プロ雀士インタビュー

プロ雀士インタビュー/第117回:清原 継光 インタビュアー:安村 浩司

『負けたらプロをやめようと思っていた』
これは清原継光プロが王位戦A級予選を勝ち上がった日に、私(安村)に語った言葉である。、
この後、彼は本戦、A級決勝、準決勝とギリギリの戦いを制し、自身初の決勝の舞台で、荒正義プロ・五十嵐毅プロ・矢島亨プロを相手に、見事第40期王位に輝く。
今回は清原プロが、どのような覚悟で王位戦に臨んだか~現在の心境までを、同期でプロ入り以来お世話になっている安村がインタビューしてきました!
主役の登場だ。
キヨちゃんこと清原継光プロ。

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ソフトドリンク

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ビール

この写真で彼の人柄の半分は伝わった自信があるのだが、どうでしょう(笑)?
この笑顔の通り底抜けに明るく、連盟の先輩・後輩問わず、かわいがられているという表現がぴったりだ。
安村「キヨちゃん王位優勝おめでとう!」
清原「ありがとう!」
安村「王位戦の話の前に、簡単に自己紹介お願いします」
清原「連盟6年目の25期生です。麻雀は手役が好きで狙いすぎてしまうので、手数は少ないですね。反対に口数は多いと言われます。自分ではそんなことはないと思うのだけどなー。性格は謙虚で誠実だと思ってるよ」
安村「口数のことは置いといて、手役好きだよね。キヨちゃんのリーチ発声で三色が読めるときがある(笑)。」
清原「ついつい出来たーっリーチ!て叫んでしまう(笑)」
安村「これからも変わらないでいてね。」
清原「検討するよ。」
安村「麻雀プロとしてこだわりはある?」
清原「相手に対して敬意を忘れないようにしてる。同時に勝負の内容以外で同卓者に不快な思いをさせないように心がけてるよ。」
安村「それは生き方にも影響してるの?」
清原「そうだね。自分自身が損得とか利益とかに左右されずに自由に生きてるから、人に対して怒ることもないし、おおらかでいたい。」
安村「おおなんかかっこいいな」
清原「(ピース)」

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ピース♪

彼は第一に人とのつながりを大切にする。義理堅いとは表現は違うかもしれないが、本当に人として見習う所が多い。
安村「ではあらためて王位戦についてお願いします」
清原「王位戦ね~いや本当勝てると思わなかったよー東1局はさ・・」
とまだ何も聞いていないのにキヨちゃんが話し始める。
清原「で荒さんが切ったダブ東に気が付かなくて・・・ここの六筒が・・・」
清原「でここが本当に失敗でさ~・・・六筒が・・・でここが・・もうこわくってさ・・・アハハハハ・・」
先日連盟チャンネルで放送されたアトミック麻雀講座でも才能の片鱗をみせていたが、清原プロは麻雀の話になると息の続く限り喋り続ける。
こうなるともう簡単には止まらない。王位戦では一度もなかった清原プロの大連荘が始まる。
清原「で次の局は・・・仕掛けが入って・・・」
清原「でやっちゃったんだよね・・・それでさ~・・・」
清原「ヤスならどうする?・・・俺は・・・」
安村「・・・まいった完全にキヨキヨタイム(清原プロの一人麻雀演説タイムを指す)に入ったな・・・」
現鳳凰位・藤崎智プロに会うたび「キヨちゃんうるさいよ~話終わった?(愛情たっぷりに)」と言わせるだけの破壊力を持っている。
ファンの方にも機会があれば是非一度体感していただきたい。
私は普段は相槌も入れずベタおりするのだが、今日はインタビュアーとしての責務がある。
慎重に事を進め、親を落とすことに成功する。
安村「決勝戦は初めてだけど、対局前はどんなことを考えてたの?」
清原「もちろん優勝を目指してたけど、それ以上に大先輩の荒プロと決勝の舞台で戦えることが嬉しくて、自分の麻雀を打ち切って、荒プロの記憶に少しでも残ってくれたらいいなと思ってた」
安村「そこは共感できる。厳しいプロの世界で生きてきた先輩方と真剣勝負できる機会はなかなかないからね。」
清原「あとは、全5回戦をどう戦うかを前日に何度もシミュレーションはしたよ。決勝の舞台で、相手を常に意識して戦いたいと思っていた。」
安村「なるほど。実際対局が始まっての感触はどうだった?」
清原「まず相手がどうかというより、緊張して卓情報が全然入って来なかった。まずいなと思って、麻雀はかっこ悪くてもいいから集中することだけを考えた。」
このあたりは清原プロの正直な所だが、不測の事態に陥った時や上手くいかない時に、どのように対応し答えを出すのか。
一概には言えないが、清原プロのように準備や心構えがあってこそ、瞬時に気持ちを切り替えられるのではないか。
安村「1回戦で印象的だったのは荒プロから親のドラドラリーチが入った場面」

