プロ雀士インタビュー

第39期王位戦優勝特別インタビュー:森下剛任

森下剛任プロの第39期王位獲得記念といたしまして、インタビュアーを務めさせて頂きます、
日本プロ麻雀連盟中部本部所属の杉浦貴紀と申します。宜しくお願いします。

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まず、森下王位との人間関係を簡潔に述べますのでお付き合い下さい。
出会いは、お互いが18歳の時に私が勤める麻雀店でした。
それから1年の時を経て、私が21期生として入会した翌年、中部プロリーグの会場で再会しました。
それから紆余曲折ありまして、現在では彼の経営する麻雀店で共にしております。

森下剛任プロの紹介に関しては、この場では省略させて頂きます。
近々掲載されるであろう、中村毅プロからバトンを受け取ったリレーエッセィに(仕事中に)必死で頭を悩ませておりましたので、そちらをお楽しみいただけたらな、と思います。

パソコンの画面ばかりにらめっこしているので、相当良いエッセィを考えているのだと思います。
仕事<リレーエッセィでしたので、意趣返しと言う訳ではありませんが、この場をお借りして森下剛任プロのリレーエッセィのハードルを上げておきました。

お互いに10年近く麻雀業界に身をおいて、思うことは共通するものがあります。

杉浦:(プロとして)麻雀業界でこれからも生きていくにはどうしたら良いか。
森下:結果を残して知名度を上げること。

入会時期が近く、同級生でいえば、私が中部プロリーグを制し、菅野直プロが静岡プロリーグ、樋口新プロがマスターズを得る中、自身のみが結果を残せずにいることがある種のコンプレックスであったようです。

そこで、誰よりも結果を残すことに拘り、努力を決して怠らないのが森下剛任プロです。
この度、39期王位の座を得るにあたって、森下剛任プロの麻雀人生は一変することでしょう。
王位戦の内容を含めて振り返ってみようと思います。

杉浦:「タイトル戦の度に会場近くの神社に参拝するのは?」
森下:「一種のゲン担ぎ」

樋口プロがマスターズを獲った時もそうだったからだそうです。
確かに、麻雀という種目上、運を天に任せる瞬間もあります。
本戦会場近くの神社に加え、準決勝以降のスタジオ付近でも参拝は欠かさなかったそうです。
神仏云々は置いておいて、決勝まで残ったのは当人の力でありますが。

杉浦:「決勝戦、抜け番1番を選んだ理由は?」

普通、というか抜け番を真っ先に選べる立場であれば、中間である3番目付近を選ぶことが多いように見受けられます。観戦記でも、この森下プロの選択が取り上げられていました。
少なくとも、1番と最後は後に残るものでしょう。
ましてや、G1タイトルの決勝戦で、初のテレビ対局です。私であれば、2番目を選びます。
理由は、そんな舞台では緒戦に勝っても負けても舞い上がってしまいそうだからです。
1回やってみて、1度呼吸を置いておきたいという心情からです。
それに対する回答は、

森下:「集中が切れるから、途中で休みを入れたくなかった。
あと、朝が弱いからスタートを遅くしたかった。調子が尻上がりに昇っていくタイプだし。」

なるほど。なんとなく納得できます。

杉浦:「今回の決勝の決定打、決め手となるアガリは何ですか?
私が見てイチバン印象に残ったのは、最終戦に杉浦勘介プロから直撃した5,200です。」
森下:「何で?」
杉浦:「剛任(ゴーニン)が5,200(ゴーニー)というニコ生のコメントがツボに嵌ったからです。」
森下:「半笑い」

今さらながら、“ゴーニン”の愛称で通っていますが、剛任と書いて“まさと”と読みます。
実際に決定打であったことは間違いないし、リーチをした時点でアガリ牌が4枚丸ごと残っていたことから、これはアガれるな。と思ったこともあります。

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森下:「それなら、2戦目(3回戦)の東1局。」

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杉浦:「(決め手を聞いたのにかなり序盤ですね)それはまた、何故ですか?」
森下:「リーチを打つ、打たないでリーチをした理由としては、6巡目の時点で三万が2~3枚は生きている確信があって、持っているとしたら南家の伊藤さんが1枚あるかないか。局面で先手を取りたかったし、打点は充分だった。ただ、親の手塚プロからリーチが入ったことと、六が暗刻で後スジになりにくいからヤミでもよかったかもとは思った。結果、そのアガリによって点数のリードと心のゆとりが持てたし。
以降は手が入りながらも放銃がほとんどなかったこともあり、4回戦半ばから優勝を意識していた。」
杉浦:「優勝を意識した瞬間から、疲労やプレッシャーは相当のものだったのではないですか?」
森下:「もう、へとへと。相当息も荒かったと思う。自分でまずかったなと思える局も、終盤に起こっていた。最終戦の東2局と南2局。終盤の八筒チーで全員にテンパイを入れさせてしまった。あれで1番損をしたのは誰だと思う?
杉浦:「西家の穴澤さんではないでしょうか。1人テンパイのはずが、全員テンパイになったのですから。」
森下:「俺。」
杉浦:「?」
森下:「ほとんど自分が連荘させたような、次の1本場で事件が起きるの。アガれると思いすぎて、穴澤さんのトイツ落しからホンイツで前に出てきているのが全く見えていなく、危機感をさほど持っていなかった。その後、六万で8,000の放銃。」

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穴澤さんの九万を見送って、発を暗刻にしての8,000に仕上げたアガリにばかりに目が行っていましたが、
確かに、自分でそのアガリを生んでしまったという捕らえ方もできます。

杉浦:「南2局のほうは?」
森下:「6巡目で発をポンしてドラを打ち出したのだけど、それが目立ってしまったのではないかと思う。
杉浦:「確かに、ほぼ不要のドラを抱えるリスクを負うことにもなりますが、すんなりテンパイまでたどり着けた可能性はありますね。」
森下:「どこか、楽をしたいという考えがあったのではないかと思う。それが、疲労やプレッシャーだったのかもしれない。最初に言っていた5,200をアガったときも、直撃でアガった安堵感なんてほとんどなくて、対戦相手の逆転に対する危機感しかなかったよ。」

初のG1タイトル決勝で初のテレビ対局ともなると、疲労やプレッシャーは想像を絶するものなのでしょう。
それに打ち勝って見事、王位の座を射止めたのは森下プロの日頃から努力を怠らない姿勢が実を結びました。
ありがとうございます。
そして、今さらながらおめでとうございます。
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共に働くメンバーによるサプライズの祝勝会をしました

ここで冒頭に戻らせて頂きます。

「プロとして麻雀業界でこれからも生きていくにはどうしたら良いか?」

“これからの1年間が勝負”

これは、先のマスターズにおいて、樋口新プロが優勝を収めたときにも森下プロ本人が用いた台詞です。
タイトルは、獲っておしまいではありません。
この先、身近な例でいえば樋口新プロや、その他にタイトルを獲得した選手同様にゲストや各種メディアへの露出、大会への優先出場権など、活躍の機会が格段に上がるでしょう。
それが、これからの“麻雀プロ森下剛任”のスタートなのです。

活かすも殺すも当人次第ですが、同じく麻雀業界で生きていくことを決めた身として、
森下剛任の今後に期待したいと思います。