プロ雀士インタビュー

プロ雀士インタビュー/第7期女流桜花優勝特別インタビュー:魚谷侑未

 
『ああいう子は強くなるよ。』
約3年前、会場で同卓者に牌のさらし方の間違いを指摘している女の子がいた。
その姿を見て、隣で観戦していた人がこうつぶやいた。
芯の強そうな子だなぁ・・その時はそう感じただけだったが、今思えばこの未来を予知していたのかもしれない。
第7期女流桜花決勝、そこには1年前と同じく勝利して涙を流す魚谷プロの姿があった。
1年前よりも一段と強くなって帰ってきた彼女は、まさに“ディフェンディングチャンピオン”の名にふさわしい堂々とした戦いぶりだった。
努力して努力して、我慢を重ねて勝利を勝ち取った彼女が流すまっすぐな涙だからこそ、観る人を感動させるのだろう。
そんな風に思った。
第6期・7期女流桜花&女流モンド杯優勝と今ではすっかり遠い存在になってしまいましたが、そんな女流桜花様と実は同期のわたし、古谷知美が今回インタビュアーを務めさせて頂きます☆
2月某日、居酒屋にて仕事終わりのゆーみん(魚谷プロ)と待ち合わせた。
魚谷『ともちん(わたし)お疲れー!』
古谷『ゆーみんー(^^)』
魚谷『はいこれ(インタビューで使う)ボイスレコーダー借りてきたよ!あとなに飲む?いつも通り梅酒ソーダでいい?あ、すみませーん!(店員さんに向かって)』
・・インタビューされる側なのにこの手際の良さ・・(・。・;
ゆーみんはとってもしっかり者なのです☆
こうして仲良く梅酒のソーダ割りを飲みながらインタビューが始まりました。

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撮影される時も手際がいいです
魚谷侑未プロ
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女流桜花連覇記念
魚谷侑未プロと古谷知美プロ
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魚谷侑未プロと古谷知美プロ
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左から魚谷侑未プロ、齋藤麻衣子プロ、高宮まりプロ

