プロ雀士インタビュー

第256回:プロ雀士インタビュー 白銀 紗希  インタビュアー:藤井 すみれ

彼女の印象は誰に聞いてもこうだ。
「いい子だよねぇ!」
年上とも年下ともうまくやれる。
麻雀荘での接客も上手で、みんなを楽しい気持ちにさせる。
なのに「私が!私が!」みたいな強い主張は一切なく、とても心地良い。
物語なら名脇役のなかの1人だろう。

そんなさきちゃんが、主役になる日が来た。
2023年1月4日、第17期女流桜花になったのだ!

 

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その後、彼女のYouTubeチャンネルの
【女流桜花お祝い生放送】に呼ばれ、妹さんの手料理フルコースをいただいた。何だこれは?あまりにも美味しすぎる。

白銀「すみれさん、インタビューお願いしたら書いてくれませんか?」

藤井「……妹ちゃんのご飯食べさせてくれるなら。あと息子も連れてっていい?」

白銀「もちろんです!」

書き物の仕事は責任重大なので、引き受けるには勇気がいる。
しかしそれを覆すほどの魅力であった。

当日、白銀家に行くと同居している妹さんに加えて、なんとお母様までいるという。
初めまして、お母さん。
親御さんやご兄弟もいるインタビューは初めてやります。
妹さんの手作りハンバーグを頂きながら、失礼します。

 

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【連盟に入るまで】

藤井「元々出身は青森なんだよね?」

白銀「そうです。どうしても東京に行きたくて、大学からこっちに来ました。そこでサークルに入って、他のサークルの人達と一緒に麻雀をやるようになりました。それでモンド杯に出ていた亜樹さんを見て憧れるようになって。プロテストがある!受けよう!ってなりました。」

藤井「亜樹さん、素敵すぎるもんねぇ…」

白銀「大学3年生の終わりくらいにプロテストを受けて、4年生のGWに帰省した時に両親に報告したんです。『私麻雀プロになる!いま研修受けてる!』って。そしたらもう大変でした。」

白銀「お母さん泣いてた。お姉ちゃんも泣いてた。お父さんはショックで家を飛び出して仕事場に行っちゃった(笑)」

藤井「ええええー!!そんな事する為に大学行かせたんじゃない!って…コト…?」

白銀「そうです(笑)もう勘当だ!って言われちゃって。最後だから、って帰る前の日の夕飯は私の好きな物ばっかり並んでました。」

藤井「ご両親は麻雀一切やらないって言ってたもんね…そんな修羅場があって、どうやって許してもらったの?」

白銀「うーん?何でだっけ?」

白銀「私が言ったの。『お姉ちゃんが初めて自分でやりたいって言った事だから、やらせてあげたら?』って。私は今までやりたい事何でもさせてもらったけど、お姉ちゃんは何も言ったことなかったから。」

まさに鶴の一声。
妹さん本当にありがとう。
あなたのお陰で今があります。

白銀「その後、東京で雀荘に勤めるって聞いたので見に行ったんです。それでまぁ頑張ってる姿を見て。もし今後お金に困っても変な所では借りるんじゃないよ、困ったらちゃんと言ってきなさいって言いました。」

きっと当時はすごく心配だったのだろう。
彼女が家族に愛されているのが伝わってきた。

 

【プロになってからの生活】

白銀「プロになる少し前から働き始めた雀荘のお仕事と並行して、講師養成講座を受けて、麻雀教室のお仕事をするようになりました。後は牌譜チームのお仕事や、大会やリーグ戦の運営もしています。自分が麻雀する仕事も大事ですけど、全部やりたいんです。麻雀を普及させたり、教室の生徒さんが、その場で麻雀して楽しいなって思ってくれるお手伝いも好きなんですよね。」

藤井「すごい欲張り!(笑)でもすごいね。それだけやりたい事がたくさんあると、お休みとかないでしょ?」

白銀「今はあんまり無いですね。麻雀格闘倶楽部もあるし、YouTubeも始めてしまったので…貴重なお休みはパチンコしたり、趣味のボートレースを見に行ったりしています。馬場貴也(ばばよしや)選手が大好きなんです。ウィリーターンがカッコイイんですよー!」

