどうでも良かった。
次の半荘が終わればしばらく気持ちを休めることが出来る。とにかく最終日に繋がる麻雀をしよう!そう心に言い聞かせた。

12回戦(起家から勝又、瀬戸熊、藤崎、前田)

ここまでの戦いでは先制のアガリを決めることが多く、気持ちでも焦りなく優位に戦うことが出来ているように思う。
そしてこの開局でも好配牌を貰う。

四万五万七万九万二索四索五索九索二筒四筒五筒六筒西  ドラ五筒

三色も見え、ドラメンツも既に出来ている。
あとはツモ次第といったところであったが、6巡目には最高形へと育っていた。

四万五万六万四索五索二筒二筒三筒四筒四筒五筒五筒六筒  ドラ六筒

高目なら出アガリでも跳満である!
ここは安めではあったが、7,700をアガリまたもや好スタートを切ることが出来た。

東2局では勝又プロがドラをポンしてこの形。

三万三万三万七万七万八万八万七索七索七索  ポン五筒 上向き五筒 上向き五筒 上向き  ドラ五筒

親の瀬戸熊プロが七万七万八万からどちらを切るかの選択で八万を選んで勝又プロの12,000のアガリとなった。
どちらもアタリ牌ではあったが、七万を選択していればドラを切ってテンパイを入れていた藤崎プロにピンフの頭ハネで済んでいただけに痛い放銃であっただろう。

しかし、瀬戸熊プロはどんな状況でも1度波に乗ってしまえば何かを起こすだけの力を持っている。
そして次局にはその瀬戸熊プロからリーチが入る。
捨て牌はかなり派手になっており、かなり七対子が本線に見えるのでドラだけは絶対に切れない…そう感じていたのだが、2つ仕掛けを入れていた親番の藤崎プロが長考の末に切り出したのはドラの九筒であった。

結果は、瀬戸熊プロが七対子ドラドラの8,000のアガリであったが、藤崎プロがドラを切ったことにかなり驚いたのを今でも憶えている。
後に聞いた話だが、ここまでの展開でそうそうテンパイが入るチャンスは無いだろうと…だからこの親番は多少無理してでも勝負に行ったとのことであった。
これが他の人が言うと、あのドラだけは無謀でしょ?って思うのだが、藤崎プロが言うと、なるほど…そういう考えもあるのだなあと思えてしまう。

まあこれだけの実績と経験がそう思わせることは言うまでもない。
その後の局は穏やかに進み、南2局では勝又プロが2,000・4,000をツモって、持ち点を50,000点まで伸ばした。
そうかと思えば、今度は藤崎プロが七対子ドラドラの9,600をアガってあっという間の原点復帰を果たす。

そして南3局2本場の6巡目、私の手牌はこうなった。

一索一索二索二索三索四索五索六索七索八索南発発  ドラ九筒

一索が1枚切れで仕掛けるにもかなり迷う形である。
ここから発をポンするのも微妙であるし、連荘している親が藤崎プロであることを考えれば三索をチーして連荘を止める選択はあったであろう。
しかし私の考えでは迷うくらいなら何も仕掛けない!そう決めていた。

そして2巡後には九索を持ってきて、さらに次巡にはあっさりと三索をツモ!!3,000・6000の2本場で大きなアガリをものにした。

一索一索二索二索三索四索五索六索七索八索九索発発  ツモ三索  ドラ九筒

結局このアガリが決め手となり、この半荘もトップで終えることが出来た。

12回戦成績
前田直哉+28.9P 勝又健志+13.5P 藤崎智▲9.3P 瀬戸熊直樹▲33.1P

12回戦終了時
前田直哉+113.0P 藤崎智+47.9P 勝又健志▲71.3P 瀬戸熊直樹▲89.6P

1度は逆転されたが終わってみれば申し分ない結果となった。
これでいよいよ残されるは最終日の4回戦のみである。

とりあえずはこの緊張感から解放されることが嬉しかった。
しかしリードした状態で過ごすこの1週間は物凄いプレッシャーを感じるのかもしれない…一旦忘れようとしても気付けば最終日のことを考えてしまうのかもしれない。
でもそれもまた経験であり、この貴重な経験を味わえることを喜ぼう!と、もう一人の自分が私に言い聞かせた。
帰路の途中、長かった1日を思い出し、ホッとした顔で空を見上げていた。
全てが終わった時の私はどんな顔で空を見上げているだろうか…

次回予告
「揺らぐ気持ち」

追伸
正直に言うと…私は今まで本というものを1冊も読んだことがない。
あ!漫画や写真の類は除く(笑)したがって文を書くことは得意ではないし、気の利いた言葉も思い浮かばない。
それでも今までこの鳳凰の部屋を読んでくださっている皆さんには本当に感謝しています。
かと言って、今更本を読む気も無いのでこれ以上の期待はしないでくださいね♪