プロ雀士インタビュー

第248回:プロ雀士インタビュー 奈良 圭純  インタビュアー:越野 智紀

第3回リーチ麻雀世界選手権

「NARA KEIJUN!」

 

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第3回リーチ麻雀世界選手権に日本代表の1人として参加していた奈良ちゃんは、上位から順番に発表されていく32人の予選通過者の30番目にその名前が呼ばれ、両手を突き上げ喜びを爆発させていました。

場所は、日本から遠く離れたオーストリア・ウィーンのインターコンチネンタルホテル。
この予選通過者発表が行われた20分くらい前にロビーにて

「こっしーどう?」
「やばい。+69.0Pだからちょっと足りないかも。奈良ちゃんは?」
「最後3着で+74.6P。ボーダーの下から、ともさん(ともたけプロ)と学武(山田学武プロ)が大トップ取って越えていったから相当際どそう」

お互いのポイントや周りの状況を確認したところ、奈良ちゃんがギリギリ50%ぐらいで残れるかもぐらいの雰囲気。負けを覚悟した僕は、ロビーのちょっと良さげなソファーから動けず結果を待っていましたが…少し離れた大広間から聞こえる歓声で結果発表が始まったことを知ると、我慢できずに手元の端末で放送をチェックしていました。

立ち上がって喜ぶ奈良ちゃんの映像が飛び込んできて、良かったと思った直後に、ドサクサに紛れて僕の名前も呼ばれていたので2人仲良く予選を通過。

ロビーに戻ってきた奈良ちゃんと、ハイタッチをして翌日も試合が出来ることを喜びました。

ーーーーー帰国後、日本の焼肉屋にてーーーーー

 

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越野「この時ってどんな心境だったの?」

奈良「ほっとした。これは相手を舐めてるとかそういうわけじゃないんだけど、トーナメントまで残れれば、日本での経験を活かすチャンスがあるって思っていたから。それと負けたら裏方の仕事する約束になっていて、その面でも勝てて良かった。折角ウィーンまで来たんだから選手として長く参加していたかったよね」

越野「奈良ちゃんは狙い通り、経験の差と最後まで選手として参加したいっていうパワーでトーナメントを3つ突破し見事決勝進出。僕はトーナメントで即負けしたから裏方に回って、決勝戦はスイッチャー。奈良ちゃんの雄姿を画面越しに見ることになったんだけど、奈良ちゃんって複数回タイトルを取ってる選手の中でも断トツで決勝での勝率が高いよね?」

奈良「今回を合わせたら5分の4で優勝してるからね」

 

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奈良圭純
第3回リーチ麻雀世界選手権優勝←new!
第20期、第30期麻雀マスターズ優勝
第20回BIG1カップ優勝

学生時代はフェンシング部に所属し、その後は美容師の免許を取得。剣・ハサミから牌へと武器を持ち替えて、タイトル戦決勝では5戦4勝と無類の勝負強さを発揮する異色の打ち手。

越野「決勝での戦い方のコツっていうか、何か注意してる点みたいなものってあるの?」

奈良「一番は大きく離されないことが大事だと思ってる。多少リードされていても一気に追い抜こうと思わずに、現実的な条件を無くさないように我慢強く粘る。」

越野「今回の決勝戦は開始前に何か特別なことを考えていた?」

奈良「決勝の対戦相手になった、ウクライナのANNAさんとフランスのVALENTINさんとはトーナメントでも対戦していて、それぞれなんとなくだけど打ち方はイメージ出来てたんだよね。だからやっぱり経験豊富な藤崎さんマーク。決勝の1回戦目はANNAさんに捲られて2着になったけど、その代わりに藤崎さんがラスだったから。これはチャンスだと思ってた。」

越野「いけると思った矢先に、最終戦で藤崎さんが猛追してくるんだけど、東1局だけで逆転された時にはどう思ってたの?」

 