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安村「ここで1シャンテンからドラの一索を勝負して、荒プロからメンホン5,200をアガッたけど、ドラよく押せたよね。」
清原「ドラドラだと思っていたけど、3巡目に七索が切られていて、離れてリーチ宣言牌が六索なので、比較的ドラとのシャンポン形は考えにくいことから一索を勝負した。打ったら12,000からなので覚悟して打ったよ。」
安村「リーチ宣言牌が一番大きな理由?」
清原「六索じゃなければ打てなかった可能性が高い」
安村「押し引きは理で読みながら決めるタイプ?」
清原「自分の状態を考えて押し引きしたいと思ってはいるけど、理で考えることが多いかな。以前、親の清一色18,000テンパイからリーチに対して打ち切れない牌を持ってきて、オリて先輩に怒られたことがある。」
安村「すごい読みの自信!」
清原「外れてたけどね(笑)。そういう頭で考えてしまう部分が短所でもあるかな。」
そのまま清原プロは1回戦をトップで終えるが、2、3回戦はノーホーラのラスをとり、トータルでも微差のラスとなる。
清原「1回戦トップをとって無意識のうちに気持ちが舞い上がってしまったのだと思う。3回戦ではもがいたけど上手く立て直せなかった。3回戦から矢島プロと五十嵐プロが遠い仕掛けを多用してきたので、相手と反対のことをしようと考えていた。」
安村「??」
清原「相手の得意な土俵に立たずに、とにかく、なかないで重いのを一発決めようと考えていた。」
安村「キヨちゃんらしい発想だね。相手と反対のことをするという発想が対局をしながら出てこない。いつも相手との距離感を考えてるの?」
清原「相手のことは常に意識してるし、気持ち良く打たせたくない。大げさに言えば相手の心を折りたいと思って打ってる。」
安村「雀風からは想像出来ないこと言うね。以外と戦略家なんだ。」
清原「麻雀は自分というより、人との戦いだと思っているからかな。」
安村「色々と自分とは正反対で面白いよ」
清原プロの麻雀の印象とはかけ離れた言葉に驚きつつも、発想の多様さも麻雀の強さにおいて大事な要素ではないかと考えさせられた。
安村「4回戦、4時間ぶりにアガッた手牌が8,000オール!その半荘トップで終えて、最終戦をトータルトップで迎えたわけですが、どんな心境だった?」
清原「プレッシャーだと思うけど、休憩中に色々変なことを考えそうで、早くドンっと卓に座りたかった。」
安村「変なこと?」
清原「この決勝で先輩方を相手に自分の麻雀を打ち切りたいという思いが強かったから、勝ちたいという欲でそれが歪まないように」
その最後まで変わらなかった思いが実を結ぶ。
最終戦南4局 親・清原、持ち点13,900点
優勝するには原点に戻すことが必要な局面。
4巡目
一万一万二万三万四万七万八万九万二索三索八索五筒六筒  ツモ六万  ドラ八索
ここで清原プロは打一万
一万二万三万四万六万七万八万九万二索三索八索五筒六筒  ツモ八索
次巡、ここから何と打五筒
安村「この選択にはビックリした!リアルタイムで観戦してたけど思わず吹き出したよ(笑)」
清原「確かにやりすぎかもしれないけど、どうしても6,000オールにしたかった。捌きの上手い荒プロ、矢島プロ相手に4,000オールでもう1局というのは考えられなかったから。6,000オールの手組みにしてダメだったらしょうがないと。」
安村「なるほど。ほとんどの人は連荘も考えてリャンメンを残すと思うけど、五筒切りは本当ノータイムだったよね。」
清原「気が付いたら切っていた。この時は頭ではなく体が切ってたのかな。自分でも6,000オールへの強い覚悟がないと出来なかったと思う。」
この後、四索をツモりリーチ宣言。数巡後、清原プロがゆっくりと手を開く。
一万二万三万四万六万七万八万九万二索三索四索八索八索  リーチ  ツモ五万
このアガりが決め手となって清原プロが第40期王位に輝く。
清原プロの謙虚さ・対戦者への敬意・王位戦にかける覚悟が凝縮された素晴らしいアガりであった。
安村「最後に王位から皆さんにメッセージをお願いします」
清原「対局が終わり、多くの方におめでとうと声をかけていただいて、優勝したんだなと実感がわいた。応援してもらった方のためにも、より一層精進してリーグ戦やタイトル戦で活躍していきたいと思ってますので、これからも宜しくお願いします!」
安村「そうだね。リーグ戦はC1に昇級できるみたいだし、2、3月に行われるグランプリMAXもベスト16からだから頑張ってね!って自分も頑張らないとな。ノンタイトルだし・・・。」
清原「ヤスはすぐ獲れるよ。頑張れ!フフフ」
安村「は、はい・・・ありがとう」
と新王位からありがたい励ましをいただいて、インタビュー終了となりました。

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歌います

この男、どうやらプロを続けるみたいです。  終