 

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【Aリーグ3年目、決定戦へ】

藤井「15期でAリーグに初めてあがったんだよね。1年目はどうだった?」

白銀「1年目はとにかく内容が良くなくて、なんとか残留してホッとしたのを覚えてます。2年目もなかなかプラスできなくて。負債をどんどん重ねる中で、最終節は残留争いになりました。ともちん(古谷友美)との直接対決でなんとか競り勝ってギリギリ残留しました。」

藤井「で、3年目は絶好調と(笑)」

白銀「そうなんですよ!序盤の節からポイントを稼ぐ事ができて。今までと違うな?と。」

藤井「プレーオフや決定戦はいつ頃意識し始めたの?」

白銀「第5節で首位になったあたりですかね。そこからの戦いがまた難しくて。最後のプレーオフB卓はもう見るのが怖くて途中までしか見られませんでした(笑)」

意外な一面だ。さきちゃんはいつも飄々としているように見える。
対局の時もポーカーフェイスに見えるが、実は緊張しているのだという。

 

【初めての決定戦】

藤井「初日はサイクルヒットで▲11.2Pだったんだよね。」

白銀「そうなんですよ。特に後悔してる局があって、3回戦の東2局なんですけど…」

 

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白銀「なかなかテンパイしなくて、ちょっと諦めかけて安全牌の西を先に切って二索を残してしまって。親の内田さんがその間にテンパイを入れていたんです。」

 

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藤井「これは…うわぁぁってなる…」

白銀「本当にこれはダメでしたね。ちゃんとラスをひきました。解説の勝又さんにもお叱りを受けました(笑)色んな人に『楽しんできてね!』って言われてきたんですけど、初日は緊張するばかりで全然楽しめなかったです。麻雀も消極的な選択が多かったですね。」

藤井「2日目はトップラストップラスで、+1.0P。この日はどうだった?」

白銀「初日からずっと、離されて戦えない位置にならないように打とうって思ってたんです。2日目は初日よりはのびのびと打てた感じでしたね。トータルポイントはほとんど変わりませんでしたけど、首位の山脇さんまで60ポイント差はギリギリ可能性を残せたかな?と。」

藤井「そして運命の最終日。最終日の最初の9回戦は勝負所だと言ってたよね。」

白銀「はい。後はどこかでいい親番を2回やるぞ!最終戦は30ポイント以内の位置に行くぞ!っていうのを目標に考えていました。」

藤井「その9回戦の南場の親番で連荘出来たのは大きかったねぇ…トップはゆーみんだったけど、大きめの2着で首位の山脇を沈める事ができた。」

この後は皆さんも知るところ、10回戦に特大トップをとって大まくり。
そのまま危なげなくゴールとなった。
白銀の名前からとった「プラチナタイム」が全国に知れ渡った事だろう。

 

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白銀「やっと最終日は自分の思った通りに打てるようになって、楽しむって事が少し分かった気がしました。」

藤井「そりゃあんだけアガれば楽しいでしょうよ!(笑)」

白銀「(笑)…ただ、自分が追う事ばかり考えていたので、最終戦に自分がトータルトップの時の戦い方をまったくイメージしてなかったです。でも、逃げる立場でいつもやらない事をやるのはやめようと思って。焦って自滅するのだけはしないようにしましたね。山脇さんや魚谷さんが連荘している時も苦しいとかはまったくなかったです。」

 

【女流桜花になって】

藤井「今後の野望はありますか?」

白銀「やっぱり桜花を獲れて、これからしばらくはシードだったりチャンスがもらえると思うので、それを無駄にしないで次に繋げたいですね。このスーパーシードの時間を生かせないようじゃ、それまでだと思うので!」

藤井「生徒さん達もファンの方も応援してるもんね。オッケー!今日はありがとう。」

32歳、プロ11年目。
青森から出てきた少女は、ついに頂点に登りつめた。両親の反対を押し切って入ったこの世界で、これからも戦っていく。

彼女の『プラチナタイム』はまだまだ続いていくだろう。

さきちゃん!
本当におめでとう!

 

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