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奈良「いきなりホンイツ小三元で6,000オールをアガられたじゃない?藤崎さんの発の一鳴きに対して1枚押したんだけど、あの仕掛けにマンズを切るのは少し甘かったかも。わかっていたはずなのに最初のラスで少しマークを緩めてしまっていたのは良くなかった。」

越野「それでは最終戦の麻雀の内容にも触れていきますか。」

 

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越野「最終戦で気になる局が2局。まずは藤崎さん連荘中の東1局3本場でVALENTINさんと藤崎さんの2軒リーチに挟まれた局で、現物の三索を切る選択肢もあった中での七索切り。」

奈良「これ2人ともツモ切りリーチなんだけど、トータルラス目のVALENTINさんは充分形なら即リーチにきてそう。何か変化を待っていた中でのリーチだから愚形か安いか、その両方かなって思ってた。それとは逆に、藤崎さんのほうはラス目のリーチに対してツモ切りで追っかけてきたので安いわけがない。ヤミでも充分な手をリーチしてきているなと睨んでました。ここで藤崎さんに大物手を決められたら勝負が決まってしまうと思っていたから、VALENTINさんと2人で藤崎さんの親を止めようと放銃覚悟で七索は切ったんだよね。」

越野「これぞ決勝戦の戦い方って感じで、決勝戦での強さが垣間見える選択になったよね。オーラスでの藤崎さんとのポイント差を考えると、この放銃した局が勝因って言えそうなのが面白い。」

奈良「裏ドラ乗って満貫の放銃にはなったけど、全然後悔は無かった。」

越野「次局の2,600オールですぐに逆転して、そこからは抜きつ抜かれつのシーソーゲー。1,100点リードで迎えたオーラス1本場が気になるもう1局で、やっぱり八索だよね。」

 

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奈良「まず親のVALENTINさんと藤崎さんの2人ともテンパイしてるって思ってた。だから八索が通ってテンパイ取れても次局勝負になる。もし八索で藤崎さんに放銃したら即終了。VALENTINさんのタンヤオトイトイに放銃ってなれば状況は苦しくなっちゃうし、安全にテンパイ復活する可能性もあったから八索は切らなかった。」

越野「もし親がノーテンで、藤崎さんテンパイで終わると自ら優勝を手放すことになりかねないから、ここで八索を打たないのは相当怖いと思うんだけど。」

奈良「八索を押して優勝したほうがカッコいいのも分かるし、オリて負けたらカッコ悪いのかもしれないけど…打てない牌は打たない。今までこのスタイルで勝ってきたから。これ八索打たずに負けても自分の中で納得できるけど、八索放銃で負けたら一生後悔する。そういう風に思ってた。」

越野「信念を曲げない選択で、これは凄い勇気だよね。失敗した時のこと想像したら怖すぎる。結果は八索を打たずに奈良ちゃんが世界のNARAちゃんへとなったわけなんだけど、これで3年後に日本で行う第4回大会に現世界チャンピオンとして出場することが確定したわけじゃない?奈良ちゃん最大の弱点であるトークの練習はしとく必要があるよね。」

奈良「そこは黒木さんと話してなんとかしたい。」

越野「解説には興味ないの?サブ(夏目坂スタジオの裏方の部屋)で仕事をしながらする麻雀の話はめちゃ面白いんだし、3年後の世界大会では今年のともたけさんみたいに、決勝で会長の横で解説する可能性もあるんじゃないかな?」

奈良「これからは解説の仕事も沢山やっていきたいんだけど、3年後は決勝に残って選手として…」

越野「それじゃその時はまたスイッチャーとして奈良ちゃんの連覇を…」

ーーーーーここら辺で2軒目に移動ーーーーー

お酒も進み、だんだんと朧げになっていく記憶の中で「切れない牌は切れない」と「結果を出し続けるしかない」と何度も繰り返し熱く語っていた酔っ払いのNARAちゃん。

チャンピオンとして出場する次のリーチ麻雀世界選手権では、麻雀の心配は一切無さそうなので、成長予定のトーク力のほうに注目したいと思います。