≪女流桜花決勝≫
古谷『ゆーみん、桜花連覇本当におめでとう!!』
魚谷『ありがとうー!!』
古谷『決勝前の優勝者予想では、連覇も期待してゆーみんを本命にしてたんだけど、本当に連覇しちゃうなんて!タイトルとるだけでもすごい事だけど、連覇っていうと本当に実力者って感じだね!』
魚谷『いやいやそんな事ないよ。本当にツイてたなって思う。』
古谷『実は女流桜花のプレーオフを記者として観戦した時に、みんな上手くて強くて、レベルの高さにびっくりしたんだ。でもゆーみんが、今その頂点なんだもんね!』
魚谷『ありがとうございます(照)。』
謙虚な姿勢は女流桜花になる前も、後も、連覇した後もずっと変わらない。
古谷『去年は挑戦者として、今年は現女流桜花として戦ったわけだけど、やっぱり気持ちの面では違った?』
魚谷『実は、決勝の2週間くらい前から、めちゃくちゃ不安になったの。この1年間あった【現女流桜花】の肩書が無くなるかもしれない、無くなる可能性の方が高いって思って。』
古谷『確かに確率でいえば4分の1だもんね。』
魚谷『なんかもう不安でグチャグチャになっちゃってひどかった。だけど3日くらい前に去年の女流桜花のプレーオフ前の気持ちを思い返して、吹っ切れて挑戦者の気持ちで戦おう!って気持ちを立て直せたの。』
タイトルホルダーならではの気持ちなのでしょう。
自分の気持ちの立て直し方までわかっている人は、そういないのではないでしょうか。
魚谷『でも終わった後は本当にツイてたなーって思ったよ。』
古谷『ツイてた・・かな?確かに牌が寄ってきていた局面はあったけど、それはゆーみんがきちんといつも通りの麻雀を打った結果、手繰り寄せたって感じがしたよ。2回戦のスッタンツモとか!』
魚谷『あれね、わたし高い手アガった後に手震えちゃう事がよくあるんだけど、あの時は震えなかったの。スッタンツモっても嬉しくなかった・・いや嬉しかったんだけど、これで優勝できなきゃ意味ないって思っていた。1回戦は1人沈みだったし。』
女流桜花決勝の舞台で四暗刻をアガったら、少しは舞い上がってもいいのに・・どこまで冷静なのだろうか?彼女の強さはこの冷静さにも起因している。
魚谷『でも、最後はあんなに苦しくなるとは思わなかったなぁ・・最終戦が始まる時は、よっぽどの事がない限り、自分が前に出なきゃいけなくなる事はないだろうって思ってたら・・』
古谷『すぐによっぽどの事が起きちゃったわけですね。』
魚谷『そう(苦笑)』
(10回戦開始時に56.8Pあった和久津プロとの点差が、和久津プロの猛烈な追い上げによって一時は捲られ、そこからまたゆーみんが追い抜かし、オーラスは、和久津プロの1,600・3,200ツモ条件という、とても白熱した展開になったのです!)
魚谷『和久津さん本当に強かった・・解説では“捲れらても魚谷プロは全然平気そうですね”なんて言われていたけど、内心はすごい焦ってたよ!でも逆に、もう1回捲られちゃったんだから、自分が前にいくしかないって腹を括れたかな。安牌を持たないで前に出ていくのって、やっぱりすごく怖いんだけど、自分がいかなきゃダメだって。だから腹を括って、南3局では役牌バックで押したの。オーラスでノーテンで伏せられるようにしたかったから。』
古谷『あのアガリはゆーみんらしかったね!オーラスで聞きたかったんだけど、ゆーみんの手牌がドラと役牌がトイツで・・そこから迷わずオリたよね?あの和久津さんの勢いだったら、条件満たしてツモられちゃいそうだから、多少はアガリにむかうのかなー?と思ったんだよね。』
魚谷『んー・・あれはどうだったんだろう?1,600・3,200ツモって、ほとんど満貫条件じゃん?わたし満貫ツモって中々満たせない条件だと思っていて。ああいう状況じゃ、役牌が鳴ける事も期待できないしと思ってそうしたんだけど、でもどうだったのかな?今でもよくわからないかも。』
古谷『(ゆーみんが後でこんなに悩むなんて珍しいかも・・)和久津さんが条件満たしてリーチかけた時はどうだったの?やっぱりドキドキだよね?』
魚谷『もうお祈りだよ!神様っっって!!』
古谷『なんかゆーみんが神様にお祈りって意外かも(^_^.)いつも現実的だから(笑)』
≪女流研修≫
古谷『そういえば、ゆーみんとよく話すようになったのって、女流研修がきっかけだよね。それまではあんまり深く話した事無かったよね・・わたしが人見知りすぎるのがいけないんだけど((笑))』
魚谷『あはは(笑)』
古谷『女流研修は、基礎的な部分を学ぶ事が多いから、わたしはすごく勉強になるんだけど、ゆーみんはもう滝沢さんと山井さんと同じ講師って感じかも。』
魚谷『そんな事ないよ。わたし基本に忠実に麻雀を打とうって心がけてるんだけど、それって実はすごく難しいの。自分でも気づかない内に基本から反れちゃっている部分が研修によって正されるし、他の子に指摘する事で、自分でも再認識する事もできるから、わたしにとっても勉強の場だよ。』
古谷『ふむふむなるほど。』
魚谷『基本に忠実に打って、もっと進化したらそこから自分の個性をつけられると思うの。だから個性がつくのはこれからかな。』
古谷『最速マーメイドって呼び名がつく位だし、もう十分個性的に打てていると思うけどね!』
魚谷『ありがとうございます(照)。』
照れると、ひたすらありがとうございますと連呼する桜花様は、なんだかとっても可愛らしい。
≪これから≫
古谷『女流桜花連覇して女流モンド杯も優勝して・・もうそれだけで素晴らしい経歴だけど、ゆーみんにとってこれからの目標ってある?』
魚谷『うーん目標というか、これからもっと自分がしっかりしなきゃいけないと思う。現状に甘えて満足していたら、後は堕ちるだけだから。努力し続けて、麻雀だけじゃなくて、普段の自分の立ち振る舞いとか行いとかでも、人間的に尊敬してもらえるような人になりたいな。そう思えるのは周りの先輩達のおかげかな。』
古谷『さすが意識が高いね!』
魚谷『あと、タイトルでいうならプロクイーンとりたい!女流桜花と女流モンド杯とプロクイーンとったら三冠にできるからね!』
三冠・・絵空事のような話だけど、ゆーみんが言うとなんだか実現してしまうような気がしてしまう。
【私、よく色んな人に(メンタルが強い)って言われるけど、そんな事全然ないんだよ。本当はちょー弱いし、緊張しいだし、ブレそうになる】
女流桜花決勝の4日前、彼女は自身のブログにこう記している。
それでもわたしは、ゆーみんはやっぱり強い精神力を持っている、強い人だと思う。
そうでなければ、周りからの期待やプレッシャーで押しつぶされそうになった時、50ポイント以上あった点差を和久津プロの凄まじい追い上げで、一時は捲られてしまった時、表情一つ変えずに自分のいつも通りの麻雀を貫く事なんてできない。
真面目で努力家で、とっても謙虚、そして常に上を目指し続けているゆーみん。
こんなプロに、自分もなりたいと思う。
ゆーみん、連覇本当におめでとう!
これからも強くて冷静でカッコいいゆーみんでいつづけてね☆