プロ雀士インタビュー

第101回:瀬戸熊 直樹

瀬戸熊直樹(せとくまなおき、1970年8月27日 )は、競技麻雀のプロ雀士。
千葉県勝浦市出身。血液型O型。日本プロ麻雀連盟所属(現在、同団体内での段位は八段)。
愛称は「卓上の暴君」。攻めを重視した重厚な雀風。猛連荘をかけることが多く、連荘のかかっている間は「クマクマタイム(KKT)」と呼ばれる。

今更瀬戸熊先輩のプロフィールを紹介したいわけではない。この文書は最近になってウィキペディアに登場した彼の紹介文で、彼をもっとたくさんの人に知って欲しい誰かが書き込んだのであろう。
もちろん、童瞳の紹介文は書き込まれていません・・・汗

そんな彼の肩書は鳳凰位兼十段位。
今年の年始に鳳凰位を奪還。さらに晩秋に十段位3連覇を飾った。
今では絶対王者とも呼ばれる彼。そんな彼はいったいどういう人間で、今何を思うか。

という事で、インタビュアーの童瞳が根ほり葉ほり聞いてきました☆
パンダと熊の楽しいトークをお楽しみください☆

12月初め新宿某所にて

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童瞳 「じゃ録音を♪」

瀬戸熊「こんな近くにレコーダー置かなくても、そっちからでも十分録音できるよね。汗」

童瞳 「はっきりと録音しないと!」

瀬戸熊「そんなに張り切って、何に使うの?汗」

童瞳 「なんかNGワードでたら、そこだけ切り取ってパソコンに保存する。にっこり」

瀬戸熊「勘弁してください・・・汗」

いつものコントのような感じで、インタビューを始めた私達。

童瞳 「十段位3連覇おめでとうございまーす。棒読み」

瀬戸熊「そういうのなしでいいよ・・・汗」

童瞳 「では、早速!3連覇の感想を教えてください。」

瀬戸熊「鳳凰位もそうなんだけど、終わった直後はあまり実感がないんだよね。いつものパターンで、うれしさよりも今はほっとした気持ちだけかな」

童瞳 「全力出し切ったから?」

瀬戸熊「そうだね、やっている時はそんなに感じないんだけど、終わってみると、かなり疲れを感じるし、実際、トータルで何十時間も神経を張りつめて戦っているからね、今回はウェスト10センチ、体重は5キロ近くも落ちたよ、勝ったって感じる体力すら残ってないね」

童瞳 「そんなに変わるんですか?タイトル戦の決勝やりたいな・・・」

瀬戸熊「痩せるため!?まずは腕を磨こうね!!!」

童瞳 「はぁ・・・童瞳は強いと思うけどな・・・」

瀬戸熊「トンちゃん、今何リーグ?」

童瞳 「D1☆」

瀬戸熊「・・・」ため息

童瞳 「なんっすか・・・」

瀬戸熊「ストレート昇級するか、特昇を勝ってから言おうよ」

童瞳 「はひ・・・」かなり図星

瀬戸熊「どうぞ次の質問を。笑」

童瞳 「3連覇した今、一番したい事は?」

瀬戸熊「1日フリータイムを頂いて、ボーっとしたいかな」

童瞳 「ボーっと?具体的にはどんな事をされますか?」

瀬戸熊「うーん、そうだね、めっちゃ早起きして、貯めた録画番組を好きなもの1、2本見て、ベル子ちゃんに会いに行って、きりの良いとこで切り上げて、お菓子のまちおかでお菓子をおとな買いして帰って、ボリボリ食べながら、さらに録画を見る」 
{ベル子ちゃんとは地元のパチンコ屋、性別は女性という設定らしい。笑}

童瞳 「・・・これ・・・書きますからね・・・笑」

瀬戸熊「まじかよ。笑」

童瞳 「だって、今のワクワクした答え方からして、本当の事でしょう?なら、ファンの方々にぜひ知ってもらいたいです。」

瀬戸熊「一理ある・・・汗」

童瞳 「26期より後の連盟世代って、瀬戸熊さんが常にタイトルホルダーで、強いというイメージしかなくて、3連覇した今では絶対王者って呼ばれるようになったし、ご自身ではどう思っていますか?ぶっちゃけトークでお願いします!優等生回答は却下するからね」

瀬戸熊「自分の事は全然そんな風には思ってなくて・・・」

童瞳 「『本当に?』間髪入れずにツッコんでしまった・・・汗」

瀬戸熊「まだまだ僕が理想とする麻雀ではないからね。確かに昔と比べたら凄く成長はしたとは思うけど・・・」

童瞳 「成長するために、どんな努力をされてきたんですか?」

瀬戸熊「うーん、色々直したね・・・今でも直し続けている事があって、A2からA1に上がるのに5年かかった、その理由は我慢が効かない場面が多かったから。その頃から日常生活まで工夫して、本当の意味での我慢ができるよう訓練してきた、まだまだだけどね。」

童瞳 「もっと具体的にお願いします!」

瀬戸熊「麻雀でいうと、絶対に打っちゃいけない局面があって、その時はどんなに手が入っていても、打たないと決めた牌を絶対に打たないとか、相手に対して向かっていっている時の恐怖心に対する我慢とか、簡単にいうと胆力かな・・・日常では、お小遣いがない時はベル子ちゃんに会いに行かないとか?それでも行きたい時は、大蔵省にお小遣いの前借をして行っちゃうけどね。笑」

