プロ雀士インタビュー

第220回:プロ雀士インタビュー 阿久津翔太  インタビュアー:浜野太陽

現在から遡ること10数年。当時小学生だった阿久津翔太は家に落ちていたテレビゲームの説明書から麻雀と出会った。みるみるうちにのめり込み、小学校の授業で書いた「こころのノート」には将来の夢を麻雀プロと記入。サッカーを習う子供が自然にサッカー選手を夢見るように、麻雀プロを夢見た。

大学には進学するものの、卒業前に地元・茨城を飛び出し埼玉で雀荘勤めを開始。地元では出会えなかった強者としのぎを削り、2年の修行期間を経て自信満々で連盟の門を叩く。

入会すると特別昇級リーグ優勝などメキメキ頭角を現し、今回ついに若獅子戦初代優勝者となりその名を轟かせた。

その優勝インタビューの記者として私・浜野に白羽の矢を立てていただいたわけだが…実は私は準決勝で彼と直対し、敗退している。そんな私にインタビューさせるのはどうかと思う気持ちも無いではないが、悔しい気持ちを抑えて精一杯紹介していきたい!

インタビューには写真が必要ということで、本来男同士では決して行かないであろうおしゃれなイタリアンのテラスで合流。

 

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モチモチのパスタをかきこみつつ取材を開始。

阿久津プロは私より少し年下だが半期先輩のため、初対面の時はお互い敬語から入った。あれから2年、もうタメ口でもいいかと思いつつ微妙な距離感をキープしている。

浜野「阿久津獅子、改めておめでとうございます!」

阿久津「ありがとうございます!」

浜野「早速ですが、順序を追って聞いていきましょう。まず1月まで遡り、若獅子戦開催を知った時の気持ちはどうでした?」

阿久津「流石にめちゃくちゃワクワクしましたよね!30歳未満の中では多分俺が一番上手いなと思ったので。」

 …お、おう!優勝されたから何も言えない。話を進める。

浜野「そして2次予選で敗退も、推薦制度によりベスト16へ進出。推薦者は4名という狭き門でしたが、さっきの様子だと選ばれて順当という感じでした?」

阿久津「正直内心選ばれるなと思いつつ、ドキドキしながら待ってたら死んじゃうからずっと寝てましたね。あと麻雀負けるとお酒飲むか寝るかしないとずっと考えちゃうので」

無事推薦で選ばれるとベスト16・8と勝ち上がり決勝に。

浜野「決勝メンバーが決まった時は勝てる可能性どれぐらいだと思ってました?」

阿久津「んー。… …。55%ぐらいじゃないですか?」

浜野「熟考の末にめっちゃ高い」

阿久津「63%って言おうとしたけど流石にそんなわけないと思って55にしました。岡崎さん(岡崎涼太プロ)が直近でWRC決勝に残ってたのでそこの経験の差が出たら怖いなとは思ってました。あと決勝が始まった時に自分が緊張してる実感があったんだけど、岡崎さんは全く緊張してる様子がなくて、そこで差をつけられてるなとは思いましたね。」

浜野「ひょうひょうとしてましたもんね。実際に決勝を戦う中で『この局は大きかった』という場面はありました?」

阿久津「2回戦東3局1本場で4,000オールをツモった場面ですね。初戦4着だったんですけど、これアガッた時にいけるかもなって思えました。」

 

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浜野「カン四万テンパイを1回崩してからの一発ツモだから気持ちよかったですよね」

 

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阿久津のスタイルなら即リーチでもおかしくない手形だったが、場の状況を見てテンパイ崩しの打五万。次巡七筒を引くと五筒を一発ツモ!

阿久津「第一感は『このタイミングでリーチしたらみんな向かってこれないな』で、普段なら即リーチすることもあるんですよね。ただここは足止めよりも勝負手にしたい思いで外したら噛み合って、あまりにも好感触でした」

この回阿久津は大きなトップで一転してリードする立場となり、最終戦はほぼ着順勝負の格好に。決め手の出ないまま細かいアガリやテンパイ料を積み重ね、最後のアガリ勝負を制した。

 

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浜野「2回戦大きいトップを取れたことも、最終戦の立ち回りも阿久津プロのいいところがすごく出てたと思いますが、自分的な勝因としてはどっちが大きかったんですか?」

阿久津「いや本当は圧倒的なリードを持って最後を迎えたかったんですよ。それなら実力的な話もできるんですけど、最後アガリ勝負みたいな状況で配牌とツモが良かったのがたまたま自分みたいな感じだったから。勝因はもう運が良かったとしか言えないですね…」

圧倒的な戦前の余裕は最後には消え去っていたようだ。

浜野「優勝した時の気持ちは?」

阿久津「ホッとしたというか、決勝前から優勝しても喜ぶのはその日までにして、次の日から麻雀強くなる方に気持ちを切り替えないと、いつまでも喜びに浸ってちゃいけないなと思ってました」

浜野「偉すぎる。大丈夫?本心で言ってます?」

阿久津「いや本当に優勝してもそこから改めて対局勝つなり自己プロデュースするなりしていかなきゃいけないと思ってたので、こっからが大事だと思ってます」

浜野「そうかあ、すごい。ちょっと人間味のあるところも欲しいなあ…賞金の使い道は?」

第1期若獅子戦の優勝賞金は100万円。きっと少しぐらい欲にまみれた使い方もしているだろう。

阿久津「20万はパソコンの購入資金に使って、配信とか仕事用に使っていこうとしてます。あとスーツも買おうと思ってるんですよね。」

浜野「おお〜じゃあ自分への投資みたいな?」

阿久津「飲み食いに使うと一瞬で無くなっちゃいますからね〜。あと4月はタイトル戦が多くて仕事のシフトを少なくしてたんですよ。それで食費切り詰めなきゃなあって思ってたところで優勝したので、気持ちにゆとりが出ました。」

リアルながらも好感度の上がる要素しか出てこない。ボロを出すのは諦めて今後の目標を聞いてみた。

阿久津「リーグ戦ですねとりあえず…Bリーグ以上の方とセットをさせていただくとなんか勝てないんですよね。相手がミスを全然しないので自分の方が圧倒的に得できる場面が無くなっていく感じがして。A2、A1への昇級を目指したいので、とりあえず早くB2リーグに行きたいです。」

浜野「ありがとうございます、改めて今回はおめでとうございます!僕もすぐ追いつきますからね!」

タイトルを獲得したことで、幼い頃の自分にも胸を張って夢を叶えたと言えるようになったであろう阿久津プロ。これからの活躍にもぜひご注目ください!

(文・浜野太陽)