童瞳 「せっかくいい話聞いたのに・・・日常は全然我慢してないみたいですね。笑」

瀬戸熊「だから、まだまだなんだよ。笑」

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童瞳 「私が下手だからそう思うのかもしれないけど、我慢するのって、自分らしさを失わないですか?」

瀬戸熊「考え方が逆で、自分らしさを出すために徹底的に我慢をする、自分の100%のパフォーマンスをするための我慢だよ。」

童瞳 「矛盾はしてないんですね・・・」

瀬戸熊「長所を消せとは言ってない、短所を直せってだけだから、短所が減ることによって、長所は生かされるしね」

童瞳 「なるほど!!!」

瀬戸熊「もちろんそれは簡単ではない。僕は究極の負けず嫌いだから、自分の好きなものにおいてはどんな努力でもする。寝る間も惜しんで牌譜をみたり、見ることができる映像対局はすべてチェックしたり、暇さえあれば麻雀の事しか考えない自分が常にいるね」

童瞳 「そんなに麻雀が好きなんですか?仕事にすると好きじゃなくなる方が多いと聞くんですが」

瀬戸熊「いつも言っているけど、僕は麻雀の職人になりたい。麻雀さえ極められればいい!ようは、ただの麻雀オタクだよ。笑」

童瞳 「あっ、専門家ですね!笑」

瀬戸熊「そう、麻雀以外は何もできない。笑 あっ、しない。笑」

童瞳 「瀬戸熊さんは試合に負けるとどうなるんですか?よく私には『勝って泣け』って言うんじゃないですか?ご自身は?」

瀬戸熊「最初に鳳凰位と十段位をとれなかった2つの負けは、僕にとってすごい財産になった。今だから言えるけどね・・・その時は本当に何日も何日も寝られなくて、やっと寝られても、夢にまで出てきて、毎回うなされて起きて・・・あーやっちゃったー!俺やっちゃったーって叫ぶ。笑」

童瞳 「夜中にいきなり叫ばれたらびっくりしますよ・・・奥さん大変ですね・・・笑」

瀬戸熊「妻はもう慣れっこだから。笑」

童瞳 「その失敗からはどうやって立ち直ったんですか?格好悪くても教えてください。笑」

瀬戸熊「僕はもうね・・・その屈辱感をとにかく早く消したいと思っていたね。自分を早く取り戻したいというか、そのタイトルを目指している事によって、会社は辞めるわ、周りに迷惑はかけるわ、めちゃくちゃやってきたから、もう引き返せなくなっちゃったんだよね、もう成功するしかない。けど、タイトルとった今は、まだまだ成功したと思わないんだよね。」

童瞳 「なんでですか?普通なら天狗になってもおかしくないと思いますよ?」

瀬戸熊「麻雀って、突き詰めると結局、禅問答のように、自分の追い求める形にたどり着けるかどうかで、タイトルの1つ1つは、自分がやってきた事が正しいかどうか証明するにすぎないと同時に、それを世の人に証明するには結果を出し続けなければいけないと思うから。」

童瞳 「終点のないレースですね・・・」

瀬戸熊「生きている間に真理にたどり着けるかどうかはわからないけど、かなり近いところまで行けば、そのイズムを引き継いでくれた後世の者達が、真理まで辿りつけるかもしれない。生きているうちは真理に向かって走り続けたいんだよね。本当の成功は真理にたどり着く事だと思うから。そのために必要なのが究極な戦いの場所で、鳳凰戦であり十段戦である。そこが一番僕を成長させてくれる場所だと思うから。」

そう語る瀬戸熊先輩の表情は、なんとも形容しがたい幸福感が漂っていた。
「この麻雀打ちは、ただただ麻雀が好きなんだ」と素直に感じたと同時に、先ほど本気ではないにしても、軽々しく「強い」って言葉を口にした自分が恥ずかしかった。彼の強さの要因の1つは、子供のような純真さと学者のような底なしの探究心にあった。

童瞳 「瀬戸熊さんって、常にご両親や奥さんに恩返しをしないとって言っていますね、そのためにもタイトルを取り続けたいのですね?」

瀬戸熊「家族のほっとした顔を見るのはうれしいからね。迷惑もたくさんかけているから。負けると、腫物に触るみたいに接してくるのが嫌でさあ、かといって、ガツンと言われると、そんな事わかってんだよーって逆切れするんだよね。笑 そうなっちゃう自分が嫌だし、勝てば次の日フリータイムでベル子ちゃんと遊べるし♪」

童瞳 「案外単純なんですね。笑 でも身近な方達は瀬戸熊さんが最大の努力をして、瀬戸熊さんらしく負ければ、何も言わないじゃないですか?」

瀬戸熊「それね、最近思うんだけど、自分らしく負けるって難しいよね。勝った時は、自分で言うのもなんだけど、勝ちに偶然はあるけど勝因なしっていうぐらい、勝った時は大体自分らしく打てていると思う。ベストパフォーマンスで打って、勝てなかった事は今のところあまりないかな。負ける時はちゃんとした理由がある。将来的には、勝っても負けても、“瀬戸熊らしかった”、“素晴らしかった”って言われるようなプレイヤーになりたい、小島先生のようにね。」

瀬戸熊「十段戦の話あまりしてないね、これでいいの?」

童瞳 「ばっちりです☆」

どんなにきれいにまとめた文章よりも、きっと皆さんが一番知りたいのは瀬戸熊先輩のストレートな言葉に違いないから。
勝ってなお麻雀を求める、「まだ、強くなんかない・・・」瀬戸熊直樹がそう思う限り、卓上の暴君は存在し続けると信じます。